全国の人身交通事故発生件数は、平成18年中は、886,864件、また、交通事故による死傷者は、1,104,551人を数えています。
交通事故の被害者や遺族の方が受ける被害については、従来、主として生命、身体、財産上の被害及び経済的被害が問題とされていましたが、近年、精神的被害についても国民の関心が高まり、また、交通事故被害実態調査研究委員会 注)による調査結果からも、交通事故の被害者又は遺族の受ける精神的被害(苦痛)が深刻であることが明らかとなっており、これを回復、軽減するため各種の対策を推進しています。
注)平成7年、8年に発生した死亡事故の遺族約500人、重傷事故の被害者約650人についてアンケート調査をおこなったもの
各都道府県警察本部及び警察署においては、「交通相談係」の表示を掲げて相談窓口を設置しています。この「交通相談係」では、交通事故の当事者からの相談に応じて、
- 保険請求、損害賠償請求制度の概要の説明
- 被害者援助、救済制度の概要の説明
- 各種相談窓口、被害者支援組織、カウンセリング機関の紹介
- 示談、調停、訴訟の基本的な制度、手続等の一般的事項の説明
などを行っています。
都道府県交通安全活動推進センター(都道府県交通安全協会内)で交通事故相談業務を実施しており、交通事故被害者、遺族の方等からの交通事故相談に応じています。
交通事故被害者、遺族の方等は、交通事故により、身体的、経済的被害のほか、精神的被害を受けることが多いことから、この交通事故被害者、遺族の方等に対する支援として、交通事故の保険請求、損害賠償請求、示談等の経済的被害の回復に関することだけでなく、カウンセリング等の精神的被害の回復に関することを内容とする交通事故相談に応ずる必要があります。そこで、都道府県交通安全活動推進センターでは、職員のほか、弁護士、カウンセラー等を相談員として配置し、交通事故の保険請求、損害賠償請求、示談等の経済的被害の回復に関してだけでなく、交通事故による精神的被害の回復に関しても、交通事故被害者、遺族の方等からの相談に応じ、適切な助言をしています。
平成17年度の全国の都道府県交通安全活動推進センターにおける交通事故相談活動の実施状況をみると、経済的被害の回復に関する相談を中心として、約1万9000回の相談に応じています。
なお、体制については、同年度末に相談員総数約190人となっています。
捜査過程における被害者に対する二次的被害を防止するため、事情聴取や被害者連絡等の実施に当たっては、不用意な言動や不適切な取扱いのないよう努めています。
- 事故原因の徹底究明に向けた適正な交通事故事件捜査の推進
最近、交通事故事件捜査の在り方をめぐって、交通事故の被害者、遺族の方から、「警察の事故原因の追及が不十分」との指摘がなされる事例が見受けられています。警察ではこれらの声を真摯に受け止め、警視庁及び道府県警察本部の交通捜査担当課に事故捜査指導官を配置して警察署に対する指導を強化するとともに、交通事故多発交差点に交通事故自動記録装置を設置し、被害者の方が死亡したり重体等で事情聴取ができない事故や当事者の言い分が食い違う事故に対し重点的に活用するなど、組織的かつ科学的な捜査を実施して、事故原因の徹底究明を図っています。
被害者や遺族の方から事故の事情聴取を行う場合には、その言い分を十分に聴取するとともに、遺族調書等を作成する場合においても、その意向に十分配意して、適切な時期に作成するなど、その心情に配意した捜査活動に努めています。