多様な人々の労働参加を
少子高齢化が加速している日本。総人口は2008年をピークに減少に転じ、15歳以上65歳未満の生産年齢人口は、2065年にはピーク時の1995年から半減すると推計されています(下記「生産年齢人口の推移」参照)。このような中で懸念されるのが、深刻な人手不足。社会機能を維持し、持続的な経済成長を進めていくためには、より幅広い層の労働参加が欠かせません。加えて、ダイバーシティ&インクルージョン(年齢、性別、国籍などのあらゆる多様性を認め合い、それぞれの個性や能力を尊重し、生かしていく考え方)は世界的な潮流。女性や高齢者などの多様な視点・価値観は、社会をより良い方向へ進化させ、誰もが自分らしく輝ける未来へとつながります。
そのためには性別や年齢にかかわらず、誰もが働き続けることのできる環境づくりが必要。仕事のために生活を犠牲にすることがない、子育てや介護のために仕事を諦めることもない、多様で柔軟な働き方の実現が一層求められているのです。
生産年齢人口の推移
※出典は内閣府「令和3年版少子化社会対策白書」より作成
家庭と仕事の両立を支援
女性の就業率は近年右肩上がりで伸び続けています。しかし働く女性の約5割は出産・育児を機に退職。アンケート調査によると、4割以上の女性が「仕事を続けたかったが両立の難しさで辞めた」と回答しています(下記「妊娠・出産を機に退職した理由」参照)。家事・育児に専念することも尊重されるべき選択ですが、意欲ある人が離職せざるを得ない状況を放置することは、社会的な損失といえるでしょう。一方、日本の男性は国際的にも家事・育児に費やす時間が短いことが知られていますが、夫の家事・育児時間が長いほど、妻の就業継続率も高いことが分かっています(下記「夫の家事・育児時間と妻の就業継続率」参照)。男性が家庭生活を大切にできる環境が、女性の働きやすさにつながっているのです。
こうした状況を踏まえ、男女ともに家庭と仕事を両立できる社会を目指して改正された「育児・介護休業法」(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)が、いよいよ施行されます。4月からは育児休業を取得しやすい環境づくりや対象者への周知などが事業者に義務付けられ、契約社員など有期雇用の労働者の取得要件も緩和。10月からは妻の産休中に夫が取得できる「産後パパ育休」や育児休業の分割取得制度が始まります。両立支援の充実によって多くの人が働きやすい環境となることが期待されます。
妊娠・出産を機に退職した理由(複数回答)
育児との両立の難しさ 41.5%
家事・育児時間の確保 29.2%
勤務地や転勤の問題 26.2%
減給等の不利益扱い 16.9%
別の理由による退職 13.8%
出産に伴う体調問題 10.8%
仕事のやりがい喪失 9.2%
特にない 4.6%
契約の終了 1.5%
※出典は厚生労働省資料「育児・介護休業法の改正について」より作成
夫の家事・育児時間と妻の就業継続率
総数 同一就業継続 60.1% 転職 4.0% 離職 30.4% 不詳 5.5%
家事・育児時間なし 同一就業継続 51.5% 転職 3.0% 離職 42.4% 不詳 3.0%
2時間未満 同一就業継続 56.0% 転職 4.1% 離職 34.2% 不詳 5.8%
2時間以上4時間未満 同一就業継続 64.5% 転職 3.5% 離職 26.2% 不詳 5.7%
4時間以上 同一就業継続 75.0% 転職 6.8% 離職 13.6% 不詳 4.5%
※出典は厚生労働省資料「育児・介護休業法の改正について」より作成
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