警察剣道試合及び審判規則の制定について(例規通達)
平成16年8月9日
鳥務例規第11号
対号 平成9年3月31日付け鳥教例規第1号 「警察剣道試合及び審判規則の改正について(例規通達)」の全部改正について(例規通達)
警察剣道試合における審判規則については、対号例規通達により実施しているところであるが、このたび同規則の全面的な見直しを行い、別添のとおり「警察剣道試合及び審判規則」を定め、平成16年9月1日から運用することとしたので、運用上誤りのないようにされたい。
なお、対号例規通達は、平成16年8月31日限り廃止する。
記
1 制定の趣旨
これまで警察剣道試合を行うに際して、申し合わせ等で運用されてきた事項について、新たに規定に盛り込むとともに、部外の審判規則との関連性にも配慮する等全面的な見直しを行うこととした。
2 運用上の留意事項
(1) 用具について(第5条)
竹刀及び鍔の構造、規格について、全日本剣道連盟の規則に統一した。
(2) 有効打突について(第8条)
有効打突の規定について、表現が抽象的であったことから、明解な表現に改めた。
(3) 試合の開始及び終了について(第9条)
試合者の礼法については、指導が徹底されていること、又主審の宣告についても、宣告の方法によって明示されていることからこれらを削除した。
(4) 試合時間について(第10条)
試合時間に含まないとする規定を簡潔にしたほか、全国警察剣道選手権大会で実施している「時間無制限試合」に関する規定を新たに設けた。
(5) 勝敗の決定について(第11条)
判定又は抽選による取得本数を明確に規定した。
(6) 禁止行為について(第15条)
これまで申し合わせ等で運用されてきた、鍔競り合いに関する規定を新たに設けた。
(7) 錯誤等の措置について(第23条)
錯誤等の措置についての規定を新たに設けた。
(8) 審判旗の表示と宣告の方法について(第27条)
審判旗の表示と宣告の方法についての条文を簡潔にし、その具体的要領については別表に取りまとめた。
(9) その他
所要の規定を整備した。
別添
警察剣道試合及び審判規則
第1章 総則
(目的)
第1条 この規則は、警察において行う剣道の試合及び審判に関し、必要な事項を定めることを目的とする。
(試合場の基準)
第2条 試合場は次の各号によるほか、第1図「試合場略図」によるものとする。
(1) 試合場は、原則として板張りとする。
(2) 試合場は、一辺の長さが9メートルないし11メートルの正方形又は長方形とする。
(3) 試合場の外側に原則として1.5メートル以上の余地を設ける。
(4) 試合場において表示する各線は、幅5センチメートルないし10センチメートルとし、白色を原則とする。
2 2以上の試合場を隣接して設ける必要があるときは、危険のない限度で、それぞれの試合場外を併用するようにして設けることができる。
(服装)
第3条 試合者は、剣道着及び袴を着用しなければならない。
(剣道具)
第4条 剣道具は、面、小手、胴及び垂とし、その構造及び名称は、第2図「剣道具略図」のとおりとする。
(用具)
第5条 用具は、竹刀とし、その構造及び各部の名称は、第3図「竹刀の構造及び名称略図」のとおりとする。
2 竹刀は、次の基準に該当するものとする。
長さ 重さ(鍔を除く。) 太さ
1本の竹刀を使用する場合 男子 120cm以下 510g以上 26mm以上
女子 120cm以下 440g以上 25mm以上
2本の竹刀を使用する場合 1本 男子 114cm以下 440g以上 25mm以上
女子 114cm以下 440g以上 24mm以上
他の1本 男子 62cm以下 280~300g 24mm以上
女子 62cm以下 250~280g 24mm以上
3 鍔は、皮革又は化学製品の円形のものとする。その大きさは直径9センチメートル以下とし、竹刀に固定する。
第2章 試合
(打突部)
第6条 竹刀の打突部は、物打を中心とした刃部(弦の反対側)とする。
(打突部位)
第7条 竹刀の打突部位は、次の各号に限るものとする(第4図「打突部位略図」参照)。
(1) 面部 正面、右面及び左面
(2) 小手部 右小手及び左小手
(3) 胴部 右胴及び左胴
(4) 突部 突き垂
(有効打突)
第8条 有効打突は、充実した気勢と適正な姿勢をもって、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、かつ、残心あるものとする。
2 次の各号のいずれかに該当する正確な打突も、有効打突とする。
(1) 竹刀を落とし、あるいは倒れた試合者に、直ちに加えた打突
(2) 場外に出ると同時に加えた打突
(3) 試合時間終了の合図と同時に加えた打突
3 次の各号のいずれかに該当するときは、有効打突としない。
(1) 有効打突が、両者同時にあった場合(相打ち)
(2) 被打突者の剣先が相手の上体前面に付いて、その気勢、姿勢が充実していると判断した場合
(試合の開始及び終了)
第9条 試合の開始及び終了は、主審の宣告で行う。
(試合時間)
第10条 試合時間は、5分(延長戦にあっては3分)を基準とし、主審の「始め」の宣告から時計係の「終了」の合図までの間とする。ただし、主審が有効打突の宣告をし、又は審判員が試合を中止させた場合において、試合の再開までに要した時間は、試合時間に含まない。
2 試合時間については、第1項に定めるもののほか、時間無制限により実施することができる。
(勝敗の決定)
第11条 試合は、原則として3本勝負とし、試合時間内に2本先取した試合者を「勝ち」とする。ただし、試合時間内に一方だけが1本を取得したときは、その試合者を「勝ち」とする。
2 試合時間内に勝敗が決まらないときは、あらかじめ別に定めるところにより、延長戦、判定若しくは抽選により試合の勝敗を決め、又は引き分けとすることができる。
なお、判定又は抽選により勝敗を決した場合は、勝者に1本を与える。
3 判定により勝敗を決めるときは、技能の優劣を優先し、次いで試合態度の良否によるものとする。
4 前項の技能の優劣及び試合態度の良否の判定は、次の各号によるものとする。
(1) 技能の優劣は、有効打突に近い打突を優位とする。
(2) 試合態度の良否は、姿勢及び動作において優っている試合者を優位とする。
(不戦勝ち及び棄権勝ち)
第12条 試合者の一方が試合の開始前に棄権したときは、他の試合者を「不戦勝ち」とする。
2 試合者の一方が試合を行うことができるにもかかわらず、試合の継続を拒み、又は試合を棄権したときは、他の試合者を「棄権勝ち」とする。
3 前2項の規定により「勝ち」となった試合者は、2本勝ちとする。ただし、延長戦にあっては、一本を与える。この場合において、「負け」となった試合者の取得した本数は有効とする。
4 第1項及び第2項の規定により「負け」となった試合者は、その後の試合に出場できない。
(負傷等の場合の措置)
第13条 主審及び副審は、試合中、試合者に負傷その他の事故があったときは、合議(合議の方法は、試合を中止し、試合場の中央で行う。以下同じ。)によって試合を継続するかどうかを決定する。ただし、この場合、負傷等の処置に要する時間は5分以内とする。
2 主審及び副審は、試合の継続を不可能と認めるときは、合議によって次の各号により処置する。
(1) 負傷の原因が試合者の一方の責任によると認められるときは、その者を「負け」とする。
(2) 負傷の原因が試合者のいずれの責任とも認められないときは、試合不可能となった者を「負け」とする。
(3) 負傷以外の事故があったため、試合の継続を不可能と認めるときは、試合不可能となった試合者を「負け」とする。
3 主審及び副審は、前項の規定により「負け」とした試合者のその後の試合出場について、合議のうえ認めることができる。ただし、第1号の規定により「負け」とされた試合者は、その後の試合に出場できない。
4 第2項の規定により「勝ち」となった試合者は、2本勝ちとし、延長戦にあっては、1本を与える。この場合において、「負け」となった試合者の取得した本数は、有効とする。ただし、第1号の規定により「負け」となった試合者の取得した本数は、無効とする。
(団体試合)
第14条 団体試合は、あらかじめ別に定めるところにより、個人試合を行い、勝者数法又は勝ち抜き法により、団体試合の勝敗を決める。
2 前項の勝者数法及び勝ち抜き法の意義は、次の各号のとおりとする。
(1) 勝者数法 個人試合の勝者の数の多少により団体試合の勝敗を決める方法をいう。この場合において、個人試合の勝者の数が同じときは、総本数の多少により、総本数が同じときは代表者戦により、それぞれ勝敗を決める。
(2) 勝ち抜き法 個人試合の勝者が続けて試合を行い、団体試合の勝敗を決める方法をいう。
第3章 禁止行為
(禁止行為)
第15条 試合者は、試合中、次の各号の行為をしてはならない。
(1) 審判員又は相手に対し、非礼な言動をすること。
(2) 定められた以外の用具(不正用具)を使用すること。
(3) 鍔競り合いを速やかに解消しないこと。
(4) 場外に出ること。この場合の「場外に出る」とは、以下の場合をいうが、試合者の双方が前後して場外に出たときは先に出た者を、同時に出たときは双方を場外とする。
ア 片足が完全に境界線外に出たとき
イ 境界線外において、身体の一部又は竹刀で身体を支えたとき
ウ 倒れた場合に、身体の一部が境界線外に出たとき
(5) 不当に相手を場外に押しだし、又は突き出すこと。
(6) 竹刀を落とし、又は相手から落とされること。ただし、竹刀を落とし、又は落とされた直後に有効打突が加えられたときはこの限りでない。
(7) 足がらみをすること。ただし、鍔競り合いとなった後、右(左)足で相手の左(右)足を外側から払うことを除く。
(8) 不当な中止要請をすること。
(9) その他、試合の公正を害すると認められる行為をすること。
(反則)
第16条 試合者が前条各号の禁止行為をしたときは反則とし、主審は、次の各号により処置する。
(1) 試合者が前条第1号及び第2号の禁止行為をしたときは、その者を「負け」とし、相手に2本を与える。この場合において、「負け」となった試合者の取得した本数は無効とし、その後の試合には出場させない。
(2) 試合者が前条第3号ないし第9号の禁止行為をしたときは、主審は、1回ごとに反則を宣告し、2回犯したときは相手に1本を与える。その後、さらにこれらの禁止行為をしたときは、改めて回数を起算する。
(3) 試合者双方が共に1本を取得した後、又は共に取得本数がなく延長戦となった場合において、それぞれ同時に2回目の禁止行為をしたときは、相殺し反則としない。
2 反則は、1試合(延長戦を含む。)を通じて積算する。
第4章 競技役員等
(審判長)
第17条 審判長は、公正な試合を遂行するために必要な一切の権限を有する。
(審判主任)
第18条 2以上の試合場で同時に試合を行うときは、審判主任を置くことができる。
2 審判主任は、審判長を補佐し、当該試合場における審判上の責任を負う。
(審判員)
第19条 審判員は、原則として主審1名、副審2名で構成する。
2 主審及び副審は、この規則に従って試合の勝敗を決めるものとし、有効打突及び反則等の判定については、いずれも同等の権限を有する。
3 主審は、試合の運営の全般に関する権限を有し、審判旗により有効打突及び反則等の表示と宣告を行う。
4 副審は、主審を補佐し、審判旗により有効打突及び反則等の表示を行うほか、危険防止、反則及び試合時間の終了等について、主審に代わって、「やめ」の宣告を行うことができる。
(試合係員)
第20条 試合係員は、時計係、掲示係、記録係及び選手係とし、それぞれ原則として主任1名及び係員2名以上で構成する。
2 時計係は、試合時間の計時に当たり、時計係旗及び笛等で試合時間の中断及び終了の合図を行う。
3 掲示係は、定められた方法により、勝敗の判定を所定の箇所に掲示する。
4 記録係は、定められた方法により、有効打突、反則の種類及び回数、試合所要時間等を記録する。
5 選手係は、試合が円滑に行われるようにするため、定められた方法により、選手の招集、検査等を行う。
第5章 審判の方法
(1本の判定)
第21条 主審及び副審の2名以上が有効打突の表示をしたとき、又は1名が有効打突と認め、他の2名が棄権したときは、1本と判定する。
2 有効打突を宣告した場合でも、試合者に不適切な行為があったときは、審判員の合議により、その宣告を取り消すことができる。
(勝敗の判定の方法)
第22条 主審及び副審は、判定によって試合の勝敗を決めるときは、試合を中止させ、試合者を開始線に戻して中断の構えで待機させた後、主審の「判定」の宣告により、審判員が同時に「勝者」を表示する。
(錯誤等の措置)
第23条 審判員の判定に次の各号に該当する疑義がある場合は、合議のうえ、その是非を決定する。
(1) 有効打突又は反則を錯誤して判定した場合
(2) 反則回数を錯誤して試合が継続され、有効打突の判定が行われた場合
(異議の申し立て)
第24条 審判員の判定に対しては、何人も異議の申し立てをすることができない。
2 この規則の実施について疑義があるときは、監督その他の責任者は、その試合者の試合終了までに、審判長又は審判主任に対し、異議の申し立てをすることができる。
(試合の一時中止等)
第25条 主審及び副審は、試合者に次の各号のいずれか(副審にあっては、第1号のみ)に該当する行為があったときは、それぞれ当該各号に定めるところにより処置する。
(1) 反則の事実を認めたとき。──試合を中止させ、その事実を明示する。ただし、反則の事実が不明瞭なときは、試合者を中央表示線を中心に相互の距離を約9歩とった位置にそんきょ又は正座の姿勢で待機させ、合議の後、その事実を明示する。
(2) 試合中、試合者が倒れた場合又は竹刀を落とした場合で、相手が直ちに打突を加えなかったとき。──試合を中止させ、試合者を開始線に戻して試合を継続させる。
2 試合者は、負傷又は負傷以外の事故のため試合を継続することができなくなったときは、主審に試合の一時中止を申し出ることができる。この場合において、主審は、直ちに「やめ」の宣告をした後、試合者の申し出を聞き、その理由を明らかにしなければならない。
(審判旗等の規格)
第26条 審判旗等は、審判旗、監督旗及び時計係旗とし、その規格は、第5図「審判旗等の規格」のとおりとする。
(審判旗の表示と宣告の方法)
第27条 主審及び副審は、審判旗を持ち、有効打突、反則及びその他の試合事項について審判旗の表示と宣告を行う(別表「審判旗の表示と宣告の方法」参照)。
第6章 補則
(その他の処置)
第28条 この規則に定めるもののほか、試合及び審判に関する細部的事項は、あらかじめ別に定めるところによることができる。
2 試合中、この規則又はこの規則に基づき別に定めたところによっても処理できない事項については、審判員は、合議のうえ、審判長又は審判主任に諮って処置する。
図及び別表 省略