防災・危機管理情報


  海に流れ出したプラスチックごみによる環境や生物への影響が懸念されています。私たちにできることは、無駄なプラスチックの利用を減らし、資源循環の輪を回していくこと。毎日の暮らしの中で、プラスチックごみを減らすライフスタイルを実践してみませんか。
とっとりプラホウドリの巡回展示の様子
県内在住アーティスト「淀川テクニック」柴田英昭さんが作成した海ごみアート「とっとりプラホウドリ」(米子市崎津小学校での巡回展示)

海を汚すプラスチックごみ

  2020年、高知県沖でアオウミガメの子どもが保護されました。水族館へ移送して1ヶ月、餌も食べずに排泄し続けたのは、ポリ袋やビニールシートなどのプラスチックごみ。海に漂う姿を海藻やクラゲと間違えて飲み込み、消化管を詰まらせていたのです。こうした海洋ごみによって傷つき、命を落としている海の生物は、世界中で約700種にものぼるといわれています。
  プラスチックは丈夫で加工しやすく、私たちの生活や産業をあらゆる形で支える存在です。しかし年間800万トンと推計される海洋ごみの多くを占めているのは、不法投棄やポイ捨て、経年劣化した製品の破片など、陸から流出したプラスチックごみ。2050年には、ごみの量が魚の量を超えるとも試算され、環境や生態系への深刻な影響が懸念されています。
  海洋プラスチックごみは今、世界全体で対処すべき喫緊の課題となっているのです。

(アール)Renewable(リニューアブル)で対策

  プラスチックごみによる環境汚染を防ぐには、過剰な利用を改めるなど、ごみの発生原因を減らすことが第一。加えて、ごみを適正に回収・処理することも重要です。
  日本のプラスチックごみのリサイクル率は、熱回収も含めて86%。(熱回収とは、廃棄物の焼却時に発生した熱エネルギーを回収・利用すること。リサイクル率は一般社団法人プラスチック循環利用協会「2020年プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況」による)世界トップクラスの有効利用率を誇る一方で、一人当たりの使い捨てプラスチック廃棄量の多さは世界第2位にランクされるなど、プラスチックの大量消費を促進してきた一面もあります。
  無駄な使用を減らすために「4R(Refuse(リフューズ)Reduce(リデュース)Reuse(リユース)Recycle(リサイクル))+Renewable」を始めませんか。Refuseは不要な使い捨て製品などを断ること、Reduceはマイバッグの利用などによってごみの発生を抑制すること、Reuseは詰め替えパックを利用して本体容器などを繰り返し使うこと、Recycleは、分別回収して再生利用すること、そしてRenewableは、紙やバイオマスプラスチック(原料として植物などの再生可能な有機資源を使用するプラスチック)などの再生可能な資源に変えることをいいます。暮らしの中の4R+Renewableの実践は、誰もが貢献できるプラスチックごみ対策です。

意識の変化 大きな成果に

  今年4月、プラスチックの資源循環を推進する新しい法律「プラスチック資源循環法(プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)」が施行されました。設計・製造から販売・提供、排出・回収・リサイクルまで、プラスチック利用の全ての段階で4R+Renewableの取り組みが強化されています。その一つが「使い捨てプラスチックの使用の合理化」。コンビニのスプーンやストロー、ホテルの歯ブラシなど、一定の使い捨て製品を提供する事業者は、使用量の削減に努めなければなりません。提供の有料化や限定化、プラスチックの少ない製品や紙・木製品への変更など、それぞれの業態に合わせた工夫が行われています。
  レジ袋の有料化が定着し、店頭の辞退率は8割近くまで上昇しました。一方で、使い捨て食器の利用を控える人は6割、容器や包装の少ない商品を選ぶ人はまだ3割と少数派(消費者庁「令和2年度消費者意識基本調査」より)。一人一人の意識によって、プラスチックごみは大きく減らすことができます。プラスチックは社会に欠かせない大切な素材。だからこそ、無駄なく上手な利用を心がけましょう。

海にはどんなごみが流れ出しているの?

  河川の漂着ごみの6割をプラスチックごみが占めています。ポイ捨てされたり、風に飛ばされたりしたポリ袋やシートの破片などが、陸から川、川から海へと流されています。

漂着物の個数の割合
  プラスチック類 59.6%
  紙類 28.2%
  金属類 6.3%
  ガラス・陶磁器類 1.5%
  布類 1.5%
  発泡スチロール類 1.0%
  ゴム類 0.5%
  その他の人工物 1.3%

プラスチックごみの内訳
  袋 52.3%
  プラボトル・容器 6.8%
  破片類 34.9%
  雑貨類など 6.0%

2021年 河川におけるプラごみ調査結果(鳥取市袋川)より

楽しみながら海をきれいに

NICO(ニコ) Claft(クラフト)
森田(もりた) (にこ)さん
森田笑さんの写真

  海岸などで集めたプラスチックごみでアクセサリーを作る「NICO Claft」の主宰は、中学1年生の森田笑さんです。小学5年生の時に学校の授業で環境問題を学び、きれいな海を守りたいと考えた笑さん。得意なハンドメイドを生かし、海のごみを材料にしたアクセサリー作りを思い付きました。以来県内外で工作イベントを開催し、1,000人以上の参加者に海を守る取り組みを伝えています。
  普段もエコバッグの活用や分別の徹底など、ごみを減らす生活を心がけている笑さんですが、以前から高い関心があったわけではありません。イベント参加者も初めは「かわいい」「面白そう」が入り口。しかし海のごみの深刻さを話すと、皆真剣に耳を傾けてくれるといいます。重要なことは一人一人の意識の変化。アクセサリー作りが楽しみながら環境問題への関心を広げるきっかけになっています。
  今後は知識をレベルアップし、より多くの人に活動を発信していきたいと語る笑さん。チームを組む父親の将悟(しょうご)さんもコミュニケーション力や責任感の向上など、活動を通じた笑さんの成長を眩しく見つめます。将来の夢は「世界中の恵まれない人を救う看護師さん」。周囲を笑顔で巻き込みながら問題解決に向けて行動する力は、未来を(ひら)く大きな可能性につながっています。

海岸などで集めたプラスチックごみの写真
小さく刻んで色分けされたプラスチックの写真
作業スペースの写真
完成したアクセサリーの写真
プラスチックの破片を小さく刻み、アイロンで金型に溶かし込んで作成。「好きな色を使って世界に一つだけの作品が作れるのが魅力」と笑さん

生まれ変わるエアバッグ 求められる商品を

有限会社西川商会 専務取締役
西川(にしかわ) 朋宏(ともひろ)さん
西川朋宏さんの写真

  自動車リサイクル業として年間1万台近くの使用済自動車を扱う有限会社西川商会。役目を終えた自動車を解体し、有用な部品は国内外でリユース、その他も原材料に戻して再生するなど、97%以上を有効利用しています。
  しかし他に使い道がない「エアバッグ」は全て焼却処分に。「これを使って何かできないか」と模索していた西川朋宏さんが、県出身の世界的デザイナー川西(かわにし)遼平(りょうへい)さんと出会い、3年越しで取り組んだのが、エアバッグ生地を使った洋服「AIR(エア) GARMENTS(ガーメンツ)」のプロジェクトです。製作は決して簡単ではありませんが、それでも洋服にこだわったのは、川西さんのセンスとブランド力を生かしたかったから。「求められる商品でなければ継続できない。リサイクルのための商品ではなく、消費者が純粋に『欲しい』と思えるものを作りたい」と語る西川さん。東京での展示会も成功させ、全国10店舗以上で取り扱いが予定されています。
  事業の根底にあるのは「もったいない」という理念。「新たな命を吹き込みながら物を大切に、最後まで使っていきたい。AIR GARMENTSが循環経済に関心を持つきっかけとなれば」。スタイリッシュなウェアには、持続可能な社会への願いがこめられています。

エアバッグから作られた洋服を着る西川さんと川西さんの写真
エアバッグから作られた洋服を着る西川さん(右)、デザイナーの川西さん(左)

プラスチック資源循環法の取り組み

(1) 設計・製造段階
  プラ製品の設計を環境配慮型に転換
プラスチック資源循環法の取り組みイメージイラスト1

(2) 販売・提供段階
  使い捨てプラをリデュース
プラスチック資源循環法の取り組みイメージイラスト2

(3) 排出・回収・リサイクル段階
  排出されるプラをあまねく回収・リサイクル
プラスチック資源循環法の取り組みイメージイラスト3

(出典) 環境省プラスチック資源循環法概要資料より作成

【問い合わせ先】 県庁循環型社会推進課
電話 0857‐26‐7198 ファクシミリ 0857‐26‐7563
メールアドレス junkanshakai@pref.tottori.lg.jp


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