平成24年4月27日
鳥生環例規第5号外共発
県内において野生の熊が住居が集合している地域等に出没した際、各警察署において適宜適切に対応しているところであるが、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(平成14年法律第88号)第38条の規定により、日出前及び日没後、住居が集合している地域等における銃猟が禁止されていることから、社団法人鳥取県猟友会員等のハンター(以下「ハンター」という。)が住居が集合している地域等に現れた熊を猟銃を使用して駆除することの適法性について疑義が生じる場合があると思料される。
そこで、警察官職務執行法(昭和23年法律第136号。以下「警職法」という。)第4条第1項を根拠として、警察官がハンターに対し住居が集合している地域等に現れた熊等を猟銃を使用して駆除するよう命じることの可否等については下記のとおりとし、平成24年5月1日から施行することとしたので、運用上誤りのないようにされたい。
記
1 警職法第4条第1項について
(1) 概要
警察官は、人の生命若しくは身体に危険を及ぼし、又は財産に重大な損害を及ぼすおそれのある狂犬、奔馬の類等の出現等危険な事態がある場合において、特に急を要する場合においては、その場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者に対し、危害防止のため通常必要と認められる措置を執ることを命じることができる。
(2) 解釈
ア 「狂犬、奔馬の類等の出現」
動物園から逃げ出した猛獣、人を襲うおそれのある野犬等の人の支配の及ばない状態にある動物の出現とされているところ、住居が集合している地域等に熊が現れた場合も該当するものと解される。
イ 「その場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者」
事物の管理者等事態収拾に責任がある者だけでなく、危害防止に協力し得る者が含まれることから、猟銃の扱いに熟達したハンターも該当するものと解される。
ウ 「危害防止のため通常必要と認められる措置」
当該措置については、人の生命若しくは身体に危険を及ぼし、又は財産に重大な損害を及ぼすおそれのある危険な事態に応急的に対処するためのものであり、現実の危害を防止する上で必要最小限度のものに限られるものとされているところ、住居が集合している地域等に熊が現れた場合、周辺の人々を安全な場所に避難させた上で、熊を猟銃で駆除することも当該措置に該当するものと解される。
(3) 結論
警職法第4条第1項の適用により熊の駆除を積極的に推進できるとまでは言えないが、現実的、具体的に危険が生じ特に急を要する場合には、警職法第4条第1項を根拠に、人の生命・身体の安全等を確保するための措置として、警察官がハンターに対し猟銃を使用して住居が集合している地域等に現れた熊を駆除するよう命じることは行い得るものと解される。
2 留意事項
(1) 事案の発生が予想される警察署においては、事案発生時に適切な対応が行われるよう、事前に市町村、社団法人鳥取県猟友会等との連絡窓口を設定するなど関係機関・団体と連携を図ること。
(2) 住居が集合している地域等において猟銃を発射する場合は、関係機関等と連携し、交通の規制、周辺住民の避難・誘導、学校等への連絡を行うなど、あらかじめ周囲の安全を確保し、猟銃の発射に係る危険防止に努めること。
(3) 現実的、具体的に危険が生じ特に急を要する状況であれば、熊以外の動物(野生動物であるか否かを問わない。)であっても警職法第4条第1項を適用することは可能であるので、予想される対象動物に応じた想定訓練等を実施すること。
(4) 警職法第4条第1項に基づく警察官による命令は、命令を受けた者に、命令に従う義務を生じさせることになることから、同項に基づく命令は適切に行われることが必要である。このため、猟銃による駆除を命じることが想定される警察官に対し、同項の解釈、命令を行うことができる具体的な状況等に関する教養を行うこと。
(5) 警察官よりも先にハンターが現場に臨場する事態も想定されるところ、当該ハンターの判断により、緊急避難(刑法(明治40年法律第45号)第37条第1項)の措置として熊等を猟銃を使用して駆除することは妨げられない。
3 その他
(1) ハンターが警職法第4条第1項に基づく警察官による命令に忠実に従い、危害防止のため通常必要と認められる措置として猟銃により熊等を駆除することについては、当該ハンターが刑事責任を問われることはないと解される。
(2) 本通達の趣旨については、環境省自然環境局野生生物課長から各都道府県鳥獣行政担当部局長宛てに通知されているので参考とすること。