苦しむ人見えづらい社会に
あなたは近所に暮らす人々のことをどのくらい知っていますか。自分や家族の悩みを相談できる人が身の回りにいますか。
時代の変遷に伴い、私たちの生き方や価値観は大きく変わりました。仕事や学業の都合で親族と離れて暮らすことが一般的となり、働き方やライフスタイルも多様化。少子化・非婚化も進み、今や社会の9割を占めるのは核家族・単身世帯です。近所付き合いが減り、多くのことが個人の選択に委ねられるようになりました。
しかし、個人が尊重される自由な社会の裏では望まぬ孤独・孤立に苦しんでいる人もいます。特に家庭内の問題は「身内のことは身内で」といった意識も相まって、当事者の中で抱え込んでしまいがち。インターネットで世界中の人とつながり合える一方、すぐそばで困難を抱える人の姿が見えにくくなっているのです。
本人も家族も一緒に支える
少子高齢化や核家族化の進行は県内でも深刻な影響を及ぼしています。その一つがヤングケアラー(本来大人がすると想定されているような家事や家族の世話などを日常的に行っている子どものこと)。県の実態調査では、およそクラスに1人の割合の子どもが、学業や生活への影響を受けながら家族のケアを担っていることが分かりました。また、自宅に引きこもったまま本人も親も高齢化する「8050問題」も社会的な課題。県の調査でも、こうした人の多くが外部の支援を受けていないことが見えてきています。その他にも認知症の介護や難病・障がいのケアを行う家庭など、支援を必要とする人は決して少なくありません。
昨年12月に制定された「鳥取県孤独・孤立を防ぐ温もりのある支え愛社会づくり推進条例」は、こうした人々を誰一人取り残すことなく、行政と地域が連携して支えることを目指す新しい条例。本人と家族を一体的に支援することを定めた全国初の取り組みです。
誰一人取り残さない「支え愛」
条例の目的は、支援を必要とする人・家族が、地域で孤立したり孤独を感じることなく、周囲の人々とつながり、温かく支えられる社会づくりを進めること。このために県や市町村は、必要な支援や情報を届け、相談しやすい環境を整備し、サポートを行う人材の育成などを行います。県民や事業者には、困難を抱える人々へ見守りや声かけを行うことなどが求められます。
人と人との絆の深さは、小さな県だからこその強み。誰もが安心して暮らすことのできる社会には、一人一人の温かな思いやりが欠かせません。「支え愛」は、互いに助け合い、共に生きる社会を目指す合い言葉。ぜひあなたの身の回りの人々に心を配り、助けを必要とする声に手を差し伸べてください。
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