刑事に関する共助に関する日本国と欧州連合との間の協定の発効について(例規通達)

刑事に関する共助に関する日本国と欧州連合との間の協定の発効について(例規通達)

平成22年12月27日
鳥組例規第12号
 
改正 平成26年8月鳥組例規第4号、平成30年鳥組例規第1号、令和4年鳥務例規第3号

 刑事に関する共助に関する日本国と欧州連合との間の協定(平成22年条約第13号)については、欧州連合側においては平成21年11月30日、日本側においては平成21年12月15日にそれぞれ署名が行われ、平成22年12月3日に欧州連合との間で公文の交換が行われたことにより、平成23年1月2日から効力を生ずることとなった。この協定の概要及び運用上の留意事項は下記のとおりであるので、事務処理上遺憾のないようにするとともに、犯罪捜査のためにこの協定を積極的に活用されたい。
                     記
1 協定の概要
 この協定は、刑事に関する共助の分野における我が国と欧州連合加盟国との間の協力を一層実効あるものとし、そのような協力が犯罪と戦うことに貢献することを目的として締結されたものである。この協定の概要は次のとおりである。
(1)被請求国は、請求国の請求に基づき、捜査、訴追その他の刑事手続(司法手続を含む。)について協定の規定に従って共助を実施すること等について定める。(第1条)
(2)用語の定義について定める。(第2条)
(3)協定に基づく共助の範囲について定める。(第3条)
(4)共助の請求の送付、受領及び当該請求への回答、請求された共助の実施又は自国の法令に基づいて当該共助を実施する権限を有する当局への当該請求の送付に責任を有する中央当局の指定について定める。(第4条)
(5)協定に基づく共助の請求は、請求国の中央当局から被請求国の中央当局に対して送付されること等、中央当局間の連絡について定める。(第5条)
(6)協定に基づく共助の請求の申立てを行う権限を有する当局について定める。(第6条)
(7)協定に従って送付する書類であって、権限のある当局又は中央当局の署名又は押印によって証明されているものは、認証を必要としないことについて定める。(第7条)
(8)共助の請求の方法、共助の請求に当たって通報することが必要な事項等について定める。(第8条)
(9)共助の請求及びそれに附属する文書には、被請求国の公用語等による翻訳文を添付することについて定める。(第9条)
(10)被請求国は請求された共助を協定の関連規定に従って速やかに実施すること、被請求国の権限のある当局は当該共助の実施を確保するためにその権限の範囲内で可能なあらゆる措置をとること等、被請求国が請求された共助の実施に当たってとらなければならない手続等について定める。(第10条)
(11)被請求国が共助を拒否することができる場合等について定める。(第11条)
(12)請求された共助の実施に要する費用の負担等について定める。(第12条)
(13)協定の規定に従って提供される又は取得される証言、供述、物件又は情報について請求国に課される使用の制限及びこれらに関する請求国の秘密保全等について定める。(第13条)
(14)協定の規定に従って提供された物件の輸送、保管及び返還に関する条件について定める。(第14条)
(15)証言又は供述の取得について定める。(第15条)
(16)被請求国は、一定の場合において、請求国の権限のある当局がビデオ会議を通じて被請求国に所在する者から証言又は供述を取得することを可能とすることができること及びその場合に適用される手続について定める。(第16条)
(17)物件の取得について定める。(第17条)
(18)特定の銀行口座に関する特定の記録、文書又は報告等を提供すること及びそのための条件等について定める。(第18条)
(19)人、物件又は場所の見分について定める。(第19条)
(20)人、物件若しくは場所又はこれらの所在地の特定について定める。(第20条)
(21)被請求国の立法機関、行政機関若しくは司法機関又は地方公共団体が保有する物件の提供について定める。(第21条)
(22)被請求国に所在する者に対する文書の送達及び招請の伝達等について定める。(第22条)
(23)請求国の権限のある当局への出頭が招請され、又は求められている者に対して与えられる保護措置について定める。(第23条)
(24)被請求国において拘禁されている者の身柄の一時的な移送であって、証言の取得その他の立証の目的のためのものについて定める。(第24条)
(25)収益又は道具の凍結及び没収並びにこれらに関連する手続についての共助について定める。(第25条)
(26)事前の要請がない場合においても、刑事に関する情報を相互に提供することができること等について定める(第26条)
(27)協定のいずれの規定も、いずれかの国が他の適用可能な国際協定又は適用可能な自国の法令に従って共助を要請し、又は実施することを妨げるものではないこと等について定める。(第27条)
(28)日本国及び欧州連合加盟国の中央当局は、共助の実施に関する困難を解決し、及び迅速かつ効果的な共助の実施を促進する目的で協議するものとし、当該目的に必要な措置について決定することができること、また、日本国及び欧州連合は、協定の解釈又は適用に関して生ずるいかなる問題についても協議することについて定める。(第28条)
(29)協定を適用する地理的範囲について定める。(第29条)
(30)附属書が協定の不可分の一部を成すこと及び附属書の修正のための手続について定める。(第30条)
(31)協定の効力発生に必要な自己の内部手続を完了した旨を相互に通知する外交上の公文を交換した日の後30日目の日に協定が効力を生ずること、いずれの一方の締約者も、他方の締約者に対して書面により通告を行うことにより、いつでも協定を終了させることができること等について定める。(第31条)
(32)附属書1.は第4条に関連して両締約者の中央当局を、附属書2.は第6条に関連して自国の法令により協定に基づく共助の請求の申立てを行う権限を有する当局を、附属書3.は第9条に関連してそれぞれの国が受け入れる言語を、及び附属書4.は第11条に関連して特定の加盟国をそれぞれ定める。
2 協定の実施のための国内措置
 この協定により、被請求国は、共助を拒否し得る場合(第11条1及び2)を除き、この協定の関連規定に従って(第10条1)、また、自国の法令に基づく措置により(第10条2)、請求された共助を速やかに実施する義務を負うこととなる。この点、我が国においては、国際捜査共助等に関する法律(昭和55年法律第69号)等により、協定上の義務の実施を担保することとなる。
3 留意事項
(1)協定の適用対象国
 本協定の発効時において、協定が適用される欧州連合加盟国は、次のとおりであり、デンマーク王国については、現時点で本協定の適用がないので留意すること。
 アイルランド、イタリア共和国、エストニア共和国、オーストリア共和国、オランダ王国、キプロス共和国、ギリシャ共和国、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国、クロアチア共和国、スウェーデン王国、スペイン王国、スロバキア共和国、スロベニア共和国、チェコ共和国、ドイツ連邦共和国、ハンガリー、フィンランド共和国、フランス共和国、ブルガリア共和国、ベルギー王国、ポーランド共和国、ポルトガル共和国、マルタ共和国、ラトビア共和国、リトアニア共和国、ルーマニア、ルクセンブルク大公国
(2)我が国による請求関係
  ア これまで欧州連合加盟国との間における共助については、協定その他の国際約束がなかったことから、国際礼譲に基づいて行われてきたが、この協定の締結により、我が国が請求する共助が欧州連合加盟国において一層確実に実施されることを確保できるところ、欧州連合加盟国に共助を請求するに当たっては、この協定を積極的に活用すること。
  イ 我が国からの共助の請求が死刑を科し得る犯罪、又はポルトガル共和国に対する請求については無期の拘禁刑を科し得る犯罪に関連する場合、共助の実施のための条件に関し我が国と被請求国との間で合意がある場合を除き、被請求国は、当該実施により自国の重要な利益が害されるおそれがるとして共助を拒否することができるとされているが、共助の実施のための条件については、我が国と被請求国との間で各事案の具体的事情に基づいて適切に判断されるものであることに留意すること。(第11条1(b)関係)
  ウ 我が国における捜査、訴追その他の手続(司法手続を含む。)であって共助の請求の目的であるものの対象となる者について、欧州連合加盟国において同一の事実により確定判決を受けたことがある者であると認める場合には、被請求国は共助を拒否することができるとされているので留意すること。(第11条1(d)関係)
  エ この協定の発効前においては、共助犯罪にかかる行為が日本国内において行われたとした場合において、その行為が我が国の法令によれば罪に当たるものでないときは、共助をすることができなかったため、相互主義の観点から、いわゆる双罰性が欠如している行為について欧州連合加盟国に共助の実施を求めることは事実上不可能であった。しかし、この協定の発効により、オーストリア共和国及びハンガリーを除く欧州連合加盟国にあっては、双罰性が欠如している場合であっても、請求された共助の実施に当たり強制措置が必要でない限り、双罰性の欠如を理由に共助を拒否することができなくなり、我が国としては、実施を求めることができる共助が拡大することとなる。また、共助の実施に当たり強制措置が必要である場合であっても、オーストリア共和国及びハンガリーを除く欧州連合加盟国の裁量により我が国の請求した共助を実施することは妨げられない。共助の請求の依頼を検討するに当たっては、これらの点に留意すること。(第11条2関係)
  オ 共助については、これまで外交上の経路を通じて行うことが一般的であったが、この協定の締結により、共助に関する連絡を各国の指定する中央当局間で直接行うことにより、共助の迅速化が期待される。
 我が国による請求については、警察官又は皇宮護衛官により送付された請求に関連する中央当局は、国家公安委員会又は国家公安委員会が指定する者となる。国家公安委員会は、警察庁刑事局組織犯罪対策部国際捜査管理官(以下「警察庁国際捜査管理官」という。)を中央当局に指定したので、警察庁刑事局の所掌に属する事件に関してこの協定に基づく共助の請求をすることが適当であると認められるときは、警察庁国際捜査管理官に共助の請求を依頼すること。警察庁刑事局の所掌に属する事件以外の事件に関してこの協定に基づく共助の請求をすることが適当であると認められるときは、警察庁主管課を経由して警察庁国際捜査管理官に共助の請求を依頼すること。(第4条関係)
  カ この協定に基づく共助の請求に当たっては、協定第8条3に掲げる事項を通報すること、同条4に掲げる事項のうち当該共助に関連性を有すると認めるものについて可能な限り通報すること及び同条5に掲げる事項のうち必要と認めるものについても通報することとされているところ、共助の請求の依頼に当たり留意すること。(第8条関係)
(3)欧州連合加盟国による請求関係
 請求された共助の実施が我が国において進行中の捜査等の手続を妨げると認める場合には、当該実施を保留し、又は必要と認める条件を請求国との協議の後に付すことができるとされているので、共助の実施が進行中の捜査を妨げるような状況がある場合には、直ちに警察庁国際捜査管理官に連絡し、調整を受けること。(第10関係)
4 共助の請求の依頼に係る留意事項
(1)共助の請求の依頼を検討する事件を認めた場合は、刑事部捜査第二課長(以下「捜査第二課長」という。)及び警察本部事件主管課長に報告すること。
(2)捜査第二課長は、警察庁刑事局の所掌に属する事件に関して、この協定に基づく共助の請求をすることが適当であると認めるときは、警察庁国際捜査管理官に共助の請求を依頼すること。
(3)警察本部事件主管課長は、警察庁刑事局の所掌に属する事件以外の事件に関してこの協定に基づく共助の請求をすることが適当であると認められるときは、捜査第二課長と協議の上、警察庁主管課長を経由して警察庁国際捜査管理官に、共助の請求を依頼すること。 
  

Copyright(C) 2006~ 鳥取県(Tottori Prefectural Government) All Rights Reserved. 法人番号 7000020310000