環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加への慎重な対応を求める意見書
我が国の農林水産業を取り巻く情勢は、担い手の減少、高齢化の進行、耕作放棄地の増加、水産資源の減少や価格の低迷など非常に厳しい状況にある。
こうした中、政府は11月9日、環太平洋経済連携協定(TPP)について、「関係国との協議を開始する」と明記した「包括的経済連携に関する基本方針」を閣議決定されたところである。
しかし、この環太平洋経済連携協定(TPP)は、予め特定分野の自由化を除外しての交渉参加は認められない可能性が高く、参加後も10年後にはほぼ全ての分野での関税撤廃が原則とされており、これまでの経済連携協定(EPA)とは比較にならないほど厳しい内容となるものである。
仮に環太平洋経済連携協定(TPP)に参加すれば、我が国農業への影響は計り知れず、国内農業が壊滅的な打撃を受ける強い懸念がある。また、食料自給率を上げるという政府の方針に逆行しており、食料の安全保障を脅かす重大な問題であり、国家の根幹に関わるものである。
また、農業は、地域経済との結びつきも強く、農業生産の縮小は地域経済を一層冷え込ませるなど、地方のさらなる疲弊につながるものである。
さらに、農業・農村は「食」を支えているだけでなく、国土の保全や水源の涵養といった多面的機能も持っており、こうした機能が損なわれれば、一般の市民生活にも多大な影響を及ぼすこととなる。
今回の政府の対応は、農業関係者を始め、食品産業、消費者等の幅広い国民的議論もなく、唐突との印象は否めない。
よって、政府の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加検討に当たっては、下記のとおり十分な国民的議論を経て慎重に検討されるよう強く要望する。
記
1 関税の撤廃が原則となっている環太平洋経済連携協定(TPP)への参加については、十分な対策が講じられなければ国内農林水産業への壊滅的な影響を与えるのみならず、食料安全保障の観点からも国民生活を危機的状況に追い込むことが想定されることから、拙速な参加表明を行わないこと。
2 環太平洋経済連携協定(TPP)への参加については、全産業の分野にわたって、そのメリット、デメリットについて、国会等で慎重に審議するとともに、国民に対し詳細な情報提供を行うこと。
3 今後の国際貿易交渉に当たっては、WTO交渉で提案した「多様な農業の共存」を基本理念として、食の安全・安定供給、食料自給率の向上、国内の農林水産業の将来にわたる確立と振興などを損なわないように対応すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成22年12月17日
鳥取県議会
内閣総理大臣
外務大臣
農林水産大臣
経済産業大臣 様
国家戦略担当大臣
衆議院議長
参議院議長