応仁の乱の後の文明年間、
蜂塚氏により築城された江尾城。
毎年盂蘭盆には城門が解放され、殿様、家臣とともに百姓や町人が踊り明かしたり、相撲を取ったりしたのが、江府町の夏を彩るお祭り、江尾十七夜の起源と言われています。
この日ばかりは無礼講で、誰もが殿様や侍と一緒に楽しんだそうです。
皆に慕われていた江尾城主の蜂塚氏は、尼子氏側に付いていたため、永禄8年(1565年)に毛利軍によって攻め落とされ、自刃しました。
蜂塚氏が滅んだ後も、毎年盂蘭盆には亡き城主を偲んで、供養のため、「こだいぢ踊り」が踊られてきました。
昭和28年の江尾十七夜のポスター(江府町観光協会所蔵)
近年、江尾十七夜は、江尾のまちなかに屋台が並び、県民俗無形文化財の「こだいぢ踊り」のほか、相撲、コンサート、花火など、町内外から多くの方が集まる一大イベントとなっていましたが、今年は新型コロナウイルス感染症の影響で中止を余儀なくされました。
その中で、500年近くも続く伝統を絶やさまいと、江府町観光協会と江尾十七夜保存会が中心となり、江尾十七夜特別行事として、8月17日、「こだいぢ踊り」と厄除けの打ち上げ花火が開催されました。
提灯が江尾の街並みを彩ります。
戦前まで十七夜の会場となっていた東祥寺境内が、特別行事の会場です。
江尾十七夜をテーマにした小説「天の蛍」の主人公「波留」二代目イメージガール RINAさんも参加。
同じく江尾十七夜イメージキャラクターのえびちゃんと。
江府町白石町長「新型コロナウイルス感染症の影響により、全国的に伝統的な地域の夏祭りが中止となる中、500年続いてきた江尾十七夜の伝統を守ることができ、感無量です。」
江府町観光協会 川上会長「何があっても、歴史を途切れさせることなく、今年も殿様の供養ができ、ほっとしています。」
この日の「こだいぢ踊り」は、江府町観光協会が動画配信サイトで生配信。
数多くのアクセスがあり、十七夜への関心の高さがわかります。
古の城主を偲んで踊る「こだいぢ踊り」は、ゆったりした太鼓のリズムと、昔から歌い継がれてきた31曲の歌に合わせ、静かに踊られます。
「そろたそろたよ 踊り子がそろた 稲の出穂よりよくそろた」
「武者も丸腰 在所の娘らも おなじ踊りの 輪の中に」
踊り手は編み笠を深めに被り顔を見せないことにより、深い悲しみを表現しているようです。
「逢うて別れて 松原行けば 松の露やら 涙やら」
「去年一昨年 踊りはしたが 今年しゃ墓所で灯を灯す」
5百年もの間、歌、太鼓、踊りが世代を超えて受け継がれてきたことで、殿様を慕う気持ちの強さが感じられます。
「鮎は瀬にすむ 鳥は木の枝に 人は情けの下にすむ」
「十と七夜の あの夜がなけりゃ 絶えてとどかぬ 遠い人」
古の武士や町民などの気持ちが活き活きと歌われていて、殿様のおられた江尾の城下町にタイムスリップするようです。
「今年しゃ豊作 鉢塚さまの 踊り太鼓が ほのぼのと」
「月も草木も きて踊れ 踊るふりして 殿に会う」
踊りのあとは、会場を移して厄除け花火の打ち上げです。
どのような困難な時も、殿様を偲んで伝統を守る江府町の住民のみなさまのパワーが感じられた盂蘭盆でした。
日野振興局 2020/09/11