2024年6月
□■タイの高齢者市場■□
こんにちは。鳥取県東南アジアビューローの辻です。
日本では2000年の介護保険制度スタート以降、様々な高齢者向けの製品やサービスが活用されていますが、タイにおいても例外ではなく、人口の高齢化が進み大きな社会課題になっています。政府も保健省を中心として様々な制度をつくり、高齢者施設などを中心とした民間投資も急激に拡大してきています。2023年5月に保健省が実施した調査でも、高齢者施設の充実が国民のニーズのうち22.7%でトップという結果になりました。
今回はタイの高齢化の概要と、拡大している高齢者施設についてお伝えしたいと思います。
タイ社会の高齢化の現状と未来
2022年の時点でタイの人口全体(約7100万人)に占める60歳以上の高齢者人口の割合は22.0%と、既に高齢化社会に突入しています。2050年には60歳以上の高齢者人口が38.3%に達すると予測されており、ASEANでシンガポールに次いで2番目に高い数値となっています。また、タイの出生率は1990年代に2%を切って以降下落し続け、2020年から2023年の合計特殊出生率は1.54となっており、急速な少子高齢化がひっ迫した課題となっています。また、医療の発達により60歳の平均余命が25.2年と、タイの高齢者は60歳以降さらに平均25年生きると想定されています。出生率の低下と平均寿命の延伸は、今後タイが現在の日本と同様の道をたどると予測される要因です。またタイの人口は2028年をピークに減少が始まると予測されています。
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日本
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タイ
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60歳以上の高齢者人口の割合(2022年)
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35.8%
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22.0%
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60歳以上の高齢者人口の割合(2050年予測)
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43.7%
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38.3%
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合計特殊出生率(2023年)
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1.39
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1.54
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60歳以上の平均余命(2022年)
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26.9年
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25.2年
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タイの高齢者施設の現状
急速に進む高齢化に伴い、タイの高齢者施設市場は急速に拡大をしていますが、国による基準や法整備は始まったばかりです。タイ保健省健康サービス推進局(Department of Health Support)は、2020年高齢者施設等に関する省令にて、高齢者施設の区分((1)介護活動を行う宿泊を伴わない高齢者施設 (2)宿泊を伴いリハビリを提供する施設 (3)宿泊を伴いリハビリと介護活動を行う施設)を設け、同時に発布した安全及びサービスに関する省令によって高齢者施設を安全に運営するための基準を定めました。人材についても高齢者施設の管理者の試験及び能力評価の基準と介護士の教育制度も規定され、管理者は130時間の教育を受け証明書を取得すること、介護士は420時間の研修コースを受講することと定められました。
高齢者施設は保健省健康サービス推進局の監査を受けた上で登録をすることが義務づけられ、2023年7月時点で708か所が登録されています。
下の表は地域別の高齢者施設とベッド数ですが、バンコクとその周辺に6割ほどが集中しています。高齢者人口が多い東北部ではまだ施設が少ない状態であり、これらの地域の高齢者は自宅で過ごしているとみられます。各施設の入居率は平均で8割近くと高くなっており、高齢者施設の需要が高まっていることを示しています。
地域
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高齢者施設数
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ベッド数
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地域別人口構成比
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北部
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98
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1,287
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17%
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東北部
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40
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741
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28%
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中部
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14
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287
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5%
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バンコク及びその周辺
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422
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10,223
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23%
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東部
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56
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1,118
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8%
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西部
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53
|
1,252
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14%
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南部
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25
|
298
|
5%
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合計
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708
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12,093
|
100%
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タイには日本のような介護保険制度がないため、高齢者施設の利用に掛かる費用は全額自己負担となります。また年金制度もあるものの、支給額が低いため年金だけでは高齢者施設の利用料をまかなうことはできず、現状のままだと高齢者の大半は高齢者施設を使うことができません。今日までは家族・親族が高齢者の面倒を見るというタイの伝統的なセーフティーネットによって支えられていますが、このまま少子高齢化が進むとそれもいつまで維持できるか心配されています。今後どのような社会保障制度の拡充がされるのか、期待されるところです。
最後に
日本を追うようにタイも高齢化が進んでおり、官民ともに高齢者ケアへの活動が非常に活発になっています。コロナ禍以前から高齢者支援の先進国である日本への興味は非常に高かったですが、コロナ禍が明け、自由に渡航できるようになった昨年からその意識はさらに高まっています。
今回はタイで急拡大している高齢者施設の市場についてまとめました。各施設がターゲットとしている所得層に相応したサービスの充実を続けているため、日本の質の高い商品やサービスにもチャンスはあると考えます。高齢者関連の商品・サービスで海外展開を検討されている方がいらっしゃいましたら、是非一度タイでの展開をご検討ください。
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