知事定例記者会見(2011年6月29日)

平成23年6月29日(水)午前10時~
 県政記者室(県庁3階)

録画配信 知事記者会見動画(約62分) ※MPEG4形式

  

1 東日本大震災関連 

○テレビ朝日 後藤龍彦 記者(幹事社)

 おはようございます。知事、足の方も大分回復されているとは思うんですけど、よろしくお願いします。

●知事

 皆さま、おはようございます。只今、後藤さんからお話がありましたけれども、大変長くご迷惑とご不便をおかけいたしましたが、昨日から松葉杖なしで歩行させていただいております。大変なご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げたいと思いますし、これからも、まだしばらくあまり無理はしないようにということも言われておりまして、若干ご不便をおかけするかも知れませんけれども、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 大変厳しい被災がある東北でございますけれども、昨日私ども鳥取県からホールボディカウンター[全身を測定対象として、体内に取り込まれた放射性物質から放出される放射線の量を測定することができる装置]を搭載しました放射線の測定車が福島県庁の方で着任式[引き渡し式]を行いました。朝の10時半から行ったようでございますけども、向こう3か月間ほど、9月いっぱいまでこの測定車に福島県内で活躍をしてもらうこととなりました。また、この度、明日になりますけども、「夢食研[株式会社]」、それから「[特定非営利活動法人]きらら女川[おながわ]」という宮城県でかりん糖の生産をしていた障がい者の団体や企業さんがあるわけでございますけども、こちらの鳥取[県伯耆町]の方で再び再起を果たそうということになりました。私も出席をさせていただきますけれども、明日その開所のセレモニーを行うこととしました。早速、[宮城県]女川[町]の人たちにも懐かしい私たちの女川のかりん糖の味というものを、こちらの方からお届けをしようというふうに関係者の阿部[雄悦]さんはじめ、皆さまも張り切っておられます。

 せっかくの開所の関係でございますので、県の方からもいろいろと相談をさせていただいて、向こうから当時働いておられた障がい者のかた、中には残念ながら、被災で行方不明になられたかたもいらっしゃるそうなんですけども、その障がい者のかたにも1週間ほど鳥取県内で滞在をしていただくことにいたしております。そのうち、1泊ほどだと思いますけども、皆生の温泉[旅館]組合の方のご協力もいただきまして、老舗の旅館で疲れを癒していただくと、そういう機会もできることとなりました。私たちはこの被災から立ち直る日本の再興に向けて舵を切っていかなければならないと思います。




2 6月県議会を終えて 

 そうした議論を重ねてまいりました6月の県議会が先週閉幕をいたしました。この県議会で議論されたこと、災害対策、あるいはこれからの県政について、未来づくりについての議論が戦われたわけでございます。早速、未来づくり、スタートをさせていただこうと考えておりまして、来月には相次いで、例えば1万人雇用を実現するための推進会議でありますとか、そうした各種の県民との共同組織を立ち上げていくことにいたしております。その皮切りとして、6月30日から住民参画の基本条例を検討する検討委員会、この住民の委員の公募を明日から開始をさせていただくことにいたしました。これは、住民投票制度の導入検討も含めまして、広く県民の参画のあり方、県と県民との間のパートナーシップを確立していく、そのあり方を議論をするそういう場になります。県民のかたのご応募をお願いを申し上げたいと思いますが、各種の団体などの代表のかたとか、それから有識者、学者のかたとか、入っていただきますけども、公募委員枠を作りまして募集を開始することにいたしました。こうしたことなど、これから未来づくりに向けて県政を展開させていきたいというふうに考えております。

 併せて、6月議会で大きなテーマになりました津波対策、あるいは原子力安全の対策についてでございますけども、7月5日に鳥取県防災体制協議会という中国電力とそれから私ども鳥取県との協議の場をスタートさせていただくことになりました。この協議の場には、かねて山下[隆]社長と直談判をさせていただいたときの話し合いの流れによりまして、中国電力の中で行く行く島根原発サイト[事業所]を担当するその担当のかたも、この協議の場に加わっていただきまして、県側の方から鳥取県は勿論でありますけども、それから市を代表して米子市や境港市、また、町村会を代表して江府町の代表者のかたに入っていただきまして、そうした新しいこれからの原子力安全の枠組みを話し合っていきたいと思います。

 我々鳥取県側として、市町村もそうだと思いますが、安全安心を図らなければならないと思います。今の福島原発、未だに収まりがつかない状況を見ておりますと、やはり立地の市町村だ、立地の県だ、あるいは周辺の市町村だ、周辺の県だと区分けをするのはナンセンスでございまして、実際に起こり得る原子力災害に対する防御態勢をきちんと確立する必要があるだろうと思います。その礎として、私としては[原子力]安全協定の締結を目指してまいりたいと思います。

 これは先般も関西広域連合でも議論をしました。関西広域連合でもこうした鳥取県の中国電力との原子力安全協定を結ぶ取り組みを応援をしていくということを確認させていただきました。また、同じように京都府の山田[啓二]知事もやはり関西電力と原子力安全協定の締結を目指しておられますので、そうした他の地域の動向とも歩調を、ある程度合わせながら、我々として電力会社と精力的な協議を進めてまいりたいと思います。

 また、津波対策など、新しいテーマも含めて対処していくために、7月の1日に危機管理局を発足をさせます。その危機管理局で年初の豪雪のときの反省も踏まえまして、県民の皆さまに適時的確な情報提供ができる体制も整えてまいりたいと思います。1つの方策として、災害情報ダイヤルを設置をしたいと考えております。7月1日から「0857-26-8100」でいろんなお問い合わせにお応えしていくような体制をとることにさせていただきました。また、原子力災害を念頭に置きまして、その安全対策を周辺地域としては初めて専門家の職員も配置をしながらやっていこうと思っております。その関係で、庁内で人材を当てることにさせていただきまして、原子炉だとか、そうした観点での専門家をこの度、危機管理局に配置をすることにいたしました。それで、併せまして、現場の状況を考えますと、放射線のモニタリングだとか、そうした専門家も必要でございますが、その専門的知見のある人材も近々全国に対して募集をかけていきたいと思います。こうしたことを束ねていきながら、危機管理局で県民の安全安心を図ってまいりたいと考えております。

 産業関係ですね、産業関係でもこの度、未来づくり、あるいは震災対策で動きをとらせていただいております。1つ、焦眉の課題として懸念を生んでいるのは、鳥取三洋、今の三洋コンシューマエレクトロニクス[CE]の関係だと思います。これについて、いろいろ下交渉をさせていただいておりましたけれども、来週、7月の5日に大阪にございます三洋電機の本社を訪ねさせていただきまして、佐野[精一郎]社長とお話をさせていただくことにいたしました。鳥取市も同行される方向で、今、調整をしていると思います。この佐野社長との話し合いの中で、今、世上、急遽、報道も始まっておりまして懸念もあるものですから、私としては、今、三洋CEで働いておられる、そういう県民の皆さん、働く皆さんがいらっしゃいますけども、少なくとも、大きな会社になるわけでありますので、パナソニックと三洋とが言わば合体をした1つの体制を築くわけでありましょうから、配置転換とか、そうしたことはやむを得ないのかもしれませんけれども、少なくとも、雇用に対して確保していただきたい、保障していただきたいということが1つの眼目になろうかと思います。

 また、鳥取県で現在生産をしている主力の製品、例えば「GOPAN(ゴパン)」[お米からパンを作るホームベーカリー機器]もそうでありますし、「おどり炊き」[炊飯器]というような商品もございますし、「Gorilla(ゴリラ)」というようなカーナビもございます。こうした、言わば、鳥取三洋時代から築いてこられた現在の三洋CEのブランド商品というものを、生産を継続、発展させていただきたいということもお願いすべきだろうと思います。あるいは、未来に向けて、ここを雇用だとか、産業創造の拠点としていく方向を模索してもらいたいと。その意味で、今、これからの三洋エレクトロニクスの主流になってくると思いますが、環境ビジネス的なそういう新商品対応だとか、そうした未来に向けた戦略も考えてもらいたいと、こうした申し入れをさせていただこうと考えております。なかなかビジネスはビジネスでありまして、特に、パナソニック三洋を通じて競争力を世界的に高めて、サムスンなどと対抗していこうというグローバル戦略がありますので、非常に厳しいハードルだとは思いますけれども、少なくともそうした焦点について佐野社長、さらには佐野社長を通じてパナソニックグループの中で対応をお願いをしたいというふうに考えております。

 それから、震災関連でリスク分散が始まっておりまして、昨日もそうしたことから不二家のシステムセンターの誘致の調印をさせていただきました。また、鳥取県を売り出すという観点で、株式会社トレードマークでございますけども、その会社ともブランディング[ブランドを構築するための活動]の戦略などについて、こちらで立地をされることを締結させていただきました。また、これからも、例えば、「わったいな」という拠点ができあがりましたけども、その「わったいな」と、結び付いて鳥取県の食を、もちろん県内の給食などにも加工して流通をさせていく、あるいは県外への流通の戦略も含めて、そういう拠点を賀露に作ろうというプロジェクトがありまして、上田コールド(株)さんという会社が立地をすることになりました。これも来週、調印をさせていただこうというふうに考えております。

 また、LED[発光ダイオード]の関係でも、今のLEDの急速な需要が高まっていること、さらに、そのグループ内でのリスク分散なども考えて、鳥取市内で生産をやっていく拠点として、その企画開発部門をこちらの方に立地をすることにもなりました。これも6月30日に、その事業者と締結をさせていただこうというふうに考えております。いろいろ震災対応で議会でもだいぶ議論をしましたけども、それを契機にして東日本から西日本へ、あるいは大都市部から地方部へと移転をしてくる、拠点を移してくる企業の進出、鳥取県としてもぜひ受け皿にこうしたかたちでなっていこうと思っております。

 これからの環境ということを考えてまいりますと、いろいろと展開も必要かなというふうに考えておりますけども、今日は、これからニッポン高度紙工業(株)さんと共生の森について調印を行うことにいたしております。紙というのは木と結び付くものでございまして、環境資源としての森を大切にしようということの戦略でございます。あるいは、県内の三光[さんこう](株)さんという産業廃棄物を主に担当されている事業所さんがいらっしゃいますけれども、カーボンオフセットのCO2[二酸化炭素]の寄付をいただくことになります。これも県として、活用をしていこうというふうに考えております。かねて我々の方で進めておりますメガソーラー[大規模太陽光]発電の関係とか、小水力の関係だとか、そうした戦略を6月議会でも議論させていただきましたけれども、精力的に展開をさせていただきたいと考えております。




3 週末の行事 

 広島[県]とも協調させていただくことにいたしておりますけれども、福祉関係ですね、この度、パートナーシップ[協力関係]を築くことになりまして、ハートフル駐車場[身体等に障がいのある方や高齢の方などで歩行が困難な方、あるいはけがや出産前後で一時的に歩行が困難な方などのための専用駐車スペース]を広島県内でも使えるように、これ、相互乗り入れをすることになりました。7月1日から適用ということになりました。

 また、今週末、日本人、あるいは世界中の人の大好きなマグロの感謝祭を初めて境港で行うことになっております。関係者のかたが元気を出されまして、マグロの産地としてのブランディングを果たしていこうというふうに立ち上がられたわけであります。当日はマグロの解体ショーがあるとか、マグロを食べられる機会もございます。県内外のかたがたで賑わうことを切に期待をいたしております。だいぶ暑くなってまいりましたけれども、くれぐれもマグロを食べるなどして、健康づくりをしていただきまして、県民の皆さまにも健やかな夏を始めていただきたいと考えております。私の方からは以上でございます。


○テレビ朝日 後藤龍彦 記者(幹事社)

ありがとうございました。各社質問があればお願いします。



4 県民参画基本条例の策定 

○NHK 月岡信行 記者

 県民参画の基本条例の公募委員なんですが、何人ぐらい募集するのかということと、あと、どういったかたに加わってほしいとお考えですか。


●知事

 これは、我々で注文をつけることではございませんので、広く募集をすることでございますが、もともとそんなに大きな委員会ではございませんので、公募枠は3名、今、用意をさせていただいております。成人されたかたで、この条例による県民参画の推進に熱意のあるかたに、ぜひ、加わっていただきたいと思っております。


○読売新聞 野口英彦 記者

 その3人は、例えば、東・中・西[部]というようなやりかたになるんでしょうか。


●知事

 いや、全県一区で募集をさせていただきたいと思います。もちろん、その他のいろんな各種団体の代表のかた、NPO[非営利団体]だとかいろんなかたがいらっしゃいます。東部、中部、西部それぞれから委員が入っていただけるように全体としては工夫をしていこうとしておりますが、公募はそういうわけにはならないでしょうから、全県一区で募集をしたいと考えております。


○NHK 月岡信行 記者

 この間の県議会でも、相当この県民参画基本条例については議会の方からも関心と言いますか、あれがあるみたいでして、相当議論になりましたが、そういう中で、これ以降進もうとしているわけですが、その辺は、今後どういうふうなかたちで進んでいこうとお考えなんでしょうか。


●知事

 これは、広くご議論いただいて、専門的知見が必要なところもございますし、例えば、直接民主主義と間接民主主義の整合性の問題など、厄介な法律問題もあります。ですから、専門的知見も入れながら、さらに県民のかたにも広く議論に加わっていただきながら成案をまとめ上げていきたいと思っておりまして、向こう1年、あるいは2年かかるかもしれませんけれども、じっくりと議論はしていきたいと思います。

 その理由は、これはトップダウンで決定するものではなくて、広く、県民の皆さまが、これが必要だと思うものを、あぶり出していくことが大切だと思っています。それで、それと地方自治制度との整合性を見極めながら、どの辺が最大公約数的に得られるものになるだろうかと、そこを見ていくには時間がかかると思います。万機公論に決すべしでございまして、広いご意見をいただきながら、議会にも随時協議の状況と言いますか、検討状況をお知らせしながら、我々として、成案を得ていきたいと思っております。

○読売新聞 野口英彦 記者

 それに関連して、知事の答弁では、議会での答弁では県民も発案できるというようなことをおっしゃっていたようにも思うんですが、議会と首長が対立した場合だけでなくして、県民自らの意思でそういう対立状況じゃなくても、発案できるということでしょうか。


●知事

 そこも議論していただきたいポイントです。今、住民投票を、海外も含めて、3つのタイプがあると思いますが、1つは首長が発議するタイプ、あるいは2つ目として、議会のような組織が発議するタイプ、それから、3つ目として、住民が発議するタイプ、それぞれがあると思います。私は、そのいずれがあってもいいんじゃないかと思うんですけども、この辺は県民の皆さまのご意見を総合して決めていくべきことがらだと思います。


○読売新聞 野口英彦 記者

 知事のイメージとしては、議会と首長が深刻な対立に陥った場合ももちろんですけれども、それ以外にもっとカジュアルなかたちでの県民投票的なものを考えておられるんでしょうか。


●知事

 カジュアルの意味合いにもよると思うんですけども、基本的にはやっぱり議会と首長との二元代表制で物事は進んでいきます。例えば予算の事細かいところだとか、そういうところをオール・オア・ナッシング[0か100か]的な○×[マルバツ]方式の投票だけで決めるのは難しいと思います。ですから、やはり県民の総意をにらみながら議会と首長とがチェックアンドバランスで政策を立案し、決定していくというのが本筋になっていまして、これは憲法上予定されています。それに対する補完制度でございまして、例えば、これはいろいろ判断に迷うことではないかとか、特に重要なことであると、そうしたことで、そのときどきでクローズアップされてくるようなマターについてですね、事柄につきまして、住民投票に付するというのが本来だと思います。この辺は[地方]自治法の限界だろうと思います。そういう意味で、特に重要な事項、県政上重要な事項だとか、そうしたことに自ずからは限られてくるのかなと思います。


○読売新聞 野口英彦 記者

 そういう、単一の意思について、イエスかノーかを問うという場合には住民投票の方が適しているんではないかというお考えでしょうか。


●知事

 それはその時々によるでしょうね。ただ住民投票が執行されるんであれば、その民意というのは重く受け止めなければならないのが民主主義だと思います。




5 島根原発に係る中国電力との協議 

○日本海新聞 井上昌之 記者

 ちょっと話は変わるんですが、中国電力と7月5日に協議の場を設けられるという話なんですけども、知事がおっしゃる安全協定の内容について、議会でも議論があったように思うんですが、知事が今イメージしておられる安全協定というのは、一体どのようなものなのか、ちょっとイメージだけでもお聞かせいただけませんか。


●知事

 これは、これから内容を詰めていくんですが、出発点は、今、島根県が結んでおられる協定が出発点だと思います。ただ、その中で立地[地域]と周辺[地域]と自ずから色合いの差などもあろうかと思います。どこまで共用できるかというのは、これちょっと議論してみないといけないと思いますが、ポイントとなるのは、住民に対して安全安心を図れるそういうベースを県行政、あるいは市町村行政として持ち得るかどうかだと思います。そこのところの担保をどうやって取るかではないかと思っております。

 これは京都[府]の山田知事とも関西広域連合の機会に意見交換しましたけども、なかなか今まで何もないところから出発する議論でありますので、非常に難しいハードルがあるなというふうには思いますけども、我々としては、住民の立場に立って、それを代弁するつもりで中国電力に折衝に当たっていくべきだろうと考えております。


○日本海新聞 井上昌之 記者

 中電から何かあった際の情報をいただくということでは、今のところ鳥取支社を通じ、県もある程度情報は入ってきていると思うんですけども、その情報連絡協定ぐらいの話になると、これあまり進展がないわけで、かなり踏み込んだ内容まで協定の中に盛り込まないと、地域の住民のかたは満足されないと思うんですけれども、この点についてはいかがでしょう。


●知事

 私もイメージとしてはそういう方向性を持っています。例えば、今の立地の協定の中では立入の調査権とか、あるいは、万が一起こったときの補償についての条項であるとか、そうしたものがございます。私はそういういろんな条項考えて冷静に判断してもらえば、こうした立地の地域と周辺の地域で区分けをして物事を考えるのはナンセンスというのも、多々あるんではないかと思うんですね。今までは国の方針もありまして、EPZ[防災対策重点地域]の範囲内しか交渉しないということですね。我々のところには成文化されたものはなかったわけでありますけども、作る以上は、やはりそれ相応の内容が必要だろと考えております。

 そうしたことで交渉を始めてみたいとは思うんですけども、実務的に、これはこういうふうにした方がいいなっていうのもその他にもいろいろあります。例えば運用上で言えば、今は、我々はこの4年間で勝ち取ったことでありますけども、[中国電力]鳥取支社を通じたかたちにはなりますが、中国電力から情報がスピーディに入ることにはなっています。ただ、鳥取支社を通じるという迂廻路ではなくて、直接原発のサイトの方から、こちらの方に、島根県と同じように情報を入れてもらうとか、そうした運用上の工夫もあっていいと思うんですね。これはやっぱりどうしても人が絡むとマニュアルのミスが起こりますので、人力によるミスというのが起こりますし、遅れというものも発生し得るわけでありますから、そうした運用上の問題なんかも協議の場で議論をしていきたいと思います。


○日本海新聞 井上昌之 記者

 あと、知事もおっしゃったように、全国でもまだ周辺の自治体と中電がこういう協定を結んだケースというのはないと思うんですけれども、京都府の山田知事とも連携してという話がございましたけども、なかなか中電側も全国初めて鳥取県とそういう結ぶっていうのはちょっとハードルがかなり高いように思うんですが、そういう前代未聞のところに協議を始めるに当たって、やっぱり難しさっていうのはかなりあると思うんですが、その辺の実感はどのように。


●知事

 そこは、先日山下[中国電力]社長と直談判させていただいたときも、ある種のガードの固さを感じました。ただ、電力会社にもご理解いただきゃなきゃいけないと思うんですけども、今こうした世界中の議論の渦の中で、原子力発電を動かすということには、やはり安全という保障がない限りはその稼働というのは難しいと思います。それは[中国]電力側もご認識されているからこそ、先般も山下社長が初めてこの問題で鳥取県側と協議に応じてくれたんだと思いますが。いずれにしましても、周辺も含めた理解を得なければ原子力発電というのは今後は運用できないということを厳しく電力会社も認識しなければならないと思います。


○読売新聞 野口英彦 記者

 それに関連して、先日の関西広域連合の会議で、関西広域連合として関西電力に対して安全協定を結ぶよう求めるという話で、京都府の山田知事は重層的な協定ができることで安全が担保できるということをおっしゃったと思うんですが、関西広域連合が求める安全協定と、今度県と中国電力が求める安全協定間の関係性と言いますか、そのあたりの整理と言いますか、それをお願いします。


●知事

 関西広域連合は、ちょっとエリアが広うございまして、京都[府]の山田知事が重層的にとおっしゃった意味はそこにあると思います。つまりレベルとしては近い所が一番深刻でございますので、京都府だとかと同じようなレベルで鳥取県も周辺自治体ではありますけれども、電力会社と協定を結ぶ必要があるだろうというのが私たちの認識です。

 だから、関西広域連合全体でも、結局今の東北や関東のことを考えていただくと、風向きなどによりましてホットスポット[局地的に放射線量が高い場所]を生じたり、いろんな飛び火があるわけであります。当然ながらあちらの敦賀や美浜などの原発の立地を考えますと、我々が心配しているのと同じように、北西の季節風なりが吹けば、風向きで、南側の方に排出物が浮揚して動いていってしまうと。そういうことを考えますと、やっぱり関西広域連合全体としても他人事ではないということだと思います。その意味で関西広域連合としても安全協定を模索しようじゃないかというのが、先般の結論でありますけども、これから内容は詰めていくということでございます。私ども知事同士でも話をしたんですけども、すぐにこういう内容で申入れというのも決めきれないところがありますので、じっくり考えた上で、いずれ関[西]電[力]に申入れようというのが、先日の締めくくりでした。


○読売新聞 野口英彦 記者

 京都府とか、ほかの県でもEPZを独自に拡大する動きがあるんですが、鳥取県はそういうことは検討されないんでしょうか。


●知事

 EPZという、ちょっと言葉の遊びになると思います。EPZのセッティングは、今、国がやっていまして8キロメートル、10キロメートルでございます。それで、見てくれないところに対して手当をするというのが必要なことでありまして、今、島根県と共同しながら、例えば避難計画を作ろうじゃないかと。これは、要はEPZを我々設定しているに等しいことでもあるんです。それから、モニタリングを充実をしようということで20キロメートルや30キロメートル、そういった[モニタリング]ポストを作ってきました。これも鳥取県独自にモニタリングを始めたわけで、これも実はそのEPZを作るということでありまして、京都[府]の山田[知事]さんが言っているのはまさにそれです。例えば、避難計画を作る。あるいはモニタリングポストのような測定器を検討する。そういうことを、彼は20キロメートル圏内と言っていますね、20キロメートル圏内でやろうということを言っています。私どもとしては、今、島根ともある程度協調してやっていこうとしていますが、30キロメートルぐらいを1つの目安にしながらやっていくのかなということで、今、準備中であります。


○読売新聞 野口英彦 記者

 あと、島根県の溝口知事が県庁を場合によっては30キロメートル圏外に移すことも考えたいというようなことをおっしゃったと思うんですが、鳥取県がその受け皿になるということも考えられるでしょうか。


●知事

 それは、先方の考え方だと思います。私どもとしては、共同で避難計画なりを作っていこうというからには、島根県から鳥取県への流入というのを受け入れる度量を持たなければいけないと思います。その意味でご協力はいろんな形でやっていきたいと思います。今、民間企業でも山陰合同銀行さんのように事業の継続性を考えて、米子の方に一種のサイト[拠点]を作られようと、いざというときの本店機能を果たすようなサイトを作られようというふうに計画変更をされました。歓迎すべきことだと思います。そういうのを鳥取県側でも必要に応じて環境整備を図っていく必要があると思います。




6 浜田和幸参院議員の政務官就任 

○テレビ朝日 後藤龍彦 記者

 知事、話が全然違うんですけども、地元選出の浜田[和幸参院]議員が政務官になられたんですが、この度の野党の議員の本筋についての感想があれば。


●知事

 今、国政が混乱しているのは国民にとって、被災地にとって残念な状況だと思います。1日も早くそうした混乱を卒業してもらって、本当の被災地対策、この国の国難を乗り切る政策の実行の方を求めていきたいと思います。今までも話し合いを重ねるばっかりで答えが出てこない。私もこの度6月27日付で、全国知事会の政策評価の委員長をさせていただきました。要はマニフェスト委員長ですね、マニフェスト評価の委員長をさせていただくことになりました。前の古川佐賀県知事から引き継ぐ形でなったわけでありますが、これから代表選挙だとか、場合によっては総選挙があるかもしれません。そうしたときに地方の側から、そうした国の姿勢を正していくことが必要だなと痛感をいたしております。

 今回のことにつきましては、これは浜田参議院議員が新たに総務政務官の方に回られて、復興対策に当たられるということになったわけでございますが、浜田さんは恐らく渦中の栗を拾う思いでされているんではないかと思いますので、ぜひその思いをこの際は踏み切った以上は大切にしてもらって、震災被災地のためにこそ働いてもらいたいと思います。

 ただ、県民感情からいうと、非常に分かりにくい展開であるということは、有権者として思わざるを得ないんではないかと思います。ですから、浜田参議院議員自ら県内の有権者の皆さんに対して、説明責任を果たすことがエチケットだと思います。投票という神聖なプロセスを経て、選挙という神聖なプロセスを経て選出をされた立場でありますので、その選挙の際に語ったこと、あるいは自らの政治的行動との整合性、考え方、これを県民の前にやはり明らかにしていただく必要があるんではないかと思います。随分唐突な印象を今回与えておりますし、予想外の展開というふうに捉える人々が私の周りにもたいへん多くいらっしゃいます。昨日から県内を回っておりますけども、さまざまな声も聞いておりますので、やはり政治家のエチケットとして、選挙で選ばれた者のエチケットとして説明責任を果たすこと、これは必要なことではないかと思います。

 あと、もう1つ懸念をされますのは、与野党の関係がこれでどうなってしまうのかなということでございまして、今回の1件が被災地にとってマイナスにならないように、関係者の精力的な努力を求める必要があるなと思います。少なくとも、これは永田町の中の話でございまして、日本国内に対する責任を永田町の中の人たちは果たさなければならないと思います。最近の政治状況を見てみますと、昨日の両院議員総会、民主党の両院議員総会もそうでありますけども、大変な議論が飛び交うわけでありますが一国の首相が、被災地対策である2次補正予算だとか、これから将来を見据えた再生可能エネルギー法案、こうしたものを3点セットで実現しない限りは総理を続けるんだと、こういうことをおっしゃっていますが、これは、おそらく国民にとって、多数の国民にとっては、被災地だとか、それから、国の行く末というものを人質にとって立てこもっているように映ると思います。

 こうした状況を打開していかなきゃいけないんだろうと思うんですね。素直に胸襟を開いて、何を、今、政治はなすべきなのか、被災地対策、あるいはこの国の将来、それを動かさなければならないと思います。地方レベルから見ておりますと、あまりにもスピードが遅すぎますし、そして、結局は、被災地問題であっても、エネルギー問題であっても、政争の具にされてしまうというのは、正直、残念なことだと思います。鳥取県としては、例えばメガソーラー発電をこれから導入する、旗手たらんという志を持っています。県民の皆さまも非常にこれ歓迎していただいていまして、行く先々でぜひやろうという話が聞こえてまいります。

 ただ、このための法案が総理を辞める、辞めないの、政争の具にされているのは、何かこう腑に落ちないところがあります。もっとまっすぐに、今なすべきことを、国政に携わるかたがた、永田町のかたがたは見つめるべきだと思います。


○テレビ朝日 後藤龍彦 記者(幹事社)

 各社、ほかにありますでしょうか。




7 鳥取市庁舎整備 

○読売新聞 野口英彦 記者

 鳥取市の問題なんですが、鳥取市の市庁舎問題で、まちづくり計画に市庁舎の新築が盛り込まれているかどうかについて、県と市で、やや捉え方が異なる結果になっておると思うんですが、県の方は、計画には明記されていないというような趣旨の答弁をされたと思うんですが、そのことについて知事の受けとめはいかがでしょうか。


●知事

 計画に書いてある、書いてないの、最終的な解釈権者は国でもなければ、県でもなくて、鳥取市なんだろうと思います。ただ、読みにくいねというのは事実だろうと思います。ただ、いろんな考え方もあるようでございますので、鳥取市の考え方をこれから県としてもお聞きをしていくという方向性かなと思っております。今、書いてあるのも、いろんなことが書いてございまして、ちょっと今、[鳥取]市長さんだとか、市役所が今どういう解釈をされているのかよく分かりませんけども、その辺は鳥取市の考え方も、当然ながら解釈権者でありましょうから、聞きながら対処するということかなあとは思います。

 ただ、この問題は繰り返し申し上げておりましたけれども、基本的に市民自治の範囲で解決しなければならないことだと思っておりまして、県としてあまり差し出がましい口出しをするべき問題ではないかなあと思っております。


○読売新聞 野口英彦 記者

 先日の議会でもこの協議ということを巡って、紛糾と言いますか、対立があったと思うんですが、その協議ということの説明をお願いいたします。


●知事

 ちょっと分かりにくかったかも知れません。意図的に先方も議論を曲げてしゃべっておられたもんですから、制度の説明をきちんとしながら本当は話をしなければいけないんだと思います。県は市町村合併について、市に対して協議を受けて、それが、良い悪いを判断する立場を与えられていません。それは当然ですけども自決権がありますので、市町村が合併する・しない、あるいはその合併に絡む事柄については、市町村が決めるというのが、これが地方自治、分権の考え方でありまして、当然そういう制度設計になっています。ただ、以前と違いまして、この度の合併特例については、県もいろんな事業で応援をするということがございます。例えば県道整備だとか、あるいは県の河川だとか、そうしたところでも合併のいろんな関連事業と併せて県事業を組み込むことが可能になっています。そうしたやり取りをするものですから、それに限って県との協議というものが発生をします。

 従いまして、当然合併するときも協議があったわけでございまして、当時鳥取市の広域合併に反対の立場だった片山[善博]前[鳥取県]知事すら、協議に同意をしているわけです。ことごと左様なものでございまして、最終的な決定権は市にあるという前提で制度は作られている。今回は仮に協議が来るとすれば、来るかどうか分かりませんけれども、仮に協議が来るとすれば、それについては、今計画の中に盛り込まれている県事業に今回の協議内容が抵触するのかどうか、例えば、県道整備などが変わってくるだとかいうことで、それについて県としては財政的な問題などで、同意できないということはあるかもしれません。

 要はそういう範囲内での協議なものですから、それは合併の是非だとか、あるいは今回であれば、庁舎問題の是非を我々でご回答する立場にはないんですね。先般はちょっと分かりにくかったんですけども、その県会議員のかたは、そこを曲げて議論をされまして、そういう協議なんですけども、それは結局市民の合意がなければ同意すべきでないんじゃないかというんですが、それはそういう制度になってないんですね、もともとは。だから、そこは議論の誤解が生じた部分があるかもしれません。

 従いまして、我々として、この問題、協議の面でも制度の趣旨に従って淡々とやっていく範疇のものだと思っております。


○読売新聞 野口英彦 記者

 地方自治法では知事なりが市町村に対して技術的な助言を行うことができるとなっていますが、こういう場合は該当するんでしょうか。


●知事

 それは該当しないんでしょうね。結局事は何かと言いますと、実は遡っていまして、合併に由来するものであります。その合併に由来をして、その合併のあり方云々について、それを促進するための場の設定だとか、そういうことについては、あの当時県知事の方に権限が与えられました。しかし、その合併をしようと言ったときに、市長が決めて、そしてその議会が同意をしたことを県が気に入らないからひっくり返すという権限は当然なかったわけです。ですから、これは最終的には自治権の一番コア[核]の部分でございますので、市町村の専権事項だと思います。




8 原発におけるシビアアクシデント対応 

○読売新聞 野口英彦 記者

 ちょっと話が行きつ戻りしますけど、原発の関係で、経済産業省が、シビアアクシデント[過酷事故]への対処はもう出来たんだと、再稼働すべきであるということを言っておるんですが、それについてはどうでしょうか。


●知事

 シビアアクシデントの対処として、原発の安全協定が出来ていません。ですから、海江田[万里経済産業]大臣はそこを決定的に間違っていると思います。やはり、今回の反省を踏まえて言えば、じゃあ、今、千葉県の柏市だとか、何が起きているのか。また、近い所では、福島県内での20キロメートル圏内、30キロメートル圏内、何が起きているのか。それを直視すれば、それに対して住民の安心を図る原子力安全の仕組みが出来ているとは到底思えません。これは、技術的なことに議論を矮小化しているんだと思うんですね。結局、津波対策だとか、地震対策、自分たちが設定した基準で考えればできていますよと言ってるのに過ぎないわけでありまして、じゃ、これで国民が安心できたかというと、今、国民のアンケートを取ってもらったら良いと思います。簡単ではないと思いますね。ですから、少なくとも我々の立場で言えば、周辺自治体との安全の仕組みというのができていないじゃないかということを申し上げざるを得ないと思います。




9 社会保障と税の一体改革 

○読売新聞 野口英彦 記者

 ちょっとまた私ばかりで恐縮ですが、話題が変わりまして、社会保障と税の一体改革で、5%分については、従来どおりの配分になるというような見通しがあって、その後動きが止まっているようなんですが、それについて、知事の受けとめをお願いいたします。


●知事

 まだ議論は生煮え状態だと思いますね。その生煮え状態の料理も、今、ちゃぶ台を引っ繰り返されそうでありまして、民主党内でまとまらないと、内閣の中も与党の立場の玄葉[光一郎]さんと与謝野[馨]さんとが対立していて、閣内不一致になっていますし、まだ状況、予断を許さないというのが正直なところだと思います。生煮え状態というのは、地方の財政保障ができていません、社会保障を議論するのであれば、その大方半分を負担をしている地方側に対する配慮というものがなければならないと。それで、これが確たるものがございません。これから、分科会、国・地方協議の場の分科会を作って、やっていくことになるんだろうとは思うんですけども、今、できあがりつつあるんですね、内容が美味しそうだとか、まずそうだとか、ちょっと言える状況ではないだろうなと思っています。


○読売新聞 野口英彦 記者

 取り分の議論だけでなくて、例えば妊娠、出産から医療、介護までですね、その部分をどちらがどのように担うかという議論も必要だとお考えでしょうか。


●知事

 ええ。もちろんそれ、連動してきますね。例えば、健康保険の問題だとか、子育ての問題、これは、国地方の役割分担が当然ながら、今回の社会保障のスキーム[枠組みをもった計画]全体に関わってこざるを得ないと思います。さらに、与謝野[経済財政担当]大臣などが捨象していました、地方の単独事業で今現にやっている部分ですね。こうしたところに対する保障がないわけでございまして、十分でないと言わざるを得ないと思います。


○読売新聞 野口英彦 記者

 国の財政が赤字で地方財政は黒字であるという意見もあるようですが、それについてはどうでしょう。


●知事

 国の財政と地方の財政とは一緒くたにできないのは、地方には紫陽花の花のようにたくさんの自治体がありまして、財政状況が逼迫しているところ、それから、東京都のようにオリンピックでもやられるぐらいの余力のあるところ、そうした差があるわけでございまして、それを一緒くたにして、東京都を見ながら、地方には余力があるというのは、議論をすり替えているとしか思えません。鳥取県のように爪に火を灯すようなつもりで、切り刻むとこを切り刻みながら、ただ、工夫をして皆が納得できる住民参画の県政をやっていこうという、そういうところにとってしますと、例えば今の[地方]交付税だとか、税だとか、そうしたところの大宗が失われてしまったら、たちまち立っておられなくなるということになりまして、住民サービスに支障をきたすことになります。国は国債を発行して、いわば資金調達の能力があるわけでございますけども、地方にはそれはございませんので、十分でありませんので、一緒くたにして議論をすることは誤りではないかと思います。


○時事通信 小出秀 記者

 知事、今の質問と一部ちょっと重複するかもしれませんけども、そもそも最初の6月上旬に決定されたものよりも、今回の6月17日の成案決定会合で決まったものの方が、相当地方側への歩み寄りができているわけですけども、それについての感想は。


●知事

 一定程度は前に進んだのかなと思います。前は完全なシャットダウンでありましたけども。今回は、議論の余地を残したというのが正直なところだと思います。よく読んでいただきますと、じゃあ、地方に消費税、従来の1%に加えて、また1%、2%当然ながら今回、社会保障の問題でありますので、財政的には税源を与えなければいけないというふうに書いていません。あるいは、その交付税で担保をしますと。税というかたちでなくて、交付税というようなかたちで、例えば何十パーセント、それを補償して、何兆円ベースでの財源を作りましょう。それも書いていません。結局全部地方側のところは白紙なんですよね。だから、今後の議論に委ねられたというのが正直なところでありまして、国の方は保障された内容というか、国が全部総取りのところから書き物が始まりましたので、そういうかたちになっておりますけども、地方側にとっては、目に見える具体的前進はいまだないというのが現状だと思います。


○時事通信 小出秀 記者

 そもそもの論としましては、今回の議論は全て消費税アップ、消費税の増税がもう前提となっておりますけれども、知事としては消費増税に関する考え方の是非をお願いします。


●知事

 私は、消費税ということを国際的に見てみますと、海外との関係で見てみますと、日本は社会福祉のサービス水準と照らし合わせて、消費税の税率が極端に低いのは事実だと思います。これが結局、いびつな財政構造になっている原因になっていると思います。特に地方側は、特に県なわけでありますけども、安定的な税収というのが意外に少ないんです。それで、法人事業税などの法人関係税が主でございまして、景気の良し悪しで波を被ります。この波を被る度合いは、国の税収以上に大きいんです。不思議に思われるかも知れませんが、それが現実でありまして、国の税収以上に景気に左右されることになります。そうすると、例えば医療のサービスとか、それから、教育のサービスでありますとか、そうしたサービスを景気の変動と合わせて縮小したり拡大したりできるかって言ったらできないわけですよね。だから、それはなんとなれば、今のやっぱり税制構造がおかしいんだと思うんです。

 私は、法人関係の税収構造を引き下げることも可とします。それもあってもいいと思います。ただ、もっと安定的で、将来に渡って伸びていけるような、消費税のような税収構造の方が地方には相応しいんだろうと思います。現実問題、鳥取県は全国平均に対して9割程の税収を地方消費税では得ることができます。ただ、法人事業税のような税収になりますと、東京都と沖縄[県]では5倍も6倍もこう離れてくるわけですね。こういうような税金というのは、あんまりその県に向いてないんだと思いますね。そういうところを消費税に一部組みかえることも含めて、もっと税収を充実させなければいけないというのが、本来目指すべき姿だと思っています。


○時事通信 小出秀 記者

 リーマンショック以降の不況や今回の東日本大震災の影響などで、どうしても景気が伸び悩んでいるなか、消費増税というものに対しては県民の理解は得られるとお考えでしょうか。


●知事

 当然これは議論が必要だと思います。ただ、いろんな世論調査でも現れていますけども、ここ数年で国民の意識も、この消費税について変わってきていると思います。最近であれば、この東日本大震災という特殊な財政需要が発生しましたので、こういうものも含めて考えてまいりますと、やはり税収のつじつまをどこかで合わせなければいけないだろうと。その際に消費税というのは、選択肢になるというのは、コンセンサスが広がりつつあるのではないかなと私は見ています。勿論、当然ながら、まだ、さっき生煮えと申しましたけれども、この議論が煮えてきて、こうやって提案をしようというときには、地方側としても、賛否の是非をきちんと述べて、場合によっては国と共に税制改正について我々も主張しなければならないかもしれません。




10 ワクワク北中:鳥取県での節電 

○テレビ朝日 後藤龍彦 記者(幹事社)

 ほかにありますか。なければ最後に山陰放送さん、お願いします。


○山陰放送 秦卓史 記者

 はい、幹事社の了解を得まして、BSS[山陰放送]では、今週受入れしています中学生の方に質問をさせたいと思います。1問ずつですので、お願いします。


○鳥取市立北中学校 小谷崚さん(山陰放送職場体験)

 鳥取市立北中学校の2年の小谷です。今、東北大震災で、政府が25%の節電を目標に掲げています。企業では自動販売機の電力量やスーパークールビズなどを行っています。鳥取県ではどのような取り組みを行っていますか。


●知事

 鳥取県でも今のクールビズであれば、「ハートホット・クールビズ」っていうことを始めました。これは、Tシャツでも良いっていうことにしたんです。これもそうですけども、ポロシャツですよね。こういうふうに県だとか地域の宣伝、イベントの宣伝だとか、そういうものをやることであれば、ラフな格好をしても良いですよ。そうしたら大分、今、広がりがきました。それから、朝とか、夕方の出勤時間を変えて、涼しいうちに仕事をするように職員を誘導することもしていまして、今、70名ぐらい、このフレックスタイムって言うんですけども、勤務時間を変えることに協力してくれています。それから、例えば、今、ここを工事していますね。外を工事しているのは、これは、この建物の断熱性を高めようと。これで、10%ほど、エネルギーの節約ができるようになります。こういうように、県庁としても率先行動をしています。

 ただ、それだけでなくて、住民の皆さんとか、オフィスでも協力をしてくださいと呼びかけをしています。具体的には、クーラーの温度[設定]を28℃にしてもらえませんかと。あるいは、お風呂も入るときは皆、いっぺんに入って、家族中で皆いっぺんに入って、順番に入ってもらって、追い炊きをしないようにしてくれませんか。また、冷蔵庫がありますよね。冷蔵庫をすごくこう強くして、強の最強のところにしておられるんです。でも、そういうことでなくて、もっと冷蔵庫の中身を、あんまり買い溜めをしないで、減らしてもらって、中ぐらいにしてもらうと、これでも随分違うんですよね。テレビだとか、電気のコンセント、これも、まめに抜いてもらうことで変わってきます。こうしたことをいろいろやっていきますと、計算してみますと、家の電気の消費量、大体10%ぐらい減らすことは可能です。オフィスもそうです。こうやって、10%減らしますと、工場なんかの電気代も考えますと、全部で5%ぐらい鳥取県で減らすことができます。こうした呼びかけを、6月22日の夏至から9月の30日まで、今、そういう「エコとっとり」の呼びかけをさせてもらっています。ぜひ、皆さんのお家でも協力してほしいと思います。




11 ワクワク北中:日本が立ち上がるための方策 

○鳥取市立北中学校 糸谷康平さん(山陰放送職場体験)

 同じく、鳥取市立北中学校の2年の糸谷です。今、日本は東日本大震災や福島原発のメルトダウン、放射能が海に流れ出したりと、とても厳しい状況だと思います。知事は今の日本が立ち上がるには、何が大切だと思われますか。


●知事

 まず、国政を正さなければいけないですね。それは1つでありますけども、やっぱりエネルギーですね、1つ大切なのは。エネルギーシフト[エネルギーの供給と利用の形を変化させること]っていう言葉を使うんですけども、今の原子力発電だとか、それから、化石燃料も、もう、いい加減に底をつくかもしれません。こういうところから、風力発電だとか、太陽光発電のように、エネルギーを作り出す場所や手段を変えていかなければいけないと思います。そういうふうにしますと、危険と隣合せの原子力発電、今よりもぐっと、こう減らすことができるんじゃないか。また、化石燃料も有限ですので、地球という船の中の資源を使うことができます。

 例えば、風力発電は、実は鳥取県、すごく向いているんですね。ですから、最近どんどん風力発電所が県内にもできてきました。太陽光も足らないというふうに思われますけども、山陰地方であっても太陽光発電、大体90%以上の発電効率を上げることが可能だろうと学者の人たちもおっしゃっているんです。こういうことで、エネルギーシフトを図っていかなきゃいけないなと思います。それから、あと災害対策ですね、まだ防災関係では地震や津波など普段から起ると思って備えをしなきゃいけないことが分かってきました。国民の意識も変わってきましたんで、そういう防災対策もしっかりやらなきゃいけないと思います。

 そして、大切なのは、住民の皆さんが皆で参加をして、素早く意思決定ができる、そういう政治の土壌もやっぱり今の日本には必要なんじゃないかと思っています。世界じゅうの国々が日本はどうなるかなというふうに心配をしている1つの原因は、そういう政治の中にもあるように思います。


○鳥取市立北中学校 糸谷康平さん(山陰放送職場体験)

 ありがとうございました。


○テレビ朝日 後藤龍彦 記者(幹事社)

 じゃあ、どうも知事、ありがとうございました。


●知事

 どうもありがとうございました。じゃあ、頑張って。



  

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