平成18年度会議録・活動報告

平成18年8月1日(火)~4日(金)

企画土木常任委員会 県外調査の概要報告

1 調査日時
  平成18年8月1日(火)~4日(金)
2 調査箇所
 ・標津漁港
 ・北方領土館
 ・知床自然センター
 ・清里町焼酎醸造事業所
 ・釧路土木現業所
 ・鳥取神社
 ・国会議員との意見交換会
 
3 調査委員
  生田秀正委員長 稲田寿久副委員長 前田宏委員 石黒豊委員
  石村祐輔委員 小玉正猛委員 松田一三委員 杉根修委員
4 随行者
  鳥取県議会事務局議事調査課  主幹 金涌文男、副主幹 山口 博
 
 今回の県外調査では、北海道における地域振興、観光振興等に関して、先進的な取り組みを行っている事例の調査を行うとともに、最終日には、当常任委員会の所管する事項について、県選出の国会議員との意見交換会を行った。


標津漁港


 標津漁港では、安全で安心できる食料供給基地を目指して、地域HACCPの取組等により取扱水産物の鮮度保持、国内マーケットにおける天然秋サケの浸透、衛生管理による産地価格の向上といった効果を上げているとのことである。また、標津町は体験漁業等を通じて食の安全に関心の高い消費者との交流を活発に行い、人口約6千人の標津町における平成17年度の交流人口は約1万2千人とのことである。
 本県でも、境港にHACCP認定のカニ加工場があるが、全県的にHACCPが導入されれば、消費者に安全・安心な魚介類を提供できるとともに、魚価の向上が期待できる。そのようになれば、漁業者の収入確保、ひいては漁業就労者の減少にも歯止めがかかるのではなかろうか。また、消費者との交流においても、ただ単に交流人口を増やすだけではなく、町民のボランティアガイドや民宿等の受け入れ側のもてなし等の質をどのように向上させていくのかといった問題点も認識できた。


北方領土館

 北方領土館については、現在、国後島からわずか24キロの位置にある標津町が国から管理を委託されており、昭和54年の開館以来の入場者数は82万人、開館から約30年も経った古い施設であるにも関わらず、昨年も1万2千人の入館者があったとのことであり、国民の北方領土に対する関心の高さを感じることができた。
 館内には、北方領土の歴史・産業・生活、昔の北方領土の写真、生息動植物、返還運動の歩み、ビザなし交流の様子などが展示されており、晴天の日であれば2階の展望室から国後島を見ることができるとのことであった。当日はあいにく曇天であったため国後島を見ることはできなかったが、返還運動の歩みの説明等を受け、北方領土返還要求運動都道府県民会議等を通じて、4島一括返還に向けた活動に取り組んでいく気持ちを強くした。
 

知床自然センター

 知床自然センターは、知床国立公園の玄関口に位置し、野生動植物の生態写真や大型スクリーンの映像等で知床の自然を紹介するとともに、知床を訪れる者の情報センターとして、「フレペの滝」遊歩道の情報を中心に周辺施設等の情報を提供している。
 我々常任委員会は、観光振興の観点から知床の現状、世界遺産登録に向けた取組、世界遺産登録後の問題点等について、知床自然センターの研究員から説明を聴取した。
 知床は、2005年7月に世界自然遺産登録を受けたが、2004年7月にIUCN(国際自然保護連合)から、漁業権問題の解決、砂防ダムの撤去問題の解決という課題を与えられており、課題を解決していない現在、限定付きの世界遺産登録であり、今後、観光と漁業との調整、環境と災害予防との調整が必要とのことである。
 また、世界遺産登録を受けたことによる観光客増による影響として、地域経済に混雑感・割高感、ホスピタリティの低下によるイメージダウン、リピーターの減少、地域住民に疲弊感、観光業にたずさわる者とそれ以外の者との乖離、自然環境にオーバーユースによる荒廃、ガイドに質の低下、にわかガイドの増加といったマイナスの影響が出ているとのことであった。
 本県で今後とも三徳山の世界遺産登録運動を進めていくならば、登録前の段階から地元や旅行業者等の関係者といろいろな面で調整する必要性を感じるとともに、自然遺産と文化遺産の違いはあるものの、世界遺産登録には相当高いハードルがあることを改めて痛感した。

清里町

 清里町焼酎醸造事業所は、昭和50年頃の一村一品運動を背景として、清里町特産のじゃがいもに付加価値を高めるとももに、特産品として観光に結び付けることを目的として建設されたものであるが、町職員を国税庁醸造試験場に派遣し製造技術を習得させるなど、相当のこだわりをもった施設であった。市町村が設置する観光施設や特産品は、ややもすると採算を度外視したものとなることが多いが、当該施設は焼酎の市場への供給量を制限し価値を高めることに成功し、2年前から黒字化しており、その経営センスに感心した。
 また、清里町は全国的に市町村合併が進展する中にあって、人口わずか5,000人弱の町であるにもかかわらず単独町制でいくこととしている。そのことは、自分たちの利用する道路の除草作業は自分たちで全て行うといった住民の取組を町長からお聞きし、単独町でいくならば住民でできることは住民が行うという基本的な考えが必要なことを再認識した。


釧路土木現業所



鳥取神社
 釧路土木現業所では、雌阿寒岳の火山災害監視システム及び釧路支庁管内における広域バス路線維持費補助制度について調査を行った。
 雌阿寒岳の火山災害監視システムは、3台の監視カメラ等により噴火状況を常時監視するシステムであるが、現在のところ、データ収集と市町村への情報提供がメインであり、住民に対する避難勧告をするシステムとはなっていないとのことであった。本県においては、採石場における土石流が頻発しているが、このような監視システムと住民への避難勧告をどのように連携させていくか、ハードの整備のみならずソフトの整備も併せて行うことが重要であることが分かった。
 また、北海道における広域バス路線維持費補助制度については、北海道独自の制度として、市町村が自ら主体的に自主運行等を行うバス路線に対して、運行経費に掛かる市町村の持ち出し分及び車輌購入費への補助等の支援を行っている。広大な面積に少ない人口の北海道では、バス路線の維持は大変困難であると思われるが、道が市町村の意向を充分にくみ取った結果、市町村から補助制度に対する不満の声はないとのことである。この問題は、現在、本県においても数多く議論されているところであるが、県の市町村に対する補助制度を継続する必要性を痛感するとともに、デマンドバスの運行やNPO法人への運行委託など、皆が知恵を出し合い、県民の交通確保を考えていかなければならないと感じた。
 鳥取神社では、釧路市における鳥取ゆかりのしゃんしゃん傘踊りや麒麟獅子舞の伝統芸能の継承が本県以上に行われている現状をお聞きし、北海道へ開拓移住した鳥取士族の末裔の方や釧路市民の故郷鳥取を想う心に胸が熱くなり、釧路市との更なる交流の促進など、県議会としてお手伝いできることがあれば尽力したい気持ちとなった。

県選出国会議員との意見交換会
 県選出の国会議員との意見交換会では、本常任委員会が所管する事項について、本県が直面する課題である高速道路網の整備促進、道路特定財源の確保、米子空港滑走路延長事業の促進、治山治水事業費の確保など、県選出の国会議員と意見交換を行い、その実現について協力を要請した。
 意見交換の中で、国会議員から霞ヶ関の官僚の意見を代弁するような発言もあったが、鳥取県選出の国会議員として、県の提案・要望事項を国に対して力強く届けていただくよう要請するとともに、米子空港の2,500メートル化については、従来、県議会と国会議員と充分な意思疎通が図れていなかった面もあったが、今後、歩調を合わせた要望活動を行っていくことを約束していただくなど、大変実りのある意見交換ができた。
 県外調査を通じて、各委員から積極的な発言、質問が繰り返され、時には視察先への提言をされるなど充実したものとなり、大変有意義であった。
 今回調査したこれらの施策、取組については、今後の委員会活動の参考としていきたい。
 

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