このたび、鳥取県議会議長選挙に立候補いたしました浜崎晋一でございます。立候補に当たりまして、一言所信を申し述べさせていただきます。
県議会議員としての4年の任期のスタートに当たり、私たちは、それぞれが県政課題に立ち向かう決意を新たにしているところでありますが、選挙期間中に多くの県民の皆様から聞こえてきた喫緊の課題は「人口減少」問題であります。本県の先月1日時点の推計人口は54万人を割り込みました。若者の県外流出にも歯止めがかかっておりません。これまでの県の先駆的な移住定住施策、子育て支援施策により一定の成果は上がっておりますが、「人口減少」は、県民生活に大きな影響を及ぼしております。私は、任期の間に、この大きな課題に向き合い、県議会としての取組成果を上げることが、県民からの負託に応えることであろうと認識しているところであります。
一方で、目の前の課題として、もう一つ言及せねばならないのは、新型コロナ感染症への対応であります。
これまで、100年に一度と言われる新型コロナ感染症の世界的な流行によって社会は混乱を来し、地方行政においてもその対応に明け暮れることとなりました。この3年にわたるコロナ禍によって明らかとなったのは、国レベルで保健・衛生・医療の体制が危機に対して脆弱だったことであります。また一方で、目に見えないウイルスとの戦いの中で、ともすれば思いやりや人権意識を欠く社会の歪みを目の当たりにしたところであります。
我々日本国民、鳥取県民は、人と人との絆、心と心の繋がりを取り戻し、もう一度「支え愛」の社会を再構築していくよう努力していかなければなりません。病気や障がい、個性や考え方の違いを乗り越えて、お互いを大切に思いやる共生社会の実現に取り組まなければなりません。新型コロナにおける感染症法上の分類が見直された今、改めて確固たる医療提供体制を構築するとともに、誰一人取り残さない温もりのある社会を目指していくために、地方議会としても真摯に取り組んでいかなければならない、そのように考えるところであります。
また、コロナ禍によって、飲食店など消費者に身近な業界を中心に県内産業は大きな打撃を受けました。そのような中、昨年2月に勃発したロシアによるウクライナへの侵略戦争は1年を過ぎてなお終結を見通せません。ウクライナ戦争や円安など国際情勢に端を発する燃油や物価の高騰、肥料飼料、輸入資材などの需給逼迫により、農林水産業をはじめとする様々な分野の事業者の経営や県民個々の家計にも影響を及ぼす事態を招いたところであります。
直近の課題は、こうした状況から早急に地域経済を立て直していくことであり、アフターコロナとして社会を正常化していく中で、財政健全化と並行して県民生活の質的向上を図っていく必要があります。
さらには、コロナ禍によって自然回帰・地方回帰という本県にとって追い風となる社会の価値観変容があるとされる一方で、人と人との繋がりが希薄化し、互助・共助の地域コミュニティや「地域の生活力」が衰え、立ち直ることが難しい局面を迎えているとさえ考えられるところであります。
高度経済成長期以来、極端に進む都市部と地方との格差をいかに解消していくかという課題に折り重なるように、我が国はかつて経験したことのない少子高齢化・人口減少の大きなうねりの中にあり、本県はその影響を大きく受けております。その危機的状況の現れが、鉄道の赤字地方路線の存廃やスーパー撤退などの問題であります。
将来に向けた地方創生の主役となるべき中山間地域が、生活基盤の存続危機に直面している今、県議会に求められるのは、地域の力の再興に向けて様々な視点や分野から調査・検討を行い、地域の担い手となる若者の活力を生かしながら、安心・安全な県民の暮らしを守るための政策提言を、県政史上最長となる5期目を迎えた平井県政に対して投げかけ、また、自らその答えを模索していくことであると考えます。そのためにも、二元代表制の一翼を担う県議会は、委員会活動の活性化などにより、県民の生活視点に立って厳格に県政に対してチェックを行うなど、議会の監視機能だけでなく、政策立案機能をさらに充実・強化していくべきであります。
議会改革について申し上げれば、今般の知事選・県議選において、投票率が初めて50%を下回り、低下傾向に歯止めがかからない状況に、私は県議会の存在意義、さらに言えば民主主義の根底すら揺るがしかねないという強い危機感を持っています。このことについて議員各位も想いは同じではないかと思います。
これまでの議会改革のあり方や方向性について改めて点検することが必要ですが、常任委員会活動における出前県議会などを通じて、県民の声なき声にも真摯に耳を傾け、県政に反映していくという、県議会の本来の役割を県民に理解していただくことが第一歩だと考えます。
また、高校生議会をはじめ、若者に地方自治の入口として議会や政治に関心を持ってもらうための取組を行うとともに、会派を超えた若手議員の活躍の場をつくるなど、議会の活性化を図ると同時に、情報発信を通じて、将来に向けた多様な人材の議員のなり手確保に繋げていくよう取り組むべきであると考えます。
最後に、昨年7月には安倍晋三元内閣総理大臣が国政選挙の期間中に凶弾に倒れるという、決して赦すことのできない事件が発生しました。また先月には同様に、遊説先の岸田総理に向けて爆発物が投げつけられるという事態が生じたところであります。 我々地方議会においても、こうした民主主義の根幹を揺るがす暴力行為に断固屈してはならず、言論によって議論し民主的な合意形成を図る社会を体現していかなければなりません。
改めて申し上げるまでもなく、先ごろ地方自治法が改正され、議会は住民の負託を受けた意思決定の議決機関であるものとして、地方議会の役割が明記されたところであります。その議会を代表する議長は、職務の遂行に際して住民によって選ばれた個々の議員や各会派のご意見を真摯に受け止めるべきであります。私は、今ここで申し上げた鳥取県議会が直面する責務、果たすべき役割を実現すべく、議会制民主主義の本旨に則り公正中立を旨とした議会運営に努めていきたいと思います。
議員各位におかれましては、ご理解とご支持を賜りますよう心からお願い申し上げ、このたびの議長選挙に当たっての所信表明とさせていただきます。
令和5年5月10日
鳥取県議会議員 浜崎 晋一