所管事項にかかる県外調査(7月14日~16)
1 調査箇所
平成27年7月14日(火)
・青森県庁(青森市)
平成27年7月15日(水)
・八戸港管理所、八戸市水産事務所(八戸市)
・秋田県庁(秋田市)
平成27年7月16日(木)
・秋田精工(株)(由利本荘市)
2 調査委員
広谷委員長、坂野副委員長、 斉木委員、内田(博)委員、浜田(妙)委員、市谷委員、島谷委員、 浜田(一)委員、川部委員(9名)
3 随行者
議会事務局調査課 若松課長補佐、石本主事
4調査結果
今回は、青森県において同県産品の輸出拡大戦略及びその具体的な手法である輸送プラットフォームの構築や水産物流通機能高度化を、また秋田県においては航空機関連産業等の振興による正規雇用の創出施策、県産木材利用施策をテーマに調査を行った。
「青森県輸出拡大戦略」については、同県の強みのある「分野(品目)」と各輸出「対象国・地域」の市場特性をともに分析したうえで、「分野」を横軸に「対象地域」を縦軸にとることで、どこの地域にどの商品を売り出していくのかを明確に規定するとともに、さらに時間軸である「短中長期的視点」も併せ持って輸出拡大に取り組んでいることが印象深かった。
農林水産品に限ったことではないが、総花的な「輸出拡大」というかけ声に終わることの無い具体的かつ計画的な取り組みの必要性を感じた。
また、併せて輸出拡大のためのツールの一つである「青森県総合輸送プラットフォーム」についても説明を受けた。出荷開始時間の前倒しと空輸の活用によるスピード輸送という手法は画期的ではあるが、非常に単純でもあり、本県を含めた他県でも十分活用できるやり方であると言える。県からヤマト運輸に対しては補助金等を交付せず、ヤマトが自ら黒字化を目指すというスキームも、採算ラインに乗りさえすれば、公的補助ありきの事業よりも継続性が期待できるし、他県での応用可能性にもつながると考えられる。
しかしながら、現時点では採算ラインの5分の1程度の水準にとどまっており、その採算ラインすら「トラック1台分」に過ぎず、マクロ的なレベルでどれほどの経済効果があるか多少疑問でもある。もちろんこのプラットフォームを活用して販路を拡大する個々の事業者というミクロ的視点に立って見れば、意味のある事業であるし、そのような個別の事業者に対する支援もまた行政の役割ではあるので、青森県の担当者も言うように、多くの事業者が恩恵を得られるようサプライヤーを増やし、事業の黒字化、さらには拡大を目指していくことが今後の大きな課題であると言える。
八戸港においては、八戸港の概要とHACCPを核とした水産物流通機能の高度化対策について調査を行った。糞害や外気による汚染を防ぐための種々の取り組みについて具体的な説明を受けるとともに、実地に見学することでその仕組みを理解することができた。またHACCP認証を受けるまでの苦労、受けた後も試行錯誤の連続であることなども聞くことができた。
ただし、この流通機能高度化の成果と、それに対するコストなどの経済的側面についての分析を具体的な数値等でお示しいただけなかった点は残念であった。
まだ稼働して間もないということもあるので、今後も八戸港の取り組みの動向を注視、その効果を分析して、本県港湾等の高度衛生管理化等に役立てる必要があるであろう。
秋田県庁と同県内の秋田精工(株)では、航空機産業の振興による正規雇用の創出について調査した。秋田県担当者の言にもあったが、大手誘致企業とその下請け企業による弱電中心のモノカルチャー的産業構造という点で「秋田と鳥取は似て」おり、基幹産業縮小後に異業種である航空機作業へ参入した「秋田輸送機コンソーシアム」の経験は本県の参考となるものである。
本県では最近航空機関連企業の新規誘致に成功しているが、「秋田輸送機コンソーシアム」の説明には、他県から誘致された航空機関連企業は登場せず、あくまでも同県の在来の企業による航空機産業への参入の取り組みであった。県内の雇用の維持、増加のためには、企業誘致と併せて、大手企業等からの受注が不振な県内既存下請け企業等の異業種への参入も必要である。
秋田県の例では、コンソーシアムの組織における秋田県産業技術センターの役割、大手重工メーカーとのマッチング、社員を採用する際の助成金の交付、県内企業の余剰人員の斡旋等、その要所要所で行政が必要な支援を行っている様子が窺えた。航空機産業が、実際の受注につながるまでにかなりの先行投資が必要となる分野である以上、本県においても各フェーズに応じた行政の的確な支援が必要になると感じた。
最後になったが、秋田県庁においては県産木材の利用施策についても話を伺った。同県の「県産材利用推進計画」では、すべての新規公共建築物を「木造化を図る建築物」「内装の木質化を図る建築物」「その他(木造または木質化できないもの)」に分類し、「その他」とする場合は、その理由を明確にするなど、委員の感想にもあったが「非常に徹底したやり方」で、木造・木質化を推進している。
その結果、直近の期間では公共建築物の木造・木質化率が92%に達し、取り組みが各種民間施設にも波及してきている。さらに県内建設業で木材の利用ノウハウが蓄積され、木造建築の低コスト化につながっていること、そして県内林業の新規雇用者数が10年前の3倍に達するなど、林業に関する明るい兆しを見ることができた。