防災・危機管理情報


新春座談会

  子どもたちは未来を担うかけがえのない宝。その健やかな育ちを支えるために、私たちはどのようなことができるでしょうか。
  令和5年、県内では倉吉東高校で山陰初の国際バカロレア教育が始まります。子どもに寄り添い、意見表明をサポートするアドボカシー制度も本格的にスタートします。
  子どもが輝く新しい時代に向けて、鳥取県知事とさまざまな分野で活躍される方々が展望を語り合いました。

子育て王国・鳥取が全国に先行
平井(ひらい) 伸治(しんじ)
平井知事の写真
鳥取県知事

命の尊さと体の仕組みの理解を
見尾(みお) 保幸(やすゆき)さん
見尾保幸さんの写真
ミオ・ファティリティ・クリニック院長
生殖医療の専門医として最先端の不妊治療に取り組み、女性の健やかな人生をサポート

パートナーシップで地域を変える
万木(ゆるぎ) 良平(りょうへい)さん
万木良平さんの写真
日本青年会議所中国地区鳥取ブロック協議会会長
みんなで赤ちゃんを育む優しい社会を目指す「ベビーファースト運動」を推進

国際バカロレアを倉吉から全県に
森岡(もりおか) 明美(あけみ)さん
森岡明美さんの写真
岡山理科大学附属高等学校 国際バカロレアディプロマプログラムコーディネーター
鳥取市出身。教育学博士。検証的思考法と言語教育の統合を専門に国際バカロレア教育を推進

子どもと地域つなぐ居場所づくり
清水(しみず) 愛結(あゆ)さん
清水愛結さんの写真
鳥取大学地域学部2年 COCON(ココン)代表
商店街で空き店舗を活用した居場所づくりを行い、地域の多世代交流創出に取り組む

新春座談会出席者の集合写真
(新春座談会)左からミオ・ファティリティ・クリニック院長 見尾保幸さん、COCON代表 清水愛結さん、鳥取県知事 平井伸治、日本青年会議所中国地区鳥取ブロック協議会会長 万木良平さん、岡山理科大学附属高等学校国際バカロレアディプロマプログラムコーディネーター 森岡明美さん

新春座談会の様子

知事  皆さん、明けましておめでとうございます。今年は新しくこども家庭庁が誕生します。鳥取県は平成22年から「子育て王国とっとり」の看板を掲げ、先進的に子どもたちの支援へ力を注いできました。子どもの未来を(ひら)くのは地域社会の使命。子育て王国の真価を発揮する年にしたいと思っています。

見尾  産婦人科医として、体外受精に代表される生殖医療をライフワークに取り組んでいます。赤ちゃんが欲しいと願う世界中の人々の夢をかなえるお手伝いをしてきました。

万木  青年会議所で、「ベビーファースト運動」を推進しています。子どもたちに焦点を当て、子育て環境を整えるための空気づくりをしています。

森岡  アメリカと日本の大学の教員を経て、高校の国際バカロレア教育に携わっています。物事を検証的に考える「知の理論」を教えています。

清水  子どもから高齢者まで誰もが集える場所を作りたいという思いから、商店街の空き店舗を活用して、カフェをモチーフにした居場所づくりを行っています。

司会  子どもを取り巻く社会の変化や現状についてお聞きします。見尾さんは妊娠や出産、女性の健康に関する今の状況をどのように感じていますか。

見尾  昨年4月に生殖医療の保険適用がスタートし、赤ちゃんを授かろうとするハードルは下がってきました。
  一方で、妊娠・出産が安易、手軽に考えられているのではないかという懸念もあります。10代後半から20代前半の生物学的な適齢期から外れるほど、妊娠は難しくなってしまいます。若い世代に向けて女性の体の変化や妊娠の仕組みを啓発していくことが必要だと考えています。
見尾保幸さんの写真
子どもを望む人の「駆け込み寺」となることを目指して開院したミオ・ファティリティ・クリニック。県西部不妊専門相談センターの運営も担い、妊娠の悩みを持つ人たちを支えている

知事  生命の誕生はいわば自然の摂理の中にあるもの。それを大切にしながら、子どもを望むかたに向き合っていくことが重要です。県では未来のパパママとなる高校生に向け、助産師が命や性の知識を伝えたり、人に言えない悩みを聞いたりしています。少子化の進行は、人々の意識や社会環境の変化も一因。地域社会全体で、危機感をもって考えていくべき時期にあると思います。

司会  産業界の立場からは、子育てをしやすい環境づくりについてどのようにお考えでしょうか。

万木  子どもの病気で急に仕事を休むなど、家庭の事情による仕事への影響を周囲が受け入れる風潮はできつつあると感じます。難しいのは経済的・教育的な面。コロナ禍で休みが増え、子どもの学習支援に苦慮するひとり親家庭なども見られましたが、地域のサポートは十分とはいえません。会社としても一人一人にどれだけ寄り添った対応ができるかは難しいところです。
県がベビーファースト運動への参画を宣言したときの写真
企業や行政が連携し、子どもを産み育てたくなる社会の実現を目指す「ベビーファースト運動」。鳥取県も昨年5月に参画を宣言

ベビーファースト運動のロゴマーク

知事  県では男性の育児休業への支援なども広げながら、子育てを支える職場環境づくりを応援しています。また、このたびの「鳥取県孤独・孤立を防ぐ温もりのある支え愛社会づくり推進条例」は、全国で初めての新しい条例。困り事を抱えた家庭を孤立させず、地域のネットワークで包み込む社会を目指します。課題解決に向け、しっかり応えていきたいと思います。

司会  国際化・情報化といった社会の変化は、子どもたちの教育にどのように影響しているでしょうか。

森岡  オンラインで世界中の人と交流できる現代は、コミュニケーションの範囲が広がる反面、価値観の似た人ばかりが集まってしまう難しさもあります。情報を鵜呑みにせず、一度立ち止まって考える教育を小さい頃から始めることが重要です。今は高校生のうちから社会活動への参画や明確な将来ビジョンが求められる時代。大人が将来の多様な可能性を示し、サポートする必要があります。
倉吉東高校が国際バカロレア認定を受けたときの写真
国際バカロレアの認定証を手にする県教育委員会足羽教育長(中央)、倉吉東高校福光校長(右)と宋ディプロマプログラムコーディネーター。昨年9月に認定校となり、国際水準の教育プログラムで世界に通用する人材を育成していく

国際バカロレア教育の様子

知事  鳥取県では10年以上前から子どもの適切なICTとの出会いに関する啓発を行ってきました。インターネットの中には偏った情報や危険なわなもあり、特に十分な対応力を持たない若い世代へのサポートは重要と考えています。国際化や情報化は社会的な関心が高いテーマ。倉吉東高校の国際バカロレア認定が、日本と海外の両方の良さを取り入れた鳥取型の教育を作る契機となればと思っています。

司会  若い世代の清水さんは、子どもたちを取り巻く環境の変化をどのように感じていますか。

清水  昨年9月、空き店舗を活用した地域の居場所をプレオープンした際に感じたことは、子どもたちが他者と関わる機会が少なくなっているということでした。多くの子どもたちには、家、学校、児童クラブの3つの世界しかなく、悩みを相談する相手も限られているようです。私たち学生が子どもたちとつながり、もう一つの「第3の居場所」、逃げ場を作ってあげたいと考えています。

特定非営利活動法人ふふやと連携して運営する居場所「COCON」。内装やカフェメニューは全て学生たちの手作り。子どもから高齢者まで誰もが立ち寄れる居場所づくりを目指す
ココンの様子1
ココンの様子2

知事  鳥取県には、人口比で沖縄県に次ぎ2番目に多い子ども食堂があります。子どもの相談窓口の機能を持つこうした居場所では、ヤングケアラーなど、福祉の窓口や学校では見えにくい問題に気付くことができます。また、人間の社会性をつかさどる脳は、異年齢のコミュニケーションによって発達することが分かってきました。子どもたちに多様な交流を促す活動は非常に重要であると考えています。

司会  ここからは子どもが輝く未来づくりへの展望についてお聞きします。見尾さん、妊娠出産の希望がかない、新しい命が笑顔で迎えられる社会が望まれています。

見尾  赤ちゃんを望む多くのかたの願いがかなうよう、子どものうちから生殖の仕組みを正しく理解し、自分自身でライフデザインを描いていくことが重要です。また、子どもはコミュニティで育てるもの。多様な経験を重ねながら伸び伸びと成長できる地域であってほしいと願っています。子どもの憧れとなる大人も減ってきました。大人自身が子どもの手本となれるよう努力していきたいですね。

司会  万木さん、子育てを社会全体でサポートしていくためには何が必要でしょうか。

万木  青年会議所には「志を同じうする者、相集い、力を合わせ青年としての英知と勇気と情熱をもって明るい豊かな社会を実現させよう」という方針があります。全ての親にとって、子どもが笑っている社会が「明るい豊かな社会」なのではないでしょうか。志を同じくする行政や企業、団体が連携し、常に時代を見据えながら子どもたちのために活動することが重要だと思います。

司会  森岡さん、今春、倉吉東高校は国際バカロレア認定校としてスタートします。鳥取県の教育や人材育成への期待をお聞かせください。

森岡  国際バカロレア教育のコア(核)となる科目では、知識や情報について考えること、学問的誠実性を身に付けること、創造性を持つこと、社会のために奉仕することなどをしっかり学びます。こうした教育が倉吉東高校から全県に広がっていくことを期待しています。国際バカロレア教育では教員自身にも変化や成長が求められます。これを機に、教育環境がより良いものとなっていくことを願っています。

司会  清水さん、子どもたちの健やかな育ちのためには、さまざまな人が関わり合い、支え合う地域づくりが重要というお話もありました。

清水  私の理想の地域像は「笑い声の聞こえる地域」です。地域全体で子どもを育てる環境を作るために、子どもも大人も気軽に立ち寄れる空間・居場所を作り、子どもたちと地域の人々とのリアルな関係を築いていけたらと思っています。こうした取り組みが他にも広がっていくことを期待すると同時に、私自身も活動を通じて得た知識や経験を、後輩や次の世代につなげていきたいと思っています。

司会 最後に知事から、「子育て王国とっとり」のさらなる飛躍に向けた取り組みや挑戦などについてお願いします。

知事  皆さんのお話を聞き、未来に向けて私たちが取り組むべき課題が見えてきたように思います。大人が子どもたちのモデルとなること、パートナーシップを組むこと、社会に関わる学びを広げること、地域の居場所づくりを行うこと―。こうしたことを組み合わせた活動として、例えば琴浦町では商工会青年部が「若旦那商店街」を催し、子どもたちに職業体験を提供しました。多様な人々が互いに協力し、社会と子どもたちとを結ぶ活動が、地域の豊かな未来へとつながっていくのではないでしょうか。
  鳥取県は子育て施策のパイオニアとして次々と子育て対策を展開し、出生率向上や若い世代の移住へつなげてきました。ようやく国もこども家庭庁を設け、国の子育て政策も再編成される方向となりました。子育て王国鳥取県も全国の先を行く子育て支援をさらに進めていかなければなりません。例えば産後ケアの充実などもその一つ。子どもが発言することができる社会に向けた「アドボカシー」も今年本格的に実施していきます。保育や居場所づくりなど、地域にはさまざまな課題もありますが、市町村や関係の皆さんと一緒に「子どもたちの笑顔」が生まれてくるような鳥取県を作っていきたいと思います。『正月の 子どもに成りて みたき哉』小林一茶が、お正月の無邪気な子どもたちの姿を見つめて詠んだ句です。お正月だけではなく、私たちは子どもたちがいろいろな人と出会い、笑顔があふれるような喜びを作っていかなければなりません。子どもが元気に、幸せになれば、キッド(KID)地域も良くなると思います。

司会 鳥取県子育て・人財局長 中西朱実



 

 

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