●知事
皆さま、おはようございます。先週末は天皇皇后両陛下のご臨席を仰ぎまして、全国豊かな海づくり大会を鳥取市で行い、さらに県東部、中部のご視察を賜りました。両陛下におかれましては、たいへんに連続した行事ではございましたけれども、非常に丁寧に県内を見ていただき、県民と親しく触れ合っていただきましたこと、心から感謝を申し上げたいと思います。今、天皇陛下、ご体調を崩されていると承っておりまして、ぜひとも一日も早いご回復を県民とともにお祈りを申し上げる次第でございます。
この度の海づくり大会でございますけれども、式典には2,000名のかたが参加され、さらに、ふれあい交流行事には5万2,000人のかたが参加されました。併せて沿道で4万9,000人の県民の皆さんがお出迎えをされるということになりまして、合わせますと10万人のかたが、この全国豊かな海づくり大会、そして、この度の行幸啓にご参加、ご参列をいただいたということでございます。県民の皆さまのご尽力、ご協力にも感謝を申し上げたいと思います。
なかんずく東北の被災地からもお越しになり、境港など船を一旦失って非常に水産業、苦しんでおられる漁業者のかたがたも参加をされまして、「災害からの復興」というテーマに相応しいアピールを鳥取からできたのではないかと思います。また、「食のみやこ鳥取[県]」の魅力、白うさぎ大使をはじめとした環境[保全]推進活動の状況についても、全国のかたがたに訴えかける良い機会になったのではないかというふうに思います。重ねて皆さまのご協力に感謝を申し上げたいと思います。
●知事
現在、[11月]補正予算[案]の編成作業中でございます。11月議会の補正予算、提案を目指して、今、最終局面に来ておりますけれども、おおむね100億[円]を超えるような予算規模での提案を今、目指して最終調整をしております。中でも、三洋CE[コンシューマエレクトロニクス]の関係でありますとか、雇用関係、さらに[国の]3次補正[予算]に絡んだ本県での施策、公共事業関係などさまざまな事業について、今、精査をしているところでございます。その中でも若干の例を挙げれば、これから自然再生エネルギーなど、再生可能エネルギーの活用が求められると思います。県内の資源をもう一度よく調査をしてみて、県でもできることはないだろうかということで、県の企業局が中心になって考える調査を行うことにいたしております。例えば、境港のFAZ[輸入促進地域]倉庫の屋根でありますとか、それから西部地域の企業局の事業上の土地を利用するとか、そうしたところでの太陽光発電の可能性があるだろうか、採算がとれるだろうかとか、そんなような調査をしたり、また、小水力発電の関係でも、かつて水力発電所があったけれども閉鎖しているようなところがございます。そうしたものを復活して使えないだろうかとか、県内のいろんな水路がございますけども、そうしたところの調査をやるような予算を、今、検討しているところでございます。
また、大交流時代、北東アジアゲートウェイの第2ステージを目指しまして、今、海外からの誘客のクルーズ船の誘致を図ろうとしております。折しも環日本海拠点港湾の指定を目指しまして、その1つのテーマとして外航クルーズというものも国の方へ申請を申し上げているところであります。具体的な誘致を実らせていく必要がございまして、今、いくつかその最終局面に来ているものがございます。
1つは「ハーモニークルーズ[(株)]」と呼ばれる、これは韓国の会社でございますけども、そのハーモニークルーズが年間何回か鳥取県の境港の方に寄港してもらって、山陰を楽しんでもらうというツアーに組み込んでもらうように働きかけをしておりまして、今、その最終局面の方に来ております。さらに、「コスタ・ヴィクトリア」という大型船がございます。1,900名以上が乗り込まれる、クルーズ船でございますけども、中国からのお客さんなどを連れてくることになろうかと思いますが、初めて山陰、境港への寄港を、今、呼びかけて、これも最終的な誘致の段階に来ているところでございます。
いずれも新年度にそうした新しいクルーズ船の就航ないし寄港を求めようとしておりまして、そのためには従来よりもずいぶん大型の船になります。「コスタ・ヴィクトリア」ですとかなり大きな船になりまして、港内で船回しをしなきゃいけないことになります。また、ハーモニークルーズという新しいクルーズ会社のクルーズ船につきましても、これもやはり港内での旋回が必要になるということがございまして、そんなに大きなものではございませんけど、ある程度、浚渫をして航路を広げておく必要がございます。これもこの11月の補正予算で組んで、そういう外航クルーズの誘致の準備を図らせていただきたいと考えております。多くの外国人のかたがたにも親しんでいただける国際リゾートに山陰が生まれ変わっていくことを県としても全面的にサポートしていきたいと思いますし、境港管理組合でもそうした議論をしていくことになります。
●知事
かねて懸案でございましたのは、原子力安全対策でございまして、中国電力とは鋭意折衝し、安全協定の締結を我々としては目指しております。かなりタイトと言いますか、神経戦のような交渉を今させていただいているところでございます。そうした動きと並行して、できるだけのことは着手していこうという考えでございまして、モニタリングポスト[放射線量測定器]の設置を、具体化をしたいと考えております。地点として、まず5地点、今、我々としても既に枠を確保したところがございます。その5地点は現在の配置状況からしますと、西部、中部、東部ありますが、県ですと中部に今2機のモニタリングポストがあります。ですから、西部側の方に4機、それから中部で今の2機、さらに東部でも1機といったような適正配置をまずは目指して、第1弾のモニタリングポストの強化を図っていければいいんじゃないかなと考えております。具体的にこれから文[部]科[学]省と最終折衝ということになりますけれども、我々の案として、境港市役所、それから県の西部総合事務所、また、大山町役場、さらに日野総合事務所、これも県の総合事務所になります。あと、東部では県庁を具体的なそのモニタリングポストの設置場所としたいと思っております。
これは専門家の皆さまのご意見も踏まえまして、この5か所を選定をしたところでございます。ただ、UPZ[緊急防護措置計画範囲]30kmということが今、浮上してきておりまして、我々としては願ったりかなったりなわけでございますけども、それに基づく新たなもっとグレードの高いモニタリングポストの設置も視野に入ってくると思います。その際には、境港市役所は30km圏内でございますので、グレードの高いものに我々としては、今後、計画を変えていきたいと思っておりますが、当座、その5か所を選定して、手続に入っていきたいと考えております。
●知事
今、経済の状況が非常におもわしくない、特に東部の三洋CEの問題もあります。今日から、三洋CE、さらに円高問題をターゲットにしまして、県内の県の事務所で相談窓口を設置し、下請けなど関係企業さんが経営をしていくに当たりましての困りごとの相談に応じていこうという体制をとりたいと思います。さらに、また来週からだと思いますが、タイの洪水被害がございます。この洪水被害で具体的に施設を失ってしまったところとか、それから、取引先の関係で、それが原因で売り上げなど苦労しているというような企業さん向けの新規の[利率]1.43%の融資制度も作らせていただこうと考えております。このようなことで、手当をしながら何とか今の苦境を乗り切っていく必要があるだろうと思います。
●知事
「食のみやこ鳥取県」、打って出ていく必要があります。この週末、[11月]12日に東京の丸の内で食のみやこ鳥取県の食材を使いましたおいしいものの見本市ではないですけど、レストランを貸し切りまして、そこに名だたるレストラン関係者だとか、そういうかたがたに来ていただきまして、紹介する機会[食のみやこ鳥取うまいものコレクション]を作ろうと考えております。さらに、都内の9のレストランで、これは[日本]野菜ソムリエ協会と協調しまして、9つのレストランで「食のみやこ鳥取県フェア」をさらに1週間後からやっていきたいということを考えております。また、県内でも、[NPO法人]琴浦グルメストリートさんで牛肉を使いましたフェアをしようと、牛をモチーフにしたフェアをしようと、「[ことうら東伯和牛]COW[(カウ)]ニバル」というふうにおっしゃっていますけれども、それもまず試食会をして展開をしていこうということを考えているところであります。
●知事
あと、漫画関係でございますけれども、1コマ漫画のフェア、展示会[ヒトコトまんが展]をやろうとしておりまして、鳥取市内の量販店でも似顔絵のイベントを、作家を交えてやることにいたしているところでございます。このまんが王国の関係も北京から引き継いだところでございまして、ぜひともこれから強化を図っていきたいというふうに考えております。私の方からは以上でございます。
○山陰中央新報 道下健弘 記者(幹事社)
それでは、質問のある社からどうぞ。
7 11月補正予算(再生可能エネルギー発電施設事業化調査事業)
○時事通信 小出秀 記者
補正予算に関して、よろしいでしょうか。補正予算に関して、再生可能エネルギーについて、そういったものを含めて100億円を超える予算規模になりそうだということですが、これ、再生可能エネルギーに関しては、太陽光発電の設置場所や水力発電ができる場所がないかといった現場の調査費に、今予算を組んでいるということで。
●知事
ええ、そうです。調査費です。もちろん片方で、メガソーラー[大規模太陽光発電所]の構想もございますので、それはそれで折衝をさせていただいておりますけども、県として、小さな規模で太陽光発電だとか、小水力発電、そうしたことができないかというアイデアでございます。実は、風力[発電]を[鳥取市]空山[(そらやま)]でしておりますので、その風力発電の増設も検討はしていたんですけども、なかなかちょっと採算性の問題とか、どうだろうかということはございます。そこで、アイデアとしては境港のFAZ倉庫の屋上、屋根を活用して発電をするだとか、そうしたいろんな空地を活用した発電というものもあるんじゃないかとか、小さな水路ですね、小水路、農業用の水路なんかもございます。そうしたものも活用した発電ができないだろうか、この辺の適地調査、フィージビリティスタディ[採算可能性調査]をさせていただきまして、可能であれば新年度とか、早い段階で実現に向けていきたいという思いであります。今、国の方はFIT[Feed-in Tariff]と言われます買取価格[全量固定価格買取制度]の法律[再生可能エネルギー法]の成立を受けた具体化をしている最中でございまして、どういう値段で買取られるかということにもよりますけども、新たな参入の余地は県直営でもあるんではないかと考えております。
○時事通信 小出秀 記者
現段階で適地調査にかかる費用としてはおいくらぐらい。
●知事
億単位ではなくて、小さな[額です]、これは調査費でありますので。
○日本経済新聞 青木志成 記者
それは、基本的には企業局でやるということが前提ですか、それとも民間にやってもらう。
●知事
ええ。これは企業局の方の関係ですね。
○日本経済新聞 青木志成 記者
事業化するに向けてということですね。
●知事
はい。調査に着手するということです。
○読売新聞 野口英彦 記者
現段階で何か所ぐらいという想定はあるんでしょうか。
●知事
これはまだ、例えば、太陽光だったら2か所ぐらいあるかなとかですね、そういう目算は持っていますけども、まだ確たるものではなくて、まずは調査してみようということです。
○日本海新聞 中村宏 記者
稼働していない水力発電所を再稼働するような話もありましたけど、それは何か所ぐらいあるんですか。
●知事
それは1か所ですね。これはかって動かしていたけれども、ちょっと老朽化とかもあって止めているようなところが、これは民間ベースになりますけどございます。そういうものを再利用できないかなという発想です。
○日本経済新聞 青木志成 記者
ちょっと[米子]崎津[地区]工業団地のメガソーラーですけども、なにか最近ソフトバンクがトーンダウンしているみたいな話もあるみたいなんですけども、交渉は続いているんでしょうか。
●知事
交渉は続いています。我々はトーンダウンしているとはちょっと思っていなくて、むしろボルテージを我々としては上げているぐらいでございまして、先方と精力的な折衝をしております。いずれ、今度、全国知事会議が開かれるようなタイミングとか、どこかで恐らくまた自然エネルギーの協議会をやられるんじゃないかと思いますね。当然ソフトバンク側も出席されてということになるんじゃないかと思っています。
○共同通信 中川亘 記者
拡充児童手当について1点質問です。先日、厚生労働大臣が拡充児童手当、来年度の地方負担分の倍増を、倍増に近い額という、方針を打ち出したのですが、それについてご見解をお願いします。
●知事
これは元々民主党さんが政権を取られたときに、国としてやると言っていた子ども手当に由来するものであります。こういう現金給付はまず国がやるということが基本だと思っています。サービス給付は地方側が得意分野でありますけども、現金給付につきましては、所得再分配のような機能があるわけですね、従いまして、1つ1つの自治体の中で完結するものではありませんから、本来は国がやるべきものだと思います。そうした意味で地方団体は国の方の子ども手当について反発と言いますか、抜本的な見直しを求めてきたところでありますが、今回のご提言は国と地方と1対1というものでありまして、そういう哲学に反するものではないかなと思います。従いまして、ぜひ、地方側ときちんとした話し合いをしてもらう必要が早急にあると思います。
○日本海新聞 井上昌之 記者
関連してですけども、その全国知事会なんかを通じて、これについて国に再考を促すというか、そういった動きになっていくんでしょうか。
●知事
それは当然そうしなければならないと思いますね。1対1というのは、我々としては到底受け入れられるものではないと思います。児童手当が1対2になっているという理屈が先方にはあるのかもしれませんが、それは三位一体改革とか、どさくさの中で決まってきたところがありまして、本来はサービス給付は地方で、現金給付は国でというのが政策の筋論だと考えております。その意味で、知事会としてこのことについては反対していかざるを得ないということではないかと思います。ただ、最終的にアウトプットをどうするかというのを、もう求められる時期にさしかかってくると思いますので、その意味できちんとした話し合いの場を、この問題で政府は持つべきだと思います。
○読売新聞 野口英彦 記者
それに関連して、財源として住民税を充てるという案もあるようですけど、住民税をそういう財源に充てるということについては、何か問題はあるとお考えでしょうか。
●知事
それは、住民税は元々完全な一般財源でありますので、どういうような財源に充てるかっていうのはそれぞれの自治体が裁量を持って決めるべきことでありまして、子ども手当に由来する、子どもに対する手当を運営するためだというのは、使途を特定するものでありまして、理論的には受け入れがたいものだと思います。むしろそういうような財源なんかもあるんで、いろいろと国の方のひも付き補助金の一般財源化など、そうしたことで地方も協力してくれというのであれば、それは我々としても話し合う余地はあるんだろうと思います。しかし国の方が元々、与党の政権公約から発生した巨額の費用の負担で、地方に負担を割り当てるというのは、いささか途を欠いているんではないかと思います。
○読売新聞 野口英彦 記者
原発関連でお伺いします。先程、UPZということで30kmの拡大、これは願ったり叶ったりとおっしゃったんですけども、それに関連して、ただ、いろんな避難の準備であるとか、あるいはそういうことでお金がかかるんじゃないかと思うんですが、その点で費用負担はどうあるべきとお考えでしょうか。
●知事
それは、当然我々は原発が立地しているところでもなくて、周囲で、どちらかというと、いざというときに迷惑がかかるという地域でありますから、負担の筋合いはないと思いますね。従いまして、国なり、電力会社なり、そうしたところのご負担で基本的には安全対策を進めていくべきものだと思います。ただ、我々も県民の命を預かる立場でありますので、緊急避難的なこととか、やむを得ない、県としての協力ということは考えないわけではございませんけれども、筋論としては、当然そのUPZの拡大に伴うものなど、国の負担を求めていきたいと思います。
○読売新聞 野口英彦 記者
UPZという概念が周知されたことで、中国電力との安全協定の締結、これについてはどうでしょうか。
●知事
これは我々にとって大きな材料になると思います。後押ししてくれるとは思います。ただ、全国的にもまだこの安全協定の電力会社との話し合いというのは、どこも難しい中で話し合いをしているという状況がございます。ただ、私達としては、中国電力さんのご理解も得ながら、ぜひ早いタイミングで、そして、一定の成果を得ながらこの協議をまとめていきたいというふうに思っております。
○読売新聞 野口英彦 記者
年内にもという見通しが以前あったと思うんですが、年内、それはどうでしょうか。
●知事
年内の締結を目指しておりますし、私の気持ちとしては、できるだけ早く一定の成果を得て協議を終結し、協定を結びたいと思います。この安全協定の議論というのは、時代とともに変わっていくもんだと思いますし、今、国全体が原子力安全についての考え方を大きく、今年度から来年度にかけてスライドさせていくと思います。従いまして、今、協定を結んで、これがもう、100年も200年もこのままだというものでは決してないものだと思っていまして、ある程度、こう進化させながらいくという中で、今、やはり最低限安全面で必要なこと、これについては合意をしていくということが重要な姿勢だと思います。
○共同通信 中川亘 記者
それに関連して1点お願いします。現在、県はその安全協定というふうに求めていくというスタンスを打ち出しているんですが、その中で、先日の協議会で立入調査ですとか、その発電所の再稼働などを含めた計画の事前了解を県側に求めるよう、市町村に求めるよう提案しているのですが、そういう一つ、言いかたは何ですが、核のような部分については、これはもう、絶対にそれは必要だと考えていますか、それとも柔軟にそこは対応しようという。
●知事
我々としてはやっぱり周辺も、その現場の方を見る機会は与えられるべきだと思います。それをどういう名称なり、どう位置付けでやるかっていうことは、それは表面的な形式的なことかもしれません。ただ、我々としては、やはり現場に入っていくと、そういう機会を賦与されるべきだと、当然ながらそれは補償されるべきだと考えておりまして、この辺は1つのコアな折衝どころだと思っております。
○時事通信 小出秀 記者
公務員給与に関してですけど、政府が人事院勧告の実施を見送り、国家公務員給与を平均年7.8%下げる特例法案の成立を目指させようとしておりますが、その中で、財務省が年末の総務省との折衝の中で、それに伴ってラスパイレス指数[国の平均給与を100とした場合の地方公務員の給与指数]の関係で、地方の方も給与を引き下げるよう、総務省側に求める可能性が高いという意見もあるのですが、これについてどうお考えになるか、お聞かせください。
●知事
これは本末転倒だと思っております。これは政府の一部の議論じゃないかと思うんですけども、地方自治体の給料はそれぞれの自治体が設定をするわけであります。実は、この給料の問題というのは、運用、実情があるわけですね。それで、国の方は、今までそういう給与カットのようなことをしてきていません。また、定員もそうでありますけども、削減する計画はできますけども、結果として、実際に減っているかっていうと、そういうことになってないわけですね。ただ、地方の方はどうかと言いますと、鳥取県も含めてかなりドラスティク[劇的]に給与にはメスを入れてきていまして、鳥取県の場合ですと、民間給与水準並みというところを、労使間で、職員団体と共通理解として持ちまして、そして、従来の水準を事実上、下がってきているということでございまして、ラスパイレス指数も94くらいとかね、そういうふうに落ちてきているわけでありますが、これは、民間との給与の見合いですよということで、我々は折衝してきているわけですね。
こういうような給与カットをこれまで地方はやってきているわけでございまして、国は今までそれに臨んできてなかったということでございます。従いまして、今さら地方側にさらなる給与カットを強制をするとか、いうのは、本末転倒なことではないかなと思います。また、地方財政の仕組みからしますと、1つの標準的なモデルを取って財政保障をしていくっていうのが、これまでの交付税なり、長年の考え方でありまして、地方の実情とは全く乖離したかたちで、とにかく財源が必要だからと言って闇雲に給料を口実に切っていくというのは、これはあまり誠実な態度ではないのではないかなと思います。まだ政府の中の一部の議論ではないかと思っておりますけども、そうした動きには私たちとして、知事会全体そうだと思いますが、反対せざるを得ないと思います。
○読売新聞 野口英彦 記者
それに関連して、先日、人事委員会から勧告があったわけですが、こうした国の動きは県には関係しないということでいいんでしょうか。
●知事
現状は淡々と、我々としてはやっていくだけだと思っていまして、国の方は人[事院]勧[告]を事実上無視するようなかたちになりましたけれども、鳥取県では大きくドラスティックに構造が変われば別かもしれませんが、今までは基本的に民間給与水準と誠実に比較して検討して、合わせながら給料水準を決めて、県民の理解を得ていこうというやり方でやってきておりますので、私は人事院勧告の今回の勧告も私たちとして尊重すべきものだと思っております。
○日本海新聞 中村宏 記者
TPPの交渉参加問題で、野田首相が近く判断を示すというふうに出ているんですけども、改めて知事のご見解をお伺いしたいと思います。
●知事
これは、繰り返し今までも申し上げてきたところでございますけども、慎重に対応するべき事柄だと思っています。その理由としては、国民の間に情報がきちんと開示をされておりません。TPP[環太平洋戦略的経済連携協定]24項目の交渉分野があるわけであります。最近急にクローズアップされてきた自由診療の、[併用した]混合診療ですね、問題なんかも出てきておりますけども、さまざまな局面に影響するわけでありますから、それを本来は政府側としてきちんと開示をして国民の議論を仰がなければならないと思います。しかし、今、とりあえず材料はございませんで、農業対経済界みたいな構図に仕立てるだけで、とりあえず参加をしていく。いずれは、とりあえず加入をしていくというようなことになってしまうと、それは国民の世論に立脚するものにならない危険があるんじゃないかなと思います。
従いまして、きちんと各24分野ですね、こういうような交渉になりますよ、これについて我々としてはこう考えますよということをやった上で議論する必要があるだろうというのが第1点であります。あと、第2点目として、昨日も農業団体を中心にしまして、大規模な反対集会が東京で開かれましたけれども、このTPPについて農林水産業が非常な打撃を受けるんではないかと懸念を深めておられるわけでありまして、この問題に対して政府は、じゃあ何をするんだということも、何ら材料が出てきていないわけですね。これでは農林水産業の関係者のかたがたも議論をする土俵すら与えられないことになります。今の状況では、なかなか農林水産業の皆さんも、何かわけ分からんけれども、とりあえずええわというわけにはなりませんから、反対の拳を高く上げざるを得ない状況が続いてしまうと思うんですね。従いまして、そうした意味で、政府は農林水産業対策をしっかりと打ち出した上で、この議論を展開していくべきだというふうに思います。そうした観点からしますと、この問題については、政府として慎重に対応していただきたいと考えております。
○日本海新聞 中村宏 記者
県内産業、農林水産業をはじめとして県内産業にも大きな影響があるというふうに知事はお考えなんでしょうか。
●知事
もちろんマイナスの影響だけではなくて、プラスの影響もある業種もあろうかと思います。県内でも部品産業などもございますし、国際分業の上に仕事を見つけてきておられる、そういう会社さんも数多くあります。食品会社の中には、海外へ輸出することを視野に入れて生産計画を作っておられる、そういうところもあるわけでございまして、必ずしも、マイナスの影響ばかりではないだろうと思います。だから、私が申し上げておりますのは、まず、その情報をきちんと国民の前に明らかにして、幅広い議論をした上で結論出していくと、そういう民主主義の王道を政府は歩むべきだというふうに考えております。
○日本海新聞 中村宏 記者
以前の共同通信さんのアンケートだったと思うんですけども、各都道府県知事全員にアンケート取られておりまして、知事はその中でこのTPP交渉参加について「どちらでもない」という回答をされたと思うんですけども、その真意について、ちょっと改めてご説明いただけますか。
●知事
今申し上げたとおり、要は慎重に対応すべきだというところなんですけども、その選択肢が、共同通信さんだったですかね、賛成、反対ということの色分けだけになっていまして、選択肢がないもんですから、かなり多くの知事は、全国でもどちらでもないという答にならざるを得なかったアンケートじゃないかなと思っています。要は、民主主義でございますので、こういう非常に重要な議論っていうのは、きちんとした情報を持って、そして国民が議論に参画をして、納得を得ながらやっていくと。それで、その際には代償措置が必要な分野があるんでありましたら、当然ながら、その代償措置に対しては国民全体で分かち合う、痛みを分かち合いながら進んでいくということが必要なわけでありますよね。それで、今、どんどん世界の潮流も変わってきておりますので、この議論は確かに避けて通れない議論なのかもしれません。だからこそ、慎重に対応しながら、議論を国民的にやっていく土俵を政府は作っていくべきだと思います。
○山陰中央新報 道下健弘 記者
モニタリングポストなんですけど、設置の時期というか、目標みたいなものというのはありますかね。
●知事
正直ベースで申しますと、今、全国で急に需要が増えていまして、その手配には若干の時間かかると思います。ただ、もちろんこれ、年度内の話でありますので、できるだけ早く今年度設置をしたいというのが私たちの心境でございまして、文[部]科[学]省ときちんと話をまとめないといけませんので、最終的なまとめをして、できるだけ早く設置に向けていきたいと思います。
○読売新聞 野口英彦 記者
先程のTPPの話に戻りますけども、情報が開示をされてないということをおっしゃったわけですけども、外交交渉で尚且つ多国間の枠組みであるのですので、なかなか、すぐにこういう情報が出せないという部分もあると思いますし、またこれも10年、15年というスパンだと思いますので、そういうところの難しさがあると思うんですね、そこはどうお考えでしょうか。
●知事
ただ、今は走っているバスに飛び乗るようなところがありますんでね、今までいろいろと政府として把握していること、それはいろいろとあろうと思うんです。例えば、農業分野であれば、どういうような議論が現状行われているようだでも良いと思うんですよね。それで、こういうことが焦点になりそうだでも良いと思うんです。例えば、農業者が重大な関心を持っている米について、例えば、この米については、今後、じゃあ自分たちは交渉に参加していくとなったら、こういうような扱いの分野になるんではないかとか、様々なことがあるわけでありまして、あれだけ巨大な霞ヶ関のシンクタンクを持っていて、一言もなしに、ただ、賛成か反対かと、それで、それぞれ陣取って、どっかに集まって気勢を上げるということをあおっているだけでは、何らそのデモクラシーの上での解決にならないと思います。もっと国民を信頼して、情報を的確に出して議論をしてもらう中で結論を導いていくということではないかと思います。今、情報がないわけでありますから、私としても賛成か反対かと言えば、反対の方に近い、慎重にならざるを得ないというのが正直なところですよね。
○読売新聞 野口英彦 記者
反対の方に近いと、今、おっしゃったわけですけど、知事はかねてから、打って出ることが必要であるということで、県産の農産物をニューヨークで販売されたりということもあったと思うんですけど、そういうことと反対とは矛盾はしないんでしょうか。
●知事
ですから、そこは先程申しましたように、いずれは通らなければならない議論であれば、弊害が生じる分野に対して、こういうような手当をするということを国全体として議論をする。それのパッケージで結論を出していくということが必要だと考えておりまして、その手続きが1歩でも2歩でも進めばいいと思うんですが、1歩も進んでいないのが現状だと思うんです。それで、菅総理のときに、いきなりこのTPP問題が出てきました。それで、報道されているところでは、関係国もびっくりするというぐらい突然な話であったというふうな報道もあります。とりあえず、こう議論だけ提起して中身がないという状態のまま、今の野田総理の段階になっても続いているというのは、これは国民にとっては不幸なことだと思います。ですから、そういう土俵づくりを、まずは政府は急いでやるべきでありまして、APECに行く飛行機に乗ることを急ぐべきではないと思うんです。
○読売新聞 野口英彦 記者
ちょっと話題が変わりますけども、震災のがれきの受け入れで、鳥取県からは受け入れという表明はなかったんですけども、一方でこの莫大ながれきを処理しないと復興に影響が出るとも言われておりますが、これについて知事の見解をお願いします。
●知事
これは、最終的に市町村が責任もって対処しなければなりませんで、私どもも市町村に実情を説明して、そして、回答をいただいたところでありますけども、いずれの市町村も受け入れは現段階でできないという回答になっています。これは、それぞれの市町村の事情もありますので、県としてはいたしかたないことかなというふうに思います。おそらく国全体で言えば、この点も説明が果たされていないところがあると思うんですね、風評被害的な側面もあるだろうと思います。もっと政府としての努力が求められる分野かなと思いまして、これもとりあえず市町村で受け入れ表明してくれと言っているだけでは、前に進まないのではないかなと懸念をしております。
○読売新聞 野口英彦 記者
まんが王国の関係なんですが、北京にいらっしゃって、どのような反響であったかということをちょっと教えていただきたいと思います。
●知事
はい。北京では鳥取大会、非常に期待感を持って、関係の漫画家や漫画関係者に受け止められたと思います。また、併催されたイベントの中でも鳥取県内のまんが王国ぶりを紹介するブースを作りまして、中華コスプレ大会にも出場してもらった中国人の皆さんにも友情出演していただきました。大変な盛況ぶりでありまして、改めて水木しげる先生の鬼太郎だとか、青山剛昌先生の名探偵コナンなど、鳥取県内の漫画の魅力が世界に通じることを実感をいたしました。関係者のいろんなご期待もございまして、ぜひこの大会を鳥取でやる際には成功に導いていきたいと決意を新たにしたところでございますし、そのことをそのまま北京のマンガサミットの場でも申し上げました。
○読売新聞 野口英彦 記者
鳥取県から著名な漫画家を輩出されているというのはだいぶ広まってきたと思うんですが、そこで、ただその他県のかたなんかと話をすると、まんが王国というと王国なのというふうにびっくりされることが多いんですね。何と言いますか、知事の考えるそのまんが王国の定義と言いますか、県民もまだちょっと浸透しきってないのかなと思うんですが、何を持ってまんが王国とおっしゃるのか、そのあたりをお願いします。
●知事
実際ですね、ただ、全国見渡してみて気づいていただけると思いますけども、例えば、境港市であれば、その妖怪たちが並んでいて、水木しげる記念館だとか、お土産物屋も漫画テイストのものが出来上がってきている。また、北栄町でも、これもまだそれほどの観光客は来ていませんけども、名探偵コナンをモチーフにしたまちづくりがなされておりまして、全国的にもそんなにないところだと思います。その背景には、県内出身の作家の皆さんがいらっしゃることだと思っています。これに赤井孝美先生のアニメの世界だとか、谷口ジロー先生の海外にも通じる漫画の奥の深さ、こうした世界なんかをさらに発掘して掛け合わせていけば、漫画で観光地として発展する、そういうポテンシャルが鳥取県にはあると思います。それを売り出していく言葉として、まんが王国という言葉を使っております。その実を上げるために、これから来年に向けまして、県内でまんが王国建国にふさわしいようなイベント展開をしたり、展示など、世界のお客様をお迎えして楽しんでいただけるような、そういう仕掛けを早急にちょっと作り上げてまいりまして事業化をしていきたいと思っております。
○読売新聞 野口英彦 記者
それで、一過性のものに、観光客というふうにおっしゃったんですけど、漫画も人気の移り変わりもありまして、一過性のものにしないための取り組みとして、何か知事はお考えのところはあるのでしょうか。
●知事
現に境港もそうでありますけども、むしろ成長してきています。要はリピーターを呼んで、だんだんとお客さんの数が増えてきているという状況にあります。ですから、これはまだ世界をターゲットにしていけば、成長力はあるだろうというふうに思っています。そのためにはやっぱり来ていただいて、楽しんでいただける仕掛けが十分必要だと思います。境港は、ある程度成熟してきていて、今は現状でも十分な魅力があり、まんが王国の玄関にふさわしいところになったと思いますけども、そうしたところを東部だとか、中部も含めてもっと仕掛けを作っていくということで、リピーターを呼び込んでいく素地ができると思っております。
○読売新聞 野口英彦 記者
中国でも多分お感じになったと思うんですけども、こういう漫画・アニメというのは、1つの産業として、アジア諸国が誘致を進めていると思うんですが、鳥取県として産業という側面で見た場合どうでしょうか。
●知事
そのコンテンツ産業につきましても、並行して、私たちで育成を図っていきたいなと思っております。その1つのシンボルとして、来年に向けまして世界マンガコンテストを実施して、里中[満智子]先生だとか、そういうかたがたにも審査員になっていただいて、コンテストを[実施]していきたいというふうに思っています。要は、若手だとか、そういうかたがたの1つの登竜門になればいいなと考えております。また、県内でも既に数社ですか、数社というか、数団体というべきか、そういう漫画をモチーフにしてビジネスモデルを作ろうとしている動きもございまして、そうしたところと協調して、漫画テイストのグッズを作ったり、例えば名刺なんかもそうでありますが、あるいは県の広報紙の一部ですね、漫画にふさわしいものを漫画で表現するようにしたりとか、そうしたその活用も図っていって、コンテンツ産業の育成にも力を入れていきたいと思っております。
○読売新聞 野口英彦 記者
来年が「まんが王国建国イヤー」ということなんですけども、鳥取県みたいな規模の小さいところを活かして、県民運動的に展開するというのは、国[民]体[育大会]にあり、夢みなと博[山陰夢みなと博覧会]であり、この度の海づくり大会であり、これまでは、例えば海づくり大会であれば白うさぎ大使というかたちでボランティアに参加ということができたんですが、県民の中で戸惑いがあるのは、このまんが王国に自分たちがどう関わっていけるのかと、参加できるのかと、そこは多分戸惑いがあるかと思うんですが、そのあたりはどうお考えでしょうか。
●知事
これは楽しんでいただいて、いろんなイベントなりに参加をしていただければいいと思います。従来と若干違いますのは、担い手が、若手が非常に元気でございます。鳥取県はどちらかといえば中高年のかたの方が人口ウエイトが高いところでありましたけれども、若者の皆さんに元気が出していただけるというテーマなのかなというふうに受け止めております。例えば、米子で最近も「[米子]映画事変」とか、あるいは[とっとり]アニカルまつりといったようなことを仕掛けていきましたけれども、若手の皆さんが中心になって本当にいきいきと運営をしたり、参画をされておられました。こうした力が、これは漫画に留まらず、さまざまな地域づくりにも良い影響を与えていくのではないかなと期待をしているところであります。
○読売新聞 野口英彦 記者
そうすると、この漫画ということが県内の活性化につながる、地域活性化にもつながると、その漫画をテーマにしなくてもそういった活動が将来的な活力につながるというお考えでしょうか。
●知事
ええ。分かりやすい、皆さんにとって分かりやすいテーマとして漫画があるかなと考えております。現に境港でいえば、かつてシャッター街であった商店街が、今では大変賑わいがある、しかもそれぞれの別に若い人ばっかりではありませんけども、おじいちゃん、おばあちゃんも含めて楽しみながらお店をやったり、観光客と触れ合ったりしておられるわけでございまして、別に一定の層に限定されるものではないだろうと思います。山陰、鳥取県はそうした幅広いお客さんたちを受け入れて、そして、自分たちで工夫して、まちづくりを盛り上げていく、そういう気質は持っていると思いますので、私としてはまずはその導火線に火を点けることから始めていけばいいかなと思っております。
○山陰中央新報 道下健弘 記者
その他どうでしょうか。ないようですので、どうもありがとうございました。
●知事
どうもありがとうございました。