本年9月定例会において、当委員会が審査の付託を受けました議案第18号「平成17年度鳥取県営企業決算の認定について」及び議案第19号「平成17年度鳥取県営病院事業決算の認定について」、並びに今定例会において審査の付託を受けました議案第24号「平成17年度決算の認定について」、以上3議案につきましては、去る10月5日、決算審査特別委員会が設置されて以来、決算審査の結果を平成19年度の予算に反映させるべく精力的に審査等を行ってきたところでありますが、以下その経過及び結果をご報告申し上げます。
当委員会は、審査を能率的に行うため、総務警察、教育民生、経済産業、企画土木、県営企業、病院事業の6分科会を設けて審査を分担し、予算執行が議決の趣旨に沿い、適正かつ効率的に行われていたかについて、各部局ごとに、主管部局長等から決算の内容等についての詳細な説明を聞き、質疑、現地調査などの審査をしてまいりました。
その結果、付託された3議案はいずれも原案のとおり認定すべきものと決定いたしました。
なお、審査意見として、今後速やかに検討又は改善すべきものと決定した事項について申し上げます。
まず、第1点目は、県財政の健全化についてであります。
平成17年度の決算収支は、単年度収支や基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字が前年度に比べ減少しています。
しかし、三位一体改革の影響により国庫支出金及び地方交付税の身代わりである臨時財政対策債が大幅に減少するとともに、公債費や人件費等義務的経費の支出が高水準で推移するなど、非常に厳しい財政運営となっています。
また、臨時財政対策債を含めた県債残高はさらに増加しており、経常収支比率や公債費負担比率など財政指標をみても財政構造が一層硬直化していることがうかがえます。
変動する社会経済情勢や歳出・歳入一体改革などの国の財政施策の的確な把握と厳格な財政展望のもと、今後も歳入の確保と歳出の削減を徹底するとともに、長期にわたって継続されている事業についても費用対効果を検証するなど事業の選択と集中を図り、また引き続き組織の効率化に取り組むなど、県財政の健全化に一層努めるべきであります。
第2点目は、人事管理と連携した職員の資質向上についてであります。
複雑・多様化する行政需要に対応していくため、マネジメント能力や専門性など様々な能力をもった職員をバランスよく育成することが重要であり、次の分野における職員の資質向上について改善を検討されるべきであります。
まず、「総合療育センター」においては、障害児・者に対し、生涯を見通した継続的な療育が必要であり、より効果のある療育を行うためにも、児童指導員・保育士などの専門職員については、10年程度の継続した勤務が望まれます。あわせて、医療会計事務に携わる事務職員の異動についても、2年毎に行われる診療報酬改定時期と重ならないような配慮が必要であります。
また、理学療法士・作業療法士等については、専門職のスキルアップを図るためにも、県立病院との人事交流をより積極的に図るべきであります。
次に、「用地事務職員」については、平成15年度決算審査特別委員会の指摘を踏まえ、困難事例に対する組織的な対応のルール化や研修の充実が図られています。
しかし、各県土整備局における担当職員の継続勤務年数は平均2.38年、特に東部県土整備局は平均1.42年と短く、用地事務に精通していないことによる不適切な対応事例が発生しないとも限らない状況であり、少なくとも3年程度は継続して従事すべきであります。
また、職員のモチベーションを高めるよう配慮するとともに、用地事務の早期習得を図るため、配置初年度に集中的に用地に関する研修を実施すべきであります。
最後に、「企業局の管理職員」については、経営的感覚と責任、長期的視野をもって継続して業務に当たる必要があり、短期間での異動は改善すべきであります。
第3点目は、行政情報システムの利活用についてであります。
県民の利便性の向上、行政運営の簡素化、効率化等を目標に、各種の行政情報システムの構築が進められていますが、その中には利活用が低調であり、十分な効果をあげていないものがあります。
まず、「電子申請システム」については、県への申請・届出等行政手続きのオンライン化を目指して、平成16年度に総額2億円で、電子決裁・文書管理システムと一体的に整備されましたが、平成17年2月の運用から今年9月までの利用実績は、400件程度にとどまっています。
窓口での周知の強化や関係事業者団体等への働きかけなどを行うとともに、利用者の視点に立って、添付資料の電子化又は廃止・省略化、本人認証の簡素化、さらには手数料の軽減によるインセンティブの付与など積極的な方策を検討すべきであります。
次に、「地方税電子申告システム」については、平成16年度から20年度まで総額2億8千万円余りをかけて開発が進められており、今年1月からは、法人二税の申告システムが稼働しています。
しかし、今年8月末までの利用実績は、1%台にとどまっており、法人や税理士に対する意向調査結果からみても、今後利用率の大幅な増加は見込めない状況となっています。
運営開始から間もないことも踏まえ、利用団体等への周知、広報の徹底を図るとともに、利用者の視点に立って、電子署名の省略等による簡便化や参加市町村の拡大などシステムの利用改善を図るべきであります。
なお、市町村の早期参加及び経費削減を図るため、システムの開発について支援を検討すべきであります。
最後に、「総合行政ネットワーク」についてですが、このシステムは全国の都道府県、市町村が参加する行政専用のネットワークシステムであり、毎年全国総額で34億円(鳥取県は約7千万円)の運営経費を全都道府県が負担しています。
しかし、電子メールの活用を除いて、電子文書交換システムや共同利用システムなど、当初予定されていた高度な利活用は低調となっています。また国を含めた団体間の受益と負担の関係も曖昧と考えられます。
システムの効果的な活用策を検討するとともに、参加団体の一員として、運営経費の削減の徹底や国を含めた費用負担のあり方について総合的に検討し、運営主体へ必要な改善を働きかけるべきであります。
第4点目は、市町村の徴収能力向上に向けた支援についてであります。
国から地方への税源移譲が平成19年度から実施されることに伴い、特に収入未済額の6割を占める個人県民税について滞納額の増大が懸念されるところです。
この滞納額を圧縮し、収税確保を図るため、賦課徴収を担っている市町村の自主・自立性を確保しつつ、徴収能力の向上に向けた支援を強化すべきであります。
第5点目は、青少年育成対策についてであります。
近年、小中学校での不登校や高等学校での中途退学、10代の高い人工妊娠中絶率、若年のニート、引きこもりなど、青少年を取り巻く環境は予断を許さない状況にあります。
これらの問題の解消に向けて、青少年問題協議会、県・市町村、青少年育成鳥取県民会議や警察等の機関で取組みが行われておりますが連携が十分でなく、かつ各機関に非行防止、有害図書対応などのため民間協力者が設置されているものの、相互に連携したり、地域自治会を巻き込んだ取組みになっていないのが現状であります。
青少年育成に当たっては、各機関、各民間協力者がそれぞれの役割を果たしながら、相互に緊密な連携を図る必要があり、地域住民を含めてその体制の構築を早急に検討すべきであります。
また、県民会議においては、地域における、より細やかな活動を進めるため、現在旧市町村単位で1名設置されている青少年育成推進指導員を各校区ごとに設置するなど充実すべきであります。
第6点目は、わらべ館のあり方についてであります。
わらべ館においては、平成7年の開館以来、童謡・唱歌やおもちゃをテーマとした展示、イベント開催と特色のある地域文化の発信に努めていますが、既に開館から10年が経過し、近年、入場者数も伸び悩んでいる状況であります。
また、本年度、財団法人鳥取童謡・おもちゃ館が指定管理者制度で単独指名を受けた際には、人件費の削減とともにイベントなどの事業費の見直しや経費節減が図られたところですが、今後も、県及び鳥取市からの職員派遣を廃止し、すべて財団職員による運営とするなどの対応が考えられています。
しかし、現在の展示内容、イベント企画などのままでは、これ以上の集客を期待できないことから、集客機能、ミュージアム機能、社会教育機能といった視点を含めて、わらべ館のあり方を総合的に、かつ早急に検討すべきであります。
第7点目は、障害者就労支援についてであります。
県では鳥取県障害者就労事業振興センターに対し、運営費及び事業費の助成を行い、県西部を中心に就労機会や販路の拡大等について一定の成果あげています。
しかし、依然として授産施設及び小規模作業所における工賃の状況は、1人月額平均1万円前後であり、障害者が自立できる状態とはいえません。
就労機会や販路の拡大の取り組みをより効果的に推進するためには、障害者自身や施設関係者等のある程度の意識改革も必要でありますが、現在のセンターの体制では企業開拓など十分にできる体制とはいえません。
年々増加している授産施設等の運営を健全なものとするには、県の東部・中部にも振興拠点を設け、授産施設と企業との調整を行う機能の一層の強化を図るべきであります。
また、教育委員会において、「障害者の雇用の促進等に関する法律」で定めている法定雇用率 2.0%の未達成は全国的な傾向ではあるものの、その中でも本県は12番目に低く、わずか1.1%、48人しか雇用されていません。
県内企業も法定雇用率達成に向け努力している中、県として積極的な姿勢を示す必要があります。
障害の程度に応じた、幅広い職種での採用を早急に検討し、さらに障害者雇用によって子どもたちの人権意識の向上、ノーマライゼーションの推進が図られるよう積極的に取り組むべきであります。
第8点目は、地域間格差是正に向けた施策の展開についてであります。
本県における現在の経済状況をみると景気回復の実感がありません。都市部との地域間格差は拡大しており、この格差を是正し、景気回復をもたらすには、産業の下請け構造や公共事業依存型の経済構造を転換する必要があります。
このため、人材育成や起業家支援、並びに企業誘致、海外展開への支援等を重要施策として推進する必要があります。
経済構造の転換を短期間で実現することは困難ですが、喫緊の課題として取り組むべきものであり、今後における企業支援のあり方としては、地域の特色を生かした製品づくりを行う企業や、国内外に販路展開の出来る商品開発に取り組む企業を育成する対策に重点をおくべきであります。
さらに、交通アクセスを含めた産業基盤の整備を進めるとともに、県内への企業進出が積極的に進むよう支援施策を再検討すべきであります。
第9点目は、鳥取県造林公社への貸付についてであります。
造林公社への平成17年度の貸付額は約70億円であり、平成17年度末の借入金残高は、鳥取県からの借入金約216億円、農林漁業金融公庫からの借入金約88億円、合計約304億円もの多額な残額となっています。
この資金貸付は今後約40年以上続けられ、その後返済を受けることとなりますが、現在の木材市況を踏まえて、減損会計の原則により公社の資産価値を正確に評価し、財務状況を確認するとともに、今後の公社の財務状況を推計することにより、後世に重い負担を背負わせることのないよう対策を講じる必要があります。
ついては、現在の支援制度が今後の公社の財務状況を踏まえて適当であるか検討すべきであります。
第10点目は、学校の外部評価制度の充実についてであります。
県立学校の外部評価については、平成17年度に15校が独自に実施していますが、早急に全ての県立学校において実施し、学校運営や教育活動の充実に取り組むべきであります。
また、外部評価を実施する際は、その基礎となる自己評価について、学校の本来の主役である生徒の視点での評価を何らかの形で取り入れることも検討すべきと思われます。
さらに、教育委員会においては、各学校に対して制度導入の趣旨を一層徹底するとともに、学校運営の質的向上につながる制度となるよう、取組みの結果や課題を十分検証すべきであります。
第11点目は、鳥取聾学校ひまわり分校の施設整備についてであります。
鳥取聾学校ひまわり分校では、県西部地域のニーズに応えて、平成16年度に小学部が開設されましたが、在学中の子どもたちや保護者から中学部の開設が望まれているところであり、現在、小学部在籍の最高学年は3年生であることから早急に検討すべきであります。
また、ひまわり分校にはグラウンドがなく、必要な場合は近隣の福祉施設や小学校を利用している状況であり、日頃から野球やサッカーなど、のびのびとプレーできるような環境整備についても早急に検討すべきであります。
第12点目は、 企業局の経営改善の取組みについてであります。
企業局では、業務の見直しや、外部委託等による電気技師、現業職員等の人員削減並びに特殊勤務手当ての見直しによる人件費の削減を行うとともに、修繕点検に係る周期を延長することによる修繕費や委託料の削減を図るなど、経営改善の努力は評価すべきものであり、引き続き組織・業務の効率化、コストの削減に取り組むべきであります。
さらに、電気、水道は県民のライフラインであることを踏まえて、危機管理に支障の無いように万全を尽くすべきであります。
また、災害時等の緊急事態の対応を迅速に行うため、技術を持った退職者の再雇用を検討すべきであります。
第13点目は、自然エネルギーの位置づけについてであります。
鳥取県内で消費される電力の約9割は、県外からの送電で賄われており、県内のエネルギー自給率の向上は重要であります。
近年の地球温暖化問題等の視点を踏まえ、自然エネルギーへの転換は、今後ますます重要となっており、企業局においても平成17年12月から鳥取放牧場風力発電所が操業を開始するとともに、風力発電の新たな事業展開を視野に入れ、数箇所で調査を行っています。
しかし、現在、風力発電は、民間との競争も激しいことから、風力以外の新たな自然エネルギー開発や既存ダムを活用した水力発電の可能性も検討し、県内のエネルギー自給率の向上を図るべきであります。
第14点目は、 鳥取地区工業用水道事業の販路拡大についてであります。
鳥取地区工業用水道の水利権は、日量2万7,900立方メートルであり、殿ダム完成後の平成24年度には給水能力の拡大が予定されていますが、現在のところ日量1万立方メートルを2社に供給するのみとなっています。
現在、企業に対する工業用水需要のアンケート調査を実施していますが、これを早期に取りまとめ、需要見込みを把握するとともに、既存企業はもとより、病院、学校、老人施設等の建替え時をにらんで、工業用水への転換による効果的な経営プランを提示するなど、早期に販路拡大に向けた取組みを強化すべきであります。
また、企業誘致による販路拡大に向けて、関係部局と連携し、立地条件の優位性や既存企業との連携による付加価値を提案する中で、工業用水活用の有利性を提示するなど、企業局が先頭に立ち、責任を持って進めるべきであります。
第15点目は、埋立地の販売促進についてであります。
平成17年度の売却面積は4,800平方メートル余にとどまり、年度末の未利用地は、竹内団地で17万7,000平方メートル、米子崎津団地で24万5,000平方メートルと、依然として厳しい経営環境となっています。
景気が僅かながら上向きとなっている現在、新規の企業訪問のみならず、以前に訪問した企業に対しても、将来的なアクセス基盤の整備構想や、既存企業
との連携による付加価値など、企業進出に向けた新たな提案を検討され、関係部局と協力し、積極的な企業訪問を進めるべきであります。
また、企業誘致が他県と競合し、結果的に他県に進出した事例がありますが、価格条件等の比較検証を行い、次の販売戦略の参考にすべきであります。
さらに、関係機関等と連携を密にし、売却促進に向けた取組みについて抜本的な検討を早期に行うべきであります。
第16点目は、7対1看護、すなわち入院患者7人に対し看護師1人を配置することの実現についてであります。
平成17年度の県営病院事業の決算は、全体では黒字となっているものの、特別損益を除く経常収支は赤字で、一層の経営改善が必要であります。
一方で、医療サービスの質的向上と医療事故の発生防止のためには、医師、看護師をはじめとする医療従事者の過重労働の軽減も必要であります。
平成18年4月の診療報酬改定により、従来の最高水準の10対1看護より手
厚い7対1看護の区分が新設されましたが、高度な医療サービスの提供は、結果として入院診療単価を上げ、経営改善に結びつくものであります。
このため、看護師の定数増により7対1看護を早期に実現するとともに、その実現に向けて非常勤看護職員の常勤化などの処遇改善や、在宅有資格者を雇用するためのシステムづくりに積極的に取り組むべきであります。
第17点目は、臨床研修医の確保についてであります。
両県立病院とも医師の増員を図られているところでありますが、平成18年4月1日現在でなお各2名の欠員を生じており、今後とも医師不足の状況が危惧されます。
医師を確保するためには、臨床研修医及び専攻医の確保が重要であります。
臨床研修医の多くは、研修実績のある病院で多くの仲間と一緒に研修することを希望しているため、魅力ある病院づくりはもとより、両病院で協力して研修内容の充実を図るなど、臨床研修医及び専攻医の確保に努力すべきであります。
最後は、 救急医療の充実と地域医療機関との機能分担についてであります。
県立病院は、公的医療機関でなければ対応することが困難な高度医療、救命救急医療、小児救急医療、災害医療などの重要な役割を担っており、その使命を果たすためには、救急専門医の複数配置を図るなど、急性期病院としての機能を高める必要があります。
このため、この県立病院の果たすべき役割・使命を広く県民に周知するとともに、地域の開業医や他の病院と連携して、機能分担を進めるべきであります。
審査意見は、以上であります。
なお、ただいま申し上げました指摘事項に対する対応状況並びに来年度予算への反映状況については、閉会中もこれを継続調査すべきものと決定し、別途議長に申し出ておきました。
これをもちまして、本委員会の審査結果の報告を終わります。
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