1 調査箇所
平成25年8月6日(火)
・きさらづ小児発達支援センターのぞみ牧場学園(千葉市)
・千葉県庁(千葉市)
平成25年8月7日(水)
・札幌市役所(札幌市)
・洞爺湖町役場、洞爺湖ビジターセンター・火山博物館(洞爺湖町)
平成25年8月8日(木)
・ばんけいリサイクルセンター定山渓環生舎(札幌市)
・北海道庁(札幌市)
2 調査委員
伊藤(保)委員長、福田副委員長、小谷委員、野田委員、横山委員、濵辺委員、坂野委員(7名)
3 随行者
議会事務局調査課 梅林係長、西村主事
4 概要
(1)きさらづ小児発達支援センターのぞみ牧場学園
調査事項
○就学前児童の動物介在療法等について
(2)千葉県庁
調査事項
○「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」制定後の成果・課題等について
(3)札幌市役所
調査事項
○事業系生ごみリサイクルの取り組みについて
○学校給食フードリサイクルについて
(4)洞爺湖町役場、洞爺湖ビジターセンター・火山博物館
調査事項
○洞爺湖・有珠山ジオパークの保護保全・世界ジオパーク再認定の取り組みについて
(5)ばんけいリサイクルセンター定山渓環生舎
調査事項
○生ごみ等の発酵処理堆肥化について
(6)北海道庁
調査事項
○循環型社会形成の取り組みについて
○北海道生物の多様性の保全等に関する条例について
5 調査結果
今回、障がい者施策および環境保全に係る先進事例を調査すべく、千葉県および北海道に赴いた。
千葉県木更津市で社会福祉法人のゆり会が運営する「のぞみ牧場学園」では、自然豊かな環境の中で、発達障がいを持つ就学前の子どもに対し、専門の療育士による言語療法、音楽療法、作業療法、心理指導、小動物とのふれあい活動や乗馬セラピーなどの動物介在療法を行っている。
施設は39人が在園。全国から転入してきた児童もいるとのこと。
学園では、多職種専門家を中心とした「総合的なセラピー」を目標に指導運営を行っているが、中でも特徴的なものが「アニマルセラピー」である。どのような障がいであっても、また重度性であっても、療育指導におけるツールとしては非常に有効で、どのような教材より動物という生命から学ぶことは多いと、当園ではポニーやヤギ、ヒツジ、ミニブタなどが
アニマルセラピー用に訓練されている。それらと児童たちは日常的に触れ合い、対人関係の育成や情緒的な安定を目的とした指導に結び付けられている。
また、「早期に発見して早期に専門的な療育を始めることが大切」と、一人の児童に対してさまざまなアプローチが行われ、一生歩けないと医師に言われながら走れるまでになった児童もいるという。また、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)の児童も早期療育をすれば高い能力を発揮できうると、高校で成績一番の卒園児童もいるとのことである。
一方、運営面に関しては、常に経済的困窮を余儀なくされており、自立支援法に基づく給付のほか、動物サポーター、日本財団、企業等から寄附を受けており、草刈りなどは保護者の協力によって行われているとのことであった。
こうした関係者による努力と先駆的な療法により、児童の生きる力は着実に伸ばされ、年2回の発達検査では必ず成果が出ているとのことである。本県が発達障がい児支援を進めていく上で、大変参考となる取り組みであった。
千葉県庁においては、平成19年に制定された「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」について調査した。
千葉県においては、障がい者に対する誤解や偏見の解消、ハード・ソフトのバリアを解消し暮らしやすい社会づくりを進めるため、全国に先駆けて本条例を制定。県民共通の目標として無くすべき差別を具体的に定めるとともに、差別の解消に向け「相談解決の仕組み」「誰もが暮らしやすい社会づくりを議論する仕組み」「障がい者に優しい取組みを応援する仕組み」の3つを定めている。
相談解決に当たっては、県下に約650人の地域相談員及び16人の広域専門指導員が配置され、事情確認や助言、調整などの任に当たっている。条例施行後、平成25年3月までに、
1,400件余の相談件数があり、平成24年度は継続中の事案を含め225件のうち205件を終結した。課題への対応例として、視覚障害者と地元銀行で話し合いの場を設け、振込みの窓口利用の手数料をATM利用の場合と同額に変更したケースなどがあったそうである。
一方、条例の認知度について県民アンケートを行ったところ、知っているのは2割程度と、まだまだ周知浸透・定着に向けた取り組みが必要とのことであった。
国においても、平成25年6月に、公共機関や民間企業に対し、障がいを理由とした不当な差別的取り扱いを禁じ、施設のバリアフリー化を進めるなどの「障害者差別解消法」が成立し、制定から3年後に施行される。鳥取県においても全国初となる「手話言語条例」の制定や、平成26年度の「全国障がい者芸術・文化祭」開催など、障がい者施策は大きなテーマとなっている。当該条例の成果や課題等について伺った話を今後の施策検討に生かしたい。
札幌市役所においては、「生ごみリサイクル」をテーマに廃棄物対策、教育の両面から調査を行った。
札幌市では、事業系生ごみ年間約28,000tが、家畜飼料及び堆肥にリサイクルされ、(一社)札幌市環境事業公社による生ごみ分別収集に約700の排出事業所が参画している。
また、ホテル・旅館等事業者から分別して排出される生ごみと、リサイクル・パートナーシップ制度(町内会などで自主的に集められた生ごみを市が回収し堆肥化)により回収した一般家庭の生ごみを地域内堆肥化施設で堆肥化し、地元農家のほか、イベントや家庭菜園、公共歩道枡等で利活用されている。
平成18年から家庭からの廃食油の回収・BDF化を実施。定山渓地域ではホテル・旅館等から品質の高い廃食油が大量かつ安定的に供給されており、平成19年にはごみ収集車7台、SLバス2台にBDFを導入し、地域内循環が実践されてきたとのことであった。
さらに札幌市定山渓地域バイオマスタウン構想を平成21年に策定し、定山渓地域内にバイオマス資源化施設を整備するとともに生ごみ堆肥の利活用やそれによる農産物の生産・利活用を推進することにより、「バイオマス地域内循環」を目指す取り組みを進めてきた。これにより、健康保養温泉地としての魅力向上による地域振興とともに廃棄物の減量・資源化を更に推進しているという。
また、札幌市では、学校給食の調理くずや残食などの生ごみを堆肥化し、その堆肥を利用した作物を給食の食材にする「学校給食フードリサイクル」の取り組みが進められている。 教科及び総合的な学習の時間等や給食時間の指導と関連させ、学校教育における食育・環境教育の充実を図るため、教育委員会や市環境局・農政部、市学校給食会、JA、環境事業公社等とで連絡協議会を設け取り組みを推進している。
フードリサイクル堆肥を使用して生産されたレタス、たまねぎ、とうもろこし、かぼちゃなどは、市内の小中学校・特別支援学校へ提供されている。平成24年度はレタス5.2t、たまねぎ34.1t、とうもろこし2.4万本、かぼちゃ163kgが提供されたとのことであった。加えて、市内約半数の学校が、教科及び総合的な学習等にリサイクル堆肥を活用している。事業は8年目となり定着してきたところで、児童がさらにリサイクル意識を深めるためには、堆肥を活用した栽培活動及び調理実習などの体験活動がより効果的との話であった。
一方、天候等の影響により予定していた期間・量での提供ができなかった作物があるなど課題もあり、教育委員会としても今後も給食会・JA等と連携し、作物の生育状況や生産量等について学校に情報提供しながら、できる限り多くの学校でリサイクル作物を使用いただけるよう、安定供給・種類拡大等について検討していくとのことであった。
洞爺湖町役場においては、洞爺湖・有珠山ジオパークの保護保全及び世界ジオパーク再認定の取り組みについて話を伺った。
洞爺湖・有珠山ジオパークは、平成21年に国内第1号の「世界ジオパーク」として認定され、美しい自然を守り活用されつつ、世界に向け様々な発信を行ってきた。そして平成25年7月には、4年に1度となる再認定審査が行われた。
山陰海岸ジオパークも、平成22年に世界ジオパークとして認定され、平成26年度には再審査が行われる予定である。そこで、洞爺湖・有珠山ジオパークの保全や活用の状況並びに再審査に関する取り組みなどを伺い、山陰海岸ジオパークの再認定に向けて参考するべく調査を行ったものである。
洞爺湖・有珠山ジオパークは、平成21年に世界認定されたものの、今後の改善事項として以下が挙げられた。
1)英訳が不十分であり、素材の翻訳化が必要
2)解説版の文章が詳細すぎ、一般の人に分かりづらい
3)コンセプトをエコミュージアムからジオパークに変更し、GGNの理念である地質資産の保護と活用に変える必要がある。
4)自然崩壊しやすいジオサイトの保護が必要
5)看板や各種施設においてジオパークの魅力発信が不十分
6)ジオパーク内の未活用素材(砂防ダムシステム等)の活用や火山と地域農業の関係等のアピールが不足している。
7)ツアーガイドの組織化、継続的な研修が必要
そこで、これらの指摘事項に対処していくため、以下のような対応を進めたとのこと。
1)ガイドブックについて、英中韓版を作成。
2)看板を新たに45箇所設置。GGNマーク追加や文章の修正を73箇所で行った。
3)「火山の恵み」「大地の恵み」「先人の歴史と海の恵み」の3つにエリア分け。
5)JR駅への総合案内板設置や道の駅でのPR、フェイスブック等で情報発信
6)散策路13ルートを追加。子ども向けの防災教育の推進や地元食材を使った料理 教室等を開催。
7)火山マイスター(防災教育の普及や学習会の講師・サポート等を行う人)やジオパークパートナー(ジオパーク内で分野を問わず継続的に解説、案内等の活動を行う人)の登録推進。
そして、今年7月25~26日に審査員2名(ポルトガル・ギリシャ)による再審査現地調査が行われ、指摘事項に対する取り組みの進捗状況やガイド活動の充実等について説明し、「学術面で非常に大きな支援を受けており肯定的に捉えている」「自治体のジオパークへの積極的関与は他のジオパークも倣うべきであり、当ジオパークは既に成功の域に達している」等肯定的な評価を貰ったという。
そのほか、「山陰海岸ジオパークでは複数県がまたがるが、ガイド活動の充実や誘客にあたりどうしたらうまく連携できると考えるか」との問いに対し、「「食」ならそれぞれ特色のある産物があるので、うまく組み合わせればバラエティに富む食の提供ができるのではないか」などのアドバイスもいただいた。
後日談として、本調査の一月後の9月、洞爺湖・有珠山ジオパークは世界ジオパークにみごと再認定された。この度の調査結果を山陰海岸ジオパークの確実な再認定に繋げたい。
道内15事業所で廃棄物処理等を行っている「ばんけいリサイクルセンター」では、農林水産業や日常生活から排出される生ごみ等を、小さなコストと小さな環境負荷で農業の有機生産資材として再生させることを通じ「資源循環型社会の構築に寄与すること」を基本理念に、道内3箇所で肥料再調製を行っている。
この度調査した「ばんけいリサイクルセンター定山渓環生舎」は、地域の食品残渣を発酵分解させ堆肥化する施設で、農林水産省の「地域バイオマス利活用事業」を活用し、平成23年2月に竣工した。
定山渓環生舎では平成24年度で7,106tを受入処理。うち4,500tは生ごみ、2,500tは草木、剪定枝等。「昔農家がやっていた堆肥作りを大きな規模で実践。それほど特殊なものではない。できあがったものは確実に農業者に使ってもらうことを重視している」とのことであった。堆肥の主な販売先は札幌市内や小樽の果菜類を作る、有機農業を展開している農家。九州や青森にも販売しているとのこと。また、食育等の中で子どもも社会科見学に来るし、先述のフードリサイクル等、札幌市内の取り組みにおいて役割を果たしている。
一方、堆肥の使用は春秋に集中するため保管に苦慮するなど課題や苦労も少なくないという。利益の上がる仕事ではないが、社会的責任を全うすべく、今後も取り組んでいきたいとのことであった。
北海道庁においては、「循環型社会形成の取り組み」並びに「北海道生物の多様性の保全等に関する条例」について調査。
道では北海道循環推進条例に基づく循環型社会形成推進基本計画を平成22年に策定。同計画は道が目指す循環型社会の具体的な指針、新北海道総合計画の環境分野における計画、道環境基本計画の個別計画としての3つの性格を持っている。
施策の基本的な方針と指標としては以下のとおり。
・3Rの推進…ISO14001取得数700事業所以上、組織的なグリーン購入 等
・廃棄物の適正処理の推進…一廃197万t以下、産廃3,700万t以下
リサイクル一廃30%、産廃53%以上
最終処分量一廃40万t以下、産廃58万t以下 等
・バイオマスの利活用の推進…廃棄物系90%以上、未利用60%以上 等
・リサイクル関連産業を中心とした循環型社会ビジネスの振興…リサイクル認定品数160以上 等
平成24年9月にH23進捗状況の点検・評価を公表し、関連指標の項目ごとの達成状況(A~E)について記載し道議会に報告しているとのこと。
「北海道生物の多様性の保全等に関する条例」は、多様な自然と多種多様な野生動植物を将来にわたって守っていこうと、平成25年4月から施行された。
例えば「指定餌付け行為の禁止」。野生鳥獣への過度の餌付けによる鳥インフルエンザ発生の防止等を念頭に、地域と対象を定めて指定餌付け行為を禁止する規定を設けている。違反すると中止命令を出され、これに従わない場合は氏名を公表される。
また、指定外来種を放すことの禁止も謳っている。他県では希少種を保護するという背景を持って禁止しているが、北海道は生物多様性、生物全体の保全を目的。国の外来生物法は国外から持ち込まれた生物を対象としているが、本州など国内の他地域からの生物も対象として指定するとのこと。具体的な指定については、これから基準を設けて対象の検討に入る段階とのことであった。命令に違反したときは30万円以下の罰金が科せられる。
その他、エゾシカによる食害も大きな問題になっているとのことであり「捕獲したエゾシカをジビエとして活用する取り組みは」との問いに対し、「社団法人エゾシカ協会でエゾシカ肉を利用する加工食品への認証制度を設けており、レストラン等で提供されている」とのことであった。
以上、概要のみを記したが、この他にも、各訪問先で意見交換が活発に行われ、障がい者施策及び循環型社会形成施策等に関する各委員の認識が高まった。今回の調査結果を十分に生かし、本県の福祉、生活環境施策の向上に繋げたい。