内閣府は、平成21年10月の「月例経済報告」で、最近の経済動向について次のように報告している。
(総論)
景気は、持ち直しているが、自律性に乏しく、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある。
・輸出は、アジア向けを中心に、増加している。生産は、持ち直している。
・企業収益は、大幅な減少が続いているが、そのテンポは緩やかになっている。設備投資は、減少している。
・企業の業況判断は、依然として厳しい状況にあるものの、全体として持ち直しの動きが続いている。ただし、中小企業ではそのテンポは遅い。
・雇用情勢は、悪化傾向が続いており、極めて厳しい状況にある。
・個人消費は、持ち直しの動きが続いている。
先行きについては、当面、雇用情勢が悪化傾向で推移するものの、海外経済の改善などを背景に、景気の持ち直し傾向が続くことが期待される。一方、雇用情勢の一層の悪化や海外景気の下振れ懸念、金融資本市場の変動の影響など、景気を下押しするリスクが存在することに留意する必要がある。
政府は、家計の支援により、個人消費を拡大するとともに、新たな分野で産業と雇用を生み出し、内需を重視した経済政策を実現するよう政策運営を行う。また、現下の厳しい雇用情勢に細心の注意を払い、それを踏まえた対応策を検討する。
日本銀行に対しては、我が国経済が、物価安定の下での持続的成長路線に復帰するため、引き続き政府との緊密な連携の下で、適切かつ機動的な金融政策運営を期待する。
(各論)
○消費・投資などの需要動向
個人消費は、経済政策の効果もあって、持ち直しの動きが続いている。消費者マインドは、低水準ながら持ち直している。実質雇用者所得は緩やかな減少傾向にある。設備投資は、減少している。住宅建設は、緩やかに減少している。公共投資は、堅調に推移している。輸出は、アジア向けを中心に、増加している。輸入は、持ち直している。貿易・サービス収支の黒字は、増加している。
○企業活動と雇用情勢
鉱工業生産は、持ち直している。先行きについては、輸出の増加傾向などから、当面、持ち直しが続くことが期待される。企業収益は、大幅な減少が続いているが、そのテンポは緩やかになっている。また、企業の業況判断は、依然として厳しい状況にあるものの、全体として持ち直しの動きが続いている。ただし、中小企業ではそのテンポは遅い。倒産件数は、おおむね横ばいとなっている。雇用情勢は、悪化傾向が続いており、極めて厳しい状況にある。
○物価と金融情勢
国内企業物価は、横ばいとなっている。消費者物価は、緩やかに下落している。株価(日経平均株価)は、10,300円台から10,500円台まで上昇した後、9,600円台まで下落し、その後10,000円台まで上昇している。対米ドル円レートは、92円台から88円台まで円高方向で推移した後、89円台で推移している。
▲トップに戻る
需要面の個人消費では、大型小売店販売額(8月)が、全店舗計では前年を上回ったが、店舗調整後(新規店舗を除く)では前年を下回った。ホームセンター・家電量販店販売額(8月)は前年を下回ったが、乗用車新車新規登録台数(9月)は前年を上回った。
建設等では、新設住宅着工戸数(9月)、用途別着工建築物工事金額(9月)は前年を下回ったが、公共工事請負金額(9月)は前年を上回った。
産業面では、鉱工業生産指数(8月、季節調整済)が96.2で前月比6.4%上昇した。なお、大口需要電力実績(8月)は、鉱工業用主要4区分全てで前年を下回った。
雇用面では、新規求人倍率(9月)は、0.88倍(前月と同水準、前年同月差0.15ポイント低下)であった。有効求人倍率(9月)は、0.48倍(前月差0.02ポイント上昇、前年同月差0.19ポイント低下)と0.5倍を割り込んでいる。
きまって支給する給与(8月)、所定外労働時間(8月)とも前年を下回った。
○需要面の動き
【個人消費】
大型小売店販売額(8月)は、全店舗計では58億6,800万円となり、前年同月比3.6%増と2か月続いて前年を上回ったが、店舗調整後では前年同月比9.0%減(全国は前年同月比6.8%減)と17か月続いて前年を下回った。なお、全店舗計の内訳では、百貨店が17億2,600万円(前年同月比10.6%減)、スーパーが41億4,200万円(前年同月比10.9%増)であった。
ホームセンター・家電量販店販売額(8月)は35億8,800万円(前年同月比1.2%減)と3か月続いて前年を下回った。内訳ではホームセンターが20億600万円(前年同月比0.4%増)、家電量販店販売額が15億8,200万円(前年同月比3.1%減)であった。
乗用車新車新規登録台数(9月)は2,028台(前年同月比8.0%増)と4か月続いて前年を上回った。内訳では、普通車、小型車は前年を上回ったが、軽自動車は前年を下回った。
【住宅建設】
新設住宅着工戸数(9月)は170戸(前年同月比41.4%減)と9か月続いて前年を下回った。内訳では、持家系(前年同月比57.3%減)は前年を下回ったが、貸家系(前年同月比8.6%増)は前年を上回った。
【設備投資】
用途別着工建築物工事金額(9月)は10億8,800万円(前年同月比46.0%減)と前年を下回った。用途別では、鉱業,採石業,砂利採取業,建設業(前年同月比33.2%減)、医療,福祉(前年同月比79.6%減)等で前年を下回り、卸売業,小売業(前年同月比462.7%増)等で前年を上回った。
【公共工事】
公共工事請負金額(9月)は123億3,200万円(前年同月比42.2%増)と前年を上回った。発注者別内訳では、国(前年同月比93.7%増)、県(前年同月比36.7%増)等で前年を上回った。
○産業面の動き
【産業活動】
鉱工業指数(8月)は生産指数(季節調整済)が96.2となり前月比は6.4%上昇、原指数は84.7となり前年同月比では3.9%上昇した。
内訳を前月比で見ると、食料品・たばこが6.4%上昇となり2か月連続の上昇、電子部品・デバイスが4.6%の上昇となり5ヶ月続いて上昇、電気機械が20.1%の上昇となり2か月連続の上昇、一般機械が2.6%の低下となり3か月ぶりの低下となった。
在庫指数(季節調整済)は93.6と前月比1.9%低下した。
【電力】
大口需要電力実績(8月)は131,133千kWh(前年同月比12.6%減)と13か月続いて前年を下回り、鉱工業用電力も主要4区分の全てで前年を下回った。
【青果物卸売量】
鳥取市場の青果物卸売量(9月)は野菜が1,697t(前年同月比6.2%増)と3か月ぶりに前年を上回り、果実は1,310t(前年同月比9.0%減)と前年を下回った。
鳥取市場の青果物販売量(9月)のうち鳥取県産の卸売量は野菜が590tで市場全体に占める割合は34.8%(前年同月差0.2ポイント低下)、果実は760tで市場全体に占める割合は58.0%(前年同月差2.6ポイント低下)であった。
【漁獲量】
境港の漁獲量(9月)は9,961t(前年同月比32.2%増)と4か月続いて前年を上回った。
○雇用・金融面の動き
【雇用】
新規求人倍率(9月)は0.88倍(前月と同水準、前年同月差0.15ポイント低下)であった。なお、新規求人数(9月)は3,256人で前年同月比12.5%の減であった。
有効求人倍率(9月)は0.48倍(前月差0.02ポイント上昇、前年同月差0.19ポイント低下)と0.5倍を割っている。
【賃金】
現金給与総額(8月)は251,261円(前年同月比4.0%減)と8か月続いて前年を下回った。そのうち、きまって支給する給与(8月)は、240,749円(前年同月比2.3%減)で15か月続いて前年を下回った。
【労働時間】
所定外労働時間(8月)は7.1時間(前年同月比18.5%減)と13か月続いて前年を下回った。主力の製造業は28.1%減となった。〔産業別の前年同月比では、電気ガス水道業(前年同月比28.4%増)等で前年を上回り、飲食店,宿泊業(前年同月比26.9%減)等で前年を下回った。〕
【預金・貸出金残高】
預金残高(8月末)は1兆9,599億円(前年同月比3.2%増)と8か月続いて前年を上回り、貸出金残高(8月末)は1兆1,381億円(前年同月比1.3%増)と4か月続いて前年を上回った。
○参考
・ 鳥取県景気動向指数(8月)は先行指数が6月87.5、7月87.5、8月87.5、一致指数が6月100.0、7月87.5、8月100.0、遅行指数6月60.0、7月40.0、8月40.0となった。
・ 企業倒産(9月)は件数が2件で前年に比べて2件減少(前年同月比50.0%減)し、負債総額は1億6,000万円で前年に比べて2億2,000万円減少(前年同月比57.9%減))した。
・ 消費者物価指数(9月:鳥取市、総合、平成17年=100)は99.8(前月比0.3%低下、前年同月比2.3%低下)となった。
・ 鳥取県の推計人口(10月1日現在)591,150人で、前月と比べて256人(0.04%)減少し、前年同月と比べて3,765人(0.63%)減少した。
・ 鳥取県の企業経営者の見通し(主要300事業所、年4回調査)を平成21年8月調査でみると、平成21年7~9月期は前四半期(平成21年4~6月期)に比べると、景気が不調で、売上高、経常利益がやや不調となっている。