●知事
このたび、東日本大震災が発生をいたしました。鳥取県としては、先陣を切りまして総支援対策に乗り出しているというところでございます。6月に入りまして、私どもから炊き出し隊のようにして行こうかという構想がございまして、県の方でも協力を呼びかけましたところ、琴浦町のグルメストリート[プロジェクト]の皆様が協力していただきました。さらに、境港の妖怪たちも協力していただくことになりまして、ゲゲゲの鳥取県応援団が[宮城県]石巻市の方に行きます。[石巻市]渡波(わたのは)地区などを訪問しながら、子どもたちとも交流したり、そして、炊き出しをやろうということになりました。6月の3日、4日、金曜日、土曜日というタイミングでございますけれども、ぜひ、東日本大震災の被災者の皆様にも元気を出していただきたいというふうに考えております。
●知事
それから、原子力安全対策でございますけれども、かねて申し入れをいたしておりましたけれども、このたび5月27日に中国電力の山下社長さんと初めてトップマネージメントへの申し入れをする段取りがつきました。従いまして、この機会に鳥取県、[原発のある島根県の]隣接県として抱えております住民のかたがたの不安、これを率直に山下社長の方にぶつけさせていただきたいと思いますし、ぜひとも、鳥取県、あるいはその中の米子市、境港市といった地元の市などと協定を結ぶなど、次のステップへ原子力安全を踏み出してもらいたいというふうに求めていきたいと考えているところでございます。
●知事
だんだんと、6月議会が近づいてまいりまして、6月の補正予算、このたび取りまとめをさせていただきました。総額で110億9,500万円の予算ということになります。この補正予算と合わせまして、当初予算とそれから追加の専決[処分]がございましたけれども、全部で3,333億円の予算規模になります。このうち、2億9,500万円、約3億円は東日本大震災の関連の予算ということになります。
また、このたび、豪雨災害が県内を襲いました。いまだに5箇所で通行止め箇所があるなど、その豪雨の爪痕が残った状態であります。農業被害も出ております。そうした農業被害や土木施設被害などで2億円の予算も計上させていただきまして、復旧に努めてまいりたいと考えております。
併せて、私も県民の皆様と言わば対話をしながら、選挙戦を戦ったわけでございます。そして、未来づくりへの提言をさせていただきました。その5つのアジェンダがございますけれども、パートナー県政、また産業の未来を開き雇用を創造する、暮らしに安心を築いていく、人財とっとりを作り上げていく、鳥取の誇りを再生させていく、そうした5つのアジェンダに沿いまして、このたびの予算の中にも肉付け予算として計上させていただきました。産業の未来を開いていくという観点ですね、雇用を1万人作っていくための、そういうプロジェクトを県内で立ち上げていきたいと思っております。
具体的な萌芽として、例えば、水ビジネスを鳥取からも作り上げていこうとか、そういう産業創造ですね、行っていきたいと思っております。また、農林水産業の6次産業化の後押しであるとか、そのような予算を計上させていただきました。暮らしに安心を築いていくために、例えば健康対策も重要でございますけれども、がん対策として、近隣の県の施設も含めて、高度ながん医療が受けられるように、無利子融資を患者さんやご家族にさせていただく、そういう事業も計上させていただきました。また、全国でトップレベルになりますが、不妊治療の支援も人工授精など、総額15万円まで年間受けられる、全国でトップクラスというか、トップのそういう助成制度を作らさせていただいたりいたしております。
様々なことに加えまして、がん対策でも煙害の問題がございます。受動喫煙を防止をするという意味で、これ、論争があるかもしれませんけれども、この庁舎を、県庁内の禁煙化を実施することにさせていただきますが、片方で、今のそういう禁煙対策を住民のかた、県民のかたがなさりやすいように対策も作る必要があると思っております。禁煙治療も若い人たちはそれに対する保険が出ないわけでございまして、この矛盾をやはり解いていかないといけないと思っております。従いまして、若いかたがたでも保険は出ないですが、県の方から支援措置をさせていただいて、禁煙治療が進みやすいように、そういう対策も組まさせていただきました。
また、人財とっとりを推し進めるために少人数学級の検討に着手をいたしましたり、さらには、人材を活用するという意味で学校の中にボランティアを大々的に導入しようと、鳥取県らしい仕組みを創設をさせていただきたいと考えております。すでに教育委員会を通じまして、各市町村と話し合いを始めておりますが、非常に市町村の手応えも良いわけでございまして、おそらく本当に多くの市町村で学校の中にボランティアとして高齢者のかたも含めて人材が入り込んでいく、そういう体制ができるのではないかと思います。例えば、低学年の子どもたちに対する学習指導、こういうところに地元のかたがたもボランティアとして加わっていく。また、そのボランティアのコーディネーターも学校の中に作っていく、そんな鳥取の新システムを教育に導入していきたいというふうに考えております。
鳥取の誇りも取り戻さなければならないと考えておりまして、まんが王国鳥取を作ろうというプロジェクトでありますとか、それから、[山陰海岸]ジオパークの情報発信などを図っていこうということもございます。ジオパークの関係では、ウォーキングの協会と協力関係がとれまして、[山陰海岸]ジオパークの110キロメートルの海岸線をずっと歩く、壮大なジオウォークを実施することも実現に向かい始めました。そのための予算も計上させていただくことにいたしました。このようにして5つのアジェンダに沿った新しい未来を作っていく、そういう予算にも踏み込んでまいりました。未来づくりのエンジンをかけたいと考えております。
○読売新聞 野口英彦 記者 (幹事社)
ありがとうござました。1点だけ質問させていただきます。さっきのハートホット・クールビズですね、これは知事ご自身が実践されるご予定はあるんでしょうか。
●知事
ええ。もちろん私も県職員の一角でございますので、私自身も来週の月曜日から入らせていただきたいと思います。ただ、クールビズと言っても、単にネクタイを取るということだけでなくて、そこに県庁としての心意気を職員にも表現してもらえる機会になればいいかなというふうに思います。海づくりの大会であるとか、まんが王国を作っていくとか、そんなようなことがございますので、私たちなりのやりかたがあるのではないかと思います。ただ、いたずらに短パンとか、そういうように、やはり接客業でございますから、一定の節度を持ってやることになると思いますが、従来よりも、そうしたプリントの入ったTシャツとか、そうしたところも認めていこうということにしています。職員の方でも楽しみながらクールビズをやってもらって、それが結果的に県の地域づくりのメッセージになっていけばと思っております。
○読売新聞 野口英彦 記者 (幹事社)
はい、分かりました。各社お願いいたします。
○日本海新聞 井上昌之 記者
すいません、6月の補正予算のことについてお伺いしたいんですが、知事選を控えた骨格編成だったので、今回が実質的な肉付けの予算になると思うんですけれども、政調政審の資料なんかも見せていただくと、かなり知事がおっしゃっていた5つのアジェンダの内容が網羅されているなあという印象を受けるんですが、これについての知事の評価はいかがでしょうか。実際知事選で掲げたマニフェストが、かなり入り込んでいるという印象は受けておられますか。
●知事
ええ。実は、一身上の理由で入院生活を送っておりましたけれども、その最中にも県庁の幹部と協議を進めまして、政策戦略会議も行っておりました。そんなことで思いは県庁の組織の方にも伝わったかなというふうに思っております。ただ、まだこれは最初の予算でございますので、これからスタートをする、エンジンをかける、そういうものだというふうに考えております。例えば、雇用1万人作っていこうというのは壮大な挑戦であります。なかなか現場サイドでは、平井が理念をしゃべっているのではないかとか、そういうような発言が飛び出したりする状況でございますけども、やっぱり挑戦は一つ一つやっていかないといけないと思うんですよね。それは今回の予算で尽くされているわけではございません。まだまだ取り組んでいかなきゃいけないと思います。
まんが王国にしていくという意味でも、今、今回の予算の中ではラッピング列車の構想を出させていただいておりますけれども、さらに踏み込んで、街中でまんがを感じてもらえるような、そういうふるさとづくりにも踏み出していくべきだと思っております。この辺はまだ単調に過ぎないわけでございます。ことほどさようでございまして、今回の予算はエンジンをかけるという位置づけになったかなと思っております。
○日本海新聞 井上昌之 記者
予算の中には、未来づくり推進本部の下の組織になるプロジェクトチームのスタートアップの予算もかなり入っているんですが。5つのアジェンダの中身について、それぞれ手をつけたという段階っていう認識でいいでしょうか。
●知事
ええ。それぞれにエンジンをかけたという段階かなというふうに思っています。中には、がん対策とか、かなり具体性のあるものも出てきていると思いますが、そうしたところが、ぜひ結果に結びついてほしいという願いをもっています。
○山陰放送 奏卓史 記者
その予算に関して、ちょっと細かい項目になりますが、まんが王国の関連で倉吉の映画づくりについて谷口ジロー原作のものについては予算がついていますけども、同じ谷口ジローの原作で映画に向けての自治体の動きになりますと、鳥取市さんも同じように映画化に向けて「父の暦」をやっておられると思うんですけど、今回まず最初に倉吉に予算がついた一番の大きな理由っていうのは何になるんでしょうか。
●知事
それは、今まで水面下と言っていいと思いますが、いろんな折衝ごとがございました。この「遥かな町へ」の方がまず実を結びかけているということでございまして、我々は近々その制作発表がなされるんではないかなと期待する段階に入ったと思っています。そこで、石田[倉吉]市長たちとも話し合いをさせていただきまして、この際、6月[補正予算]で計上していこうということで、呼吸を合わした次第でございます。ここに至るまで、最初の構想から随分ちょっと紆余曲折がございまして、今ようやく大手の映画配給会社のバックアップも得られそうな、そういう状況でございまして、非常に有望な段階に来ただろうと思っております。これ決まりましたらすぐに動かなければなりません。ロケを進めたり、それからいろんなお手伝いを地元としても「アテナ」のときのようにやっていかなければならないと思っていますので、予算計上を急いで行うことにいたしました。もちろん、谷口ジローさんでは「父の暦」のプロジェクトも進んでおります。それも、時が来れば当然ながら地元としてもバックアップ体制を組んでいくべきだろうというふうに思っております。
私は、こういうソフトメディア、映像メディアのような、そういうポップカルチャーで地域を盛り上げていく、売り出していくっていうのが当世風なんだと思うんです。あまりお題目とか、何だかんだ言って地域づくりはこうやって工夫しましたよ、だから来てくださいと言ってもなかなか受け手に届かないですよね。そういう意味で、「アテナ」もそうでありましたけども、映像メディアの力っていうのは大きいなというふうに思っておりまして、この映画に大きく期待を寄せております。
○NHK 月岡信行 記者
東日本大震災関連の予算がおよそ3億円計上されています。それで、3億円金額は相当な規模なんですが、改めてやはりあれですか、鳥取県として大震災にどういうふうに対処していくか、予算を決めて、ちょっとまた。
●知事
はい。1つは直接的な被災地への支援、今後も、例えば、職員を派遣したり、これも具体的な段階に入ってきます。この30日からは私どもの方の[鳥取県]西部地震の経験もございますので、子どもたちのカウンセリングケアが必要な段階なんですね。今、学校が開いて動き始めています。ただ、やはり心の中に傷が残っている状態でございまして、私達も境港市だとかいろんなところで調査をして、西部地震のときに経験をしたことが起こっております。地元の石巻市とも話をさせていただきまして、児童心理のカウンセリングのできるそういう教職員を派遣することにさせていただきました。東部、中部、西部から派遣をしていくと。こういうものをこれからやっていくことになります。こんな直接的な支援がまず第一に、いろいろなことがございます。
それから、2番目としては、鳥取発のリバイバルプランを盛り込まさせていただきまして、そのうちのフレンドシッププログラムというふうに我々称しておりますけれども、向こうからこちらの方にやって来る、そういうかたがただとか、企業さんを温かく受け入れることが必要だと思っています。例を挙げて言えば、水産で東北沖での漁業資源は今も豊富なわけでありますけども、かなり基地がやられてしまっている状況がございます。中には、例えば養殖みたいなことでしたら、鳥取県のようなところでやってみようという、そういう事業者もあるかもしれません。もちろんこれは先方の選択ではありますけども、来られるというような可能性のあるところには我々の方でしっかりとしたサポートをする、ご案内をするのはもちろんでありますが、資金的にも3分の1の助成を行ってはどうかと考えております。
企業誘致の面でも従来にも増したプログラムを設定しまして、最高50億円の助成を行おうというようなこともさせていただきます。また、30万円までは生活支援の初動を行おうといたしておりますし、さらには、被災者の中の子どもたちがいますけども、子どもたちの学資に当てるための基金を県の中で設置をして、そして、それを充てていくというようなこともやっていこうと思っております。こういうフレンドシップの考えかたのプログラムが2つ目にあります。
それから、3つ目としては鳥取県内でやはり大きな震災影響が出まして、経済などに多大な影響があります。5月の9日にも改めて調査をしました4月に続きまして、4月よりは若干緩和されつつあるという判断をいたしてはおりますけども、例えばまだ、サプライライン[提供線]がしっかりしていない、供給ができてこないもんですから操業ができないとか、それから、逆に、オーダーが入ってこない、自動車の方もトヨタだとか、日産だとか相次いで今後のプランを出しておられますけども、秋にようやく本格操業だということでございますから。そうなりますと、どうしてもオーダーが入ってきませんので、県内のそうした部品産業が、出荷先が滞っておるということになっております。こうした状況を打破していくために、融資だとか、それから企業再生のプログラムをこの度組ませていただきました。
さらに、併せて、観光関係も大事でありまして、先程の韓国での宣伝の話、申し上げましたけれども、国内外の誘客をしっかりと図っていく、そういうプログラムもこの度の予算の中で追加計上させていただいております。私どもとしては、例えば、中国もだんだんとお客さんが戻り始めています。まだ、例えば、上海政府が許可を出しているわけではなくて、上海からこちらへの団体旅行の送客がないという状況ではございますけれども、そういうのが順次これから緩和されてくると思います。日中韓の首脳会議も、この度予定されておりますし、共同の動きが出てくるんではないかと期待をしておりまして、こうした中国のような大市場も含めた市場開拓も大胆にやっていく必要があるだろうと考えております。そうしたリノベーションプログラムを我々としても、実施をしていきたいと思っております。こうした3点の震災関係の予算で約3億円の計上をさせていただきました。
○時事通信 小出秀 記者
政府が先週、国家公務員給与を2013年度までに1割削減する方針を打ち出しましたけれども、それについての知事の感想をお願いします。
●知事
これは、国は地方に比べて、だいぶ、人件費に対する措置が遅れていましたので、ようやく動いたかなというのが一つの感想であります。鳥取県は、実は、独自に、この給与対策をしておりまして、鳥取型の構造改革を進めてきました。県内の企業さんとの均衡を図っていくと、そういう意味で、実は国の給料ベースと、年を追って今離れてきたんです、この4年間、就任以来ですね。ですから、そうした国の動きもですね、もちろん見定めさせていただいた上で、我々としてもどういう対策が必要なのかということを考えていきたいと思っております。心配されますのは、国の財務省のサイドから、この際、地方の方も給料を削減をしろと、それで1割カットをして、そして、その分は交付税を減らすんだという議論が提起をされていますが、これは言語道断だと思っております。
と申しますのも、国と違って、各都道府県、市町村はだいぶ苦労してきたんですね、もちろんまだ努力の足りないところもあるでしょうけれども、鳥取県で言いますと、全国の中での給与水準はかなり低い方です。ラスパイレス指数もこの4年間、私、就任した後ですね、急速に変わってまいりまして、以前よりも下がって今92、3ぐらいかなと思いますけども、要は、国家公務員よりも1割とは言いませんが、1割近く実は下がってき始めております。これが、あとは妥当な水準かどうかというのが今度はあるわけでございまして、その辺の検証をしていかなきゃいけないなというのが今の時期でございます。こうやって、それぞれの自治体の努力が得られるところなのに、とりあえず交付税を1割減らそうというようにも聞こえる発言というのは、これは論理一貫しない、おかしいというふうに思っております。
ともかく、これから国の方も給与交渉ということだとか、あるいは法案化っていうのがこれから出てくるでありましょうから、冷静に国の動きは見定めさせていただきたいと思いますし、それが鳥取県として、フォローすべきものがあるかどうか分析をしながら進めていきたいというふうに考えております。東京都のように、国もやったんで早速やりましょうという自治体もありますけども、東京都はあまりにも給料が高すぎます。今頃なんだというのが、他の都道府県の思いではないかというふうに思います。ですから、自治体それぞれの事情がありますので、それぞれで判断をすればいいのではないかと思っております。
○読売新聞 野口英彦 記者
それに関連して、そうすると鳥取県ではすぐに追従して1割カットということはないということでいいんでしょうか。
●知事
そういう単なる数字の一人歩きのようなことは必要がないと思っています。県として、ただ、給与水準がどの程度が相応しいかということはあります。それで、民間の給与を、私は、人事委員会がどうされるか分かりませんが、私は調べるべきだと思っているんです。人事院の方が東北などの影響もございますので、給与調査を見送るような発言も出てくるわけでございますけども、鳥取県は県内で震災の影響云々ということはございませんので、調査をすればいいと思います。それで民間と比べて、要は県民が納得できる水準はどの辺にあるかというのをまず見るべきだと思っています。ただ、そこで併せて国の問題、それから他の自治体、そうしたところとのバランスも地方公務員法上配慮しなければならないことになっていますから、その辺も配慮要素として入ってきたり、もちろん交付税を大幅にカットされてしまうというようなことに追い込まれれば、これ言語道断だと思いますが、財政上我々も何か考えざるを得ないというような局面もあるかもしれません。今後の動きを、私としては冷静に見ていきたいと思っております。
○読売新聞 野口英彦 記者
現時点で何かプランがあるというわけではないわけですよね。
●知事
私は、ぜひ県として改めて民間の給与水準を調べてもらって、人事委員会の方で、そして十分な議論をすべきだろうと思っています。
○読売新聞 野口英彦 記者
県内の実情に合わせた給与体系をつくるのが先であって、国に追従するというかたちでは今のところは考えられてないという。
●知事
国とか、東京都は高すぎましたんで、そこが下げてくるのはむしろ当然かなと思います。もっと言えば、国の方は定数もかなり多めになっておりますんで、その辺の行政改革を図っていくべきであって、地方に努力をした結果、今ある地方に対して交付税の削減だけを押し付けてくるというのは筋違いだろうと思っています。
○山陰中央新聞 太田満明 記者
27日に中[国]電[力]の社長に会われて、そのときの話、どういった話になりますか。
●知事
会ってみないと分からないというのが正直なことですね、シナリオがあるわけではございません。今まで実はこの原発問題でトップマネージメントとしてきちんと胸襟を開いて申し入れをするかたちになっておりませんでした。結局我々は門前払いだったんですよね。隣接地域というのはそういう悲哀があるものでございまして、立地[地域]とはまた違ったステータス[地位]になっておりました。ただ、この度の福島原発の状況を見ておりますと、県境には何の意味もないということは明らかだと思うんです。そこで、この度何とかと、トップマネージメントの方でパイプを開いてもらいたいというお話をさせていただきまして、入院中もあちらの幹部、トップのかたに電話で申し入れをしたりなど、していたんですけども、なかなか日取りがあいませんでした。ようやっと5月27日に会っていただけるということは私は評価したいと思います。姿勢が変わってきた現われかなというふうに思いますので、この点は評価したいと思いますが、問題の中身についてはどれほどすんなりとまとまるかどうかというのは、今後の交渉事だと思っています。
まずは、地元の実情をよく理解をしてもらって、そして中[国]電[力]としても、みんなが安心して向き合っていけるような、そういう電力づくりをしていただきたいなというふうに思っております。地元の米子市や境港市の思いもありますし、その辺ももちろん代弁をさせていただきながら、まずはテーブルを作ることを始めていきたいと思っております。
○山陰中央新報 太田満明 記者
電力会社も9社でしたっけ、全国にありますけども、1社だけで先走って、例えばEPZ[原子力災害に備えた対策を行政などが具体的に計画しておく区域]の枠外のところでの協定っていうのはなかなか結べないんだよっていう話を聞いているんですけれども、ただ中[国]電[力]の山下社長はこれまでの会見の中でEPZ外の地域、その協定というか、話し合いも前向きにやりたいっていうことをこれまでおっしゃってるようなんで、どこまでが前向きなのかっていうのもあると思うんですが、そのあたりの期待と言いますか。
●知事
これは、今、太田さんがおっしゃったとおり、がんじがらめの原子力安全行政だったんですね、今までが。実は国と電力会社とが1つのカルテルと言うと、また言い過ぎかもしれませんが、ここから先は譲らないといわんがばかりに、それぞれが頑張ってたというところがあるんです。ただ、鳥取県は実は全国でも唯一特殊だったと思いますのは、私が4年前就任した後なんですが、体面論やっててもしょうがないんで、むしろ実質で情報を提供してもらうとか、共有させてもらうということはできるじゃないだろうかと、こういう議論をしてきました。協定を結ぶことはできないということではあったんですけども、ただ、そうして実質協定を結んだに等しい情報提供はやりましょうということで中国電力は、おそらくあまりおおっぴらに全国で自慢話はできないと思いますので、おそらく、内々だったのかもしれませんが、現実には、県民はそういう情報提供の利益を得るところまではきていたわけであります。
もっと進んで、やはりそうしたものを表で確保できる、さらには、モニタリングポストのような観測もしていかなきゃならないんです。今、我々はたまたま人形峠に岡山との問題がございまして、そこに、スピードアイ[SPEEDI]というような、そういう施設がございますけども、原発対応はできているわけではございません。十分ではありません。そうしたことは、放置されていい問題ではないと、県民の立場からすれば思うわけであります。私はそうした思いを中国電力に理解してもらって、そして、協力関係を結んでいかなきゃならないだろうと思います。もちろん、この点については、溝口島根県知事のリーダーシップ、あるいは松浦松江市長のリーダーシップが大切でありまして、立地県が、立地の地域が、今後、原子力安全についていろいろと動きにくくなるという事態は、エチケットとして、私たちは避けるべきだと思いますけども。
ただ、やはり申し入れるべきことはきちんと申入れをして、我々もある程度のステータスを確立する必要があるだろうと思っています。今回、お会いいただけるということだけでも、これ、原子力安全のテーマに絞って会うわけでありますから、このことだけでも、やはり大きな一歩になるかなあというふうには期待をしております。
○山陰中央新報 太田満明 記者
島根県と鳥取県と、たかだがと言っちゃ怒られるかもしれませんけども、20キロ[メートル]ぐらいしかないわけですよね、原発の関係の中で。ところが、8~10キロ[メートル]というEPZの範囲があるんですから、立地県の島根県に対しては、様々ないろんなかたちでの、こう何と言いますか、手を使いまして、例えば、何か事故があったときに、島根県に対しては、15分以内にすぐ出しますというのがあるんですけども、鳥取県に対しては、[中国電力]鳥取支社を通じて連絡しますということしかないんですよね。時間的な制限というのは入っていないわけですよね、例えば。そういうこともあったりするもんですから、これがもし、県境がなければ、例えば、島根県の中央に原発があれば、すぐ距離というのは関係なしにすぐ入っていくわけですよね。さっき知事もおっしゃったけど、県境は関係ありませんっていうのがあると思うんですよ。県境があるが故に、そういう違いが出てくる。このあたりのことを県民としては、解消してほしいなと。そういったことはきっとあると思うんですよね。
●知事
ええ。実は、その情報のタイムラグのことは、これは口を酸っぱくして、中国電力にこれまで交渉しておりまして、今までの経験からすると、これは、同時ないし同時に本当に近い状況であるというふうに信頼はしております。ただ、それの検証はできないですけどね。それからあと、我々の方で具体的に、今までも申し入れをしてきて、なかなか実現しないのは、オフサイトセンター[緊急事態応急対策拠点施設]という、事故があったときのヘッドクォーター[本部]ができるわけでありますが、そこへ鳥取県の人間を入れるわけにはならないというふうになっておりまして、これも、なんでかなと思いながら、今までも釈然としないところがありました。
では、具体的に、いざというとき、対処ができる、そういう体制を地元ももちろん汗をかきますので、やっていこうじゃないですかと。これが中国電力との共通理解として必要だと思っています。せひ、全力を上げて県民の安心を勝ち取るために、交渉に臨んでいきたいと思っております。今回、まず、我々の方で申入れをさせてもらいまして、そして、今後、段階的にでもステータス[地位]を得ていけるように、話し合いをしていきたいと思います。
○山陰中央新報 太田満明 記者
どこでお会いするんですか。
●知事
本当は、広島にでも行こうかと思ってはいたんですが、ちょっと自分の事情がございまして、こちらの方に来ていただけるということになりました。
○山陰放送 奏卓史 記者
その中[国]電[力]から鳥取県の情報提供を受けている島根原発の安全対策ですけれども、知事はどういうふうに評価されていますでしょうか。
●知事
これも非常に奇妙だなと思っておりますのは、菅総理が浜岡原発は停止をすると、言わば英断と言っていいと思うんですが、明確なメッセージを出しました。その片方で、他の原発を動かすんだと言わんばかりの発言が昨日なんかも出てきておりまして、一体何が安全で何が危険なのかさっぱり分からないと。それで、いろんな情報が実は飛び交っています。本当のことはよく分からない。それで、これからその原因を究明しようというわけであります。原因を究明するところに、ぜひ地方の代表を入れるべきだと思います。そして、実際にその究明を進めて、本当に安全になるような、そういう措置がないとおそらく島根県さんも安心できないだろうと思うんですね。もちろん、隣接の私たちもそうであります。ですから、しっかりとした原因分析だとか、それからそれに対する対処をやるべきだと思います。
津波に対する[対策として、高さ]15メートル[の津波がくること]などを想定して、一定の措置をしましょうということ、これは、評価できると思います。ただ、それで、じゃあ、原発が絶対安全なのかという保証は、まだ、国民の誰にもないんではないかなと思うんですね。その辺の問題がありますから、かなり、やっぱり時間が必要なんではないかと思います。分析の時間と、そして、議論の時間が必要なんではないかというふうに思います。政府は結論だけ出すということになっていまして、これは止める、あとは止めないというので全てが終わるというようなことを考えておられるのかもしれませんけれども、それは賢明な国民には理解されないんではないかなあと思いますね。やはりしっかりとした分析としっかりとした議論があった上で運転をする、再開をする、あるいは増設だとか、そういうような議論に初めてなるのではないかと思います。
私は、全体としてはエネルギーシフトを進めて、鳥取県もその一翼を担って自然エネルギーなどの活用に向かっていきたいと考えております。その辺のトータルな、やっぱり議論をすべきでありまして、あまりにも、とりあえず夏に間に合うように運転がどうのこうのというのは、地元の安心には結び付かないんではないかなと。政府としても、よくよくの注意と関心を払ってもらいたいと思っています。
○山陰放送 奏卓史 記者
ちょっと、その中国電力の社長に会われたときも、同じように島根原発については、こういうふうな対策をしますというような、津波ですけども、説明があると思うんですけども、それに対しても、やはりまずは分析だとかいうことを言われるということでしょうか。
●知事
ええ。やはり、どうしても確信が持てないと言わざるを得ないと思いますね。島根県の松江市の地元のかたがたもそうだと思います。とりあえず波をかぶらなきゃいいやということでありますけども、ただ、地震が起こった後から、いろんな事象が発生をしているはずであります。それがトータルでああなったと。それで、当初はメルトダウン[炉心溶融]ということは口にされていなかったのに、今頃になってメルトダウンが起こったということは明らかになってきています。この辺は、情報がきちんと国民に然るべく提供されていたのかどうか、その辺も疑問を持つ向きもあると思うんですよね。やっぱり拙速は、こういうことについては、あってはならないと思います。中国電力さんの方とは、我々はその立地[地域]ではないんで、どうしても隣接地域としての話し合いになろうかと思いますけども、我々の懸念は申し上げたいと思います。
○山陰中央新報 太田満明 記者
その場合に一番怖いのは、やっぱり島根原発の真下に宍道断層というやつが走っておることだと思うんですよね。日本海の場合、日本海の地震の場合は、津波というのが15メートルも本当に来るのかどうかっていうのがあるんですけども、やっぱり、真下にある宍道断層、20キロメートルとも40キロメートルとも言われていますけれどもここの、この宍道断層っていうのは本当にどういったものかっていうのが、はっきりしていないので、これの長さなり何なりというものをちゃんと調べてもらわなくちゃいけない。じゃないと、やっぱり周辺の住民、我々は安心できないということがあると思うんで、そのあたりのことも、ぜひ中[国]電[力]の方に申し入れていただきたいと思うんですが。
●知事
我々の方で、やはり安全の上にも安全、そういうフェールセーフ[fail safe、間違った操作をしても安全なように制御すること]を掛けていくことが必要だと思います。その辺の意識を申し上げていきたいと思います。原発は、それを稼働させるかどうか、最終的な結論のところは、どうしてもやっぱり立地が最終責任を負うべき地域になろうかと思います。我々には我々の限界はあるとは思いますけれども、我々の鳥取県の方で住んでおられるかたがたが、このぐらいなら安心かなというふうに考えてもらえる水準を追求してもらわなければならないと思います。
○山陰中央新報 太田満明 記者
島根原発で事故が起きれば、季節風によっては、鳥取県の方にみんな放射能が来るわけですから、立地、立地と島根県のことばかり言っていられないだろうと思うんですよね。出雲平野っていうのは、三陸と同じ貞観時代に地震が起きて、それから起きてない不発地域になっている場所ですから、いつ地震が起きるか分からない所でもあるわけだと思うんですよね。そういう意味で、やっぱりそのあたりのことっていうのは、ちゃんとしてほしいなというふうに思っているんです。
●知事
しっかりと中国電力のトップマネジメントに申し入れをしていきたいと思います。
○読売新聞 野口英彦 記者
その申入れなんですが、文章で何項目かを、直接にして手渡すというかたちではないわけですか。
●知事
もちろん、やはりことがことですので、文章化して申し入れをしたいと思いますし、当然ながら協議の場とさせていただきたいと思っています。
○読売新聞 野口英彦 記者
そこに盛り込む内容というのは、固まっているんでしょうか。
●知事
これは、我々として、従来からも申し上げておることでありますけども、安全対策をしっかりしてもらいたい、
今のお話にもございましたように、そういうことだとか、それから、あと、協定をやはり結ぶべきではないだろう
かと、こうしたことも入れていきたいと思っております。まだ、ちょっと27日まで、よく熟慮した上で申し入れを
考えていきたいと思います。
○読売新聞 野口英彦 記者
先程、立地県に対するエチケットというふうなことをおっしゃったんですけども、そうしますと、例えば運転再
開等に鳥取県の同意が必要であるとかですね、そこまで踏み込む考えはないということでしょうか。
●知事
我々は、欲を言えば切りはありませんけども、最後出口のとこは、立地との役割分担ということも考えざるを得
ないとこはあるかなと思います。ただ、思いは、私は島根県の皆さんは共通に持っていると思うんですね。我々以上に安全に対して注意を払っていかなければならないという思いだと思うんです。その意味では、信頼関係を持って島根県と共同でこの原子力安全対策に進んでいきたいと思っています。
○山陰中央テレビ 松本英樹 記者
平井知事ご自身の話なんですが、退院後初の定例記者会見で、今も高い椅子に座っていらっしゃるんですけども、左[足]骨折した部分の経緯は今、いかがでしょうか。
●知事
今、毎週レントゲンの検査と医師の診断を受けておりまして、それによって徐々に公務の回復をさしてきていただいております。非常に経過は順調でありまして、骨折部に対する骨の再生が始まっているという診断であります。ただ、まだ支えられる重さの問題がありまして、左足に重心を掛けることは避けてくれと、こういうことでございます。今の医師の治療方針では、月末ぐらいから出張も認めてもいいかなというようなことでございまして、今はこの県庁の中ぐらいに限らさせていただいておりますが、もう少し足を伸ばした仕事も、月末ぐらいから復帰の可能性も出てきました。来週、再来週とまた検査を受けながら、治療方針に従って養生していきたいと思っています。
○山陰放送 秦卓史 記者
この会見の場ですけども、ほかの会議のように[知事]公邸でという選択肢もあったと思うんですけども、この会見、やはりこの記者室でというふうになったのは、知事の意向でしょうか。
●知事
はい。インターネット放送で、やっぱり県民の皆様にも県政を明らかにしていかなきゃいけないと思いますので、こちらの方の設備を使うのが一番良いというふうに判断をさせていただきました。記者クラブのご理解も得まして、ちょっと変則的ではありますけども、こんな格好で記者会見を認めていただいたことを感謝申し上げたいと思います。
○読売新聞 野口英彦 記者
すみません、知事がマニフェストに掲げられて、今度6月補正でも計上されています、県民参画基本条例ついてお伺いいたします。これは常設のもので、例えば対象など、どういうふうに、今お考えでしょうか。
●知事
私は、この点は正に万機公論に決すべきことだと思っています。つまり、住民の皆さんのツールとしての県庁をどういうように作り上げていくか、その議論でありますので、いろんなかたがたのご意見や専門的な知見も得て、最終的にフレームを決めていきたいと思っています。私としては、その住民投票という、そういう直接参加の機会も従来以上に認めるべきではないかと思っております。ただ、そのことと、現在の地方自治法が設定している二元代表制の仕組みとの調和をどこで図っていくかが厄介な法律問題もございまして、その辺の議論もやりながら、最終的に決めていきたいと思います。
ただ、本当に大きな課題で、これは県民として判断しなきゃいけないという世論が盛り上がったときに動けるような、そういう住民投票制度は必要かなと思いますし、また、イメージとしては、首長と議会が対立をしてにっちもさっちもいかない、そんなときに、それを解消していく1つの手立てとして住民投票制度のような仕組みを使うとかですね、そういう選択肢もあるのかなと思っております。ただ、住民投票に限らず、アンケート調査だとか、いろんなかたちで県民の意思が県政に反映されるように、またNPOをはじめとしたいろんな主体が担い手にもなりまして、県政をパートナーとして進めていくような、そういう基本条例を考えてみたいなと思っています。
○読売新聞 野田英彦 記者
現在の制度は、請求があってその上で首長が判断すると、実施するかどうかを判断するという仕組みになっていますけども、この条例ができればそういう首長の判断が必要なくなるという感じでしょうか。
●知事
今は、住民投票は個別の政策イシュー[論争]については[地方]自治法上認められていません。あるのは解職請求だとか、そうしたものでございまして、これをもっと広げて、大きな課題には判断ができるようにしてもいいんではないかなと思っています。ただ、政府の方で考えかけておられたようなハコモノには住民投票を付すんだというのは、何かあまりにも短絡的な考え方だなと、あまり共感を覚えません。むしろ、やっぱり大きな課題だということで、例えば、二元代表制の担い手である議会と首長とが判断するような場合には、住民投票を使うとか、何か出口が私はあると思っていまして、従来にはないシステムだと思いますが、考えていきたいと思います。
○読売新聞 野口英彦 記者
知事も先程おっしゃったように、私も学生の頃には、住民投票というのは首長と議会では住民の意思が反映されないときの補完的な役割であるというふうに教わった記憶があるんですが、その中でやっぱり知事が推し進めたいと思われる動機と言いますか、住民投票が必要であると思われる動機と言いますか、思いというのはどういうところにあるんでしょうか。
●知事
やっぱり大きなイシューが起きます。今も鳥取市で言えば市役所[庁舎建替]問題のような非常に関心を呼ぶような場合が出てきますよね。そういうときに、やはり選挙のときに選ばれた代表者としての職責をしっかり果たす必要はもちろんありますけども、それだけでなくて、住民の皆さんの直接の意見を聞こうじゃないかと、そういう機会ももっとあっていいんじゃないかと思っております。従いまして、私は、ちょっとこれ、挑戦的だったかもしれませんが、アジェンダ[検討課題]として書き込ませていただいたわけであります。
○読売新聞 野口英彦 記者
先程、知事の方から市役所問題について言及されましたので、お伺いしますけど、今、こういう住民投票を呼び掛ける動きが鳥取市役所問題でございますよね。これは仮定の話になりますけど、まずこの動きをどう思われるということと、請求をしている、運動をしている団体は5万人程度[署名]を目処にということなんですが、そういう、もしその署名が集まった場合に、首長はやっぱり住民投票を実施すべきであるとお考えでしょうか。
●知事
これは、個別の市町村の問題でありますし、今、自治的に解決をしようと努力されている真っ最中でございましょうから、コメントは差し控えるべき立場かなというふうに思います。ただ、鳥取市長さんには雑談で申し上げたんですけども、いざ、住民投票ということになったら、受けて立ったらどうだろうかというような私の考え方を申し上げました。やはりデモクラシーというのはあると思うんですよね。そのデモクラシーには従うべきだというふうに思います。ただ、もちろん住民投票でありますので、それは庁舎の建替えを可とするのか非とするのか、その結論とはまた別問題でございまして、住民投票にかけて可とされることも当然考えられるわけであります。それは住民のご聖断と言っていいような、そういう厳粛な意思の行使であろうかと思います。従いまして、どういう出口になるかは私にはまだ想像つきませんけれども、ぜひ鳥取市の中で自治的にいいテーマだと思いますので、課題を解決していっていただければいいんじゃないかと思っております。
○読売新聞 野口英彦 記者
あと、県有地の問題があるかと思うんですが、その後、市から働きかけはあったんでしょうか。
●知事
いや、これは特には聞いてませんね。これはまたちょっと繰り返しになりますけども、前から申し上げていますが、実は[鳥取]駅周辺の土地については、倉吉市だとか、米子市だとか、そうした顔に当たるところは、地元が本来管理すべきだというのが都市計画上の考え方だと思ってます。そういう方針で他の自治体にも折衝してきておますし、鳥取市にも折衝をしてきました、こちらの方から逆に持ちかけてですね。ただ、そうしたところが、これは県側の事情で若干中断しかけてきておりましたけども、この協議は続けておりますので、そういう土地の問題も当然ながら鳥取市側の提案には臨んでいきたいと思います。
ただ、問題はその前に、結局何に使うかということが、今大問題になっていますから、市庁舎問題がございますので、その市庁舎問題を片づけてから、県の方に持ってきてもらわないと議論が混乱するだけじゃないかなというふうに思っていまして、その辺のざっくばらんな考え方は、[鳥取]市長の方にも申し上げています。
○山陰中央新報 太田満明 記者
住民投票のことなんですけども、地方自治法の中で[住民の]50分の1の署名があれば住民投票の要求ができますよね。それで、そのあと議会の同意で住民投票をするということになると思うのですけども、先程、知事が二元代表制だとおっしゃったんですけれども、二元代表制と言いながら議会の同意がないと住民投票できないわけですよね、通常の場合は。それで、今回[県民参画]基本条例の中に知事がどういうかたちで住民投票を入れようと考えておられるのかということがお聞きしたいんですけど、常設型なのか、非常設型にしようとしているのかということなんですけど。
●知事
そこを、だから先程申しましたように、これは正に県庁という県民のツールをどうやって設定するかということでありますので、いろんなかたがたのご意見だとか、専門的な知見も入れてやっていく必要があるだろうと思っています。現在は条例を作って住民投票を行うということになりますので、そうしたことになりますけど、もっとその辺の手続きを明解化するというのも1つの考え方だと思いますし、まずは議論の端緒を今6月議会で専門的な知見も含めた委員会を作って、始めてもらおうというふうに考えています。
○山陰中央新報 太田満明 記者
そういう言い方をお聞きすると、常設型みたいなかたちで置いておきたいということだと思うんですけど。
●知事
常設型、非常設型というのもあんまり実効的なカテゴリーではないと思います。問題は、どういう場合に動き出すかというのを決めるところだと思いますので、そこは実は法律論がややこしいんですね。今の法律論から言い出すと、二元代表制を憲法で採用していますから、憲法的なスキームの中から採用していますんでね、ですからそこに住民投票というのは直接請求権として限定されたフィールドのみ機能しています。これが1つの限界だろうというのが通説的な理解なんですよね。そうした法律論との兼ね合いもありますので、慎重にちょっと検討しなければいけない場面はあろうかというふうに考えております。ただ、どうせ作るんだったら、使うべきときにしっかりと伝家の宝刀が抜けるというような、何かそういう仕組みがあればいいなというイメージではおります。これから詰めていきたいと思っています。
○山陰中央新報 太田満明 記者
次の議会との議論というのが始まるんでしょうね、そこのところは。
●知事
それは法律上仕方ない部分ですね。議会と首長との二元代表制が地方自治の制度になっていますから。だから、そこで法律改正をやろうじゃないかということで、政府が動きかけられましたけれども、今この東北[東日本]大震災云々で、これはポシャッていますし、それから実は地方団体から反発があります。まずは地方団体にも協議もせずになんでそういう法律改正をするんだという反発が逆に起きていまして、それで、我々としてはそういう国の混乱は横に置いといて、鳥取県なりのやり方を考えてみようじゃないかということであります。
○山陰中央新報 太田満明 記者
なかなか、ただ県民レベルでの住民投票って難しいのかなと思うんですけど、市町村レベルでは。
●知事
県レベルで本格的な基本条例はないといっていいと思いますね。
○山陰中央新報 太田満明 記者
北海道と神奈川も。
●知事
神奈川[県]とか、ただそれも理念的なものが強い、どこまで書けるかどうか、この辺は県民との対話の中で作っていくしかないと思います。
○山陰中央新報 太田満明 記者
北海道と神奈川も謳ってはありますけれども、詳細の実務から。
●知事
はい、動いていません。
○山陰中央新報 太田満明 記者
あれだったら書く必要ないんじゃないかなと思ったんですけどね。
●知事
そこはやり方だと思いますんでね。
○読売新聞 野口英彦 記者
ちょっとまたいくつかお伺いしたいんですが、テーマは変わりますけども、震災の復興の財源で、増税をするかどうかということに関して、読売新聞の世論調査でも賛成と反対が拮抗しているんですね。復興財源として知事は、何かいいアイデアをお持ちでしょうか。
●知事
いいアイデアというか、私は今の議論がナンセンスかなと思いますね。ナンセンスというのは、つまり、我々も地震対策をやりましたんでよく分かるんですけども、財源のことばっかり気にしていると何もできなくなります。その証左に、今、一次補正[予算が]終わりましたけども、次の二次補正[予算]をどうするか、1.5次補正となるのか、あるいはやらないのかとか、そういう悠長な議論をしています。情けないなと思いますね。それは多分後ろに財政当局が控えていて、しっかり根回しをしているんではないかと思います、つまり財源がないのに対策はできませんでと、そんなことを言っていたらいつまでたってもできないです。例えば税金を上げない限り対策は打てません、なんてことを言ったら、何年かかっても東北の復興はできないですよね。
本来この議論は切り離さなければならないと思うんです。それぐらいの決意をリーダーシップとして持って、そして財源のことは財源のことでまたきちんと責任をもって考えていくというのが本来のやり方なのかなと思います。とたんに消費税を上げるのかどうかが焦点となって、それにすり変わるのは財政当局がほほ笑んでいる姿を想像せざるを得ないと思いますね。やっぱり今やるべきことは復興対策を1日も早く進めることではないかと思っていまして、やや、今の、増税すべきかどうか、みたいなところに、議論の焦点が移るのは、ポイントからずれ始めたのかなという感想を持っています。
○読売新聞 野口英彦 記者
政治のリーダーシップということに関連して、今日の読売新聞に西岡[武夫]参議院議長が菅首相の即時退陣を求める文章を出されまして、それが掲載されているんですが、受け止めはどうでしょう。
●知事
私は、これは政治の論でありますので、国政の中できちんとした決め引き、進めるためのようは国政を動かすためのその方策について、速やかに議論を進めてもらうべきではないかなと思います。私は、国民は菅さんが退陣するかどうかよりも、東北がどうなるかの方に関心があると思うんですよね。何かそのそういう政治の動きの中で、対策が遅れるようなことにはならないように、それだけはしっかりとお願いをしたいなと思っています。
○山陰中央新報 太田満明 記者
今日の花は何ですか。せっかく花があるのに何かいつも説明がないんで。
●知事
後程、じゃあ、ペーパーでお配りをさせていただきたいと思います。
○山陰放送 秦卓史 記者
DBSクルーズの舞鶴[敦賀(つるが)]への試験運行ですけれども、知事の方には実際、試験運航始まって、どういった成果があった、どういった影響があったとか、何かその実というのは報告は上がっておりますか。
●知事
この度、DBS社の方からも、実は前々からその免許を一応とったとかいろんな話がありまして、ようやっとこの度、敦賀に試験運航するということにはなりましたけども、その敦賀に行ってどういう成果が上がったかというのは、報告はありません、DBS側からですね。ただ向こうで[韓国]東海[トンへ市]の市長と敦賀[市]の市長をはじめとしたお互いの話し合いがあったとか、そういうことは伺っております。現実に荷物は動いておりませんし、非常に限定的なものだったもんですから、これでただちに敦賀運航が決まるというような状況ではないだろうと私は冷静にみております。まだまだこれからこのDBSクルーズフェリーの運航を安定化させるための努力が続けられる中で、敦賀をどうしようかという議論に最終的になるのかなと思います。今はむしろ荷物だとか、旅客を安定化させる方にDBS社も含めて努力すべき時期なんではないかなと思っておりまして、敦賀のことはあってもまだ先の話かなという印象です。
○山陰放送 秦卓史 記者
じゃあ、その敦賀の寄港について、特に報告を知事の方から求めたりとかということは、もうされないということでしょうか。
●知事
それが、成果があったとかいう判断が多分できないと思いますね、あちらも。つまり実際走らせてみて、例えば、どの程度時間がかかるとか、そういうことは分かったかも知れませんが、じゃあ、その荷物の積み下ろしどうだとかいうところまではやっておりませんので、十分なデータまでは至ってないんじゃないかなと思っております。もちろん我々としても今後のDBSクルーズフェリーのあり方に影響を与えるものですから、かなりの関心を持っていろんな協議を先方とさせていただいております。先方からは当然ながら境港に寄港すること、これをまず第一義として考えているんだというメッセージはいただいております。
○山陰放送 秦卓史 記者
今の時点で、その寄港がプラスに働いていくというふうな判断は県としてできないという。
●知事
寄港と言うのは、敦賀の寄港ですか。
○山陰放送 秦卓史 記者
はい。
●知事
それはできないですね。材料がまだないと思います。
○読売新聞 野口英彦 記者
生肉の関係で、先程そういうフグのような免許を交付するようなことも考えたいということでしたけど、そうすると、一定の基準を満たした事業者に対しては県がお墨付きを与えるようなかたちということも考えられるんでしょうか。
●知事
ええ。それも1つの選択肢だと申し上げたわけです。どういうやり方がいいのかは、実は今、職員の間でもいろんな議論をしています。何せ1番の問題は国がはっきりしないことですね。これに現場が混乱を招いていると。もちろん失われた命は大変大きいわけですし、その結果を招来したのには、厚生労働省にも責任はあったと思います。結果として曖昧なままにおいたし、そして、罰則をつけろと地方が要求してもつけなかったのも事実であります。そういうことで、そのあと、今度は、後手、後手に回っていまして、通知としては最後のお店の方でトリミングをすればそれでいいかのような趣旨のことを言ってみた、今までは各過程、各プロセスでそれぞれトリミングを義務付けるようなことを言っていたように思えたんですけども、さっぱり分かんなくなってきちゃったんですね。それで、現場の方としてどういうふうにしたらいいのか、我々、意向調査、監視も含めてやりました。やっぱり半分ぐらいは相変わらず生肉をお客さんの要求もあって出し続けたいというふうに言っているわけでございますけども、そうしたら今度は逆に、どうしてもじゃあやっぱり提供するということであれば、どういうふうにすれば安全なんだということをはっきりさせなければいけないわけです。この辺は各都道府県、本当に困っていると思いますね。結局責任を取らないもんですから、取りたくないもんですからはっきりしたことをあくまでも言わないわけです、厚生労働省が。ひどいと思います。
その意味で県として独自にやはり基準を我々でも作って、国も困っているようですし、こんなふうにしたらどうですかという提言をするかもしれませんし、それからもちろん手元の方で我々のところの規制行政でもございますし、権力行政でございますので、保健行政としてはこういうのが妥当だというのを見定めて、自信を持って現場にあたっていきたいと思います。その中で1つのアイデアとしては、調理側のことを考えれば、何かそういう仕組みがあった方がお客さんが安心して食べられるんじゃないかというような、そういうようなアイデアもございまして、いろいろと議論を戦わせてみたいと思っております。
○読売新聞 野口英彦 記者
従わない事業者には罰則ということも1つのアイデアと言いますか、選択肢として。
●知事
それは言えます。条例上。例えば、フグ調理師の関係なんかは、まさにそういうことであります。
○読売新聞 野口英彦 記者
この問題が分かった直後に県が立ち入り調査をされたと思うんですが、知事の方に何かこう不適切な事例とかの報告は上がっておりますでしょうか。
●知事
不適切な事例ということではないですけども、現在やっているその調理の実態などについては、報告を聞いております。それで、足らざるところはやっぱり正していただくという方針で、今、現場の方では進めております。
○読売新聞 野口英彦 記者
大きく今すぐに何らかの措置が必要というところまでは。
●知事
ええ。そこまではないですね。
○読売新聞 野口英彦 記者
そのように聞いておられるんですね。
●知事
この辺も結局元のところは非常に曖昧なんです。罰則もなければ何もないということになっちゃっていまして、その辺、本当に消費者も不幸だし、それから事業者の方も不幸だと思います、今の状況は。
○読売新聞 野口英彦 記者
よろしいでしょうか。それでは、ありがとうございました。
●知事
どうもありがとうございました。