平成23年6月定例県議会付議案に対する知事提案理由説明要旨
本定例県議会に提案いたしました諸議案の説明に当たり、これからの県政を遂行するに当たっての私の所信を申し述べさせていただきます。
まず、この度の東日本大震災で被災された皆様に対し、心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。この想像を絶する大災害に接し、被災地の一日も早い復興を願って、県民、企業、団体、NPO等の皆様より、救援物資、寄附、ボランティア活動など厚い御支援をいただいており、あらためて感謝申し上げます。
現在の日本は、相次ぐ災害、経済・雇用の停滞、少子高齢化、中山間地問題など待ったなしの課題を抱えています。すなわち、「歴史の分水嶺」として、日本という国が大きな試練と転機を迎えています。人口最小県の鳥取県から、機動力を活かし、その先頭に立って、新たな時代への扉を力強く押し開けてまいりたいと考えます。
私は、これまで、鳥取県に活力と安心を呼び戻すため、「次世代改革」を県民の皆様とともに実行し、鳥取新時代への道を切り開くべく、県政を推進してまいりました。その結果、これまで蒔いてきた未来への種はようやく芽を出し、以前とは違った姿の鳥取県を創りつつあります。
新春の豪雪やこの度の震災では、鳥取県民や地域の持つ助け合いの精神が随所で発揮されました。今こそ、こうした全国に誇るべき「鳥取力」を結集し、県民の皆様や県議会とともに未来づくりに挑戦するため、今後とも改革の手を緩めることなく、地域の発展と暮らしの安心を実現すべく、なお一層着実かつ積極的に取り組んでまいる決意であります。
鳥取県の「未来づくり」のため、まず「パートナー県政」を展開します。
県民のパートナー、地域のパートナーとしての県政を推し進め、県民、団体、NPO、市町村などとしっかり協働・連携して、活気に満ちた鳥取県の発展と互いに支え合う温かい地域社会を推進していきます。
また、県庁をクリーンで筋肉質の役所とするため県庁改革を断行することとし、平成26年度末基金残高3百億円以上の確保など健全財政を実現します。
第二に、「産業の未来を開き、雇用を創造」します。
未だ低迷する経済雇用情勢から脱却するため、本県の未来をリードする産業創出を推進するとともに、暮らしの安定に向け雇用創造を図らねばなりません。そのため、環境、エネルギー、バイオなどの次世代型産業による経済成長を戦略的に追求し、中小企業底力アップも応援するとともに、積極的な企業誘致、魅力ある農林水産業の発展などあらゆる分野での雇用の確保を図り、4年間で1万人の雇用を目指します。
また、環日本海時代をリードする航路・空路の拡充、高速道路整備などを着実に推進し、確かな産業展開に結びつけていきます。
第三に、「暮らしに安心」を築きます。
老若男女を問わず安心して暮らせる鳥取県づくりのために、医療や福祉をはじめ生活環境を整え、災害対策・治安や社会資本の充実など暮らしの基礎も固めながら、暮らしの安心実現に向け県民目線で取り組んでまいります。そのため、障がい者・高齢者・児童等を地域住民で支え合う「支え愛」まちづくりとともに、高齢者の諸活動の推進による健康長寿いきいき社会の構築、障がい者バリアフリー社会の実現、新たながん対策、医師・看護師不足の解消などに取り組みます。
第四に、「人財とっとり」を推進します。
人口最小県を支える“人財”の育成は、本県の未来のためには不可欠であります。このため、少人数学級の拡充など心と体の育成も含め、地域一丸となって鳥取県の教育水準を高め、日本一の子育て環境を目指します。
また、元気なシニア人財など地域におられる“人財”を活用して地域の活力を高めるとともに、人間が人間として尊重される社会に向け、ユニバーサル社会の実現や男女共同参画の推進を図ります。
最後に、「彩り、輝き―鳥取の誇り」を創り上げてまいります。美しい自然環境、輝く文化芸術活動など、鳥取の誇りと輝きを高め、地域の魅力の最大化を図ります。そのため、「とっとり環境イニシアティブ」、山陰海岸ジオパークや「まんが王国とっとり」の展開を図るとともに、国際リゾートとしての観光地化、アーティストリゾートの推進、「ようこそようこそIJU(移住)2千人プロジェクト」を展開してまいります。
新たな時代をともに切り拓いてゆく「未来づくり」の挑戦に、議員各位、県民の皆様方の深い御理解と御協力をお願い申し上げる次第であります。
それでは、これより、本定例会に提案いたしました具体の諸議案につきまして、御説明いたします。
今議会に提案いたしました議案は、
予算関係 5 件
条例関係 9 件
その他の案件 7 件 の 合計 21 件であります。
最初に、議案第1号 平成23年度鳥取県一般会計補正予算についてであります。
はじめに、「東日本大震災被害緊急対策及び防災対策」であります。
現在、被災地はもとより、鳥取県内においても震災の影響が日に日に拡がりつつあります。これまで、他県に先駆けて、被災地への救援物資等の輸送、災害ボランティアや職員等の派遣、本県避難者や児童・生徒の受入れ支援、当面の生活費や雇用支援など緊急の被災地・被災者支援を講じてまいりました。また、相談窓口設置、震災対応融資など資金繰り支援、誘客キャンペーン、工業製品の放射線検査や食品産地証明書の発行など、県内企業、観光面への影響に対処する対策も行ってまいりました。
以上の対策に加え、この度、被災された方々や震災に伴う影響を受けた県内経済の再生を支援すべく様々な対策を「がんばろう日本!鳥取発リバイバルプラン」としてとりまとめ、鳥取の地から日本の復興を強力に後押しするとともに、県内影響の克服を図ることといたしました。まず、被災地・被災者対策として、被災企業生産継続のため一時的工場移転を支援するとともに、被災企業等が恒久的に移転新設等を行う場合、既存の補助を拡充して支援することとし、また、被災水産施設移転も新たに助成することとしました。
県内向け対策としては、震災の影響を受けた企業等に対し、新たに、商工団体、金融機関等で中小企業緊急支援チームを編成し、経営再生・改善のサポートを実施いたします。また、被災地の復興需要に対応し木材の安定供給を図るため、切捨て間伐材を搬出する経費の助成や被災地への水産物供給の支援を行うことといたします。
一方、今後の防災対策として、津波の被害想定、島根県と連携した避難計画策定、大災害時の業務継続計画(BCP)の検討など、危機管理政策を早急に進めてまいります。
また、私立学校や民間住宅等の耐震化を積極的に支援します。
次に、「パートナー県政」の推進であります。
県民の県政参画の基本を定める県民参画基本条例(仮称)について、県民への積極的な情報提供、機運醸成を図りながら、住民投票制度の導入も含め、専門的知見や県民の御意見も踏まえて検討を行うことといたします。
また、「新しい公共」による地域の諸課題解決を目指すモデル的な取り組みを支援するほか、市町村の「介護支援ボランティア」制度導入を進めるとともに、小中学校に「学校支援ボランティア」を配置し、生活・学習態度の定着など地域と協働して子どもたちを育む鳥取県独自のスタイルを追求するなど、県民や地域との協働による鳥取県政の展開に乗り出します。
次に、「産業未来・雇用創造」であります。
雇用創造に向け、「雇用創造1万人推進会議(仮称)」を設置するとともに、緊急雇用基金を活用した県版の職場体験型雇用制度の枠を拡大し、農林水産業・観光・福祉・医療等も含めたあらゆる分野での正規雇用に着実に結びつけていきます。あわせて、専門的・技術的職業の正規雇用を促進するため、最大1年間の長期トライアルに対応した新たな県版の職場体験型雇用制度を創設します。
また、食品加工業者のHACCP(ハサップ)取得、水ビジネスや素形材産業における研究などの企業支援、美容・健康商品素材の開発や農医連携など、新たな産業を創出し経済成長を戦略的に支えてまいります。
県内企業の貿易・海外展開の拡大に向け、貿易支援体制を見直しワンストップで県内企業を支援できる体制を再構築するとともに、海外販路開拓拠点整備などの企業支援や新たな海外物流ルートの実証実験を行うことといたします。
「食のみやこ鳥取県」の推進については、農林漁業者の6次産業化や食品加工業者等の農商工連携に向けた施設整備等に対し支援するほか、野菜ソムリエ協会と連携して首都圏などでの情報発信を進めるとともに、梨の新品種の栽培面積の拡大に向け「やらいや果樹園」の支援を行うこととし、ブランド化を後押しします。
次に、「暮らしに安心」であります。
地域住民が支え合う仕組みづくりを推進するため、全市町村に「支え愛コーディネーター」を養成し、初動経費等の支援を始めます。
がん対策の強化については、拠点病院以外のがん登録拡大などがん情報の収集・発信を強化し、若者など保険適用外となる禁煙治療費の助成制度や高額ながん先進医療費についての利子補給制度を創設することといたします。
先月、県内全域で発生した豪雨により被災した施設などの復旧とともに、ゲリラ豪雨災害に備え、人家等に浸水被害を与える恐れのある河道改修や急傾斜地崩壊対策に緊急に取り組むことといたします。
なお、公共事業については、補助事業における国の交付金等の配分が非常に厳しい状況であることを踏まえ、県内経済への影響をできるだけ小さくするため、単独事業を大幅に増額することといたしました。
次に、「人財とっとり」であります。
子どもたちの学びの環境充実に向け、平成24年度以降の少人数学級のあり方について、市町村と協調して拡充するための検討を行うことといたします。また、全国的な模擬テストの分析等を通じ高校の学力課題の把握と指導方法の確立に取り組むとともに、若手教員の実践的研修による指導力強化を図ることといたします。さらに、高校生をアジア諸国に派遣し企業等の先端技術や異文化を体験させるとともに、高等特別支援学校の平成25年4月開校に向け本格的な整備を実施いたします。
子育て環境の改善に向け、放課後児童クラブでの障がい児受け入れを進めるための助成を行うほか、病児・病後児保育充実のための保育士配置についても、新たに助成することといたします。そのほか、不妊治療の助成拡大、男性の育児休業の促進、「森のようちえん」や森林セラピーなど鳥取発の地域活動への助成などにも取り組んでまいります。
最後に、「彩り、輝き―鳥取の誇り」であります。
「とっとり環境イニシアティブ」の推進会議を設置し、EV改造軽トラックの県立施設導入、自転車の利用促進に向けた実証実験や啓発に取り組むことといたします。また、農業ダムやため池などを活用した小水力発電や農業用施設での太陽光発電の調査・検討を行うとともに、再生可能なエネルギーモデルの事業化調査を行うことといたします。
まんが王国の推進については、平成24年度に本県で開催する国際マンガサミットの準備を進めるとともに、JRと連携したまんがラッピング列車、まんが・アニメを活用した商品開発事業者支援、谷口ジロー氏の作品「遥かな町へ」の映画化などに対し、市町村等と連携して取り組んでまいります。
山陰海岸ジオパーク振興に向けエリア全域を踏破する「110kmウォーク」開催を支援するとともに、JRデスティネーションキャンペーンを見据え、「古事記」の関連素材を活用した新たな観光メニュー造成等を行うこととし、エンジン01の文化・芸術講座開催や平成25年度「エコツーリズム国際大会」誘致の準備活動も支援いたします。
また、本県への移住を加速的に促進するため、移住相談や情報発信の窓口の一本化、田舎暮らし体験のための「お試し住宅」整備を行う市町村への支援、移住定住実践者によるネットワーク形成、定年後の移住希望者をターゲットにした運転免許取得プランを実施する事業者の支援等を実施することといたします。
以上の結果、今回の補正予算の総額は110億9千万円余となり、補正後の予算の総額は、3,333億7千万円余となるものであります。
次に、補正予算以外の主な議案につきまして御説明いたします。
議案第8号 鳥取県行政組織条例の一部改正につきましては、未来づくりの推進とパートナー県政を推進するため「未来づくり推進局」を設置するとともに、津波対策、原子力防災対策など危機管理事象への対処能力、情報提供体制の向上を図るため「危機管理局」を設置することといたします。
議案第9号 鳥取県建築基準法施行条例の一部改正につきましては、地域の歴史文化を継承する街並みの保全等を行うため、建物の増築や建替えに係る規制の緩和を行おうとするものであります。
議案第10号 鳥取県福祉のまちづくり条例の一部改正につきましては、施設のバリアフリー化を推進するため、トイレについてオストメイト対応設備の設置を義務付ける建築物の規模を引き下げようとするものであります。
議案第12号 鳥取県企業立地等事業助成条例の一部改正につきましては、東日本大震災被災企業等が恒久的に移転新設等を行う場合において、既存の補助率を上乗せ拡充しようとするものであります。
以上、今回提案した付議案につきまして、その概要を御説明いたしました。
よろしく御審議のほどお願いいたします。