平成24年度議事録

平成24年1月23日~25日・所管事項に係る県外調査

1 調査日時・箇所・内容

 1月23日(水)

  ○九州旅客鉄道株式会社鉄道事業本部(福岡県福岡市)

   観光列車による地域振興の取組について

  ○熊本県企画振興部企画課(熊本県熊本市)

   県・市・大学・経済界の連携による地域課題への取組について

 1月24日(木)

  ○特急ゆふいんの森(久留米駅~大分駅間)

   JR九州ジョイフルトレインについて

  ○大分県企画振興部観光・地域局観光・地域振興課(大分県大分市)

   大分県ツーリズム戦略について

  ○大分県警察本部生活安全部地域課(大分県大分市)

   大分県警察本部生活安全部地域課航空隊について

  ○社団法人別府市観光協会(大分県別府市)

   地域資源の活用による魅力づくりついて

 1月25日(金)

  ○山陰近畿自動車道サミットin東京(東京都千代田区)

   鳥取豊岡宮津自動車道の整備促進の取組について

2 調査委員

 前田委員長、福田副委員長、国岡委員、稲田委員、興治委員
 藤井委員、
藤縄委員、銀杏委員

3 随行者

 調査課 課長補佐 上月光則

     係長 五百川和久

4 調査報告

 今回は、当常任委員会所管の行政課題に関して、九州旅客鉄道株式会社鉄道事業本部 で観光列車による地域振興の取組について、熊本県企画振興部企画課で県・市・大学・経済界の連携による地域課題への取組について、JR久留米駅~大分駅間でJR九州ジョイフルトレインについて、大分県企画振興部観光・地域局観光・地域振興課で大分県ツーリズム戦略について、大分県警察本部生活安全部地域課で地域課航空隊について、社団法人別府市観光協会で地域資源の活用による魅力づくりついて、また山陰近畿自動車道サミットin東京に出席し、鳥取豊岡宮津自動車道の整備促進の取組について調査を行うとともに、活発な意見交換を行った。

 まず、観光列車による地域振興の取組について九州旅客鉄道株式会社鉄道事業本部を調査した。九州旅客鉄道株式会社は、昭和62年の国鉄民営化以降、観光列車「ゆふいんの森」での成功体験を元に、「いさぶろう・しんぺい」などの観光列車を投入され、一昨年の3月の九州新幹線の全線開業に合わせて、新幹線区間のクイックな移動と、在来線区間のスローな移動を上手く組み合わせた提案により、観光列車による地域振興に取組まれていた。

 JR九州は、国鉄の分割民営化にあたり、お客様に対する態度が悪い、車両が古くダイヤが悪いというような散々なところからスタートされたとのことだったが、「頑張らないと生き残れない」、「JR九州という会社を潰したくない」、「九州にお住まいの方や九州に来られる観光客の皆様に迷惑をかけられない」などの危機感から、社員一丸となって業務に取組まれ、水戸岡鋭治氏を顧問デザイナーに迎えられるなど、列車のサービスやデザインにこだわり続け、移動手段のライバルである航空機、自動車、高速バスの中から鉄道を選んでいただくためには、どうするべきかを常に追及された。

 また、単に列車を走らせるだけはなく、地域の持つアイデンティティや歴史などを生かしてストーリーを作成し、それを弁当づくり等に活用しながら、観光客の期待に応えられるよう、地元と一体となったおもてなしやサービスを提供されていることも、JR九州の観光列車が高い乗車率を維持している一つの要因であると感じた。

 単に、ユニークな名前やデザイン性のある列車を走らせるだけでなく、観光客の期待に応えたいと社員が一丸となってアイデアを出し合い、沿線住民と一丸となり地域振興を行うことによる相乗効果を生み出す取組は、大変参考となった。

 次に、県・市・大学・経済界の連携による地域課題への取組について、熊本県企画振興部企画課を調査した。県では平成22年8月から、県・市・熊本大学・熊本経済同友会・熊本商工会議所により、地域課題や将来ビジョンについて協議し、連携して取組みを推進する「くまもと都市戦略会議」をスタートさせて。

 会議は、熊本県知事、熊本市長、熊本大学長、熊本経済同友会代表幹事、熊本商工会議所会頭の5名で構成され、審議されたテーマに係る調査・検討及び取組みを統括するために幹事会が別に設置されていた。また、会議自体は、幸せ実感くまもと4カ年戦略の中の一つである「熊本都市圏の拠点性向上」という項目に明記され、熊本市を中心とした地域の発展と拠点性の向上が大きな県政の発展につながるという認識の下、将来の州都をめざすという目標を掲げ、産学官連携等により県・市の政策連携を強化し、相乗効果のある施策を展開していくことを目的とされていた。
 
これまでの5回の会議が開催され、我が国を代表するコンベンション都市づくりでは、上海合同事務所の設置や熊本市コンベンションシティ基本構想が策定やくまもとMICE誘致推進機構が設立され、国際化を目指した留学生を中心とした学園都市づくりでは、留学生への熊本市営住宅の提供や留学生向け就職説明会や企業インターンシップが実施され、熊本駅から中心市街地にかけた賑わいの創出では、熊本駅から北岡自然公園までの散策ルート整備や新町・古町地区での町屋認定制度の創設が行われるなどの成果があったとのことだった。されに、昨年7月からは、首都圏とアジアに向けたくまもとの発信、新産業創造の2つのテーマの検討を開始されていた。

 県・市・大学・経済界のトップが、同じ未来を見据え、対等な議論を行い、地域の問題や課題の解決に積極的に取組んでおられる事例は、地域課題を解決していく上で大変参考となるものであった。

 次に、JR久留米駅~大分駅間でJR九州の観光列車である特急ゆふいんの森に乗車し、観光列車について調査を行った。

 車両は4両編成で構成され、全車がハイデッカー構造で、座席は全て普通車指定席で統一されていた。2003年に車内設備がリニューアルされたとのことだったが、座席は当時のものが利用されており、レトロでありながらクッションはしっかりしており、座り心地は良好だった。座席からの見晴らしがとても良く、2階建て車両のような感覚があり、デッキと客室との仕切りには暖簾が掛けられるなど、通常の列車とは一味違う演出がされていた。

 車内のビュッフェでは、弁当や軽食、飲料、オリジナルグッズの購入が可能であり、サロンでは、各地域の観光ガイドなどを集めた書棚や記念撮影用のタペストリーや子ども用の制服が準備されていた。

 久留米駅発車後のアナウンスでは、予約で満席のことだったが、乗客の中心は女性で、韓国人観光客も多く乗車されていた。車内には、女性専用トイレも設置されており、女性のリピーターが多い理由が垣間見えた。

 観光地や名所を通過する際には、車内アナウンスが流れ、速度が減速されるなどの工夫がされていた。また、サロンでは「ゆふ森レディ」によるガイドマップを用いた由布院の観光案内がされ、お勧めスポットの紹介やクイズが行われるなど、乗客を飽きさせない工夫がされていた。

 特急ゆふいんの森の乗車により、列車を単なる移動手段とするのではなく、観光の一部に活用し、随所におもてなしを感じることができる好事例に接することができた。

 次に、大分県ツーリズム戦略について、大分県企画振興部観光・地域局観光・地域振興課を調査した。

 大分県では、別府・由布院という全国に名の知れた観光地を有し、ニューツーリズムにも取組まれていたが、行政や民間の取組のベクトルが一つになっていなかったことから、昨年8月に今後3年間のツーリズムの取組みを規定した「大分県ツーリズム戦略」を策定された。

 県では、地域振興と観光振興を一体的に進め、行政や観光協会、旅館ホテル組合、観光事業者、NPO法人等が協働で活力ある大分県づくりを目指しておられ、ツーリズムを取り巻くニーズの変化、期待、県の強みと弱み等を把握されながら環境の変化に柔軟に対応されていた。

 また、地域別のニーズを的確に捉えた国内誘客の施策実施や、航空路線が整備されている韓国、規制緩和が進む中国上海地区・香港、台湾など主要都市をターゲットとした地域別の海外誘客の取組や、教育旅行やMICE誘致に向けた団体誘客の取組など、本県の観光施策を行う上で大変参考になるものだった。

 次に、大分県警察本部生活安全部地域課航空隊について、大分県警察本部生活安全部地域課を調査した

 大分県警察本部生活安全部地域課航空隊は、昭和63年3月警務部警務課航空隊として発足し、7名の航空従事者(操縦士3名、整備士3名)で構成されていた。発足時には、小型単発ヘリコプターを操縦士1名、整備士2名で運用開始されたが、平成21年4月にアグスタ式ヘリを導入されていた。アグスタ式ヘリ導入により、エンジンが2基搭載となったことによる馬力の増加で吊り上げ救助等の性能が増強され、飛行スピードが増加し、事故・事案発生時に早期に到着可能が可能となったほか、エンジン一基が故障・停止しても飛行可能となったことで、安全性が向上したとのことだった。

 県の防災ヘリとの連携では、防災ヘリの非稼動時には、県警ヘリが確実に稼動できる体制とされており、警察航空隊と防災ヘリの点検整備が極力重ならないよう情報共有を図り、何れかの航空機が必ず動けるよう体制が確保されていた。

 大分県警察本部の取組は、今後、同様のアグスタ式ヘリによる更新が予定されている本県警察本部航空隊ヘリコプターの運行等で大変参考になるものだった。

 次に、地域資源の活用による魅力づくりついて、社団法人別府市観光協会を調査した。

 別府市観光協会では、市内が戦災にあっておらず、明治大正昭和の建物等の近代遺産が残っていることから、それを活かした15コースからなる別府8湯ウォークが開催されていた。

 まち歩きでは、長崎さるくが有名で、長崎市がさるく課を設置したり、コンベンション協会が受入れを行うなど、行政主導でまち歩きの取組が行われているが、別府市では、その多くが行政主導ではなく、地域のボランティアグループが中心となり、自主的に運営されており、別府8湯ウォークという総称はありながら、開催回数やガイドの内容も異なるなど、それぞれが特徴を活かしたまち歩きが展開されていた。

 また、温泉を活用した取組として、別府八湯温泉道がという温泉めぐりの取組がされていた。内容は、市内にある88箇所の温泉を回るスタンプラリーだったが、考案から12年間も継続して開催され、市からの補助金約50万円で、広告宣伝を行わず、予算もほとんどかけていない取組にも関わらず、認定者には、東京都や大阪府の在住者も見られるような好事例も見受けられた。

 それ以外にも、会員制旅行会社と共同で企画したパッケージツアーにより、温泉ファンにターゲットを絞りツアーを告知することで、毎回定員以上の参加者を集めている企画や、大分県北部地域の広域観光への取組により、別府にはない特徴を持った地域との連携によって1泊2日で旅行する観光客の宿泊数を2泊3日に増やしていただく取組など、観光客の幅広いニーズを捉えて、誘致につなげようという取組は、国内の地域間競争が激しくなっている現在において、本県への観光誘客を行う上で大変参考となった。

 最後に、鳥取豊岡宮津自動車道の整備促進の取組について山陰近畿自動車道サミットin東京に出席し、鳥取県、兵庫県、京都府の3府県に跨り、今後整備が予定されている自動車道の早期整備の必要性を国に訴えるサミットについて、内容・状況を調査した。

 出席者からは、災害に強く、強靱な国土を造るためには山陰近畿自動車道を整備することが必要。今後は関係する1府2県の連携を強化し、形にしていかなければならない。山陰近畿自動車道を造ることは京都、鳥取、兵庫の連帯感を作ることになる。山陰近畿自動車道は、地域のためだけでなく、国家のためにあってはならないミッシングリンク。整備が進む3本の南北軸を山陰近畿自動車で東西に繋げることで、はじめて山陰と北近畿が一体となり、大変なインパクトを生み出すことができる。国土強靱化できるかは、この道にかかっている。などの意見が述べられ、鳥取豊岡宮津自動車道の整備について、各自治体が連携して取組んでいく姿勢を確認することができた。

 以上、概略のみを記したが、県外調査を通じて各委員から様々な発言、提言、提案がなされるなど充実したものとなり、大変有意義であった。今回調査したこれらの施策、取組については、今後の委員会活動の参考としていきたい。

 

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