「微物鑑識実施要領」の制定について(例規通達)
昭和62年11月6日
鳥鑑例規第7号・鳥科例規第5号
近年、犯罪は悪質、巧妙化するとともに、捜査を取り巻く環境も一段と厳しさを増しており、指紋等の明白な物的資料の採取や聞込み捜査等が困難化している。
このようなことから、犯罪現場等に遺留された微小、微細、微量な資料を積極的に活用して科学的、合理的な捜査を推進することが不可欠となっている。
このため、別添のとおり「微物鑑識実施要領」を制定したので、本要領に基づき、適正かつ効果的な微物鑑識の実施に努められたい。
別添
微物鑑識実施要領
第1 目的
この要領は、適正かつ効果的な「微物鑑識」を実施するため、必要な事項を定めることを目的とする。
第2 定義
この要領における用語の意義は、次に定めるところによる。
1 微物
犯罪現場その他犯罪に関連すると認められる場所、人及び物に存在する微小、微細、微量なもので、犯罪鑑識の対象となる資料をいう。
2 微物鑑識
微物の発見、採取及び鑑定・検査により、当該物質の特性、物性等を明らかにし、捜査の方向づけ、犯人の特定及び犯罪の立証を行う鑑識活動をいう。
第3 基本的心構え
微物鑑識の実施に当たっては、微物の特性を理解し、現場保存、採証活動等を的確に行うとともに、採取資料は速やかに鑑定・検査を行い、その結果を効果的に捜査に反映させなければならない。
第4 幹部の現場指揮
幹部は、事件概要並びに現場の状況等を把握した上、微物鑑識に十分配意し、下記事項について具体的な指揮を行うものとする。
1 微物採取要員の指定
2 現場保存の指揮
3 現場観察の指揮
4 微物採取の指揮
5 証拠保全措置の指揮
6 活用の指揮
7 現場活動終了時の指揮
第5 現場保存
現場保存に当たっては、微物の散逸、変質、混合等を防止するため、保存用資器材を活用するとともに、重要保存区域を設定するなど資料の保存を徹底するものとする。
第6 現場観察
現場観察に当たっては、資器材を有効に活用するとともに、犯人の行動を推理し、重要箇所並びに資料の減失等のおそれがある場所等を優先して行うものとする。
第7 微物の採取
微物の採取に当たっては、資料の価値を損ねることのないよう、採取の順序、方法等について十分配意するとともに資器材を有効に活用し、資料に最も適した方法で行うものとする。
第8 立証措置
微物の立証措置は、その特性を認識し、資料の採取から鑑定に至る各段階はもとより、一連の経過を写真、書面等で客観的かつ明確に表わすなど、より厳格な立証措置を講じなければならない。
第9 鑑定・検査
1 鑑定・検査に当たっては、資料の消費が少ない分析方法を選定するとともに、鑑定機器を有効に活用し、捜査の状況に応じて迅速、的確に行うものとする。
2 鑑定・検査に当たっては、鑑識資料センター(警察庁)及び部外の関係機関・団体への部外鑑定・検査に配意するものとする。
3 鑑定・検査の結果については、捜査資料及び事実関係と突き合わせる等十分検討し、早期に捜査への活用を図るものとする。
第10 微物の保管、取扱い
採取した微物は、散逸、変質、混合等により資料の証拠価値を減殺することがないよう適正な保管、取扱いをしなければならない。
第11 微小領域の鑑定、検査
微物以外の鑑識資料について、微小領域の鑑定、検査を行う場合、その取扱い、立証措置等は、本領域に準じて行うものとする。