酸性雨は、化石燃料燃焼などにより大気中に放出される硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)などを起源とする酸性物質が、雨・雪・霧などに溶け込んで降ってくる現象である。この結果、河川・湖沼・土壌が酸性化し、建造物・文化遺産などに悪影響が及ぶことが懸念される。酸性物質の沈着による影響の早期把握のため、全国的に降水のモニタリング調査が実施されている。
鳥取県では昭和62年度から調査を始め、現在、都市部1地点(鳥取市)、田園部1地点(湯梨浜町、平成15年度から実施)及びバックグラウンドとして山岳部1地点(若桜町)の計3地点で降水のモニタリング調査を行っている。
各地点における過去10年間のpHの経年変化は、図からほぼ横ばい傾向であり、pHの過去10年間の平均値は、鳥取市が4.68、湯梨浜町が4.58(5年平均)、若桜町が4.75である。環境省の実施した平成18年度酸性雨調査結果の降水のpHの全国平均は4.70であり、同程度のレベルであった。県内では、直接酸性雨の影響と見られる森林被害等は報告されていない状況である。
今後とも調査を継続するとともに、全国規模での調査研究に役立てるため、全国環境研協議会の調査に参加している。
黄砂は、東アジア地域の乾燥・半乾燥地帯から巻き上げられた砂が偏西風に乗って運ばれる気象現象のひとつである。しかし近年の過放牧、耕地の拡大などでその規模・飛来日数が日本全域で増加傾向といわれている。黄砂は、視程の低下や衣服などへの付着といった生活環境への影響、また東アジア域の大都市工業地帯上空を通過する際に汚染物質を吸着する可能性が指摘されており、韓国などでは健康面への影響を示唆する疫学調査結果がある。鳥取県は日本海側に位置し、発生源に近いことから黄砂飛来の多い地域のひとつであり、こういった問題に対応するための基礎資料として、黄砂飛来時の浮遊粉じんを分析し、その実態の解明に努めている。
2005-2007年まで黄砂観測日に実施した粉じんの調査分析結果から以下のことが明らかになった。
- 黄砂観測日の粉じん濃度は、非黄砂観測日のおよそ5倍であった。
- 黄砂観測日の金属類について測定したところ、測定した全ての元素で非黄砂観測日と比較して数倍以上の濃度であった。特に Al,Fe,Caといった土壌元素に由来すると考えられる元素はその濃度が特に高く、粉じんとの間に高い関係性があった。また、有害大気重金属類(Mn,Ni,Cr,As)も黄砂観測日に高濃度であった。
また、県民への健康影響、被害予防のための知見を得るため、鳥取大学医学部、農学部等と連携して現地で採取した土壌の成分分析や疫学調査などに協力している。