平成22年度議事録

平成22年7月26日~29日・所管事項に係る県外調査

1 調査日時・箇所・内容

7月27日(火)
○対馬高等学校(長崎県対馬市)
  国際理解教育の取り組みについて
7月28日(水)
○コクヨ株式会社(東京都港区)
  業務効率化と生産性の向上を実現する「ダイバーシティ」推進の取り組みについて
○富山中部高等学校(富山県富山市)
  高い進学実績に見る富山の高校教育について
○富山工業高等学校(富山県富山市)
  内定率100%を実現する就職支援の取り組みについて
7月29日(木)
○国際教養大学(秋田県秋田市)
  各界注目の大学教育・大学運営及び英語教育等における県内小中高等学校との連携について
  秋田県教育における公立大学としての位置付けについて

2 調査委員

稲田委員長、澤副委員長、山口委員、鉄永委員、伊藤(美)委員、興治委員、浜崎委員

3 随行者

鳥取県議会事務局議事調査課 前田(い)主幹、前田(康)副主幹

4 調査報告

 高校教育に関して、昨今、全国的に中高一貫教育が取り沙汰されているが、箱以上に大事なことはその中身。今回は、改めて高校教育のあり方を問い直すための調査を行った。
 富山中部高校、この高校は非常に高い進学実績を誇っているが、3年教育の中で、徹底して「文武文」を貫き、生徒だけでなく教員も汗を書いている。
・4・6・8システムの家庭学習(平日4時間、土曜日6時間、日曜日8時間)
・「家で予習、授業で復習」:入学直後の合宿で予習の仕方を仕込む
・挨拶、無遅刻無欠席、服装、“ベル着”重視
  “ベル着”:チャイムと同時に授業スタート(3分遅れで年50時間の損失)
・年5回の定期考査を教員が問題を自作(教員の資質・力量の向上)
  取りこぼしをさせない
  教員もつらいが、支えているのは教員のチームワークの良さ
・「受験は団体戦」、「勉強を教え合え」(人に教えることは自分の確認)
・先生も生徒も頑張っている

 大学教育に関して、少子化と供給過剰により大学が淘汰される時代に入り、特に地方の大学が大きく影響を受けている中で、ユニークな、しかし全うな教育を行っている大学もある。秋田県の国際教養大学(公立)がその代表例。入学1年目は全員を入寮させ、授業を全て英語で行い、1年間の海外留学を義務化するなどして取り組んでいる同大学の教育に脈々と流れるもの、それは、
・4年間で卒業できる率は5割。(アメリカの大学も同じ)
  日本は平均で9割。これでは日本の教育が落ちる。
・小中高と長く学んできたせっかくの英語が使いものにならないのが日本の教育。
・就職実績の高さはあくまで結果論。大事なことは、学生に勉強させること
・学生の“品質”を重視。
との思想。また、設置者である秋田県は、
・過疎の県においては、人づくりこそ最も重要。
  全国から人が来なければ大学の意味がない。
との認識。
 大学の叡智は、県内の学校や地域・社会にも還元されている。

 いずれにも共通するのは、中途半端ではなく、やるべきことを徹底していること。
 翻って鳥取県の教育を考える時、これら示唆に富んだ言葉は肝に銘じておきたい。

 この他、長崎県の対馬高校では、深刻な過疎化、多数の韓国人観光客の来訪、また、いくつかの問題を抱える状況の中で、地の利を活かした特徴的な教育に取り組み、離島留学制度も相俟って、全国各地から生徒を集めている。
 将来を担う若者たちには、真摯に国際理解を深めていただくことを願う。
 
 また、高校職業科でほぼ就職内定率100%を実現している富山県にあって、富山工業高校では、その置かれた地域の経済・雇用環境の良さもあるものの、企業と高校との間で工業教育振興会を組織し、企業人を招いての特別授業、インターンシップ、企業で人事経験を有する人材を就職支援アドバイザーに抜擢し効果的な就職支援を行うなど、企業との太いつながりを有していることも奏功の一因となっているようだ。

 さらに今回の調査では、行政改革の観点から、個々の力を上手く引き出し、時短や売上増など組織運営に顕著な成果を上げている企業の一例としてコクヨ株式会社の「ダイバーシティ」(業務を効率化し、働き方の多様性を認める取り組み)について調査を行った。同社の取り組みの特徴は、
・アウトプットを高い生産性に置く
  (会社の生き残りには、長時間労働ではなく生産性(アイデア、創造性)が重要
  ワークライフバランスはあくまで手段)
・仕事を可視化する
  (1日の優先度が高い3業務を選定し、組織の縦・横で可視化)
  仕事をカテゴリー化し、超過している業務にメスを入れる
・対象組織を絞り込み、成功したら横展開へと裾野を広げる
点にある。
 人事部門もドロドロになりながら取り組み、また対象となった営業部門も当初はやらされ感があったものの、人事部門が現場との間で密に話し合いを行うようになって成果が出始め、最後は営業部門から「仕事が楽になった」との温かい声も。
 行政における業務効率化についても、本質は民間企業と変わらないこと、最大の足かせは人の気持ちにあること(「自分のところは特別だからできない」と思ったら実現不可能)、仕事の「属人化」をなくすべき、との指摘も。

 本県においても、厳しい財政状況のもと、多様な行政ニーズに的確に対応するため、より一層効率的・効果的な行政運営が求められている。
 鳥取県が進める業務効率化が、如何に個々のやる気を引き出しながら効果を発現できるか、県議会としてもその成果に注目してまいりたい。

 

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