所管事項にかかる県外調査(1月27日~29日)
1 調査箇所
平成28年1月27日(水)
・(一社)宮崎県家畜改良事業団(宮崎県児湯郡高鍋町)
平成28年1月28日(木)
・(株)かまえ直送活き粋船団(大分県佐伯市)
・大分県庁(大分県大分市)
平成28年1月29日(金)
・オムロン太陽(株)(大分県別府市)
2 調査委員
広谷委員長、坂野副委員長、
斉木委員、浜田(妙)委員、市谷委員、島谷委員、
浜田(一)委員、川部委員(8名)
3 随行者
議会事務局調査課 谷口課長、石本主事
4 調査結果
今回は、宮崎県において家畜改良事業団での和牛の改良増殖の取組や防疫対策について、また大分県においては6次産業化の現状と自動車産業及び障がい者雇用をテーマに調査を行った。
宮崎県家畜改良事業団においては、種雄牛の改良等の流れについて調査した。和牛王国として知られる同県においても、口蹄疫に加えて、全国同様に農家の高齢化による繁殖雌牛頭数の減少が深刻であることが認識できた。そのような状況において、宮崎牛の定義を「県内で肥育されたもの」から「県内で供用されている種雄牛の産子」かつ「県内で生産・肥育されたもの」へ、むしろ厳格化するというブランド戦略を採っていることは大変興味深かった。これが吉と出るためには、その定義と価値を消費者に理解してもらうための広告戦略も欠かすことができないと考える。また口蹄疫を教訓とした各種の防疫対策についても説明を受け、リスク管理のための分散の必要性など、今後本県の畜産施策を進めるうえで参考になると思われた。
大分県の6次産業化事業者「かまえ直送活き粋船団」においては、今も現役の漁業者である村松氏に、漁師として馴染みの無い加工や販売の分野に乗り出した際の生の経験を軽妙な語り口で語っていただき、各委員も話に聞き入っているようであった。経験に裏打ちされた氏の6次産業化に対する考えは説得力があり、特に6次産業化で成功するためには、生産者目線に固執せず、外の人材や考えを取り入れることが重要であるという指摘は、今後の本県の6次産業化を考える上でも非常に参考になると感じた。
大分県庁においては、同県の自動車産業ついて及び「かまえ直送活き粋船団」に引き続き、農林水産品の6次産業化と販路拡大について調査した。
自動車産業についての説明からは、同県内には多くの関連企業が集積しているものの、完成車メーカーやいわゆるTier1等の産業ピラミッドの上位企業からの受注競争の厳しさや地元企業の競争力を向上させるために息の長い指導、支援が必要であることを痛感した。なお、大分県では地元の自動車関連企業により構成される「大分県自動車関連企業会」を設置し、完成車メーカーにも特別顧問として参加してもらっているとのことであり、この取組は今年度第1回目の県外調査で説明を受けた「秋田輸送機コンソーシアム」や「東北航空宇宙産業研究会」を想起させるものであった。自動車産業と航空機産業は、ともに世界的なメーカーを頂点とするピラミッド状の下請構造をしており、そのような中で、地方の中小企業が技術力の向上や受注の拡大を目指すには、単独ではなく横の連携を取ることや大手メーカーを巻き込むような工夫が鍵になるのであろうと考える。
農林水産品の6次産業化と販路拡大については、大分県の6次産業化の状況と支援策について調査した。一村一品運動の歴史を持つ同県でも「成功事例となる事業者」の登場は未だとのことであり、「かまえ直送活き粋船団」での調査に続き6次産業化の困難さを理解させられた。しかしながら、委員と大分県の質疑でも指摘されていたが、6次産業化の目指すべき出口は一様ではなく、直販等により大きく外貨を稼ぐことができなくとも、商品や事業者自体のファンを作り、地元に来ていただいたり、あるいは原料である農林水産品の生産維持・拡大に寄与できるようであれば、それはそれで一つの成功と言えるものである。行政としても、やみくもに6次産業化を推奨するのではなく、何を目的に何処を着地点とするのかを個々の事業者と良く練りながら支援することが必要であると感じた。
最後に、オムロン太陽において障がい者雇用の取組について話を伺った。オムロン太陽は「保護より機会を!」をモットーとする社会福祉法人太陽の家がオムロンとともに設立した特例子会社である。そのモットーや同法人の障がい者就労の取組の長い歴史もさることながら、本事例で最も興味深いのは、太陽の家が企業との共同出資という形で特例子会社を設立していることと、一つの企業ではなく多くの大企業と同様の取組を行っていることである。オムロン太陽単体では、知的・精神障がい者の雇用に限界があるものの、太陽の家グループとして見れば、他の業種の企業とも同様の取組を行うことで、知的・精神障がい者の一定の雇用に成功している。またそれら特例子会社と社会福祉法人が集積していることで、労働者である障がい者に各種の支援を行うことも可能となっている。このような手法は障がい者が一般社会や企業へ広く参画することを推進するとする障害者雇用促進法等の本旨とは若干異なるのかも知れないが、就労が困難な知的・精神障がい者の雇用の確保と労働効率、障がい者への充実した支援などのバランスを取るためには有効な手法の一つであると言える。このような特例子会社の状況を理解したうえで、今後は一般企業での障がい者雇用の取組についても調査する必要があると感じた。