交通事故による負傷者を搬送した者に対する報労金の贈与に関する訓令の運用について(例規)

交通事故による負傷者を搬送した者に対する報労金の贈与に関する訓令の運用について(例規)

昭和46年8月27日
鳥交一発第691号
烏務発第487号
鳥会発第401号
改正 平成元年鳥務例規第10号
 交通事故による負傷者を医療機関に搬送した者に対して、一定額の報労金を贈与することによって、交通事故負傷者の救護搬送等を促進し、人命の救助と交通道徳の高揚を図るため、みだしの訓令を制定し、本年9月1日から施行することとしたがこの訓令の解釈および運用については下記のとおりであるから、適正な事務処理によっていかんのないようにされたい。
                       記
1 運用の主旨および基本的心構え(第1条関係)
  この制度は、最近のきびしい交通情勢下にあって、人命の尊重を基調とした交通安全対策の一環として、交通事故による負傷者を一刻も早く救護するために、医療機関に搬送した者に対して、一定額の報労金を贈与することによって善意の搬送行為を促進し、交通道徳の高揚を図ろうとするものである。
  したがって、この訓令の運用にあたっては、この制度の趣旨があくまで負傷者を救護するためのいわば善意の協力者を対象とするものであるから、取扱いにあたっては、応接態度に留意し、通報要領等の教示は懇切丁寧に行なうように心がけなければならない。
2 用語の意義(第2条関係)
 (1) 交通事故とは、道路交通法第72条第1項にいう車両等の交通による人身事故および踏切りにおける歩行者事故をいう。
 (2) 負傷者とは、上記交通事故が原因で負傷した者をいい、当該交通事故と負傷との間に因果関係が認められるものであれば、道路上にある負傷者にかぎらず屋内にある者も含む。
   ※ ただし、負傷の程度がきわめて軽微であって、負傷者自らが医療機関に赴くことが容易とされるような場合、たとえば、治療が急を要しないとか、医療機関が近くにあって、他の者の搬送の労をわずらわせずとも単独で受診し得るもの、あるいは、列車、バス等の公共の交通機関を利用すれば充分その用が達せられるなど、通常自力救護を妥当とされる程度の負傷者は、この制度における報労金贈与対象事案の負傷者としないものとする。
 (3) 医療機関とは、救急病院はもちろん、その他の病院、医院、診療所等救急医療を行なうすべての機関をいう。通常、負傷者は、外科病院(医院)に搬送されるケースが多いが、交通事故の特性から必ずしも外科病院(医院)に限定せず、負傷者の応急処置を施す場合も少なからずあることを考慮して、眼科、歯科医院ないしは接骨医等を含めたすべての医療施設とした。
 (4) 搬送行為とは、その手段、方法のいかんを問わず、負傷者を医療機関に運んだ行為をいうものであり、通常の方法としては、自動車に乗せて運ぶことが多いと思われるが、その他だきかかえ、背負うなどの方法による場合ももちろん搬送行為である。
    なお、搬送行為は、「医療機関に運ぶ行為」であるので、谷底へ転落した車両から負傷者を救い上げ、または破損した車両内で動けなくなった負傷者を車外へ救い出す等のいわゆる救出行為はこれに含まれないが、(後記13によって表彰対象となる場合がある。)一旦救出後の負傷者の救護看病をしながら附き添って医療機関へ行く行為は搬送行為である。
    また、搬送の途中で、救急自動車、警察用自動車等の乗務員に当該負傷者を引き継いだ場合も搬送行為に含むものとする。
 (5〉 搬送者とは、前記搬送行為を行なった者をいうが、報労金贈与の適用が除外される者(後記12)があることに留意すること。
 (6) 報労金とは、搬送者の善意の労に報いるための謝礼金であるが、「労」の評価のうちには、搬送者の被服やシート等が汚れたり、破れたりした場合にこれを償うという趣旨も幾分加味している。しかし、あくまでも実費を補償するという性質のものではない。
    したがって、搬送者に請求権はなく、警察に支払い義務もない。
3 適用区域(第3条関係)
  鳥取県の区域において発生した交通事故とは、行政区画による鳥取県内において発生した交通事故をいいこの事故に関連した負傷者を搬送したものであれば、それが鳥取県内を通過する県外車両の運転者等であっても、負傷者、搬送者の居住地に関係なくこの制度を適用する。
  なお、行政区画上は鳥取県の区域ではないが、隣接県警察との協議に基づき本県警察が交通事故を処理した場合にも適用する。
4 報労の区分等(第4条関係)
  報労区分を1級、2級および3級の3段階に区分して格差をもうけ、その基準として、搬送行為の困難性ないし被服、車両等の汚、破損程度などのいわゆる労の程度を抽象的に示しているが、搬送事案によっては、通行車両がその運行のついでに搬送する場合もあれば、深夜に依頼を受けてわざわざ出向く場合があり、また、天侯が苦にならないときもあれば吹雪の中で搬送するときもあろうし、数百メートル先の病院に運ぶ場合と数十キロメートルの遠距離を運ぶ場合があるなど、そのつど状況を異にするので、個々の事案について適正な格付けをすることとした。
  また、報労金額についても、各級に応じてそれぞれ格差を設けており、その決定はすべて警察署長又は高速道路交通警察隊長(以下「警察署長等」という。)において行なうこととするが、1級および2級に該当するものについては、本部交通部長(以下「交通部長」という。)の意見をきいて決定することとした。(後記9参照)
  なお、通常一般的には3級に該当するものが多いと思われるが、事案によっては相当の長距離にわたる搬送であって、他の事情とは別個に搬送距離によって区分の格付けを考慮する必要のある場合もあると考えられるので、そのおよその距離的基準を示しておく。
    1級=搬送を開始した場所から医療機関に搬送(あるいは引継ぎ)した距離が30キロメートル以上
    2級=同上の距離が20キロメートル以上
5 搬送行為の通報(第5条関係)
  搬送カード(以下「カード」という。)は、所定の書式に印刷した郵便はがきを使用する。
  このはがきは、本部で印刷して各署に送付するから、管轄区域内の各派出所、駐在所および医療機関に備え付けること。
6 通報のない搬送者の取扱い(第6条関係)
  この制度は、搬送者からカードによって通報のあったものが適用の対象となることを原則としているが、搬送者のなかには、手続きの不知、該当するかどうかのためらい、遠慮あるいはカードの受領をいとうなどの理由から通報のない場合もあると思われるので、交通事故の処理等の過程で搬送者を認知したときは、認知警察官が自らカードを作成して積極的運用をはかることとした。
7 確認(第7条関係)
  第5条のカードにより通報を受け、または第6条によって警察官がカードを作成したときは、交通事故事件簿等の関係記録簿冊によって当該搬送事案の事実および状況の詳細を調査確認し、第4条に規定する報労区分の決定に必要な事項を調査する。
  なお、確認の結果はカード裏面の確認欄に記入して確認者が署名押印するが、調査の結果、搬送者に該当しないが、報労金贈与の適用が除外されている者であることが確認されたときは、「汚損、破損、搬送距離の程度」欄に非該当となる要旨を朱書する。
  なお、非該当の者に対する取扱いは後記11による。
8 カードの移送(第8条関係)
  通報のあったカードに基づき調査確認する過程で、その搬送行為が他署管内又は高速道路で発生した交通事故に係るものであることが判明したときは、すみやかに当該交通事故の発生地を管轄する警察署長等に移送する。この場合、他県の区域内で発生した交通事故に係るものであって、鳥取県の制度が適用されないものであるときは、すみやかに当該発生地警察署長等にカードの要旨を通報する。
9 報労の区分等の決定(第9条関係)
  警察署長等は、調査確認したところにより、第4条の基準に基づいて報労の区分と金額を決定するが、1級および2級に該当するもの、ならびに1名の負傷者を2名以上で搬送した事案であってそのうちに2級以上に該当する者を含むときは、交通部長の意見を聴いて決定することとした。これは、1級および2級については、報労金額にかなりの差があるとともに、基準がきわめて抽象的に規定せざるを得ないものであって決定にはかなりの幅があるところから、県下各署のバランスを調整し、適正を期そうとするためである。
  なお、金額の決定については、通常一般的には3級に該当する場合が多いと思われるが、3級はおおむね1,000円を標準とし、1,000円を下る金額に決定する場合は、例えば搬送行為がきわめて容易であったと認められるとき、負傷程度が軽いなど、この制度を適用することにちゅうちょされるようなとき、または、一事案2名以上の搬送者があり、搬送者の個々については搬送行為の程度が軽かったと判断されるときなどとする。
  また、交通部長の意見を聴くときは、様式第2号の所要事項を電話で伺うものとし、文書の送付を要しない。
10 報労金の贈与(第10条関係)
  警察署長等は、決定した報労金額にあたる報労金を、当該搬送者に直接または受持警察官等をして手交しまたは送付して贈与する。この場合様式第3号の謝意を表する礼状を添えて手交または送付することとした。
  報労金は、所属長が搬送者報労金支給調書(1号様式)により地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)第161条に規定する資金前渡を受けて贈与するが、前記10に例示するように1,000円未満の報労金を贈与する場合は、概して少額であったり金額が不自然な端数となることも考えられるので、このような場合は品物をもって贈与することとする。もちろん、たとえそれが少額であっても現金によることが適当と思われる事情のある場合は現金による。
11 報労金が贈与されない者(第11条関係)
  第2条第5号による搬送者であっても、交通事故関係者、警察職員、消防吏員、親族等の者は、救護の責任ないし義務を有するので報労金贈与の対象から除外したものであるがこれらの者とはつぎのとおりである。
 (1) 当該交通事故に係る車両とは、加害、被害の別なく、その事故に関係した車両のことをいい、その他の乗務員には、車掌、助手、荷物看視人、荷主、雇用主等の車両の運行に関係する者をさし、同乗者とは乗務員ではないが当該車両に乗り合わせた者をいう。ただし、運賃を支払って乗車しているバス、タクシー等の客は「旅客」として贈与対象者とした。
 (2) 警察職員、消防吏員は、職務中はもちろん職務外でも贈与対象としないこととした。
    なお、消防吏員には、消防署に勤務する吏員以外の職員ならびに、消防団員(消防組織法第15条の2に規定する者)は含まない。
 (3) 親族とは、民法第725条によって、六親等内の血族、配偶者および三親等内の姻族である。
    したがって、親族の範囲はかなり広く近親者は容易に確認できるとしても、通常四親等以降にもなれば格別の調査をしないかぎり確認困難である。このような実情から、親族に該当するかどうかについて特別の調査をする必要はなく、交通事故事件捜査処理の過程などにおいて親族であるかどうかを見きわめることによって定めるものである。
    なお、これら報労金贈与の適用が除外されることとなった者および搬送行為に該当しないと確認された者(前記2参照)に対しては、当該非該当者の住所地を受持つ警察官をして、非該当となった理由を懇切に伝達して了解を得るとともに今後の協力を要請すること。
12 他の報償との関係(第12条関係)
  搬送行為に対する報労金とは別個に、警察署長等が感謝状を授与し、または授与方を上申するものとした。したがって、1級ないし2級に該当するような事案にあっては、この制度による報労金の贈与のほかに感謝状が授与される場合も生ずるであろう。
  また、例えば、谷底や河中に転落した車両等から生命の危険をもかえりみず負傷者を救出したが医療機関への搬送はしなかった者は、この制度にいう搬送者には該当しないが感謝状授与対象者となる。
  なお、鳥取県警察表彰取扱規程のほか、搬送行為によって負傷した場合は賞じゅつ金制度が適用となるなど、あくまでもこの搬送報労金制度は、他の報償制度等とは区別して運用するものである。
13 搬送事案処理状況の明確化(第13条関係)
 (1) 警察署および高速道路交通警察隊に「搬送者カード処理簿」を備えカードの受理から報労金の支出までの状況を明確にすることとした。
 (2) その他処理状況を明確にするため
   ア 搬送者カード綴を備えてカードを綴る。
   イ 搬送区分決定伺綴を備え、様式第2号の伺書を綴る。
   ウ 搬送報労金関係証ひょう綴を備え、支給調書および領収書を綴る。
14 カード等の作成取扱い要領
 (1) カードの作成(様式第1号関係)
    搬送者カードは、搬送者1名に1枚作成するものであるが、2名以上で搬送行為をしたときは、その各人が作成することができない場合も考えられるところから、カード裏面の備考欄において、作成者が他の搬送者を附記して通報することを認めているので、備考欄に連記のあるカードを受理したときは、その各人毎のカードを作成すること。
 (2) 報労区分決定伺(様式第2号関係)
    この様式は、本部交通部交通指導課、各警察署および高速道路交通警察隊に共通のものを備えることとし、伺いは、所定事項にしたがって決定に必要な事項を電話で伺い、交通部長の決定意見も後刻電話で通知する。
15 カードの配置
   搬送者カードは、全医療機関に配布することが理想ではあるが、負傷者の搬送がまれにしか予想されない機関(施設)にまで置くことは困難であるので、警察署、派出所、駐在所のほか平素搬送が予想される病院、医院等に配布しておき、その他は広報の徹底によってまかなうこと。
   なお、搬送が頻繁な医療機関に対しては、随時連絡をとりカードの補充に心がけること。
16 広報の徹底
   報労金の贈与を辞退する者はともかく、この制度を知らなかったため適用もれとなることのないようあらゆる媒体と機会を利用して広報の徹底につとめなければならない。
   とくに、搬送者の目が届きやすい、医療機関の窓口には別途配付する広報文の掲示を依頼して積極的な通報を図ること。

様式 省略
  

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