暴力団排除等のための部外への情報提供について

暴力団排除等のための部外への情報提供について(例規通達)

平成24年7月13

鳥組例規第8号

改正 平成26年鳥組例規第2号、令和4年鳥務例規第3号

 対号 平成1210月5日付け鳥捜二例規第6号 暴力団排除等のための部外への情報提供について(例規通達)

 平成23年4月1日、鳥取県暴力団排除条例(平成23年鳥取県条例第3号。以下「条例」という。)が施行され、事業者がその行う事業に関し、取引等の相手方が暴力団員に該当するかどうかを確認するよう努力義務が定められたところである。また、暴力団が資金獲得のために介入するおそれのある建設、銀行等の業界を中心として、暴力団員に加え、元暴力団員等を各種取引から排除する仕組みの構築が進んでいる状況にある。一方、暴力団は、事業者等の暴力団排除の動きに対して、暴力団関係企業や暴力団と共生する者を通じて様々な経済取引に介入して資金の獲得を図るなど、その組織又は活動の実態を多様化・不透明化させている状況にある。このため、事業者から、これらの者に関する情報提供を求める要望が強いことから、条例においても事業者に対し、必要な支援を行うことが県の責務として規定されているところである。

 これまで、暴力団排除等のための部外への情報提供については、対号例規通達により実施してきたところであるが、昨今の情勢の変化に的確に対応し、社会からの暴力団の排除を一層推進するため、暴力団情報の部外への提供について、下記のとおり定め、平成24年7月13日から施行することとしたので、運用上留意されたい。

 なお、対号例規通達は、平成24年7月12日限り廃止する。        

第1 基本的な考え方

1 組織としての対応の徹底

 暴力団情報の提供については、個々の警察官が依頼を受けて個人的に対応するのではなく、必ず、提供の是非について刑事部捜査第二課長(以下「捜査第二課長」という。)又は警察署長の責任において組織的な判断を行うこと。

2 情報の正確性の確保

 暴力団情報を提供するに当たっては、その内容の正確性が厳に求められることから、必ず刑事部捜査第二課(以下「捜査第二課」という。)に設置されている警察庁情報管理システムによる暴力団情報管理業務により暴力団情報の照会を行い、その結果及び必要な補充調査の結果に基づいて回答すること。

3 情報提供に係る責任の自覚

 情報の内容及び情報提供の正当性について警察が立証する責任を負わなければならないとの認識を持つこと。

4 情報提供の正当性についての十分な検討

 暴力団員等の個人情報の提供については、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)及び鳥取県個人情報保護条例(平成11年鳥取県条例第3号)の規定に従って行うこと。特に、相手方が行政機関以外の者である場合には、法令の規定に基づく場合のほかは、当該情報が暴力団排除等の公益目的の達成のために必要であり、かつ、警察からの情報提供によらなければ当該目的を達成することが困難な場合に行うこと。

第2 積極的な情報提供の推進

1 暴力団犯罪の被害者の被害回復訴訟において組長等の使用者責任を追及する場    合や、暴力団事務所撤去訴訟等暴力団を実質的な相手方とする訴訟を支援する場  合は、特に積極的な情報提供を行うこと。

2 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)及び債権管理回収業に関する特別措置法(平成10年法律第126号)のように提供することができる情報の内容及びその手続が法令により定められている場合又は他の行政機関、地方公共団体その他の公共的機関との間で暴力団排除を目的として暴力団情報の提供に関する申合せ等が締結されている場合には、これによるものとする。暴力団排除を目的として組織された事業者団体その他これに準ずるものとの間で申合せ等が締結されている場合についても、同様とする。

 なお、各警察署においてこの申合せ等を結ぶ場合には、事前に捜査第二課長に報告の上、協議すること。

3 条例上の義務履行の支援、暴力団に係る被害者対策、資金源対策の視点や社会経済の基本となるシステムに暴力団を介入させないという視点からは、第3に掲げる基準に従いつつ、可能な範囲で積極的かつ適切な情報提供を行うものとする。

4 事業者に対する積極的な情報提供                       

 条例上の義務履行を行う事業者に対し、取引等の相手方の暴力団情報を提供する場合、事業者からの要望があれば、取引等の相手方の属性(暴力団員なのか、共生者なのか等の区分をいう。以下同じ。)についても情報提供を行うこと。警察の情報提供に基づき、事業者が相手方に契約の拒絶を申し向ける際、事業者が警察からの情報提供を受けている旨を相手方に通告することを認める。この場合、原則として事前に警察に相手方の通告に関する相談があった場合とし、事業者の自主的な暴力団排除に対する取組を、警察として全面的に支援するという立場を明確にすること。                         

第3 情報提供の基準等

1 情報提供の基準

 暴力団情報については、警察は厳格に管理する責任を負っていることから、情提供によって達成される公益の程度によって、情報提供の要件及び提供できる範囲・内容が異なってくる。

 そこで、次の(1)(2)及び(3)の観点から検討を行い、暴力団対策に資すると認められる場合は、暴力団情報を当該情報を必要とする者に提供すること。

(1) 提供の必要性         

 ア  条例上の義務履行の支援に資する場合その他法令の規定に基づく場合

  条例では、事業者がその行う事業に関し、暴力団の威力を利用すること及び暴力団員若しくは暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者又はこれらの者が指定した者に対する利益の供与の禁止を規定していることや、暴力団員、暴力団準構成員、共生者及び暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有する者との一切の関係を遮断する努力義務を規定していることから、取引等の相手方がこれらの者に該当しないことを確認するなど条例上の義務を履行するために必要と認められる場合には、その義務の履行に必要な範囲で情報を提供するものとする。

 その他法令の規定に基づく場合についても、当該法令の定める要件に従って情報を提供するものとする。    

 イ  暴力団による犯罪、暴力的要求行為等による被害の防止又は回復に資する場合

  情報提供を必要とする事案の具体的な内容を検討し、被害が発生し、又は発生するおそれがある場合には、被害の防止又は回復のために必要な情報を提供するものとする。

 ウ  暴力団の組織の維持又は拡大への打撃に資する場合

  暴力団の組織としての会合等の開催、暴力団事務所の設置、加入の勧誘、名誉職への就任や栄典を受けること等による権威の獲得、政治・公務その他一定の公的領域への進出、資金獲得等暴力団の組織の維持又は拡大に係る活動に打撃を与えるために必要な場合その他暴力団排除活動を促進する必要性が高く暴力団の組織の維持又は拡大への打撃に資する場合には、必要な情報を提供するものとする。

(2) 適正な情報管理                      

  情報提供は、その相手方が、提供に係る情報の悪用や目的外利用を防止するための仕組みを確立している場合、提供に係る情報を他の目的に利用しない旨の誓約書を提出している場合その他情報を適正に管理することができると認められる場合に行うものとする。

(3) 提供する暴力団情報の範囲

 ア  (1)アの場合

 条例上の義務を履行するために必要な範囲で情報を提供するものとする。   

 この場合において、第一に、情報提供の相手方に対し、契約の相手方、契約の媒介をする者又はその関係者が、条例に規定された規制対象者等の属性のいずれかに該当する旨の情報を提供すれば足りるかを検討すること。

 イ (1)イ及びウの場合                        

 次の()()()の順に慎重な検討を行う。

       () 暴力団の活動の実態についての情報(個人情報以外の情報)の提供

     暴力団の義理掛け(出所祝い等の行事を盛大に挙行して団体の威力を誇示するとともに資金を集めることをいう。)が行われるおそれがあるという情報、暴力団が特定の場所を事務所としているという情報、傘下組織に     係る団体の名称等、個人情報以外の情報の提供によって足りる場合には、これらの情報を提供する。

       (暴力団員等該当性情報の提供

         ()によって公益を実現することができないかを慎重に検討した上で、相談等に係る者の暴力団員等(暴力団員、暴力団準構成員、元暴力団員、共生者、暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有する者、総会屋及び社会運動等標ぼうゴロをいう。以下同じ。)への該当性に関する情報(以下「暴力団員等該当性情報」という。)を提供することを検討する。

       ()()以外の個人情報の提供            

          ()によって公益を実現することができないかを慎重に検討した上で、それでも公益の実現のために必要であると認められる場合には、住所、生年月日、連絡先その他の暴力団員等該当性情報以外の個人情報を提供する。

          なお、前科・前歴情報は、そのまま提供することなく、被害者等の安全確保のために特に必要があると認められる場合に限り、過去に犯した犯罪の態様等の情報を提供すること。また、顔写真の交付は行わないこと。

2 提供する暴力団情報の内容に係る注意点                  

(1)  指定暴力団以外の暴力団について

  指定暴力団以外の暴力団のうち、特に消長の激しい規模の小さな暴力団については、これが暴力団、すなわち「その団体の構成員が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体」(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第2号)に該当することを明確に認定できる資料の存否について確認すること。

(2)  暴力団準構成員、元暴力団員等の場合の取扱い

ア  暴力団準構成員

  暴力団準構成員については、当該暴力団準構成員と暴力団との関係の態様及び程度について十分な検討を行い、現に暴力団又は暴力団員の一定の統制の下にあることなどを確認した上で、情報提供の可否を判断すること。

 イ 元暴力団員

 現に自らの意思で反社会的団体である暴力団に所属している構成員の場合と異なり、元暴力団員については、暴力団との関係を断ち切って更生しようとしている者もいることから、過去に暴力団員であったことが法律上の欠格要件となっている場合や、現状が暴力団準構成員、共生者、暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有する者、総会屋及び社会運動等標ぼうゴロとみなすことができる場合は格別、過去に暴力団に所属していたという事実だけをもって情報提供をしないこと。

 ウ 共生者

 共生者については、暴力団への利益供与の実態、暴力団の利用実態等共生関係を示す具体的な内容を十分に確認した上で、具体的事案ごとに情報提供の可否を判断すること。

 エ 暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有する者

 「暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有する者」とは、例えば、暴力団員が関与している賭博等に参加している場合、暴力団が主催するゴルフコンペや誕生会、還暦祝い等の行事等に出席している場合等、その態様が様々であることから、情報提供に係る対象者と暴力団員とが関係を有するに至った原因、当該対象者が相手方を暴力団員であると知った時期やその後の対応、暴力団員との交際の内容の軽重等の事情に照らし、具体的事案ごとに情報提供の可否を判断する必要があり、暴力団員と交際しているといった事実だけをもって漫然と「暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有する者である」といった情報提供をしないこと。

 オ 総会屋及び社会運動等標ぼうゴロ

 総会屋及び社会運動等標ぼうゴロについては、その活動の態様が様々であることから、漫然と「総会屋である」などといった情報提供をしないこと。

 情報提供が求められている個別の事案に応じて、その活動の態様について十分な検討を行い、現に活動が行われているか確認した上で情報を提供すること。

 カ 暴力団の支配下にある法人

 暴力団の支配下にある法人については、その役員に暴力団員等がいることをもって漫然と「暴力団の支配下にある法人である」といった情報提供をするのではなく、役員等に占める暴力団員等の比率、当該法人の活動実態等についての十分な検討を行い、現に暴力団が当該法人を支配していると認められる場合に情報を提供すること。

 キ ウからカまでに関する情報提供については、警察庁に事前報告をする必要    があることから、即答は避け、後日回答する旨を相談者に伝えること。   3 公益財団法人鳥取県暴力追放センターに対する情報提供について

 公益財団法人鳥取県暴力追放センター(以下「センター」という。)に対して相談があった場合も、捜査第二課において1に掲げる情報提供の基準に従って判断した上で必要な暴力団情報をセンターに提供し、センターが相談者に当該情報を告知することとする。

第4 情報提供の方式                 

1 第3の1(1)アによる情報提供を行うに当たっては、その相手方に対し、情報提供に係る対象者の住所、氏名、生年月日等が分かる身分確認資料、取引関係を裏付ける資料等の提出を求めるとともに、提供に係る情報を他の目的に利用しない旨の誓約書の提出を求めること。

2 公務員、弁護士等情報提供の相手方に職務上の守秘義務がある場合等、情報の適正な管理のために必要な仕組みが整備されていると認められるときは、情報提供を文書により行うことができる。ただし、それ以外の場合においては、口頭による回答にとどめること。

3 情報提供は、原則として、当該情報を必要とする当事者に対して、その相談等の性質に応じた範囲内で行うものとする。ただし、情報提供を受けるべき者の委任を受けた弁護士に提供する場合その他情報提供を受けるべき者本人に提供する場合と同視できる場合はこの限りでない。

第5 暴力団情報の提供に係る記録の整備

1 記録の整備

  捜査第二課及び警察署の暴力団対策担当課においては、情報の適正な管理に万全を期するため、部外への暴力団情報の提供(警察部内の暴力団対策担当部門以外の部門から部外への暴力団情報の提供について協議を受けた場合を含む。)に関し、第3の基準による判断を行ったときは、情報提供の求めの概要、提供の是非についての判断の理由、結果等について、暴力団情報提供記録簿(別記様式)へ確実に記録し、所属長の決裁を受けること。また、警察署にあっては、速やかに捜査第二課長に報告すること。

 2 決裁

   部外への情報提供に当たっては、常に所属長又はこれに相当する上級幹部が実際に最終判断を下し、決裁するものとする。ただし、情報提供を行うことについて緊急かつ明確な必要が認められる場合においては、事後に報告することとしても差し支えない。

 3 照会・回答状況の定期的な把握

       部外からの暴力団情報に係る照会及びそれに対する警察の回答状況については、情報の適正な管理に万全を期するため、捜査第二課において定期的に把握すること。

 

  

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