内閣府は、平成23年8月の「月例経済報告」で、最近の経済動向について次のように報告している。
(総論)
景気は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるものの、持ち直している。
・生産は、サプライチェーンの立て直しにより、持ち直している。輸出は、持ち直しの動きがみられる。
・企業収益は、増勢が鈍化している。設備投資は、下げ止まりつつある。
・企業の業況判断は、東日本大震災の影響による厳しさが残るなど、慎重さがみられる。
・雇用情勢は、東日本大震災の影響により、このところ持ち直しの動きに足踏みがみられ、依然として厳しい。
・個人消費は、持ち直しの動きがみられる。
・物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。
先行きについては、サプライチェーンの立て直し、海外経済の緩やかな回復や各種の政策効果などを背景に、景気の持ち直し傾向が続くことが期待される。ただし、電力供給の制約や原子力災害の影響、海外景気の下振れ懸念に加え、為替レート・株価の変動等によっては、景気が下振れするリスクが存在する。また、デフレの影響や、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。
政府は、「政策推進指針」に基づき、大地震がもたらした制約を順次、確実に克服するとともに、日本経済の潜在的な成長力を回復するよう取り組む。このため、平成23年度第1次及び第2次補正予算の速やかな執行等により、震災からの早期立ち直りを図る。また、7月29日、大震災からの復興に向け「東日本大震災からの復興の基本方針」を決定した。
日本銀行に対しては、引き続き、政府と緊密な情報交換・連携を保ちつつ、適切かつ機動的な金融政策運営によって経済を下支えするよう期待する。
日本銀行は、8月4日、資産買取等の基金の増額を決定した。
(各論)
○消費・投資などの需要動向
個人消費は、持ち直しの動きがみられる。消費者マインドは、下げ止まっている。設備投資は、下げ止まりつつある。住宅建設は、下げ止まっている。公共投資は、総じて低調に推移している。輸出は、持ち直しの動きがみられる。輸入は、横ばいとなっている。貿易・サービス収支は、赤字傾向で推移している。
○企業活動と雇用情勢
鉱工業生産は、海外経済の回復がさらに緩やかになっていることにより、一部に弱い動きがみられるものの、サプライチェーンの立て直しにより、持ち直している。先行きについては、サプライチェーンの立て直しや海外経済の緩やかな回復に伴い、生産は持ち直し傾向が続くことが期待されるが、電力供給制約や海外景気の下振れリスク等に留意する必要がある。第3次産業活動は、低下したものの、下げ止まりの動きがみられる。企業収益は、増勢が鈍化している。企業の業況判断は、東日本大震災の影響による厳しさが残るなど、慎重さがみられる。倒産件数は、緩やかな増加傾向にある。雇用情勢は、東日本大震災の影響により、このところ持ち直しの動きに足踏みがみられ、依然として厳しい。
○物価と金融情勢
国内企業物価は、このところ上昇テンポが鈍化している。消費者物価は、前月比ではこのところ横ばいとなっているが、前年比では下落が続いている。株価(日経平均株価)は、9,900円台から10,100円台まで上昇した後、9,000円台まで下落している。対米ドル円レートは、79円台から77円台まで円高方向で推移した後、79円台まで円安方向で推移し、その後78円台で推移している。
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需要面の個人消費では、大型小売店販売額(6月)が、全店舗計、店舗調整後(新規店舗を除く)とも前年を下回った。ホームセンター・家電量販店販売額(6月)は前年を上回ったが、乗用車新車新規登録台数(7月)は前年を下回った。
建設等では、新設住宅着工戸数(7月)、用途別着工建築物工事金額(7月)及び公共工事請負金額(7月)のいずれもが前年を下回った。
産業面では、鉱工業生産指数(6月、季節調整済)が91.3で前月比8.9%上昇した。なお、大口需要電力実績(6月)は、鉱工業用主要4区分のうち、その他の製造の区分で前年を上回ったが、それ以外の区分では下回った。
雇用面では、新規求人倍率(7月)は、1.01倍(前月差0.11ポイント低下、前年同月差0.04ポイント低下)であった。有効求人倍率(7月)は、0.65倍(前月差0.06ポイント低下、前年同月差0.04ポイント上昇)と7か月ぶりに0.7倍を下回っている。
きまって支給する給与(6月)は前年を上回ったが、所定外労働時間(6月)は前年を下回った。
○需要面の動き
【個人消費】
大型小売店販売額(6月)は、全店舗計では49億6,300万円となり、前年同月比2.3%減と4か月連続して前年を下回り、店舗調整後でも前年同月比1.3%減(全国は前年同月比0.5%減)と前年を下回った。なお、全店舗計の内訳では、百貨店が14億7,500万円(前年同月比3.4%減)、スーパーが34億8,800万円(前年同月比1.8%減)であった。
ホームセンター・家電量販店販売額(6月)は36億9,100万円(前年同月比13.5%増)と2か月続いて前年を上回った。内訳ではホームセンターが19億2,600万円(前年同月比4.4%増)、家電量販店販売額が17億6,500万円(前年同月比24.6%増)であった。
乗用車新車新規登録台数(7月)は1,765台(前年同月比19.1%減)と11か月続いて前年を下回った。内訳では、普通車、小型車及び軽自動車の全ての区分で前年を下回った。
【住宅建設】
新設住宅着工戸数(7月)は283戸(前年同月比8.4%減)と2か月ぶりに前年を下回った。内訳では、持家系(前年同月比13.8%増)は前年を上回ったが、貸家系(前年同月比24.6%減)は前年を下回った。
【設備投資】
用途別着工建築物工事金額(7月)は17億800万円(前年同月比11.6%減)と3か月ぶりに前年を下回った。用途別では、製造業(前年同月比45.5%増)等で前年を上回り、卸売業,小売業(前年同月比63.4%減)等で前年を下回った。
【公共工事】
公共工事請負金額(7月)は63億6,000万円(前年同月比8.0%減)と前年を下回った。発注者別内訳では、国(前年同月比55.0%増)は前年を上回ったが、県(前年同月比12.4%減)、市町村(前年同月比5.3%減)は前年を下回った。
○産業面の動き
【産業活動】
鉱工業指数(6月)は生産指数(季節調整済)が91.3となり前月比は8.9%上昇と5か月ぶりの上昇となったが、原指数は93.6となり前年同月比では13.7%低下と5か月連続の低下となった。
内訳を前月比で見ると、食料品・たばこが19.9%上昇となり2か月連続の上昇、電子部品・デバイスが10.2%の低下となり2か月ぶりの低下、電気機械が3.9%の上昇となり3か月ぶりの上昇、一般機械が0.4%の低下となり2か月連続の低下となった。
在庫指数(季節調整済)は81.4と前月比2.6%上昇した。
【電力】
大口需要電力実績(6月)は124,462千kWh(前年同月比15.8%減)と2か月ぶりに前年を下回った。鉱工業用電力を主要4区分でみると、その他の製造の区分で前年を上回ったが、それ以外の区分では下回った。
【青果物卸売量】
鳥取市場の青果物卸売量(7月)は野菜が1,164t(前年同月比6.0%減)と2か月連続して前年を下回り、果実は1,027t(前年同月比6.1%減)と3か月続いて前年を下回った。
鳥取市場の青果物販売量(7月)のうち鳥取県産の卸売量は野菜が353tで市場全体に占める割合は30.3%(前年同月差0.4ポイント低下)、果実は567tで市場全体に占める割合は55.2%(前年同月差3.8ポイント上昇)であった。
【漁獲量】
境港の漁獲量(7月)は5,648t(前年同月と同水準)であった。
○雇用・金融面の動き
【雇用】
新規求人倍率(7月)は1.01倍(前月差0.11ポイント低下、前年同月差0.04ポイント低下)であった。なお、新規求人数(7月)は3,332人で前年同月比3.6%の減であった。
有効求人倍率(7月)は0.65倍(前月差0.06ポイント低下、前年同月差0.04ポイント上昇)と、7か月ぶりに0.7倍を下回った。
【賃金】
現金給与総額(6月)は395,505円(前年同月比7.9%増)と3か月ぶりに前年を上回った。そのうち、きまって支給する給与(6月)は、241,396円(前年同月比0.6%増)で2か月続いて前年を上回った。
【労働時間】
所定外労働時間(6月)は7.5時間(前年同月比2.7%減)と19か月ぶりに前年を下回った。主力の製造業も3.2%減となった。
【預金・貸出金残高】
預金残高(6月末)は2兆1,140億円(前年同月比4.1%増)と30か月続いて前年を上回り、貸出金残高(6月末)は1兆1,287億円(前年同月比1.1%減)と4か月続いて前年を下回った。
○参考
・ 鳥取県景気動向指数(6月)は先行指数が4月50.0、5月31.3、6月37.5、一致指数が4月50.0、5月0.0、6月37.5、遅行指数4月60.0、5月40.0、6月40.0となった。
・ 企業倒産(7月)は件数が1件で前年と同数となり、負債総額は5,000万円で前年と同額であった。
・ 消費者物価指数(7月:鳥取市、総合、平成22年=100)は100.1(前月比0.3%上昇、前年同月比0.7%上昇)となった。
・ 鳥取県の推計人口(10月1日現在)587,757人で、前月と比べて103人(0.02%)減少し、前年同月と比べて3,224人(0.55%)減少した。
・ 鳥取県の企業経営者の見通し(主要300事業所、年4回調査)を平成23年8月調査でみると、平成23年7~9月期は景気判断BSIがプラス5となり、前四半期(平成23年4~6月期)に比べて40ポイント改善となっている。