変死体等措置要綱の制定について(例規通達)

変死体等措置要綱の制定について(例規通達)

平成24年2月24日
鳥捜一例規第3号外
改正  平成25年鳥捜一例規第3号外、平成28年鳥捜一例規第3号外、平成30年鳥務例規第3号、令和4年鳥務例規第3号

対号 昭和53年5月30日付け鳥捜一例規第3号外共発 変死体等措置要綱の制定について(例規通達)

 変死体等の措置については、対号例規通達により実施してきたところであるが、犯罪死見逃し防止等の徹底を図るため、この度、別添「変死体等措置要綱」を制定し、平成24年3月1日から施行することとしたので、運用上誤りのないようにされたい。
 なお、対号例規通達は、平成24年2月29日限り廃止する。

別添
   変死体等措置要綱
第1 趣旨
 変死体、犯罪死体及び非犯罪死体(以下「変死体等」という。)の措置については、刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)、警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律(平成24年法律第34号。以下「死因身元調査法」という。)、犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則第2号)、検視規則(昭和33年国家公安委員会規則第3号)、死体取扱規則(平成25年国家公安委員会規則第4号)等に定めるもののほか、この要綱の定めるところによる。
第2 定義
 この要綱における用語の意義は、それぞれ次に定めるところによる。
(1) 「変死体」とは、刑事訴訟法第229条第1項及び検視規則第1条に規定する変死者又は変死の疑いのある死体をいう。
(2) 「犯罪死体」とは、殺人、過失致死等犯罪(交通事故・事件に係るものを除く。)によることが明らかな死体をいう。
(3) 「非犯罪死体」とは、死因身元調査法第4条第2項に規定する犯罪行為により死亡したと認められる死体又は変死体以外の死体をいう。
(4) 「検視」とは、刑事訴訟法第229条第2項及び検視規則に規定する検視(いわゆる代行検視あるいは司法検視)をいう。
(5) 「死体調査」とは、死因身元調査法第4条第2項に規定する死体の外表の調査、発見された場所の調査、関係者に対する質問等の必要な調査(いわゆる行政検視)をいう。
(6) 「検査」とは、死因身元調査法第5条第1項に規定する体内から体液等(髄液、血液、胃内容物、尿等をいう。以下同じ。)を採取して行う検査、死亡時画像診断等をいう。
(7) 「調査解剖」とは、死因身元調査法第6条第1項に規定する解剖をいう。
第3 変死体等発見(届出)報告
 警察官は、変死体等を発見し、又は発見した旨の届出を受けたときは、次の事項を変死体等の所在地を管轄する警察署長(以下「署長」という。)に直ちに報告すること。
(1) 発見(届出)人の氏名、年齢、住居及び職業
(2) 発見日時及び場所
(3) 発見(届出)の状況
(4) 死亡者の氏名、年齢、本籍、住居、性別及び職業(身元が明らかでない場合は、人相、特徴、着衣、推定年齢及び性別)
第4 検視担当者
1 署長は、変死体等を認知した場合は、警部補以上の階級にある警察官を検視担当者に指定すること。ただし、当該死体が明らかに非犯罪死体であると認めるときは、巡査部長の階級にある警察官を検視担当者に指定することができる。
2 検視担当者の任務は、次のとおりとする。
(1) 変死体の検視
(2) 刑事訴訟法第197条第1項の規定による犯罪死体の実況見分又は同法第218条第1項の規定による犯罪死体の検証
(3) 非犯罪死体の死体調査
(4) 死因、動機、方法等の不明な変死体等に対する追跡調査
(5) 身元が明らかでない死体(以下「身元不明死体」という。)の身元を確認するための追跡調査
(6) 死体、着衣及び所持金品の確認並びに引渡し
(7) 変死体等に係る措置結果の署長への報告
第5 検視官等の任務
1 刑事部捜査第一課検視官室長及び刑事部捜査第一課検視官(以下「検視官等」という。)の任務は次のとおりとする。
(1) 検視及びその指導
(2) 犯罪死体の実況見分、検証及びその指導
(3) 死体調査及びその指導
(4) 検査及びその指導
(5) 刑事訴訟法第225条第1項の規定に基づき鑑定人が行う死体の解剖及び調査解剖の実施の要否についての指導及びこれらの解剖への立会い
(6) 臓器の移植に関する法律(平成9年法律第104号)第6条第2項に規定する脳死した者の身体に対する検視、実況見分、検証、死体調査、司法解剖等に関すること。
(7) 死因身元調査法第8条第1項の規定に基づく身元を明らかにするための措置及びその指導
(8) 検視・死体調査等死体取扱業務に関する教養の計画及び実施に関すること。
(9) 死体取扱いについて専門的知見を有する法医学者、歯科医、検案医等(以下「法医学者等」という。)の部外関係者との連絡調整に関すること。
(10) (1)から(9)までに掲げるもののほか、署長が行う犯罪性の判断に資する検討・助言、周辺捜査に関する指導等、検視・死体調査に関し、検視官等として行うことが適当と認められること。
2 検視官等は、任務を遂行するに当たり、次の事項に留意すること。
(1) 死体取扱現場への積極的臨場
 検視官等は、犯罪死の見逃し防止の観点から、警察が取り扱う全ての死体について、積極的に現場に臨場するように努めること。
 なお、検視官等の体制等に鑑み、これが困難な場合であっても、明らかに犯罪性が認められる死体に加え、署長が行う犯罪性の見極めの判断に資するよう、少なくとも焼死、溺死、自殺、中毒死等の外因死の疑いがある死体、死因不詳の死体、病死の疑いのある死体のうち独居者、若年者、既往症がない者、屋外で発見された者の死体等については全件臨場するように努めること。
(2) 現場臨場することができない場合の措置
 検視官等は、自らが死体取扱現場に臨場することができない場合であっても、死体取扱現場から報告を確実に求め、的確な検視・死体調査の遂行のために必要な指導・助言を行うこと。また、死体取扱現場から報告を受けるに当たっては、検視支援システム(専用の端末装置により、死体及びその周辺の状況を映像と音声で即時に確認するシステムをいう。)を活用すること。
(3) 周辺捜査等に関する指導等
 死体所見から判断される死因に誤りはなくとも、死亡の背景事情等の把握が不十分である場合には、自殺・他殺の別の判断に誤りが生じ、犯罪死の見逃しに至る可能性がある。このため、検視官等は、警察署の警察官による、遺族や関係者からの適切な事情聴取及びその供述の裏付け捜査・調査、死者の周辺におけるトラブル等に関する捜査・調査、死者の生命保険の加入状況に関する捜査・調査等が確実に実施されるよう、必要な指導・助言を積極的に行うこと。
(4) 検査に関する指導等
 死体の外表からの観察のみでは死因が明らかにならない場合には、検査の実施を検討すること。また、検査を実施する場合において、警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律施行令(平成25年政令第49号)第1条各号に掲げるいずれの検査を実施するべきかは、検査に立ち会う医師の意見を踏まえつつ、警察において判断する必要があることから、その判断に際しては、必要な指導・助言を積極的に行うこと。
(5) 解剖の積極的検討
 (1)から(4)までに掲げる捜査等を尽くしても、なお犯罪性に多少なりとも疑義が残る死体については、司法解剖の実施を検討すること。また、司法解剖に至らない死体であっても、死因が明らかでなく、被害の拡大、再発の防止等の措置を講ずる必要があるか否か判断することができないものについては、調査解剖又は承諾解剖の実施について検討すること。
(6) 関係者との連携強化
 死因又は身元の特定等を的確に実施するためには、法医学者等の部外関係者の協力が不可欠であることから、定期的な会合の開催、合同研修会の実施等により、警察と関係者間の連携強化を図ること。
3 刑事部捜査第一課検視官室の警部補又は巡査部長の階級にある警察官は、検視官等の下に、その業務を補助するものとする。
第6 初動措置
 警察官は、死体取扱現場に臨場したときは、死体を不必要に動かさないよう留意し、速やかに次の措置を執ること。
(1) 現場保存の実施
(2) 目撃者、発見者その他参考人の確保
(3) 所持金品及び参考人等からの資料又は情報による身元の確認
(4) 遺族や関係者に対する事後の措置への協力依頼
第7 検視等の実施要領
 検視担当者は、次の要領により変死体等の検視、実況見分、検証、死体調査、検査、解剖等(以下「検視等」という。)を実施するものとする。
(1) 基本捜査等の徹底
 死体取扱いに当たっては、犯罪捜査の手続が行われる死体か否かにかかわらず、綿密な現場観察及び死体観察、関係者からの事情聴取、周辺捜査、裏付け捜査等の基本捜査・調査を徹底する。
(2) 検視等の基本
 先入観を排し、現場及び死体の状況を綿密に観察する。また、検視等を実施する前に、遺族や関係者にその必要性を十分説明するとともに、遺族や関係者の感情に配意した言動と礼を失しない死体取扱いを行う。
(3) 検視官等への報告
 署長は、死因身元調査法第4条第1項の規定による報告又は死体に関する法令に基づく届出を受けた時点で、全ての死体について検視官等に一報するとともに、適宜追加の報告を行い、その指示を受ける。
(4) 検視等の場所
 狭あいな場所、障害物が存在する場所、死体が公衆の目に触れる場所等その場所において死体の観察を行うことが不適当な場合は、必要な採証活動を行った後、死体を警察署検視室等に移動して行う。
(5) 死体の着衣
 死体の硬直、腐敗等により着衣を脱がすことができない場合は、遺族や関係者にその状況を確認させ、着衣損壊の承諾を得た後、必要最少限度に着衣を損壊して脱着し、検視等を行う。
(6) 検視等の実施要領
 検視(調査)メモ・チェック表を携行し、見落としのないよう綿密に観察記録するほか、特に次の事項について現場調査等を徹底し、死亡推定日時、死因及び自殺・他殺の別を明らかにしておく。
ア 発見時の状況
 発見(届出)人から死体の発見日時及び場所、死体の位置、姿勢、着衣、付近の状況並びに発見した経過及び発見後の措置について聴取する。
イ 救急措置又は診療状況
 生前の救急措置又は診療を受けたことの有無を調査し、該当があれば医師等からその時の状況、損傷の部位、程度、症状及びこれに対する救急措置又は診療の概要を聴取する。
ウ 生活状況等
 遺族や関係者から死亡者の生前における健康状態、し好品、家族、交友関係、最終生存確認の時期及び状況、保険加入状況等を聴取する。
エ 遺書
(ア) 遺書の有無を調査し、遺書が発見されたときは、死亡者の筆跡及び指紋との照合並びに関係者等の事情聴取を行い、真偽の検討に努める。
(イ) 遺書については、宛名人又は戸籍法(昭和22年法律第224号)第87条に規定する届出義務者(以下「宛名人等」という。)の開封を待って真偽の検討を行い、無断開披のそしりを受けることのないように留意する。ただし、身元不明死体が所持していた遺書については、身元確認のため必要やむを得ない場合に限り開封すること。
(ウ) 遺書は、その真偽の検討後、速やかに宛名人等に返還する。
オ 自殺供用物
 自殺供用物とされる物については、入手経路の捜査を徹底するとともに、自殺に使用した物として矛盾や不自然な点はないか十分に精査する。
(7) 検査
 検査のうち、体内から体液等を採取して行うものは、医師に行わせる。ただし、専門的知識及び技能を要しない検査は、警察官が行うことができる。
(8) 死亡時画像診断
 署長が医師に委託して死亡時画像診断を実施した場合は、原則として、死亡時画像診断に係る画像を書ききり型外部記録媒体(以下「外部記録媒体」という。)に電磁的記録で保存してもらい、当該外部記録媒体を委託先の病院等から受領する。ただし、外部記録媒体を受領することができない場合は、当該画像が記録されたフィルムを受領する。
(9) 犯罪死の見逃し防止に向けた措置
 取り扱った死体について、外表からの観察のみでは死因が明らかにならない場合には、検査を積極的に実施すること。また、死体の状況、現場の状況、関係者の供述、検査の結果、検査に立ち会った医師の意見等を慎重に検討し、犯罪性に多少なりとも疑義が残る場合には司法解剖を実施するとともに、司法解剖に至らない場合であっても、死因が明らかにならず、被害の拡大、再発の防止等の措置を講ずる必要があるか否かを判断することができないときには、調査解剖又は承諾解剖の実施を積極的に検討する。
(10) 死体の取り違え防止
 死体を安置する場合は、取り違え防止対策を徹底するとともに、遺族、死体の引渡しを受けて火葬、埋葬等を行うことを申し出る者又は関係機関(以下「遺族等」という。)に死体を引き渡すに当たっては、死体取扱規則第6条に定める死体及び所持品引取書を作成の上、警部補以上の捜査幹部の立会いの下、原則として、検視等現場で死体を取り扱った捜査員が引き渡す。
(11) 適切な遺族対応
 遺族等への死体の引渡し時には、原則として口頭により、死体に係る発見日時及び場所、発見時の状況、死体調査、検査及び調査解剖の実施結果、死因その他参考事項の説明を行う。説明の際には、遺族等の心情に配慮した上で客観的事実に基づいた説明を行い、必要に応じて、検案、検査又は調査解剖を実施した医師の協力を得て共に説明を行う。
(12) 遺族等の要望を踏まえた再説明
 遺族等から(11)の説明に係る調査等の実施結果の提供を求められた場合には、死体調査等結果書交付要望書を受理し、客観的事実を簡潔にまとめた死体調査等結果書を交付の上、再説明を行う。この場合、受領書を徴しておくこと。
第8 医師の立会い
 変死体等を検視等する場合は、適当と認める医師の立会いを求めてこれを実施し、立会いを求めた医師に対しては、その業務の実態に応じた相当額の立会謝金を支給すること。
第9 報告
1 署長は、変死体等について、次の要領により刑事部捜査第一課長(以下「捜査第一課長」という。)を経由して警察本部長(以下「本部長」という。)に報告するものとする。
(1) 第3の規定による報告を受けたときは、速やかにその旨を電話により報告する。
(2) 検視等を終えたときは、その結果として変死体等報告書を作成し、ファクシミリ等を利用して報告する。
(3) 犯罪死体については、「重要事件発生検挙報告および捜査指揮要領の制定について(例規)」(昭和41年6月7日付け鳥捜発第359号外共発)の定めるところにより、事案の概要と死体の検証(実況見分)結果を報告する。
2 検視担当者は、電話により変死体等の認知状況を検視官等に報告の上、現場臨場すること。現場臨場後は、速やかに事案の概要、現場状況を把握して、その状況を必要により画像を活用して検視官等に報告し、検視等を終えた場合には、その結果を報告の上、必要な助言及び指導を受けること。
第10 関係所属長に対する連絡
1 第9の1の規定による報告を受理した捜査第一課長は、必要があると認めるときは、変死体等報告書を複製し、刑事部鑑識課長及び関係所属長に1通ずつ送付することにより連絡すること。
2 署長は、認知した変死体等が管内の医療機関に収容されたものであり、その死亡の原因発生地が他の警察署管内(他の都道府県警察の管轄区域を除く。)であることが明らかなときは、直ちにその事案を死亡の原因発生地を管轄する署長に引き継ぎ、事後の措置について協力するものとする。この場合における本部長に対する報告は、当該死体が犯罪死体の場合には認知した署長、変死体又は非犯罪死体の場合には引継ぎを受けた署長が行うこと。
第11 検察官に対する通知
 署長は、変死体を認知したときは、速やかに鳥取地方検察庁又は鳥取地方検察庁米子支部の検察官(以下「検察官」という。)に、変死体認知通知書をファクシミリを利用して送付するとともに電話により通知し、担当する検察官(以下「担当検察官」という。)の氏名を確認しておくこと。
第12 死体の司法解剖
 署長は、死体の司法解剖(以下この項において「解剖」という。)が必要と認める場合は、速やかに次の措置を執ること。
(1) 事案の内容を電話により捜査第一課長を経由して本部長に報告し、鑑定嘱託する。
(2) (1)の措置を執った後、担当検察官に解剖の通知をする。
(3) 遺族等に対し、事前に解剖の通知をするとともに、死体引渡しの予定時刻、場所及び方法について連絡する。
(4) 解剖するときは、事件の概要等を把握している巡査部長以上の階級にある警察官を立ち会わせるとともに、解剖が終了したときは、鑑定人から聴取した解剖の主要所見、死因等について、速やかに電話により捜査第一課長を経由して本部長に報告する。
第13 調査解剖、承諾解剖
 署長は、検視・死体調査の結果、犯罪性は認められないが、死因が不明な場合等に行う解剖のうち、調査解剖については「調査解剖実施要綱の制定について(例規通達)」(平成25年5月2日付け鳥捜一例規第10号外共発)、承諾解剖については「承諾解剖実施要綱の制定について(例規通達)」(平成12年6月14日付け鳥捜一例規第10号外共発)の定めるところにより実施すること。
 なお、調査解剖の実施に当たっては、死因身元調査法制定の目的から遺族の承諾を必要としないが、あらかじめその必要性について十分な説明を行うこと。
第14 検視調書等の送付手続
 署長は、検視を行ったときは、次に掲げる要領により措置を執ること。
(1) 検視を行った変死体の死因が、犯罪に起因しないことが明らかになったときは、速やかに代行検視結果報告書により、検視規則第5条の規定により作成する検視調書、撮影した写真その他関係書類を添付して検察官に送付する。
(2) 検視を行った変死体の死因が判明しない等の理由により、鑑定処分許可状の発付を得て司法解剖した場合で、その死因が犯罪に起因しないことが明らかになったときは、速やかに代行検視結果報告書により、検視調書、撮影した写真、解剖鑑定書その他関係書類(以下「検視調書等」という。)を添付して検察官に送付する。
(3) 検視を行った変死体の死因が、犯罪に起因するか否か明らかにならない場合は、おおむね3か月をめどに代行検視結果報告書により、検視調書等の各写しを添付して検察官に送付する。その後、犯罪に起因しないことが明らかになったときは、速やかに代行検視結果報告書の見出しの末尾に「(第2回)」と記入し、関係書類を添付して検察官に送付する。
 なお、犯罪に起因することが明らかになった場合は、(4)及び(5)に準じた要領により措置を執ること。
(4) 検視を行った変死体の死因が、犯罪に起因することが明らかになった場合で、おおむね1か月をめどに被疑者を検挙したときは、事件送致書により、検視調書等及び捜査記録を添付して検察官に送致する。この場合、事件送致書に検視による事案である旨の記載をした付箋を添付すること。
(5) 検視を行った変死体の死因が、犯罪に起因することが明らかになった場合で、おおむね1か月をめどに被疑者を検挙することができないときは、代行検視結果報告書により、検視調書等の各写しを添付して検察官に送付する。その後、被疑者を検挙した場合あるいは公訴時効廃止事件を除き時効間近となった場合は、事件送致書により検視調書等及び捜査記録を添付して検察官に送致する。
第15 外国人の変死体等の取扱い
1 署長は、外国人の変死体等を認知したときは、第9から第11までに規定する報告等を行うほか、旅券及び身分証明書により次の事項を確認し、速やかに刑事部捜査第二課長を経由して本部長に報告の上、関係国の大使、公使又は領事(以下「大使等」という。)に通知すること。
 なお、領事機関への通報については、死体取扱規則第2条に規定するところにより行うこと。
(1) 国籍
(2) 在留資格
(3) 旅券番号、発給年月日、発給庁、在留目的及び期間
(4) 本国の住居、氏名、生年月日
(5) 在留中の宿泊先又は連絡先
2 署長は、変死体等の検視等に当たっては、言語、風俗、宗教、習慣等の相違から誤解を生ずることのないよう十分留意して措置を執ること。
3 署長は、死体及び所持金品の引渡しに当たり、引取人がないとき、又は引取りについて著しく遅延し、死体等を遺族等に引き渡すことができないときは、関係国の大使等と協議の上措置を執ること。
第16 海上等の変死体等の取扱い
1 署長は、海上で発見された変死体等については、警察庁と海上保安庁との犯罪捜査に関する協定(昭和46年警察庁乙刑発第5号)に基づき、海上保安庁と緊密な連絡を取り、措置を執ること。
2 航空機、船舶及び列車内の変死体等については、着陸した空港、寄港地又は到着した駅を管轄する署長が措置を執ること。
第17 生命保険照会
 社団法人生命保険協会に対する生命保険の加入状況の照会に関する質疑等については、変死体等に係るものにあっては刑事部捜査第一課に、それ以外の事案(事件、事故等)に係るものにあっては刑事部刑事企画課に対して行うものとする。
第18 多数死体の特別措置
 署長は、風水害、地震その他自然現象による災害及び人為による異常な災害による多数死体については、次の措置を執ること。
(1) 検視等及び報告
 死体の検視等又は収容に当たっては、各死体ごとに、迅速的確に現場、死体の状況等を観察して記録し、死亡日時、死因及び死体の処理状況を明らかにしておくとともに、多数死体報告書により報告を行う。
(2) 遺体票等の添付
ア 各死体に一連番号を付した遺体票を添付し、発見の日時、場所、死体の状況、発見者、検視担当者その他必要な事項を簡明に記録して明らかにしておく。
イ 離断した死体(以下「離断体」という。)は、一連番号を付した離断体票を添付し、発見の日時、場所、離断体の状況、発見者、検視担当者その他必要な事項を簡明に記録して明らかにしておく。
ウ 所持金品は、死亡者が身に着けている物のほか、その死体の周辺に散乱している物で明らかにその死亡者の所持金品であるものについて遺体票番号と同一の一連番号を付した遺品票を添付し、発見の日時、場所、所持金品、所持者等を簡明に記録するとともに、その所持金品はその死体から離さない。
エ 所持者が不明である物品(以下「遺留品」という。)は、一連番号を付した現場遺留品票を添付して収集し、発見日時、場所、遺留品名及びその付近で発見された死体との位置関係などを現場遺留品票に記録してその状況を明らかにしておく。
オ 検視等を行うに当たっては、各死体又は離断体ごとに一連の検視番号を付す。
カ 遺体票、離断体票及び遺品票は、死体等を遺族等に引き渡すまで死体等から離さない。
(3) 写真撮影
 死体、離断体又は遺品は、他の死体等と混同しないように、遺体票、離断体票、遺品票とともに特徴、色調がわかるように写真撮影しておくこと。また、遺留品についても同様に、死体及び遺品とは別個に現場遺留品票とともに写真撮影しておく。
(4) 死体の収容等
ア 検視等後において、死体を収納したときは収納袋に、納棺したときは棺の上に検視済票を貼付しておく。
イ 死体を収容したときは、検視番号順に死亡者名簿を作成し、その名簿を遺体安置所の入口に掲示しておく。
ウ 死体を収容したときは、収容した場所ごとにその経過を遺体収容状況一覧表に記録して明らかにしておく。
(5) 多数死体報告書の作成
 多数死体の死体調査を実施したときは、身元が確認された死体と身元不明死体を区別して多数死体報告書を作成する。
第19 交通事故事件に係る変死体等に対する適用
 第12の規定は、交通事故事件(大規模交通事故事件を除く。)について準用する。この場合において、「捜査第一課長」とあるのは、「交通部交通指導課長」と読み替えるものとする。
第20 その他
 この要綱の運用に関して作成する書類の様式については、別に定める。 
  

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