過去数十年間にヒトが経験したことがないHAまたはNA亜型(ウイルスの表面にある赤血球凝集素HAとノイラミニダーゼNAという、2つの糖蛋白の抗原性の違いにより分類されるサブタイプ)のウイルスが、ヒトの間で効率的で持続的なヒト-ヒト感染により伝播してインフルエンザの流行を起こした時にこの言葉を用いる。
インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症で、原因となっているウイルスの抗原性の違いから、A 型、B 型、C 型に大きく分類される。A 型はさらに、ウイルスの表面にある赤血球凝集素(HA)とノイラミニダーゼ(NA)という、2 つの糖蛋白の抗原性の違いにより亜型に分類される。(いわゆるA/ソ連型、A/香港型というのは、この亜型のことをいう。)
一般的に、水禽を中心とした鳥類が保有し、ヒトのインフルエンザウイルスとは別の A 型インフルエンザウイルスの感染症のこと。このうち感染した鳥が死亡したりするなど、特に強い病原性を示すものを「高病原性鳥インフルエンザ」という。近年トリからヒトへ、インフルエンザウイルス(H5N1)の感染事例を認めるが、病鳥と近距離で接触した場合、又はそれらの内臓や排泄物に接触するなどした場合が多いと考えられており、調理された鶏肉や鶏卵からの感染の報告はない。
感染症の世界的大流行。
特にインフルエンザのパンデミックは、近年これがヒトの世界に存在しなかったためにほとんどのヒトが免疫を持たず、ヒトからヒトへ効率よく感染する能力を得て、世界中で大きな流行を起こすことを指す。
世界保健機関(WHO)のパンデミックフェーズの定義に準じた分類。感染の場所により6つのフェーズに分類し、さらに国内で発生していない場合(国内非発生)を「A」、国内で発生した場合(国内発生)を「B」に分けている。
見張り、監視制度という意味。
特に感染症に関しては、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」に基づき、感染症の発生状況(患者及び病原体)の把握及び分析が行われている。
感染症サーベイランスの内、特に、感染の原因となった病原体についての発生数や詳細な種類などについて報告してもらい、状況を監視するシステム。
感染のみられた集団(クラスター)を早期に発見するため、一定の大きさの集団を対象に、その集団内における患者の発生動向の報告を行ってもらい、状況を監視するシステム。
あらかじめ指定する医療機関において、一定の症候を有する患者が診察された場合に、即時的に報告を行ってもらい、感染症の早期発見を目的とするシステム。
感染症法では、感染症の発生を迅速に把握することによって、感染症の予防と拡大防止、そして国民に正確な情報を提供することを目的として、日常的に種々の感染症の発生動向を監視している。これは感染症を診断した医療機関からの発生報告を基本としているが、これら発生報告を一元的に効率よく収集解析するために、地方自治体と国の行政機関を結ぶネットワーク、あるいはインターネットをベースに構築された電子的なシステムを指す。
感染症サーベイランスシステム(NESID)等を用いて、大規模な流行の可能性がある感染症に感染した疑いがある患者に関する情報(行動履歴、接触者情報を重点に置く)を登録し、疫学的リンクや異常な症状から、新しい亜型のインフルエンザ患者を発見するために、疑われる症例を診断に結びつけていくシステム。
流行している新型インフルエンザウイルスの抗原性、遺伝子型、抗ウイルス薬への感受性を調べ、ワクチンの効果や治療方法の評価、あるいはそれらの変更の根拠とするためのシステム。
感染が拡大した場合、インフルエンザ様疾患症状による 定義(症候群)を報告することにより、患者数を継続的にモニタリングするシステム。継続的にモニタリングすることにより、感染の拡大の様子を把握し、拡大防止策の検討に役立てることを目的とする。
「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」第15条に基づき、保健所等が感染症対策を目的として直接実施する疫学調査を指す。
ワクチンの副反応の状況を把握するシステム。接種継続の是非、対象者の限定、予防接種優先順位の変更等の判断に役立てること目的とする。
収集したウイルス株の薬剤感受性試験や遺伝子解析を行い、抗インフルエンザウイルス薬に対する耐性株の出現頻度やその性状等について把握するための検査を行う。
災害発生時などに多数の傷病者が発生した場合に、適切な搬送、治療等を行うために、傷病の緊急度や程度に応じて優先順位をつけること。
インフルエンザ患者やそれが疑われる患者に対して推奨される感染対策。
- 咳やくしゃみをする際にはティッシュなどで口と鼻を押さえ、他の人から顔をそむけ、1m以上離れる。
- 呼吸器系分泌物を含んだティッシュを、すぐに蓋付きの廃棄物箱に捨てられる環境を整える。
- 咳をしている人にマスクの着用を促す。
- マスクはより透過性の低いもの、例えば、医療現場にて使用される「サージカルマスク」が望ましいが、通常の市販マスクでも咳をしている人のウイルスの拡散をある程度は防ぐ効果があると考えられている。
- 一方、健常人がマスクを着用しているからといって、ウイルスの吸入を完全に予防できるわけではないことに注意が必要。
「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」に基づく特定感染症指定医療機関、第1 種感染症指定医療機関及び第2 種感染症指定医療機関のことであり、新感染症、一類感染症、二類感染症の患者の入院を担当する。
特定感染症指定医療機関
新感染症の所見がある者又は一類感染症若しくは二類感染症の患者の入院を担当させる医療機関として厚生労働大臣が指定した病院。
第1 種感染症指定医療機関
一類感染症又は二類感染症の患者の入院を担当させる医療機関として都道府県知事が指定した病院。
第2 種感染症指定医療機関
二類感染症の患者の入院を担当させる医療機関として
都道府県知事が指定した病院。
一類感染症感
染力及び罹患した場合の重篤性等に基づいて総合的な観点から極めて危険性が高い感染症。(例:エボラ出血熱、ペスト等)
二類感染症
感染力及び罹患した場合の重篤性等に基づいて総合的な観点から危険性が高い感染症。(例:急性灰白髄炎、ジフテリア等)
三類感染症
感染力及び罹患した場合の重篤性等に基づいて総合的な観点からみた危険性は高くはないが、特定の職業への就業によって感染症の集団発生を起こしうる感染症。(例:腸管出血性大腸菌感染症(O157)等)
四類感染症
人から人への感染はほとんどないが、動物や物件から感染する可能性があり、消毒等の措置が必要となる感染症。(例:A 型肝炎、狂犬病等)
五類感染症
国民の健康に影響を与えるおそれがある感染症。(例:麻しん、梅毒等)
指定感染症
既知の感染症の中で一類から三類に分類されない感染症において一類から三類に準じた対応の必要が生じた感染症。
病床は、医療法によって、一般病床、療養病床、精神病床、感染症病床、結核病床に区別されている。感染症病床とは、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に規定する一類感染症、二類感染症及び新感染症の患者を入院させるための病床であり、結核病床とは、結核の患者を入院させるための病床である。
院内感染を防ぐために、病室の内部の気圧をその外部の気圧より低くすることによって、外部に感染症の病原体を拡散させないようにしている病床。
五類感染症の患者を診断し、又は死亡した者の死体を検案したときに、患者又は死亡した者の年齢、性別等を届け出る病院又は診療所。
DNA を、その複製に関与する酵素であるポリメラーゼやプライマーを用いて大量に増幅させる方法。ごく微量のDNA であっても検出が可能なため、病原体の検出検査に汎用されている。インフルエンザウイルス検出の場合は、同ウイルスがRNA ウイルスであるため、逆転写酵素(Reverse Transcriptase)を用いてDNA に変換した後にPCRを行うRT-PCR が実施されている。
インフルエンザウイルスの増殖を特異的に阻害することによって、インフルエンザの症状を軽減する薬剤。ノイラミニダーゼ阻害剤は抗インフルエンザウイル薬の一つであり、ウイルスの増殖を抑える効果がある。
新型インフルエンザウイルスがパンデミックを起こす以前に、鳥-ヒト感染の患者または鳥から分離されたウイルスを基に製造されるワクチン(現在はH5N1亜型を用いて製造)。
パンデミックが実際に発生した際に、ヒトーヒト感染を生じたウイルス又はこれと同じ抗原性をもつウイルスを基に製造されるワクチン
刑務所,少年刑務所,拘置所,少年院,少年鑑別所,及び婦人補導院の総称。
このうち,刑務所及び少年刑務所は,主として受刑者を収容し処遇を行う施設であり,拘置所は,主として刑事裁判が確定していない未決拘禁者を収容する施設のことである。
また,少年院は,主として家庭裁判所から保護処分として送致された者を収容する施設であり,少年鑑別所は,主として家庭裁判所から観護措置の決定によって送致された少年を収容する施設のことである。
なお,婦人補導院は,売春防止法に基づき補導処分に付された者を収容する施設のことである。これら矯正施設は,法務省が所管し,内部部局である矯正局及び全国8か所に設置されている地方支分部局である矯正管区が指導監督に当たっている。
我々を取り巻くリスクに関する情報を、行政、住民などの関係主体間で共有し、相互に情報伝達を行い、意思疎通を図ること。
一般的に病原体の感染経路として、下記があげられる。
接触感染
皮膚と粘膜・創の直接的な接触、あるいは中間に介在する環境などを介する間接的な接触による感染経路を指す。
飛沫感染
病原体を含んだ大きな粒子(5ミクロンより大きい飛沫)が飛散し、他の人の鼻や口の粘膜あるいは結膜に接触することにより発生する。飛沫は咳・くしゃみ・会話などにより生じ、飛沫は空気中を漂わず、空気中で短距離(1~2 メートル以内)しか到達しない。
空気感染
病原体を含む小さな粒子(5ミクロン以下の飛沫核)が拡散され、これを吸い込むことによる感染経路を指す。飛沫核は空気中に浮遊するため、この除去には特殊な換気(陰圧室など)とフィルターが必要になる。