「地域主権」の確立に向け、国と地方の協議の場に関する法律案や、自治体への義務付け・枠付けの見直しを内容とする第1次地域主権一括法案が今通常国会に提出され、また、本年夏の「地域主権戦略大綱」策定に向けて、ひも付き補助金の一括交付金化や国の出先機関の抜本的な改革等の検討が進められるなど、地域主権改革は、その理念を具体化する新たな段階に入ったと言える。
しかしながら、現在、政府が検討している財政健全化目標において、国と地方合わせたプライマリー・バランスの改善が掲げられ、国の財政赤字の地方への転嫁が懸念されるなど、必ずしも、「地域主権改革」の理念に沿った取組とは言い難い動きも見られ、地方が主役となる真の「地域主権」の確立への道のりは非常に厳しいと言わざるを得ない。
政府においては、「地域主権」の理念を十分に踏まえ、関連法案を今国会において成立させるとともに、次の事項を早期に実現するよう強く要請する。
1 地域主権改革の着実な推進
「地域主権戦略大綱」の策定に当たっては、目指すべき地域主権型社会の姿や、国・広域自治体・基礎自治体の担うべき役割について、国と地方で十分協議した上で、その基本理念を明らかにすること。
また、義務付け・枠付けの見直し、基礎自治体への権限移譲、ひも付き補助金の一括交付金化、国の出先機関改革などの多くの課題に対し、「国と地方の協議の場」等による地方の意見を十分踏まえて、真の「地域主権」改革につながるものとするとともに、各課題の解決に向けた具体的な目標と工程を明示すること。
2 国と地方の役割分担の明確化
国と地方の二重行政を廃止し、簡素で効率的な行政体制を構築する ために、国と地方の役割分担を一層明確にした上で、国の出先機関を廃止・縮小し、地方で行うべきものについては、事務・権限と財源の一体的移譲を前提に、可能なものから速やかに移譲するとともに、義務付け・枠付けについては、地方分権改革推進委員会の累次の勧告を 踏まえ、廃止も含め、より一層の抜本的な見直しを進めること。
なお、直轄事業負担金については、制度廃止に向けた具体的な手順等を盛り込んだ工程表を早期に策定するとともに、平成25年度までの早い時期での廃止を「地域主権戦略大綱」に明記すること。その際には、社会資本整備が遅れている地方に影響が生じないよう配慮すること。
3 国と地方の十分な協議
法制化が進められている「国と地方の協議の場」については、国の政策を地方が単に追認するだけの場とせず、地方の実情や地方の声が十分反映されるよう、実質的な協議が行われる、実効性のある場とすること。
特に、地方税財源の充実・強化や、一括交付金制度等の地方行財政制度及び現在、国において検討が行われている「医療保険制度」及び「障害者福祉制度」などの新たな社会保障制度の制度設計等に当たっては、「国と地方の協議の場」を積極的に活用し、地方の実情や意見を十分聴取するとともに、政策への反映を図ること。
平成22年5月31日
中国地方知事会
鳥取県知事 平井 伸治
島根県知事 溝口 善兵衛
岡山県知事 石井 正弘
広島県知事 湯﨑 英彦
山口県知事 二井 関成