平成20年3月11日
鳥少例規第2号
改正 平成21年鳥少例規第5号、平成24年鳥務例規第23号、平成25年鳥少例規第6号、平成28年鳥刑企例規第1号、令和2年鳥務例規第3号、令和4年鳥務例規第2号、令和4年鳥少人例規第4号、令和5年鳥少人例規第3号
対号 平成14年12月18日付け鳥生企例規第20号 少年警察活動推進上の留意事項等について(例規通達)
少年警察活動については、少年警察活動規則(平成14年国家公安委員会規則第20号。以下「規則」という。)及び対号例規通達に基づき実施してきたところであるが、少年法等の一部を改正する法律(平成19年法律第68号。以下「改正法」という。)、少年法第六条の二第三項の規定に基づく警察職員の職務等に関する規則(平成19年国家公安委員会規則第23号。以下「警察職員の職務等に関する規則」という。)及び少年警察活動規則の一部を改正する規則(平成19年国家公安委員会規則第24号)の制定に伴い、新たに少年警察活動推進上の留意事項について下記のとおり定め、平成20年3月11日から施行することとしたので運用上誤りのないようにされたい。
なお、対号例規通達は、平成20年3月10日限り廃止する。
記
第1 基本的事項
1 少年警察活動の根拠法令(規則第1条第2項関係)
少年警察活動に関しては、警察法(昭和29年法律第162号)、警察官職務執行法(昭和23年法律第136号)、少年法(昭和23年法律第168号)、刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)、児童福祉法(昭和22年法律第164号)、児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号)、犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則第2号。以下「規範」という。)、規則その他の法令並びに鳥取県青少年健全育成条例(昭和55年鳥取県条例第34号)がその根拠として挙げられる。
2 少年警察活動の基本(規則第3条関係)
少年警察活動を行うに際しては、次に掲げる事項を基本とする。
(1) 健全育成の精神(第1号関係)
少年警察活動の目的である「少年の健全な育成」を期する精神をもって当たるとともに、少年の「規範意識の向上及び立直りに資する」よう配意するものとする。「規範意識の向上」は、少年の非行の防止に不可欠な要素であり、また、「立直り」とは、非行少年及び不良行為少年が立ち直ることのみならず、被害少年がその精神的打撃から立ち直ることも含むものである。少年警察活動を行うに当たっては、少年が立ち直ってこそ「少年の健全な育成」という最大の目的が達成されることに留意すること。また、少年警察活動に携わる者は、「少年の健全な育成」を期するため、人格の向上と識見の涵養に努め、少年及び保護者その他の関係者の信頼が得られるように努めるものとする。
(2) 少年の特性の理解(第2号関係)
第2号は、少年が心身共に成長期にあって環境の影響を受けやすいこと、可塑性(少年が非行から立ち直る可能性を意味する。)に富むこと等を理解する必要性を示したものである。
(3) 処遇の個別化(第3号関係)
第3号は、個別の少年の特性に応じて最善の処遇を講ずることの必要性及びその前提として少年自身とその環境を深く洞察し、問題点を把握することの必要性を示したものである。
(4) 秘密の保持(第4号関係)
第4号は、少年その他の関係者のプライバシーに配慮する必要性を示したものである。非行少年に係る事件の捜査又は調査(以下「捜査・調査」という。)、不良行為少年の補導、少年相談等により知り得た秘密を漏らしてはならないことは当然のことであるが、特に、少年の立直りを期する上では、少年その他の関係者に秘密の保持について不安を抱かせないことが重要であるから、これに配意するものとする。
(5) 国際的動向への配慮(第5号関係)
「国際的動向」としては、例えば、児童の権利条約の採択、児童の商業的性的搾取に関する取組が世界的に行われていることが挙げられるが、第5号は、このような国際的な動向に十分配慮する必要性を示したものである。
なお、これらの動向を踏まえて、日本人が国外において敢行する児童買春事犯、インターネットを利用した児童ポルノ事犯等の積極的な取締り及び児童の性的搾取等の防止のための広報啓発を強力に推進するものとする。
第2 少年警察の体制等
1 少年補導職員(規則第2条第5号、第13号、第28条関係)
少年法第6条の2第3項の規定に基づき、警察官は、触法少年に係る事件(以下「触法少年事件」という。)について、少年の心理その他の特性に関する専門的知識を有する警察職員(少年警察補導員活動規程(平成20年鳥取県警察本部訓令第4号)に規定する少年警察補導員をいう。以下「少年警察補導員」という。)に、押収、捜索、検証及び鑑定の嘱託を除く調査をさせることができる。警察本部長(以下「本部長」という。)は、警察職員の職務等に関する規則第1条の規定に基づき、少年警察補導員のうちから、低年齢少年に対する質問その他の職務に必要な事項に関する教育訓練を受け、専門的知識を有すると認められる者を、当該警察職員に指定するものとする。当該警察職員は、上司である警察官の命を受け、触法少年事件の原因及び動機並びに当該少年の性格、行状、経歴、教育程度、環境、家庭の状況、交友関係者等を明らかにするために必要な調査を行うことができる。ここでいう教育訓練とは、触法少年事件の調査(以下「触法調査」という。)のために必要な専門知識である、可塑性に富むなどの低年齢少年一般の特性及び発達障害等の特別な事情を持つ少年の特性並びに低年齢少年等の特性を踏まえた質問等の調査要領についての研修等をいう。また、当該警察職員は、少年の心理その他の特性に関する専門的知識を有することから、上司である警察官の命を受け、ぐ犯少年事件(ぐ犯少年に係る事件をいう。以下同じ。)の調査(以下「ぐ犯調査」という。)も行うことができる。この場合において、本部長は、当該警察職員の指定に係る教育訓練の際に、ぐ犯調査の実施要領についての指導教養も実施する等により、適正な職務執行を確保するものとする。
なお、特定少年(18歳及び19歳の者をいう。以下同じ。)に該当する少年は、ぐ犯少年には該当しないことに留意すること。
2 警察署長等の職務等(規則第4条第1項関係)
警察署長(警察本部の職員が少年警察活動を行う場合にあっては、当該職員の属する所属の長。以下「警察署長等」という。)は、所属職員の行う少年警察活動に関し、各級幹部を的確に指揮掌握するとともに、個々の事案について、おおむね次に掲げる事項について自ら行うこと。ただし、本部長が直接指揮すべき事件又は事案を除く。
(1) 捜査主任官又は調査主任官を指名すること。
(2) 少年の被疑者、触法少年であると疑うに足りる相当の理由のある者若しくはぐ犯少年と認められる者又は重要な参考人の呼出し並びに面接(捜査・調査の対象となっている少年に対する取調べ及び質問を含む。以下同じ。)の要否及び方法を決定すること。
(3) 強制措置及びその解除の要否を決定すること。
(4) 関係機関への送致若しくは送付又は通告(以下「送致等」という。)その他の措置を決定すること。
(5) 関係機関への送致等に際して付すべき処遇意見を決定すること。
(6) 継続補導の要否を決定すること。
(7) 被害少年の継続的な支援の要否を決定すること。
(8) その他警察署長等が特に必要と認めること。
3 その他の総則的事項
(1) 関係機関、ボランティア等との連携(規則第5条関係)
規則第5条の「その他の少年の健全な育成に関係する業務を行う機関」とは、県の青少年担当課、教育委員会、精神保健福祉センター、検察庁等である。「少年の健全な育成のための活動を行うボランティア若しくは団体」の例としては、少年健全育成指導員等の少年警察ボランティア及びその団体、市町村において委嘱されている少年補導委員、PTA等が挙げられる。また、関係機関等との連携に際しては、警察から協力を求めるほか、相手方が主体となって実施する活動にも積極的に協力するものとする。
(2) 早期発見(規則第6条関係)
警察職員は、非行少年又は児童相談所への通告が必要と認められる要保護少年若しくは児童虐待を受けたと思われる児童を発見した場合には、次に掲げる事項を警察署長等に報告すること。この場合において、警察本部の生活安全部少年・人身安全対策課長(以下「少年・人身安全対策課長」という。)以外の所属長がこの報告を受けたときは、当該報告に係る事項を少年・人身安全対策課長に速やかに連絡するものとする。
ア 少年の氏名、年齢及び住居
イ 少年の職業及び勤務先又は在学する学校及び学年
ウ 保護者の氏名、住居、職業及び少年との続柄
エ 事案を発見した経緯及び事案の概要
オ 発見者の執った措置
カ その他必要と認められる事項
第3 一般的活動
1 街頭補導(規則第7条関係)
(1) 街頭補導は、自らの身分を明らかにし、その他相手方の権利を不当に害することのないよう注意して行うものとする(規則第7条第1項)。これは、責任の所在を明らかにし、街頭補導の適正を確保するとともに、少年の信頼を得て事後の助言又は指導を円滑に行うためである。
(2) 街頭補導は、道路その他の公共の場所、駅その他の多数の客の来集する施設又は風俗営業の営業所その他の少年の非行が行われやすい場所において行うものとする。「その他の公共の場所」には、公園、広場等の不特定多数の者が自由に利用し、又は出入りする場所が広く含まれ、「その他の多数の客の来集する施設」には、興行場、デパート等の不特定多数の客の来集を予定した施設が広く含まれる。また、「その他の少年の非行が行われやすい場所」には、性風俗関連特殊営業や女子高校生に扮するなどしてサービスを提供するいわゆる「JKビジネス」の営業所、盛り場、深夜に営業する飲食店、インターネットカフェ、カラオケボックス、コンビニエンスストア及びその周辺その他少年のたまり場となりやすい場所が広く含まれる。
街頭補導は、これらの場所を重点とし、関係機関、ボランティア等との連携に配意(規則第7条第2項)しつつ、管内の実態に即して計画的に実施するものとする。また、公共の場所以外の施設等で街頭補導を行うときは、当該施設等の管理者の同意を得ることが必要である。
(3) 少年から事情を聴取し、又は注意、助言、指導等を行う場合においては、人目に付かないように配意するものとする。
2 少年相談(規則第8条第1項関係)
少年相談は、原則として少年警察部門において取り扱うものとし、少年警察部門以外の部門に属する警察職員が少年相談を受けた場合には、少年警察部門に引き継ぐものとする。ただし、当該相談を自らの所属において処理することが適当であると認める場合においては、少年警察部門に属する警察職員に連絡した上、警察署長等の指揮の下、当該相談を処理するものとする。
少年相談は、少年サポートセンター等少年警察部門の職員が配置された施設内において行うことが原則であるが、必要な場合には、関係者が落ち着いて相談のできる適当な場所に出向いて行うことを考慮するものとする。少年相談に関連して、少年警察部門の所掌に属しない事案について相談を受けたときは、当該事案を担当すべき他の警察部門又は関係機関に引き継ぐなど相談者の立場に立った適切な対応をするものとする。少年相談の受理及び処理の状況を明らかにするため、少年相談を受けたときは、少年相談簿(「少年相談実施基準の制定について(例規通達)」(昭和60年5月22日付け鳥少例規第4号外共発)別記様式の少年相談簿をいう。)を作成し、生活安全部少年・人身安全対策課(以下「少年・人身安全対策課」という。)又は警察署の少年警察部門において少年が20歳に達するまで保管しておくこと。
3 継続補導(規則第8条第2項、第3項、第4項、第5項関係)
(1) 継続補導は、少年に対する助言、指導、カウンセリング等を通して行うものであり、専門的な知識及び技能を必要とし、継続的に実施することを要する活動である。このため、やむを得ない理由がある場合を除き少年サポートセンターに配置された少年警察補導員が実施するものとする。
規則第8条第3項の「やむを得ない理由がある場合」とは、例えば、継続補導の対象となる少年の居住地が少年サポートセンターから遠く離れている場合、警察署に適当な少年警察補導員が配置されている場合等である。また同項の「少年サポートセンターの指導の下」とは、少年サポートセンターから個別具体的な指導を受けることのほか、少年サポートセンターに対し継続補導の経過に係る一般的な報告を行い、少年サポートセンターから専門的な事項について指導を受けるなどの連携を保つことを含む。
(2) 継続補導の適切な実施のため必要があるときは、保護者の同意を得た上で、これを学校関係者その他の適当な者と協力して継続補導を実施するものとする(規則第8条第4項)。これは、これらの者と協力して継続補導を行う場合には、関与する者が多くなることから、少年のプライバシーに配慮する必要性に鑑み、保護者の同意を得ておくこととしたものである。また、少年サポートセンターの指導の下、少年警察部門に属するその他の警察職員が継続補導を行う場合においても、これらの者と協力して継続補導を行うことができるが、この場合にも、保護者の同意を得ておく必要がある。
なお、特定少年に対して継続補導を実施する場合には、本人の同意を得るものとする(規則第8条第5項)。
4 少年の規範意識の向上等に資する活動(規則第9条関係)
規則第9条の少年の規範意識の向上等に関する活動の効果的な実施は、少年の非行の防止や保護のためには、少年に対してその身体的・精神的よりどころとなる居場所を提供することが重要であるとの考え方による。具体的には、公園の清掃、落書き消し等の環境美化活動、福祉施設の訪問、生産体験活動その他の社会参加活動、警察署の道場等における柔剣道教室、スポーツ大会はもとより、少年の居場所づくりに資する多種多様な活動を新たな発想に基づき推進することが期待されるものである。また、この種の活動を効果的に実施するためには、学校その他の関係機関等が実施する活動との役割分担に配意するとともに、警察が有する少年警察活動に関する知識、経験その他の専門性を生かすことが重要である。
5 情報発信(規則第10条関係)
(1) 少年警察活動については、家庭、学校、地域社会と一体となって取り組むことが極めて重要であることに鑑み、県民に少年の非行情勢や犯罪被害の実態を広く周知し、少年警察活動に対するより深い理解と積極的な協力を得るとともに、県民、関係機関、民間ボランティア団体等の自発的な活動を促し、支援するために、関係する情報を積極的に発信するものとする。
(2) 情報発信に際しては、少年サポートネットワークなどをはじめとする関係機関と開催する会議・研修会の場を活用して具体的な意見交換を行い、又は学校等の関係機関において開催する講習会等に積極的に協力し、警察における取組状況を説明するなど、少年警察活動に関する専門的な知識、技能、情報等が、関係機関等における少年の健全育成に向けた各種の活動に効果的に反映されるように配慮するものとする。
なお、少年警察活動については、情報発信の前提として、また、少年の非行の防止と保護を図るための施策に資するため、常に、少年警察活動に関する基礎的な資料を整備し、活用するよう努めるものとする。
6 有害環境の影響の排除に係る知事への連絡等(規則第11条関係)
規則第11条の「その求めに応じ」とは、押し付けや相手方の意思に反して行うことを排する趣旨であり、少年警察ボランティアによる街頭補導活動や有害図書の自動販売機の撤去運動、20歳未満の者の飲酒及び喫煙を防止するための関係業者、業界団体のキャンペーン等の民間の自主的な活動を積極的に支援し、協力することを妨げるものではない。
第4 非行少年全般についての活動
1 捜査・調査の組織
(1) 捜査・調査を行う部門(規則第12条関係)
ア 犯罪少年事件(犯罪少年に係る事件をいう。以下同じ。)の捜査、触法調査及びぐ犯調査については、少年の特性に配慮しつつ、個々の少年の適正な処遇に努めなければならないことに鑑み、原則として、少年警察部門が行うものとする(規則第12条第1項)。ただし、次に掲げる事件の捜査・調査についてはこの限りでない。
(ア) 20歳以上の被疑者を主とする事件に関連する犯罪少年事件
(イ) 少年法第20条第2項又は第62条第2項の規定により、原則として家庭裁判所から検察官に送致されることとなる犯罪少年事件
(ウ) 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪又は死刑若しくは無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る犯罪少年事件
(エ) 事件の内容が複雑かつ重要であり、少年警察部門以外の部門に捜査させることが適当であると認められる犯罪少年事件
(オ) 交通法令違反(犯罪統計細則(昭和46年警察庁訓令第16号)第2条第2号に規定する罪をいう。以下同じ。)に係る犯罪少年事件又は触法少年事件
(カ) 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(平成25年法律第86号。以下「自動車運転死傷処罰法」という。)に規定する罪又は交通事故に係る刑法に規定する罪に係る犯罪少年事件又は触法少年事件
(キ) 上記に掲げるもののほか、警察署長等が少年警察部門以外の部門に担当させることが適切であると認める事件
イ 警察署長等は、少年警察部門以外の部門に属する警察官に捜査・調査を行わせる場合においては、「少年事件選別主任者制度の運用について(例規通達)」(平成元年7月17日付け鳥防少例規第16号外共発)2に規定する少年事件選別主任者(以下「少年事件選別主任者」という。)に対し、少年の特性に配慮した捜査・調査が行われるよう、捜査・調査の経過について常に把握させるものとする。また、必要があると認めるときは、少年に対する面接を少年警察部門に属する警察官に行わせることについても配意するほか、必要な支援を行わせるものとする(規則第12条第2項)。支援の例としては、次の事項等が挙げられる。
(ア) 少年の特性に配慮した捜査・調査の実施のために必要な指導教養又は助言
(イ) 少年の面接又は質問の用に供するための適切な場所の提供
(2) 少年事件指導官
非行少年に係る事件の捜査・調査が少年の特性に配慮して行われるよう、少年・人身安全対策課に少年事件指導官を置き、少年・人身安全対策課の警視又は警部の階級にある者をもって充てる。少年事件指導官は、次に掲げる事項を指導するものとする。
ア 犯罪少年事件のうち要指導事件(公判又は少年審判において立証上の問題が生じるおそれのある事件をいう。イにおいて同じ。)であるもの及び触法少年事件のうち家庭裁判所の審判に付することが適当であると認められるものであって、少年警察部門に属する警察官が捜査・調査を行う事件について、非行事実の厳密かつ周到な立証を徹底するため、当該事件の捜査主任官、調査主任官その他少年警察活動に従事する警察官に対し、公判又は少年審判における立証、低年齢少年の特性を踏まえた調査その他の適正な捜査・調査の遂行のために必要な指導を行うこと。
イ 犯罪少年事件のうち要指導事件であるもの、本部長が指揮する事件及び触法少年事件のうち家庭裁判所の審判に付することが適当であると認められるものであって、少年警察部門以外の部門に属する警察官が捜査・調査を行うものについて、当該事件の捜査・調査を行う部門に属する指導官等と密接な連絡を取り、当該指導官等によりアに定めるものと同様の指導が的確に行われるよう助言すること。
ウ 少年事件選別主任者に対して、少年の特性及び少年審判の特質を踏まえた捜査・調査の指揮、措置の選別、処遇意見の決定等に関する必要な指導及び教養を行うこと。
(3) 少年事件選別主任者の意見
警察署長等は、少年事件の措置の選別及び処遇意見の決定等が少年の特性を十分踏まえたものとなるよう、少年事件選別主任者の意見を聴くものとする。また、警察署長等は、少年又は重要な参考人の呼出し、令状の請求、事件の送致等を行うに当たっても、少年の心理、生理その他の特性に鑑み配慮すべき事項等について、少年事件選別主任者の意見を聴くものとする。ただし、(1)ア(オ)及び(カ)に定める事件については、当該少年の適正な処遇を図るため特に必要と認められるものを除き、この限りでない。
2 非行少年についての活動(規則第13条第1項関係)
非行少年については、当該少年に係る事件の捜査・調査のほか、その適切な処遇に資するため必要な範囲において、時機を失することなく、本人又はその保護者に対する助言、学校その他の関係機関への連絡その他の必要な措置を執るものとする。これは、関係機関に送致され、又は通告された非行少年については、当該機関における措置に委ねられることとなることを前提とした上で、個別の事件によっては、他機関における措置に委ねるまでにいくらかの時間的間隙が生じる場合があり、その間、当該少年について何らの措置も執らない場合には、当該少年が極めて不安定な立場に置かれるなど、当該少年の適切な処遇を妨げるおそれもあることに鑑み、本人又はその保護者への助言や学校等への連絡等、当該少年の適切な処遇に資するために必要な措置を講ずべきことをいうものである。
なお、これらの措置は、少年の健全な育成を期して行われる任意の措置であり、これにより少年法第41条及び第42条に規定するいわゆる全件送致主義を没却することのないよう留意する必要がある。また、関係機関への送致又は通告は、捜査・調査が終了した後、速やかに行うものとする。
3 捜査・調査に関する一般的留意事項
(1) 年齢の確認
刑法、少年法及び児童福祉法の適用に過誤のないようにするため、非行少年に係る事件の捜査・調査に当たっては、特に現在及び行為時における当該少年の正確な年齢を確認すること。
なお、少年法及び規則における少年の定義は、20歳に満たない者をいうとされている(少年法第2条第1項、規則第2条第1項)が、特定少年については、保護事件等の特例が定められていることについて留意すること。
(2) 明らかにすべき事項
捜査・調査は、関係機関への送致又は通告の措置を執るべきかどうかを決定し、非行少年の処遇並びに当該少年の健全な育成及び立直りに資するために必要な限度にとどめることとし、みだりに関係者のプライバシーを侵害することのないよう留意すること。また、少年の保護者その他少年について事情を知っていると認められる者の協力を求めるとともに、先入観に捕らわれたり、推測にわたったりすることなく、正確な資料を収集するよう留意するものとする。
(3) 迅速な対応
捜査・調査が著しく遅延することは、少年の健全な育成を阻害するのみならず、被害者対策の観点からも適当でないことから、迅速な捜査・調査に努めるものとする。
(4) 関係機関との連携
犯罪少年事件の捜査を行うに当たって必要があるときは、家庭裁判所、児童相談所、学校その他の関係機関との連絡を密にしなければならない(規範第206条)。触法調査又はぐ犯調査を行うに当たっては、必要に応じて、調査における少年の状態等所要の事項を連絡するなど、特に家庭裁判所及び児童相談所との連携を密にしつつ進めなければならない(規則第13条第2項)。
(5) 新聞発表等の際の注意
犯罪少年事件については、当該少年の氏名、住居のほか、学校名、会社名等その者を推知させるような事項を新聞その他の報道機関等に発表してはならない(規範第209条)。また、当該少年の写真を提供してはならない。触法少年事件については、その性質上、報道機関等への発表は、特に慎重に判断するものとする。ただし、特定少年のとき犯した罪に係る事件であって当該罪により公訴を提起された者に係るもの(略式命令の請求がされたものを除く。)については、この限りでない(規範第209条ただし書)。
なお、少年法等の一部を改正する法r津(令和3年法律第47号)の国会審議に際し、衆議院及び参議院の法務委員会において、それぞれ附帯決議がなされており、「特定少年のときに犯した罪についての事件広報に当たっては、(中略)いわゆる推知報道の禁止が一部解除されたことが、特定少年の健全育成及び更生の妨げとならないよう十分配慮されなければならない」旨の附帯決議が付されていることから、その趣旨を踏まえた対応に努めること。
4 送致等
(1) 措置の選別及び処遇意見の決定
ア 非行少年について関係機関への送致等の措置を執るべきか、犯罪少年事件の送致を通常の送致又は規範第214条の規定による簡易送致のいずれによるべきか、送致等の措置を執る場合においてはいずれの機関に行うべきかを的確に選別するとともに、送致等(簡易送致を除く。)の措置を執る場合においては、最も適切と認められる処遇上の意見を付すものとする。
イ 措置の選別及び処遇意見の決定に当たっては、事案の態様、非行の原因及び動機、再非行のおそれのほか、保護者の実情、当該少年の非行の防止及び立直りに向けての保護者の方針及び意向並びに関係機関、団体、少年警察ボランティアの意見等を勘案して行うものとする。この場合、再非行のおそれについては、捜査・調査の結果から客観的に判断するものとする。また、通常の送致と簡易送致の選別に当たっては、罪種や被害の程度等の形式的な要件のみで判断することなく、犯罪の原因及び動機、犯罪少年の性格、行状、家庭の状況及び環境等から再犯のおそれ等を総合的に判断するものとする。
(2) 送致等に関するその他の留意事項
非行少年の関係機関への送致等に当たっては、必要に応じ、少年及びその保護者又はこれに代わるべき者(以下「保護者等」という。)に対して、送致等の趣旨について説明し、今後特に留意すべき事項について助言するものとする。この場合において、在宅のまま送致等をする少年について、将来における非行のおそれが大きいと認められるときは、速やかに少年法又は児童福祉法の規定による措置が執られるよう、送致等先の機関に対してその旨を連絡するものとする。
5 記録の作成
(1) 少年事件処理簿(規則第17条第2項、第30条第3項関係)
規則第17条第2項及び第30条第3項の規定により作成する少年事件処理薄の様式は、少年警察活動規則の規定により作成する書類の様式を定める訓令(平成19年警察庁訓令第23号。以下「様式を定める訓令」という。)別記様式第44号のとおりとする。犯罪少年については、少年事件処理簿の作成を要しないが、事件を送致し、又は送付したときは、規範第201条に定めるところにより、犯罪事件処理簿により経緯を明らかにしておかなければならないことに留意するものとする。
(2) 少年カード
送致等の措置をとった非行少年(交通法令違反又は自動車運転死傷処罰法に規定する罪若しくは交通事故に係る刑法に規定する罪に係る非行少年を除く。)については、その適正な処遇及び健全な育成に資するため、警察庁生活安全局長が定める様式の少年カードを作成し、当該少年の居住地を管轄する警察署(以下「居住地警察署」という。)において保管するものとする。居住地警察署以外の所属において少年カードを作成した場合は、当該所属の長は、少年カードの原本を居住地警察署の警察署長に送付し、必要に応じ、その写しを保管するものとする。この場合において、居住地警察署が他の都道府県警察(北海道警察については、他の方面を含む。)の警察署であるときは、少年・人身安全対策課を通じて送付するものとする。少年カードの保管については、当該少年が死亡し、又は20歳に達したときは廃棄することとし、記載内容に変更が生じたとき、又は処分結果が判明したときは、それぞれの該当欄に必要事項を記載することとする。
6 非行少年に係る継続補導(規則第13条第1項、第3項関係)
触法少年であって少年法第6条の6第1項の規定により児童相談所に送致すべき者若しくは要保護児童(児童福祉法第25条第1項の規定により通告すべき者をいう。以下同じ。)のいずれにも該当しないもの又は低年齢少年たるぐ犯少年であって要保護児童に該当しないものについては、その非行の防止を図るため特に必要と認められる場合には、保護者の同意を得た上で、継続補導を実施するものとする(規則第13条第3項において準用する規則第8条第2項から第4項まで)。継続補導を行う場合には、第3の3に記載する事項に留意するものとする。一方、犯罪少年及び14歳以上のぐ犯少年については、警察において必要な捜査・調査を行い関係機関に送致等された後は、当該機関における措置に委ねられることとなるため、継続補導の対象とはならない。ただし、継続的な立ち直り支援を行う必要がある少年として別途通達するものについては、この限りでない。
なお、捜査・調査と並行して、本人又はその保護者への助言や学校等への連絡等の必要な措置を執ることができる(規則第13条第1項)。
第5 犯罪少年事件の捜査
1 犯罪少年事件捜査の基本
捜査については、規範第203条の規定に基づき、家庭裁判所の審判その他の処理に資することを念頭に置き、少年の健全な育成を期する精神をもって当たらなければならない。捜査に当たっては、規範第204条の規定に基づき、少年の特性を考慮し、特に他人の耳目に触れないようにし、言動に注意する等温情と理解をもって当たり、少年の心情を傷つけないように努めなければならない。
2 明らかにすべき事項
犯罪少年事件の捜査に当たっては、少年の健全な育成のためには非行等の事実の存否及びその内容の解明が前提となることをよく認識し、規範第205条の規定に基づき、事案の存否、態様、原因及び動機のほか、当該少年の性格、行状、経歴、教育程度、家庭や学校、職場の状況、交友関係及び住居地の環境、当該少年の非行の防止や立直りに協力することができるボランティアの有無等について調査しておかなければならない。
3 捜査主任官
警察署長等は、犯罪少年の事件捜査を行うに当たり、適正な管理及び任務分担の下、組織的かつ効果的に捜査を進めるために、当該捜査の中核となる捜査主任官を指名し、少年の特性を理解した的確な指揮により、適正捜査に努めること。捜査主任官の指名等の運用については「捜査主任官の指名要領等について(例規通達)」(平成15年2月19日付け鳥捜一例規第3号外共発)の定めによること。
4 呼出し
(1) 捜査のため、少年の被疑者、保護者又は参考人を呼び出すに当たっては、電話、呼出状(規範別記様式第7号に規定する呼出状をいう。)の送付その他適当な方法により、出頭すべき日時、場所、用件その他必要な事項を呼出人に確実に伝達しなければならない。この場合において、少年の被疑者又は重要な参考人の呼出しについては、警察署長に報告してその指揮を受けなければならない(規範第102条第1項)。
(2) 捜査のために少年の被疑者を呼び出すときは、規範第207条の規定に基づき、原則として当該少年の保護者等に連絡するものとする。特定少年の被疑者を呼び出すときも同様である。規範第207条ただし書の「連絡することが当該少年の福祉上不適当であると認められるとき」の例としては、連絡することにより、保護者と少年との信頼関係を損なうおそれがある場合、少年が虐待を受けるおそれがある場合、就業先を解雇されるおそれがある場合、逃亡又は証拠隠滅のおそれがある場合等が挙げられる。
(3) 呼出しに当たっては、呼出しを受ける者の心情を理解するとともに、呼出しを行う場所、時期、時間、方法等について配慮し、少年が無用な不安を抱かないように配意するとともに、次に掲げる事項に留意するものとする。
ア 学校又は職場に直接呼出しの連絡をすること、少年の授業中又は就業中に呼び出すこと、制服警察官が呼出しに行くこと等当該少年が警察から呼び出されたことが周囲の者に容易に分かるようなことは、できる限り避けること。
イ 少年の保護者等を呼び出す場合においても、当該保護者等が当該少年の非行に関して警察から呼び出されたことが周囲の者に分からないように配意すること。
ウ 警察施設に呼び出すことが不適切であると認められる場合には、警察職員が家庭へ出向くことや、警察施設以外の適当な場所に呼び出すことにも配意すること。
(4) 呼出しは、保護者等の納得を得て行うよう努めるとともに、必要に応じて保護者等の同道を依頼するなど、協力と信頼を得られるよう努めるものとする。また、被害者その他の参考人として少年を呼び出すときにも、これらの事項に配意するほか、警察から呼び出されたことによる心理的な負担を軽減するよう努めるなど少年の心情に配意するものとする。
(5) 少年の被疑者その他の関係者に対して任意出頭を求める場合には、呼出簿(規範別記様式第8号)に所要事項を確実に記載して、その処理の経過を明らかにしておかなければならない。
5 取調べ
(1) 基本的な留意事項
少年の被疑者の取調べを行う場合においては、規範第204条の規定に留意するものとし、特に次の点について注意するものとする。
ア 取調べの場所は、事務室等一般人の出入りが多く、他人の耳目に触れるおそれがある場所を避け、少年が落ち着いて話せるよう、少年補導室等の適当な場所とすること。
イ 取調べの時刻は、できる限り、少年の授業中若しくは就業中又は夜間遅い時刻を避けるとともに、長時間にわたらないようにすること。
ウ 取調べに当たっては、少年の年齢、性別、性格、知能、職業等に応じてふさわしく、かつ、分かりやすい言葉を用いるとともに、少年の話の良い聞き手となり、虚言、反抗等に対しても、一方的にこれを押さえつけようとせず、その原因を理解することに努め、少年の内省を促し、その立直りに資するように努めること。
エ 取調べを終えるに当たっては、少年及び保護者等の懸念の有無を確かめ、必要があるときは、助言その他の措置を講じて、少年及び保護者等の不安を除去し、信頼を得られるように努めること。
(2) 立会い等
ア 少年の被疑者の取調べを行うときは、規範第207条の規定により、原則として保護者等に連絡するものとする。特定少年の被疑者の取調べを行うときも同様である。規範第207条ただし書の趣旨については、4の(2)のとおりである。
イ 少年の被疑者の取調べを行う場合において、やむを得ない場合を除き、少年と同道した保護者その他適切な者を立ち会わせることに留意するものとする。これは、少年に無用の緊張を与えることを避け、真実の解明のための協力や事後の効果的な指導育成の効果を期待する趣旨に基づくものである。したがって、適切であると認められる者であるかどうかは、飽くまで少年の保護及び監護の観点から判断されるものであり、少年を保護又は監護する者と通常いえない者は含まれない。適切と認められ得る者の例としては、少年の在学する学校の教員、少年を雇用する雇用主等が挙げられるが、保護者その他適切な者の立会いについては、個別の事案に即し、この趣旨に沿って判断すること。
(3) 参考人の面接
被害者その他の参考人として少年と面接するときは、その時間、場所、方法、保護者等の立会い等に配意し、面接に伴う心理的な負担を軽減するよう努める等少年の心情に配意するものとする。
6 強制措置の制限
少年の被疑者については、できる限り、逮捕、留置その他の強制の措置を避けるものとする(規範第208条)。強制の措置を決定する場合には、少年の年齢、性格、非行歴、犯罪の態様、留置の時刻等から当該少年に及ぼす精神的影響を勘案して判断するとともに、執行の時期、場所、方法等について慎重に配意し、少年の心情を傷つけることのないように配意するものとする。少年の被疑者を留置する場合には、少年法第49条第1項及び第3項の規定に基づき、20歳以上の者と分離し、かつ、原則として各別に収容するものとする。ただし、少年法第20条第1項又は第62条第1項の規定に基づく検察官への逆送の決定があった特定少年の被疑事件の被疑者に対しては、当該事件に係る留置に限って、同法第49条第1項及び第3項の規定が適用されないことに留意すること(同法第67条第2項)。
なお、少年を留置したときは、特定少年であるか否かにかかわらず、原則として速やかにその保護者等に連絡するものとする。
7 指紋の採取等
犯罪少年の指紋及び掌紋の採取並びに写真の撮影は、「少年被疑者等の指紋等採取及び写真撮影について(例規通達)の全部改正について(例規通達)」(平成13年3月9日付け鳥生企例規第3号外共発)の定めるところにより、身体の拘束を受けていない少年については、犯罪捜査のため必要やむを得ない場合で、本人の承諾を得たときに限り行うものとし、併せて少年の心情を傷つけることのないよう、その時期、場所、方法等について慎重に配意するなどして行うものとする。特定少年の被疑者についても同様である。
8 親告罪等に関する措置
親告罪である少年の犯罪について告訴がなされないことが明らかになった場合であっても、将来における非行の防止上必要があると認めるときは、犯罪少年として関係機関に送致することを考慮して所要の措置を執るものとする。特定少年の被疑者についても同様である。この場合においては、みだりに被害者等を呼び出すなど被害者等の心情に反する措置を執ることを避けるものとする。また、当該少年を送致する場合には、被害者等が送致先の機関によってみだりに呼び出されることのないよう当該機関に連絡することに留意するものとする。また、少年が、親族であるため刑が免除される罪又は請求を待って論ずる罪を犯した場合についても、同様とする。
9 所持物件の措置
犯罪少年事件の捜査に当たって、少年の非行の防止上所持させておくことが適当でないと認められる物件を当該少年が所持していることを発見したときは、法令の規定により押収する場合を除き、所有者その他の権利者に返還させ、保護者等に預けさせ、又は当該少年に廃棄させるなど当該少年が当該物件を所持しないように注意、助言等をするものとする。この場合においては、警察庁生活安全局長が定める様式の受領書を徴するなど物件の措置のてん末を明らかにする措置を講ずるものとする。
10 余罪の捜査
少年の被疑者に関する余罪の捜査に当たっては、当該少年の内省を促し、その立直りを図るとともに、将来における非行のおそれの判断に資するように配意するものとする。また、余罪の捜査が遅延すれば、既に送致した事件に係る審判が終了した後に余罪の取調べを行うなど少年の立直りを妨げることにもつながることから、余罪の捜査は、迅速かつ的確に行わなければならない。
第6 触法調査
1 触法調査の基本(規則第15条関係)
少年の適正な処遇を図るためには、非行事実を解明することが前提であり、個々の触法調査においては、低年齢少年の特性に配慮しつつ、捜索、差押え等の権限を適正に行使し、非行事実の解明等を的確に行わなければならない。
規則第15条第2項の「可塑性」とは、少年が非行から立ち直る可能性を意味し、「迎合する傾向にある」とは、少年は、質問の担当者の威圧感に萎縮し、反論することが困難であると感じた場合等に、自分の認識等を曲げて担当者の意図に沿うような回答をしやすいことをいう。このほか、低年齢少年は、被誘導性(例えば質問者が自分の求めている回答をするように仕向けた質問をした場合に、回答者が自分の認識等を曲げ、質問者の誘導に沿った回答をするという気持ちを意味する。)及び被暗示性(例えば質問者が回答をほのめかすような質問をした場合に、回答者が自分の認識等を曲げ、質問者の暗示に沿った回答をするという特性を意味する。)が特に強いこと等の特性を有すり、個々の調査に従事する者は、これらの特性についての深い理解をもって当たらなければならない。
2 調査すべき事項(規則第16条関係)
触法調査においては、事件の事実、原因及び動機のほか、当該少年の性格、行状、経歴、教育程度、家庭や学校、職場の状況、交友関係、住居地の環境、当該少年の非行の防止や立直りに協力することができるボランティアの有無等について調査するものとする。調査においては、家庭裁判所、児童相談所等の関係機関との連携のほか、当該少年、保護者又は関係者のプライバシーに配意しつつ進めるものとする。
3 調査主任官(規則第18条関係)
警察署長等は、個々の事件調査について、適正な管理及び任務分担の下、組織的かつ効果的に調査を進めるために、調査すべき事項及び調査に従事する者の任務分担の決定、調査方針の確立、関係機関との連絡調整その他の適正な調査の遂行及び管理の要となる者を明確にするため、触法調査に係る調査主任官を指名するものとする。調査主任官は、当該事件の調査の状況を詳細に把握するとともに、低年齢少年の特性に対する深い理解をもって、規則第18条第2項各号に掲げる職務を行うものとする。調査主任官の指名等については、第5の3に準じて行うものとする。
4 付添人の選任(規則第19条関係)
触法調査に関し、少年及び保護者が、いつでも弁護士である付添人を選任できることとされている(少年法第6条の3)。この趣旨を踏まえ、触法少年であると疑うに足りる相当の理由のある者(5((2)を除く。)、6((3)を除く。)、8、9、11から13までにおいて「少年」という。)又はその保護者に対して、付添人制度について分かりやすく説明すること、必要に応じて関係機関・団体についての紹介、助言等を行うこと等に配慮するものとする。弁護士である付添人の選任届を受理した者は、当該事件の調査に従事している警察官に対し、当該選任届を確実に引き継がなければならない。
5 呼出し(規則第20条関係)
(1) 基本的な留意事項
ア 規則第20条第1項の呼出状の様式は、様式を定める訓令別記様式第39号のとおりとする。
イ 規則第20条第2項ただし書の「連絡することが当該少年の福祉上著しく不適当であると認められるとき」の例としては、連絡することにより、少年が虐待を受けるおそれが著しい場合、証拠隠滅のおそれが著しい場合等が挙げられる。
ウ 呼出しに当たっては、呼出しを受ける者の心情を理解するとともに、呼出しを行う場所、時期、時間、方法等について配慮し、少年が無用な不安を抱かないように配意するとともに、学校に直接呼出しの連絡をすること、少年の授業中に呼び出すこと、制服警察官が呼び出しに行くこと等当該少年が呼び出されたことが周囲の者に容易に分かるようなことはできる限り避けるとともに、第5の4(3)イ、ウと同様の事項に留意するものとする。
エ 呼出しは、保護者等の納得を得て行うように努めるとともに、必要に応じて保護者等の同道を依頼するなど、協力と信頼を得られるよう努めるものとする。少年、保護者等又は参考人を呼び出す場合には、呼出簿(様式を定める訓令別記様式第40号に規定する呼出簿をいう。)に所要事項を確実に記載して、その処理の経過を明らかにしておかなければならない。
(2) 参考人の呼出し
被害者その他の参考人として少年を呼び出すときにも、(1)の事項に配意するほか、警察から呼び出されたことによる心理的な負担を軽減するよう努めるなど少年の心情に配意するものとする。
6 質問(規則第20条関係)
(1) 基本的な留意事項
少年に質問を行う場合においては、次に掲げる事項に留意するものとする。
ア 少年の心身に与える影響に配慮し、やむを得ない場合を除き、夜間に質問すること及び長時間にわたり質問することを避けること(規則第20条第3項)。
イ 質問の場所は、事務室等人の出入りが多く、他人の耳目に触れるおそれがある場所を避け、少年が落ち着いて話せるよう、少年補導室等の適当な場所とすること。
ウ 少年の年齢、性別、性格、知能等に応じてふさわしく、かつ、分かりやすい言葉を用いること。
エ 少年の話の良い聞き手となり、虚言、反抗等に対しても、一方的にこれを押さえつけようとせず、その原因を理解することに努め、少年の内省を促し、その立直りに資するように努めること。
オ 質問に当たっては、少年に対し、自己の意思に反して供述する必要がない旨を当該少年の年齢等に応じて分かりやすく告げること。
カ 質問を終えるに当たっては、少年及び保護者等の懸念の有無を確かめ、必要があるときは、助言その他の措置を講じて、少年及び保護者等の不安を除去し、信頼を得られるように努めること。
(2) 連絡及び立会い
少年に質問するに当たっての規則第20条第2項ただし書の趣旨については、5(1)イのとおりである。規則第20条第4項の「適切と認められ得る者」の例としては、少年の同居の親族、少年の在学する学校の教員、少年を一時保護中の児童相談所の職員、少年の付添人等が対象となり得るところであるが、これらの者に立会いをさせるかどうかは、当該少年の保護又は監護の観点から適切と認められるかどうかを、個別の事案に即して判断するものとする。
(3) 参考人の質問
被害者その他の参考人として少年に質問するときは、その時間、場所、方法、保護者等の立会い等に配意し、質問に伴う心理的な負担を軽減するよう努める等少年の心情に配意するものとする。
7 捜査手続との区別
低年齢少年の刑罰法令に触れる行為については、刑法上犯罪が成立せず、当該少年の当該行為につき逮捕及び捜査としての捜索、差押え若しくは検証を行い、又は当該少年を被疑者として取調べを行うなど、捜査の手続によってその事件を取り扱うことはできない。しかしながら、触法少年事件であると断定できない段階では、事案の真相を明らかにするための捜査を尽くす必要がある。特に、殺人、強盗等の重要な事件については、明らかに低年齢少年によるものと認められる場合であっても、共犯関係にある者が存在する可能性があることに留意するものとする。
8 強制の措置(規則第21条関係)
触法調査については、できる限り、強制の措置を避けるものとする。強制の措置を決定する場合には、少年の年齢、性格、非行歴、事件の内容等から当該少年に及ぼす精神的影響を勘案して判断するとともに、執行の時期、場所、方法等について慎重に配意し、少年の心情を傷つけることのないよう配意するものとする。令状の請求をしたときは、令状請求簿(様式を定める訓令別記様式第45号に規定する令状請求簿をいう。)により、請求の手続、発付後の状況等を明らかにしておかなければならない。
9 証拠物件等の取扱い
(1) 取扱い及び保管
触法少年事件の証拠物並びに少年法第24条の2第1項各号及び第2項各号のいずれかに該当する物件については、同法第6条の5第2項の規定により準用する刑事訴訟法の規定に基づき措置することができる。
なお、少年と他の被疑者とが共犯関係にある場合は、当該少年が所持する物件を、他の被疑者に関する捜査上の手続により押収することができる。物件の取扱いは、「証拠物件取扱保管要領の制定について(例規通達)」(平成27年3月31日付け鳥刑企例規第3号外共発。以下「証拠物件例規」という。)の定めに準じて行うものとする。前記のほか、非行の防止上所持させておくことが適当でないと認められる物件を少年が所持していることを発見したときは、第5の9に定めるところにより措置するものとする。
(2) 還付公告手続
ア 還付公告
少年法第6条の5第2項において読み替えて準用する刑事訴訟法第499条に規定する押収物の還付に関する公告は、警察職員の職務等に関する規則第2条の定めるところにより行うものとする。公告は、押収物還付公告(様式第1号)により行うものとする。
なお、還付公告に係る証拠物押収番号は、証拠物件例規に規定する証拠物件保存簿の番号とする。
イ 帰属手続
警察署長は、還付公告をしたときから6か月以内に還付の請求がないときは、県に帰属する手続を取るものとする。帰属手続は、公告に係る警察署長において県帰属押収金品引継書(様式第2号)を作成し、押収物とともに、出納機関の長である警察署長に直ちに引き継ぎ、引継ぎを受けた警察署長は、県帰属押収金品領収書(様式第3号)を作成し、公告に係る警察署長に交付するものとする。
ウ 廃棄等
警察署長は、イの期間内においても、価値のない物は、これを廃棄し、保管に不便な物は、これを公売してその価値を保管することができる。この場合においては、規範第113条第1項に定める事項に注意するとともに、廃棄処分書(様式を定める訓令別記様式第42号に規定する廃棄処分書をいう。)又は換価処分書(様式を定める訓令別記様式第43号に規定する換価処分書をいう。)を作成するものとする。
10 強制捜査の後に触法少年事件であることが判明したときの措置
逮捕した少年の行為が14歳末満のときのものであることが明らかになった場合は、直ちに釈放しなければならない。この場合でも、逮捕手続書及び弁解録取書等を作成し、逮捕手続の過程を明確にするほか、釈放の理由を捜査報告書等により明らかにしておくものとする。特に、緊急逮捕した場合には、釈放した後であっても、規範第120条第3項の規定により逮捕状を請求しなければならない。また、逮捕手続書には、既に釈放した旨を記載するものとする。
捜査としての捜索等により証拠品を差し押さえた後、触法少年事件であることが判明した場合には、直ちに証拠品の還付手続を開始しなければならない。還付手続中又は還付した物件を引き続き必要とする場合は、9に定めるところにより措置するものとする。
被疑者の年齢が判明しなかったため、既にその事件について逮捕状若しくは鑑定留置状又は捜査のための捜索、差押え、検証若しくは身体検査の令状若しくは鑑定処分許可状の発付を得ている場合、捜査の過程において触法少年事件であることが判明したときは、速やかに、当該令状を発付した裁判官に返還するものとする。この場合において、触法調査のための捜索、差押え、検証若しくは身体検査の令状又は鑑定処分許可状の発付を得る必要があるときは、改めて当該令状を請求するものとする。
11 関係書類の作成
触法調査のために作成する関係書類の様式については、調査概要結果通知書(警察職員の職務等に関する規則第3条に定める調査概要結果通知書をいう。)のほか、様式を定める訓令等に定めるところによるものとする。少年の申述書その他の関係書類を作成するに当たっては、当該少年に対し、当該書類の記載内容等について分かりやすく説明するとともに、記載内容の変更等を申し立てる機会を十分に与えなければならない。
12 触法少年事件の送致し、又は通告
触法調査の過程において、少年が要保護児童であると認められたときは、児童通告書(様式を定める訓令別記様式第37号に規定する児童通告書をいう。以下同じ。)により通告するものとする。ただし、急を要し、児童通告書を作成して通告するいとまがない場合は、第9の3に定めるところと同様に、口頭により通告し、その内容を記載した児童通告通知書(様式を定める訓令別記様式第37条の2の児童通告通知書をいう。以下同じ。)を事後に送付することとしても差し支えない。
触法調査の結果、触法少年事件を送致し、又は通告する場合については、家庭裁判所及び児童相談所との連携を密にしつつ、これを進めなければならない。
13 一時保護
児童福祉法第33条の規定により児童相談所長の委託を受けて触法少年を一時保護する場合には、次の事項に留意するものとする。
(1) 保護にふさわしい部屋を使用するものとし、鍵を掛ける場合は、少年の行動範囲がなるべく広くなるよう配意するものとする。
なお、一時保護に留置施設の部屋を使用することはできない。
(2) 少年が負傷し、自殺し、又は保護から逃れることがないように注意するとともに、少年が火災その他自己又は他人の生命、身体又は財産に危害を及ぼす事故を起こさないように注意するものとする。
(3) 速やかにその保護者等に一時保護した旨を連絡するものとする。ただし、児童虐待を受けた児童を一時保護した場合において、児童虐待の防止等に関する法律第12条第3項の規定により、児童相談所長が当該児童虐待を行った保護者に対し当該児童の住所又は居所を明らかにしないこととしたときは、この限りではない。
14 指導教養(規則第25条関係)
本部長及び警察署長は、指導教養を定期的に行い、調査能力の向上に努めるものとする(規則第25条)。また、指導教養の充実強化を図るため、当該指導教養を実施する警察官等の専門性の向上、教養資料の整備及び活用、学識経験者等による講義の実施等に努めるものとする。
15 準用規定(規則第26条関係)
触法調査の方法や調査に当たっての留意事項には、刑事事件の捜査と共通する部分も存することから、規則第3章第2節に規定するもののほか、その性質に反しない限り、規範第12章の例によるものとする(規則第26条)。また、規範第202条の規定の趣旨に鑑み、触法調査についても、その性質に反しない限り、規範第12章のみならず他章の規定も例とすることが適当である。例えば、取調べの心構え、関係者及び被害者等に対する配慮に係る規定がこれに当たる。
第7 ぐ犯調査
1 ぐ犯調査の基本(規則第27条関係)
ぐ犯少年と認められる者(4から10において「少年」という。)を発見した場合は、少年の健全な育成を期する精神をもって、これに当たるものとする(規則第27条第1項)。
2 調査すべき事項(規則第29条関係)
ぐ犯調査においては、少年法及び児童福祉法に基づく措置に資することを念頭に置き、事件の事実、原因及び動機のほか、当該少年の性格、行状、経歴、教育程度、家庭や学校、職場の状況、交友関係、住居地の環境、当該少年の非行の防止や立直りに協力することができるボランティアの有無等について調査するものとする(規則第29条)。ぐ犯調査においては、前記に掲げる事項について調査を進め、事案の真相を明らかにするように努めるものとする。その際には、家庭裁判所及び児童相談所との連携のほか、当該少年、保護者又は関係者のプライバシーに配意しつつ進めるものとする。
3 調査主任官(規則第30条第1項、第2項関係)
調査主任官の指名及び職務については、第6の3に定めるとおりとする。
4 呼出し
(1) 基本的な留意事項(規則第31条関係)
ア 規則第31条第1項の呼出状の様式は第6の5(1)アと同じである。
イ 規則第31条第2項ただし書の趣旨については、第6の5(1)イに定めるとおりである。
ウ 少年の呼出しに当たって留意すべき事項は、第5の4(3)に定めるところに準ずるものとする。
エ 少年、保護者等又は参考人を呼び出す場合の運用は、第6の5(1)エに定めるとおりである。
(2) 低年齢少年に係るぐ犯調査における配慮(規則第32条関係)
低年齢少年の少年を呼び出すに当たって留意すべき事項は、第6の5(1)ウに定めるところに準ずるものとする。
5 質問
少年に質問するに当たっては、当該少年の保護者等に連絡するものとする。ただし、連絡することが当該少年の福祉上著しく不適当であると認められるときは、この限りでない(規則第31条第2項)。規則第31条第2項ただし書の趣旨については、第6の5(1)に定めるとおりである。
ぐ犯調査に係る質問については、第5の5に定めるところに準ずるものとし、低年齢少年に係るぐ犯少年事件の調査のための質問については、規則第32条第2項及び第3項に定めるもののほか、第6の6に定めるところに準ずるものとする。
6 所持物件の措置
非行の防止上所持させておくことが適当でないと認められる物件を少年が所持していることを発見したときは、第5の9に定めるところに準じて措置するものとする。
7 関係書類の作成
ぐ犯調査のために作成する関係書類の様式については、様式を定める訓令等の定めるところによるものとする。少年の申述書その他の関係書類を作成するに当たっては、当該少年に対し、当該書類の記載内容等について分かりやすく説明するとともに、記載内容の変更等を申し立てる機会を十分に与えなければならない。
8 ぐ犯少年ぐ犯少年事件の送致又は通告(規則第33条関係)
ぐ犯調査の過程において、少年が要保護児童であると認められたときは、児童通告書により通告するものとする。ただし、急を要し、児童通告書を作成して通告するいとまがない場合は、第9の3に定めるところと同様に、口頭により通告し、その内容を記載した児童通告通知書を事後に送付することとしても差し支えない。
ぐ犯少年事件の送致又は通告に当たっては、家庭裁判所及び児童相談所との連携を密にしつつ、これを進めなければならない。
9 少年についての緊急措置
家庭裁判所の審判に付すべきであると認められる少年が緊急に保護しなければならない状態にあって、その補導上必要があると認められる場合においては、電話その他の方法により、直ちに家庭裁判所にその状況を通報すること。少年に対して少年法第13条第2項の規定により同行状を執行した場合において、警察署に留め置く必要があるときは、一時保護に準じて取り扱うものとし、第6の13に定める事項に留意するものとする。
10 一時保護
児童福祉法第33条の規定により児童相談所長の委託を受けて少年を一時保護する場合においても、第6の13に定める事項に留意するものとする。
11 指導教養(規則第34条関係)
ぐ犯調査に従事する者に対する指導教養については、第6の14に定めるところに準ずるものとする。
第8 不良行為少年の補導(規則第14条関係)
不良行為少年を発見した場合において、保護者又は関係者への連絡を行うことが必要であると認めるときは、少年補導票(「不良行為少年の補導について(例規通達)の全部改正について(例規通達)」(平成12年12月26日付け鳥生企例規第26号)別添様式の少年補導票をいう。)を作成した上で行うものとする。不良行為少年について、必要と認められる場合には、保護者の同意を得た上で、継続補導を実施するものとする。ただし、特定少年の不良行為少年に対して継続補導を実施する場合には、本人の同意を得るものとする(規則第14項第2項において準用する第8条第2項から第5項まで)。不良行為少年に対して継続補導を行う場合には、第3の3に定めるところにより実施するほか、少年に対する言葉遣い等に配慮するものとする。継続補導等を行った不良行為少年については、その経過を明らかにするため、警察庁生活安全局長が定める様式の少年事案処理簿を作成しておくものとする。
第9 少年の保護のための活動
1 被害少年に対する活動(規則第36条関係)
(1) 人格形成期にある少年が犯罪その他少年の健全な育成を阻害する行為により被害を受けた場合、その心身に与える影響が大きいことから、特別な配慮が必要であることを念頭に置くものとする。
(2) 被害少年に対する支援の実施に当たっては、必要に応じて、被害者支援部門との連携に留意するものとする。規則第36条第1項の「必要な支援」とは、現場における助言、関係機関の紹介、再び被害に遭うことを防止するための助言又は指導等をいう。また、同条第2項で保護者の同意を得ることとしているのは、継続的な支援については、被害少年のプライバシーにかかわることが多いからである。
(3) 継続的な支援の実施に当たっては、臨床心理学、精神医学等の専門家の助言を受けるなどして、被害少年の特性に留意するものとする。継続的な支援については、個別の事案によっては、学校等の関係機関のほか、地域のボランティア等との協力の下に行うことが効果的な場合もある。また、同条第3項で保護者の同意を得ることとしているのは、これらの者との協力により、継続的な支援に関与する者が多くなる場合には、少年のプライバシーに配慮することが不可欠であるからである。
なお、特定少年である被害少年に対して継続的な支援を実施する場合には、本人の同意を得るものとする(規則第36条第4項)。
(4) 少年が被害者である事件について、新聞その他の報道機関等に発表する場合においては、被害少年のプライバシーに十分に配慮するものとする。なお、継続的な支援を行った被害少年については、その経過を明らかにするため、少年事案処理簿を作成するものとする。
2 福祉犯に係る活動
(1) 福祉犯の取締り
福祉犯事件を認知した場合においては、時機を失することなく、捜査を行うものとする。警察署長等は、少年警察部門以外の部門に属する警察官が行う福祉犯事件の捜査についても、少年警察部門に属する警察官による捜査・調査と密接な関係がある場合等においては、必要に応じ、少年警察部門に属する警察官に捜査させるよう配意するものとする。
(2) 福祉犯の被害少年の保護等(規則第37条関係)
福祉犯の被害少年については、身体的・精神的な打撃が大きく、心身に傷を受けたことが非行の原因となる場合もあり、例えば、いわゆる援助交際に起因する児童買春事件にみられるように、被害少年において被害者意識が希薄であるために反復して被害に遭う場合も少なくないことから、福祉犯事件について捜査をするほか、被害少年が再び被害に遭うことを防止するため、保護者や学校関係者等に配慮を求めることとされた。また、福祉犯については、風俗営業に係る18歳未満の者の使用や20歳未満の者に対する酒類又はたばこの提供にみられるように、特定の営業において反復継続的に少年が被害者となる場合もみられることから、同種の犯罪の再発を防止する観点から、福祉犯事件に関係した事業者を指導・監督する行政機関に対し、当該事件について連絡し、必要な行政処分等を促す等の必要な措置を執ることを求めることとされた(規則第37条)。
同条の「その他の同種の犯罪の発生を防止するため必要な措置」としては、例えば、関係する業界団体に対し、再発防止のための自主的な取組を働き掛けたり、地域住民に対する広報啓発を行ったりすること等が挙げられる。
3 要保護少年に係る活動(規則第38条関係)
(1) 児童相談所への通告
18歳未満の要保護少年について、少年に保護者がいないとき又は保護者に監護させることが不適当であると認められるときは、児童通告書又は口頭により児童相談所に通告するものとする。この場合において、口頭により通告したときは、その内容を記載した児童通告通知書を事後に当該児童相談所へ送付するものとする(規則第38条第2項)。
口頭による通告については、電話等を含むものとし、児童福祉法第25条第1項の規定による通告であることを告げ、児童通告書の記載事項を確実に伝達するとともに、時機を失することなく、児童通告通知書を当該児童相談所に送付するものとする(規則第38条第2項)。また、通告を行わない要保護少年についても、その保護者に対する助言、学校への連絡その他の必要な措置を執るものとする(規則第38条第1項)。
(2) 一時保護
児童福祉法第33条の規定により児童相談所長の委託を受けて要保護少年を一時保護する場合においても、第6の13に定める事項に留意するものとする。
(3) 少年事案処理簿の作成
児童相談所への通告が必要と認められる要保護少年については、その適正な処遇及び健全な育成に資するため、少年事案処理簿に事案の処理の状況を記載するものとする。
4 児童虐待を受けたと思われる児童に係る活動(規則第39条関係)
(1) 児童相談所への通告
児童虐待を受けたと思われる児童を発見したときは、速やかに、児童通告書又は口頭により児童相談所に通告するものとする。この場合において、口頭により通告したときは、その内容を記載した児童通告通知書を事後に当該児童相談所へ送付するものとする(規則第39条第2項)。また、児童虐待を受けたと思われる児童に係る口頭による通告並びに児童通告書及び児童通告通知書の送付の要領については、第9の3(1)の例によるものとする。
なお、児童虐待の事実が必ずしも明らかでない場合であっても、児童虐待を受けたと思われる場合には、児童の早期保護のため、幅広く児童相談所に通告するものとする。
(2) 一時保護
児童福祉法第33条の規定により、児童相談所長の委託を受けて児童虐待を受けたと思われる児童を一時保護する場合においても、第6の13に掲げる事項に留意するものとする。
(3) 関係機関との連携
児童虐待は、児童の心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えるものであることに鑑み、児童の安全確保を最優先とした対応の徹底を図るとともに、被害児童の保護に向けた関係機関との連携の強化、厳正な捜査と被害児童等の心情や特性に配慮した聴取、被害児童に対するカウンセリング等の支援、少年・人身安全対策課への情報の集約と組織としての的確な対応を執るものとする。また、再発を防止するために保護者に対する助言、学校への連絡等必要な措置を執るものとする(規則第39条第1項)。
(4) 少年事案処理簿の作成
児童虐待を受けたと思われる児童については、第9の3(3)と同様に、少年事案処理簿を作成するものとする。
様式 省略