犯罪被害者支援のための具体的施策

被害者への情報提供

  • 被害者の手引の作成・配布 

  犯罪の被害や交通事故の被害に遭われた方は、

   ○捜査や裁判がどのように進むのか
   ○ 利用できる制度にはどのようなものがあるのか
などがわからず、困惑されることと思います。 そこで、殺人や傷害、強姦など身体犯の事件や交通事故の被害に遭われた方、遺族の方のために、必要な情報を包括的に分かりやすく解説したパンフレット「被害者の手引」を作成し、配布しています。  
 内容としては、   
   ○ 刑事手続の流れと被害者の方へのお願い
   ○ 被害者連絡制度・連絡捜査員
   ○ 犯罪被害給付制度の概要
   ○ 民事上の損害賠償請求制度の概要
   ○ 援助、救済制度の概要
   ○ 各種相談窓口(警察のほか関連機関、団体など)
が盛り込まれており、このほか、交通事故の被害者、遺族の方に対して、
   ○ 自動車損害賠償責任保険等の自動車保険制度や自動車損害賠償保
  障事業等の情報
も提供しています。加害者に対する損害賠償請求は、刑事手続と別個のものですので、警察は直接関与することはできませんが、弁護士会の窓口等を紹介するなど、被害者が損害賠償請求を行うに当たって、その一助となるよう努めています。

  • 被害者連絡制度

  被害者の方は、捜査の状況はどうなっているのか、犯人はだれなのか、犯人の処分はどうなったのかなど捜査の状況に大きな関心を持っておられることと思います。  
  警察では、
   ○ 殺人、傷害、強姦等の身体犯の被害者又は遺族の方
   ○ ひき逃げ事件の被害者や遺族の方又は交通死亡事故の遺族の方
を対象として、事件を担当している捜査員などが、次の事項について連絡します。
   ○ 被疑者(犯人と思われる者)検挙の旨
   ○ 被疑者の氏名、年齢等 (注1)
   ○ 被疑者の処分状況 (注2)   
        (1)送致先検察庁   
        (2)起訴、不起訴などの処分結果   
        (3)起訴された裁判所   

(注1) 被疑者が少年の場合でも、原則として成人事件と同様の方法により連絡を行っています。ただし、健全育成の観点から、その保護者の氏名等の連絡にとどめる場合があります。
(注2) 被疑者を逮捕せずに事件送致した場合は、送致先検察庁のみ なお、事件のことを思い出したくないため、情報提供を望まない方もおられることから、被害者連絡は、あくまで被害者や遺族の方の意向をくんで行っています。

  • 地域警察官による被害者訪問・連絡活動

  交番、駐在所の地域警察官は、その受持ち地区に居住する被害者の方の再被害を予防し、その不安感を解消するため、被害者の方の要望に基づき、訪問・連絡活動を実施しています。  
  この訪問・連絡活動では、
   ○ 被害の回復、拡大防止等に関する情報の提供
   ○ 防犯上の指導連絡
   ○ 警察に対する要望等の聴取
   ○ 被害者等からの相談への対応
等を行っています。  
 また、被害の態様等によっては、必要に応じて、女性の警察官による訪問・連絡活動やパトロール等を行っています。


相談・カウンセリング体制の整備

  • 各種相談窓口の設置

(総合相談窓口)
 警察では、困りごと、悩みごとなどの各種の相談に応じる窓口として、各都道府県警察本部に警察総合相談室を設置しています。 また、電話による相談についても全国統一番号の相談専用電話「#9110番」を設置しており、警察総合相談室につながるようになっています。
(被害の内容に応じた相談窓口)
 総合相談窓口に加え、被害者の方のニーズに応じて、
  ○ 性犯罪被害相談
  ○ 少年相談
  ○ 悪質商法被害相談
  ○ 暴力団に関する被害相談
  ○ 交通事故相談
などの相談窓口を設けています。
 各都道府県警察の相談窓口←ここをクリック(警察庁ホームページへ)


  • カウンセリング体制の整備

 被害に遭われた方やその家族の方は、
  ○ 不安でたまらない
  ○ イライラする
  ○ 眠れない
  ○ 自分を責めてしまう
  ○ ぼーっとしてしまう
など、様々な心の問題を抱え、たいへんつらく苦しい思いをされていることと思います。 このような心の状態をより早く回復させるためには、専門的な知識、技能を持った専門家による対応が必要になります。  
 警察では、  
  ○ カウンセリングに関する専門的知識や技術を有する職員の配置
  ○ 精神科医や民間カウンセラーとの連携   
などにより、カウンセリング体制を整備し、その精神的被害の回復を支援しています。


犯罪被害給付制度

 犯罪被害給付制度とは、通り魔殺人等の故意の犯罪行為により、不慮の死を遂げた被害者の遺族又は身体に障がいを負わされた被害者等に対して、社会の連帯共助の精神に基づき、国が犯罪被害者等給付金を支給し、その精神的、経済的打撃の緩和を図ろうとするものです。  
 この法律は、昭和49年8月30日に発生した三菱重工ビル爆破事件(死者8人、負傷者380人)を契機として、公的な犯罪被害者補償制度の確立の必要性が、国会、マスコミ等で大きく論議され、また、通り魔殺人事件の被害者の遺族、被害者学の研究者、弁護士会等からも、この制度の確立を求める声が高まったことを踏まえ、昭和55年5月1日に「犯罪被害者等給付金支給法」が制定され、昭和56年1月1日から施行されました。  
 平成7年に発生した地下鉄サリン事件等の無差別殺傷事件を契機に、被害者の置かれた悲惨な状況が広く国民に認識されるのに伴い、犯罪被害給付制度の拡充を始めとして被害者に対する支援を求める社会的な機運が急速に高まり、このような状況を踏まえ、支給対象の拡大や給付基礎額の引上げを中心とした法改正がなされ、平成13年7月1日から「犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律」が施行されました。  
 さらに、犯罪被害者等基本法(平成16年12月成立)及び犯罪被害者等基本計画(平成17年12月閣議決定)を踏まえ、重傷病給付金に係る支給要件の緩和、支給対象期間の延長等を内容とする政令改正及び親族間犯罪に係る支給制限の緩和を内容とする規則改正が行われ、それぞれ平成18年4月1日から施行されています。(平成18年4月1日以降発生した犯罪行為について適用されます。)  
犯罪被害給付制度←ここをクリック(警察庁ホームページへ)
 
対象となる犯罪被害■  
 本制度による支給の対象となる犯罪被害は、日本国内又は日本国外にある日本船舶若しくは日本航空機内において行われた人の生命又は身体を害する罪に当たる犯罪行為(過失を除く。)による死亡、重傷病又は障がいであり、緊急避難による行為、心身喪失者又は刑事未成年者の行為であるために刑法上加害者が罰せられない場合も、対象に含まれます。

給付金の種類と額■  
 給付金には、死亡した被害者の遺族に対して支給される「遺族給付金」と、犯罪行為により重大な負傷又は疾病を受けた方に対して支給される「重傷病給付金」、身体に障がいが残った方に対して支給される「障害給付金」の3種類があり、いずれも一時金として支給されます。  
 遺族給付金と障害給付金の額は、被害者の年齢や勤労による収入額等に基づいて算定されます。  
 重傷病給付金は、加療期間1月以上かつ、入院期間3日以上(犯罪被害に起因するPTSD等の精神疾患については、その症状の程度が3日以上労務に服することができない程度の場合は、入院期間がなくても対象となります。)の被害者の方に1年を限度として、保険診療による医療費の自己負担相当額等が支給されます。  
 また、遺族給付金についても、犯罪行為により生じた負傷又は疾病について被害者が死亡前に療養を受けた場合には、その負傷又は疾病から1年間における保険診療による医療費の自己負担相当額等が加算されて支給されます。(この場合は、加療及び入院要件は必要とされません。) 
 なお、犯罪行為によって被害を受けた場合でも  
  ○ 親族の間で行われた犯罪
  ○ 犯罪被害の原因が被害者にもあるような場合
  ○ 労災保険等他の公的給付や損害賠償を受けた場合
などについては、都道府県公安委員会の裁定により、給付金の全部又は一部が支給されないことがあります。 

捜査過程における被害者の負担の軽減

 被害者の方が、捜査によって、できるだけ精神的負担等の二次的被害を受けないよう、警察では、 
  ○ 被害者の方の精神的ショックや不安感などを踏まえた対応
  ○ 被害者の方から安心してご協力いただけるようなきめ細やかな配慮
に努めています。  
 具体的には、次のようなことです。 
被害の届出にあたって  多くの場合、事件発生後の110番通報など、被害者の方本人からの連絡により、警察は犯罪を認知します。被害者の方が、犯罪の被害に遭った旨警察に届け出ることを被害の届出といいます。
 被害届の受理にあたっては、被害者の気持ちに配慮した事情聴取を行い、被害届の受理に関連して被害者の方から各種相談を受けた場合は、対応策についての助言や関係機関の紹介など、適切な措置をとります。
現場臨場にあたって  被害者の方からの連絡などで警察が事件を認知した場合、捜査が開始され、事件を担当する捜査官が現場に向かいます。これを現場臨場といいます。
 緊急を要するときは、通常、パトカーや制服警察官が現場に急行して捜査を行います。
 しかし、現場臨場で被害者の方の自宅等に急行する際、性犯罪被害などパトカーが自宅等にくることを被害者の方が望まないような場合には、できる限り私服の警察官がパトカー以外の目立たない車両で赴きます。
 性犯罪、少年被害にかかる犯罪等、被害者の方ができるだけ事件のことを他人に知られたくないと思うような場合は、近隣者や報道機関に直接被害者を会わせないようにするなど、被害者の方が周囲の目にさらされないよう、特に注意してプライバシーに配慮します。
呼び出しにあたって  犯人を検挙するために必要がある場合、後日あらためて被害者の方に警察署などに出向くことを求めることがあります。
 被害者の方の協力が必要な事情聴取、実況見分などの際、被害者の方に「学校や会社を休めない」などの事情がある場合、警察署以外の施設を利用するなど、その都合をできるだけ考慮して日時等を選定します。
事情聴取にあたって  被害者の方に犯行の状況や犯人の様子などについての詳しい事情をたずねることを事情聴取といいます。
 事情聴取にあたっては、被害者の方の気持ちを理解し、十分な配慮をするよう努めます。また、被害者の方が話しやすいよう、施設の改善にも努めています。
 


































被害者相談室の整備■  
 被害者の方の事情聴取に当たっては、被疑者と同じ取調室を使うのでは、犯人扱いされた気分になるなど、二次的被害につながるおそれがあることから、応接セットを備えたり、照明や内装を改善したりするなどして、被害者の方が安心して事情聴取に応じられるような相談室の整備に努めています。  
被害者対策用車両の整備■  
 被害者の方は、警察署・交番等の警察施設に立ち入ること自体に抵抗を感じる場合があります。  このため、機動的に被害者の指定する場所に赴くことができ、かつ人目に触れないよう被害者の方のプライバシー保護などに配意しながら必要な事情聴取などを行えるよう、移動式被害者用事情聴取室ともいえる被害者対策用車両を導入して、被害者の方からの相談や届出の受理、事情聴取等に活用しています。    
指定被害者支援要員制度■  
 被害者の方に対する支援活動は、事件発生直後から必要となります。  そこで、専門的な被害者支援が必要とされる事案が発生したときに、捜査員とは別の指定された警察職員が、各種被害者支援活動を行う「指定被害者支援要員制度」が各都道府県警察で導入されています。

対象事件
  • 殺人、傷害、強姦などの身体犯
  • ひき逃げ事件、交通死亡事故
  • その他必要と認められる事件
任務

 ○ 付き添い
   ・ 事件発生直後早期に臨場し、自己紹介
   ・ 医師の診察が必要な場合の病院の手配、付添い
   ・ 実況見分の立会い
   ・ 自宅等への送迎
○ ヒアリング
   ・ 心配事の相談受理(身の回りの世話など)
   ・ 事情聴取や被害者調書の作成又はそれらの補助
○ 説明
   ・ 「被害者の手引」の交付
   ・ 刑事手続き等の説明
   ・ 家族、会社、学校などに対する説明、連絡
○ 民間の被害者支援団体、部外のカウンセラー等の紹介、引
 継ぎ 

などを必要に応じて行います。














    









その他の負担軽減策■  
 このほかにも、都道府県警察によっては、次のような制度を導入している場合があります。
  ○ 司法解剖後の遺体修復に係る経費の負担   
     司法解剖による切開痕等を目立たせないようにする措置に要する経費を
       公費で負担します。 
  ○ 司法解剖後の遺体搬送にかかる経費の負担   
     司法解剖後、遺体を専門の民間業者に委託して、遺族の希望する場所
      まで搬送するための経費を公費で負担します。 
    ○ 性犯罪被害者に係る緊急避妊等に要する経費の負担   
          性犯罪被害者の診断書料、初診料、検査費用、緊急避妊費用等を公費
      で負担します。 
    ○ 身体犯被害者の刑事手続における経費の負担   
         身体犯被害者の初診料、診断書料や、被害者が亡くなった場合、埋葬に
     必要な検案書を作成するための経費を公費で負担します。

被害者の安全の確保

 犯人から再び危害を加えられること等を防止するため、被害者の方の安全の確保に努めます。
  

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