現在、国においては、食料自給率向上を図るとともに、農業と地域を再生させ、農山漁村に暮らす人々が将来に向け明るい展望を持って生きていける環境を作り上げることを目的に、事業の効果や円滑な事業運営を検証するため、戸別所得補償モデル対策を開始し、平成23年度から戸別所得補償制度を本格実施するとしている。
また、国内景気の悪化に伴う生産物価格の低迷、飼料価格・燃料費の高騰や漁獲量の減少等により厳しい経営状況に置かれている畜産・酪農、漁業においても、所得補償制度の導入が検討されている。
しかしながら、戸別所得補償モデル対策においては、助成単価は全国一律とされており、中山間地を多く抱え生産条件が不利な中国地方においては、農業者の努力では埋めがたい生産コストがかかるため、十分な所得補償とはならない状況にある。
また、経営規模が小さく、農業者の減少・高齢化が進んでいる状況を踏まえると、地域農業の持続的な発展を図るために、集落営農の取組等の水田農業構造の改革と合わせ、園芸作物の導入などによる農業経営の高度化を進めることが喫緊の課題であるにも関わらず、こうした取組を推進する制度設計となっていない。
さらに、内容の周知、対象作物の作付確認、交付金支払いのためのデータ作成等、大半の事務を地域協議会や市町村が行うこととされ、旧対策よりも事務量が増加しているが、事務手続き等が明らかになる時期が遅かったため、農業者からの加入申請手続きにも支障を来している。
このため、農業の戸別所得補償制度の本格実施に当たっては、戸別所得補償モデル対策におけるこれらの課題を十分に検証し、農家の所得向上、経営安定と持続的な発展が図られるよう、次の事項について強く要請する。
1 地域の実情に配慮した制度設計
(1)米、麦、大豆を対象とした農業の戸別所得補償制度の本格実施に当たっては、中山間地域等の生産条件不利地においても、十分な所得が補償されるよう、地域特性を考慮した単価設定とすること。
(2)地域農業の発展を図るため、集落営農法人など持続可能な経営体の育成を促進する加算措置を行うこと。
(3) 野菜、果樹など、地域の特性に合った付加価値の高い作物の生産を推進できる制度とするとともに、十分な財源措置を講じること。
(4)なお、畜産・酪農、漁業等分野についても、早期に制度概要案を示すとともに、地方の意見や実情を反映させること。
2 農家等の事務負担軽減と制度内容の早期説明
農家、市町村等における事務負担が増加しないよう、事務手続きを簡明にするとともに、戸別所得補償制度の内容を早期に明確にすること。
平成22年5月31日
中国地方知事会
鳥取県知事 平井 伸治
島根県知事 溝口 善兵衛
岡山県知事 石井 正弘
広島県知事 湯﨑 英彦
山口県知事 二井 関成