鳥取県産業振興条例
本県の産業は、近年の社会経済活動における国際化の進展や国内外における競争の激化と流通構造の変化の中で、事業者の経営環境が圧迫され産業の空洞化が危惧されるなど、大変厳しい環境にさらされている。
このような中、本県の経済の発展及び雇用の確保を期するためには、関西経済圏との融合及び環日本海時代の幕開けをにらみつつ、本県の伝統と文化の中で育った優れた地域の人材、豊かな自然にはぐくまれた資源、蓄積された高い技術力等を生かしながら、事業者がその能力を最大限に発揮して主体的かつ創造的な事業活動を行うことにより、強い競争力を有する安定した事業者へと成長発展していくことが不可欠である。
そのためには、県、市町村、支援団体、大学等、金融機関及び県民は、地域経済の持続的発展においてますます増大する事業者の役割を認識し、事業者が事業活動を円滑に行えるよう緊密に連携協力しながら、これを支援することが重要である。
ここに、私達は、一丸となって、すべての事業者が伸び伸びと事業活動を行うことができる環境整備を推進し、本県の産業を振興することにより、経済活力に満ちあふれ、県民が心豊かで安心して生活できる鳥取県の構築を目指し、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、事業者が本県経済の発展において果たす役割の重要性にかんがみ、産業の振興に関し、基本理念を定め、県、事業者及び支援団体の責務、大学等の役割等を明らかにするとともに、産業の振興に関する施策の基本となる事項等を定めることにより、足腰の強い産業を育成し、もって県内における経済の発展並びに県民の雇用の確保及び生活の向上に資することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「事業者」とは、県内に本店、支店、営業所、事務所その他名称の如何を問わず、事業を行うために必要な施設(以下「県内事務所等」という。)を有して事業活動を行なう者をいう。
2 この条例において「支援団体」とは、県内に主たる事務所を有する商工会議所、商工会連合会、農業協同組合その他特別の法律により設立された組合その他の事業者の事業活動を支援する団体をいう。
3 この条例において「大学等」とは、大学、高等専門学校その他の研究機関をいう。
4 この条例において「物品等」とは、動産(現金及び有価証券を除く。)及び著作権法(昭和45年法律第48号)第2条第1項第10号の2に規定するプログラムをいう。
(基本理念)
第3条 産業の振興は、次に掲げるところを基本として行われなければならない。
(1) 事業者の自主的な事業活動が助長されること。
(2) 県内における経済の発展並びに県民の雇用の確保及び生活の向上に資すること。
(3) 県、市町村、支援団体、大学等、金融機関及び県民の協力により推進されること。
(4) 県内の優れた人材、豊かな自然にはぐくまれた資源、蓄積された高い技術力等地域の特性を生かして推進されること。
(県の責務)
第4条 県は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、第8条に規定する基本方針を踏まえ、産業の振興に関する施策を総合的に策定し、及び実施するものとする。
2 県は、産業の振興に関する施策を実施する市町村に対し、必要な情報の提供、技術的な助言その他の支援を講ずるよう努めるものとする。
(事業者等の責務)
第5条 事業者は、基本理念にのっとり、事業環境の変化に対応し、自主的に経営の向上及び改善に努めるものとする。
2 支援団体は、基本理念にのっとり、事業者の経営の向上及び改善を積極的に支援するよう努めるものとする。
3 事業者及び支援団体は、県が行う産業の振興に関する施策に積極的に協力するよう努めるものとする。
(大学等の役割)
第6条 大学等は、基本理念にのっとり、地域の人材の育成並びに研究の成果の普及及び活用が県内の産業の振興に資するものであることを理解し、県が行う産業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(県民の協力)
第7条 県民は、産業の振興が自らの生活の安定及び向上に寄与するものであることを理解し、県が行う産業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(基本方針)
第8条 県は、次に掲げる基本方針に基づき、産業の振興に関する施策を講ずるものとする。
(1) 本県産業の事業活動を担う人材の育成及び確保を図ること。
(2) 従業員が子育て等をしやすい職場環境の整備に取り組む事業者の育成を図ること。
(3) 事業者の経営の革新を促進するための技術研究の推進及び事業の効率化を図ること。
(4) 事業者に対する資金の供給の円滑化を図ること。
(5) 事業者の受注機会の増大を図ること。
(6) 地産地消(県内において生産された農林水産物、加工物等を県内で消費することをいう。)の促進を図ること。
(7) 事業者又は大学等が保有する技術又は研究成果及び県内の人材の活用の促進を図ること。
(8) 事業者の新たな市場の開拓に向けた取組の促進を図ること。
(9) 事業者の商品等におけるブランド(他の商品等との差別化を行うことにより、市場における競争力が高められる付加価値をいう。)の創出を図ること。
(10) 事業者の創業及び新たな事業の創出を図ること。
(11) 産学金官(事業者、大学等、金融機関並びに国、市町村及び県をいう。)の有機的な連携を強化し、技術研究の強化、技術の移転及び研究成果の事業化の促進を図ること。
(12) 企業の立地用地の確保等のための環境整備を図りつつ、企業立地を促進するとともに、事業者の有機的な連携を強化し、産業の集積を図ること。
2 県は、前項の基本方針に基づき事業者に対する施策を実施する場合には、当該事業者が県内に本店又は主たる事務所を有するもの(以下「県内事業者」という。)であるかどうか及び当該事業者(県内事業者を除く。)が県内事務所等を有して事業活動を行なうことにより、当該県内事務所等の存する地域の経済の振興又は雇用の確保に当たって貢献をしているかどうかを考慮するものとする。
(県の予算執行上の配慮)
第9条 知事その他の執行機関(以下「知事等」という。)は、工事及び委託業務の設計及び発注並びに物品等の調達に当たっては、自らの予算執行が県民生活の安定及び向上に資するのみならず、県内の経済及び産業の育成に与える影響が大きいことにかんがみ、過度な財政負担とならない範囲内において、県内事業者又はそれらが参加する事業体が入札に参加しやすい環境を整備し、及び県内の人材、物品等を積極的に活用し、又は使用するよう配慮するものとする。
2 知事等は、前条第2項に規定する貢献を特にしていると認める県内事業者以外の事業者又はそれらが参加する事業体について、前項の規定に準じた配慮をすることができるものとする。
3 知事等は、毎年度、工事(一請負契約につき請負金額が1,000万円以上のものに限る。)、委託業務(一契約につき契約金額が500万円以上のものに限る。)及び物品等の調達(一契約につき契約金額が500万円以上のものに限る。)における事業者の受注の状況を公表するものとする。
(財政上の措置等)
第10条 県は、産業の振興に関する施策を実施するために必要な財政上の措置を講ずるものとし、産業の振興のために必要な税制上の措置を講ずるよう努めるものとする。
附則
この条例は、公布の日から施行する。