内閣府は、平成22年9月の「月例経済報告」で、最近の経済動向について次のように報告している。
(総論)
景気は、引き続き持ち直してきており、自律的回復に向けた動きもみられるが、このところ環境の厳しさは増している。また、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある。
・輸出は、このところ増勢が鈍化している。生産は、緩やかに持ち直している。
・企業収益は、改善している。設備投資は、持ち直している。
・企業の業況判断は、改善している。ただし、中小企業を中心に先行きに慎重な見方となっている。
・雇用情勢は、依然として厳しいものの、このところ持ち直しの動きがみられる。
・個人消費は、持ち直している。
・物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。
先行きについては、当面、雇用情勢に厳しさが残るものの、海外経済の改善や各種の政策効果などを背景に、企業収益の改善が続くなかで、景気が自律的な回復へ向かうことが期待される。一方、海外景気の下振れ懸念や為替レート・株価の変動などにより、景気が下押しされるリスクが強まっている。また、デフレの影響や、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。
政府は、「新成長戦略」に基づき、日本経済を本格的な回復軌道に乗せるとともにデフレを終結させるよう政策運営を行う。
このところの円高や海外経済の減速懸念等による景気の下振れリスクに機動的に対応するため、「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」を9月10日に決定した。
政府は、デフレからの脱却を喫緊の課題と位置づけ、日本銀行と一体となって、強力かつ総合的な政策努力を行う。日本銀行に対しては、政府とマクロ経済運営に関する基本的視点を共有し、デフレの終結に向けた最大限の努力がなされることを期待する。日本銀行は、8月30日、固定金利方式の共通担保資金供給オペレーションの拡充を決定した。
(各論)
○消費・投資などの需要動向
個人消費は、経済政策の効果もあって、持ち直している。消費者マインドは、改善の動きが続いている。実質雇用者所得は持ち直している。設備投資は、持ち直している。住宅建設は、持ち直してきたが、このところ横ばいとなっている。公共投資は、総じて低調に推移している。輸出は、このところ増勢が鈍化している。輸入は、緩やかに持ち直している。貿易・サービス収支の黒字は、横ばいとなっている。
○企業活動と雇用情勢
鉱工業生産は、緩やかに持ち直している。先行きについては、環境対応車への購入補助終了の影響が懸念されるものの、内外における投資需要の持ち直しなどから、当面、持ち直し傾向が続くことが期待される。企業収益は、改善している。企業の業況判断は、改善している。ただし、中小企業を中心に先行きに慎重な見方となっている。倒産件数は、おおむね横ばいとなっている。雇用情勢は、依然として厳しいものの、このところ持ち直しの動きがみられる。
○物価と金融情勢
国内企業物価は、このところ横ばいとなっている。消費者物価は、緩やかな下落が続いている。株価(日経平均株価)は、9,200円台から9,300円台まで上昇した後、8,800円台まで下落し、その後9,000円台まで上昇している。対米ドル円レートは、85円台から83円台まで円高方向で推移している。
▲トップに戻る
需要面の個人消費では、大型小売店販売額(7月)が、全店舗計、店舗調整後(新規店舗等を除く)とも前年を下回った。ホームセンター・家電量販店販売額(7月)、乗用車新車新規登録台数(8月)は前年を上回った。
建設等では、新設住宅着工戸数(8月)、用途別着工建築物工事金額(8月)は前年を上回ったが、公共工事請負金額(8月)は前年を下回った。
産業面では、鉱工業生産指数(7月、季節調整済)が105.5で前月比2.9%低下した。なお、大口需要電力実績(7月)は、鉱工業用の大口需要電力主要4区分の全てで前年を上回った。
雇用面では、新規求人倍率(8月)は、1.15倍(前月差0.11ポイント上昇、前年同月差0.29ポイント上昇)であった。有効求人倍率(8月)は、0.66倍(前月差0.05ポイント上昇、前年同月差0.20ポイント上昇)と、3か月続いて0.6倍台となっている。
きまって支給する給与(7月)、所定外労働時間(7月)はともに前年を上回った。
○需要面の動き
【個人消費】
大型小売店販売額(7月)は、全店舗計では54億2,300万円となり前年同月比5.0%減と8か月ぶりに前年を下回り、店舗調節後では前年同月比4.1%減(全国は前年同月比1.3%減)と28か月続いて前年を下回った。なお、全店舗計の内訳では、百貨店が17億8,000万円(前年同月比7.0%減)、スーパーが36億円4,300万円(前年同月比4.0%減)であった。
ホームセンター・家電量販店販売額(7月)は、40億7,000万円(前年同月比11.0%増)と11か月続けて前年を上回った。内訳ではホームセンターが20億7,300万円(前年同月比8.5%増)、家電量販店販売額が19億9,700万円(前年同月比13.7%増)であった。
乗用車新車新規登録台数(8月)は、1,876台(前年同月比38.7%増)と15か月続いて前年を上回った。内訳では、普通車、小型車の区分が15か月続いて前年を上回り、軽自動車は5か月続いて前年を上回った。
【住宅建設】
新設住宅着工戸数(8月)は、179戸(前年同月比4.1%増)と2か月続いて前年を上回った。内訳では、持家系(前年同月比1.9%増)、貸家系(前年同月比7.4%増)ともに前年を上回った。
【設備投資】
用途別着工建築物工事金額(8月)は、21億100万円(前年同月比447.8%増)と2か月続いて前年を上回った。用途別では、製造業(前年同月比8780.0%増)、宿泊業・飲食サービス業(前年同月比皆増)等で前年を上回った。
【公共工事】
公共工事請負金額(8月)は、85億8,700万円(前年同月比1.2%減)と2か月続いて前年を下回った。発注者別の内訳では、国(前年同月比24.6%増)、市町村(前年同月比15.8%増)で前年を上回ったが、県(前年同月比17.4%減)は前年を下回った。
○産業面の動き
【産業活動】
鉱工業指数(7月)は、生産指数(季節調整済)が105.5となり前月比は2.9%低下し、原指数は107.6となり前年同月比では15.7%上昇した。
内訳を前月比で見ると、食料品・たばこが3.3%上昇となり2か月ぶりの上昇、電子部品・デバイスが8.2%の低下となり2か月続いての低下、電気機械が9.1%の上昇となり2か月ぶりの上昇、一般機械が2.9%の上昇となり4か月連続の上昇となった。
在庫指数(季節調整済)は88.0と前月比1.4%上昇した。
【電力】
大口需要電力実績(7月)は、144,562千kWh(前年同月比3.8%増)と2か月続いて前年を上回った。鉱工業用の大口需要電力を主要4区分でみると、パルプ・紙(前年同月比8.4%増)、その他の製造(前年同月比2.6%増)が2か月続いて前年を上回り、鉄鋼(前年同月比13.4%増)、機械(前年同月比3.2%増)が8か月続いて前年を上回った。
【青果物卸売量】
鳥取市場の青果物卸売量(8月)は、野菜が1,319t(前年同月比2.2%減)と8か月続いて下回り、果実は907t(前年同月比14.7%減)と2か月ぶりに前年を下回った。
鳥取市場の鳥取県産青果物卸売量(8月)は野菜が446tで市場全体に占める割合は33.8%(前年同月差0.3ポイント上昇)、果実は374tで市場全体に占める割合は41.2%(前年同月差5.6ポイント低下)であった。
【漁獲量】
境港の漁獲量(8月)は、6,467t(前年同月比11.8%減)と3か月続いて前年を下回った。
○雇用・金融面の動き
【雇用】
新規求人倍率(8月)は、1.15倍(前月差0.11ポイント上昇、前年同月差0.29ポイント上昇)であった。なお、新規求人数(8月)は、3,656人(前年同月比15.3%増)と2か月ぶりに前年を上回った。
有効求人倍率(8月)は、0.66倍(前月差0.05ポイント上昇、前年同月差0.20ポイント上昇)となっており、3か月続いて0.6倍台となった。
【賃金】
現金給与総額(7月)は、353,509円(前年同月比2.7%増)と2か月ぶりに前年を上回った。そのうち、きまって支給する給与(7月)は、242,472円(前年同月比1.0%増)で4か月続いて前年を上回った。
【労働時間】
所定外労働時間(7月)は、8.0時間(前年同月比12.7%増)と8か月続いて前年を上回った。主力の製造業は50.2%増となった。〔産業別の前年同月比では、複合サービス事業(前年同月比38.3%増)等で前年を上回り、電気・ガス・熱供給・水道業(前年同月比19.3%減)等で前年を下回った。〕
【預金・貸出金残高】
預金残高(7月末)は、2兆180億円(前年同月比3.5%増)と19か月続いて前年を上回り、貸出金残高(7月末)は、1兆1,454億円(前年同月比0.5%増)と15か月続いて前年を上回った。
○参考
・ 鳥取県景気動向指数(7月)は、先行指数が5月56.3、6月50.0、7月50.0、一致指数が5月87.5、6月87.5、7月75.0、遅行指数が5月50.0、6月50.0、7月60.0となった。
・ 企業倒産(8月)は、件数が1件で前年に比べて4件減少(前年同月比80.0%減)し、負債総額は1億円で前年に比べて1億2,800万円減少(前年同月比56.1%減))した。
・ 消費者物価指数(8月:鳥取市、総合、平成17年=100)は、98.9(前月比0.6%上昇、前年同月比1.2%低下)となった。
・ 鳥取県の推計人口(9月1日現在)は、587,979人で、前月と比べて2人(0.00%)減少し、前年同月と比べて3,427人(0.58%)減少した。
・ 鳥取県の企業経営者の見通し(主要300事業所、年4回調査)を平成22年8月調査でみると、平成22年7~9月期は、平成22年4~6月期に比べると、景気及び経常利益がやや不調、売上高がやや好調となっている。また、平成22年10~12月期は、平成22年7~9月期に比べると、景気、売上高及び経常利益のいずれもがやや好調となる見通しとなっている。