春めいてきました。美しい四季の移ろいは日本の大きな魅力ですが、昔よりも季節感が薄まったという声も聞きます。実際、新旧の統計をひもとくと、意外なところに季節性の変化を見付けることができます。例えば―
グラフは、1日当たりの出生数と死亡数を月別に示したものです。人口動態調査の直近と最古の数字から、明治30年代以降約110年間の変化が分かるようになっています。
まず出生数から見てみましょう。現代と比べ、明治30年代はその多さ自体が驚きですが、季節変動の大きさも目を引きます。晩春から初夏に少なく、冬から初春にかけて非常に多いのです。理由は諸説ありますが、有力なものの一つは、農家が多かった時代は出生行動も農事暦に影響されたのだといいます。確かに、農閑期の冬に出産を迎えると合理的かもしれません。
死亡数に目を移すと、現代にも冬にやや多くなる傾向が見られますが、明治30年代は晩夏にもピークがきています。この理由も一概には言えませんが、都市化が進む一方で衛生環境が不十分だった当時は、夏に消化器系疾患による死亡が集中したことなどが考えられます。現代はこうした状況を克服、夏場の死亡数を抑えられているわけです。
各時代の社会経済の有り様が人口現象の背景にあったことが窺えますね。
(注)いずれも5年平均値(各年の数値の単純平均)。
資料:明治32~36年は統計局「日本帝国人口動態統計」、平成20~24年は厚生労働省「人口動態調査」。
本ページは、平成26年3月25日付「日本海新聞」掲載の同題コラム(鳥取県地域振興部統計課執筆)からの再録です。