【事業内容】
県外での市場調査、江府町、大山町、伯耆町でのバリアフリーツアーのパイロット的実施による検証、評価、受け入れ体制の整備、マニュアルの作成
水のたね代表の圓山加代子(まるやまかよこ)さんは、歌手や司会業の仕事をする中で、県外や海外の人と接して話をする機会がありました。その時に鳥取県の良さを、うまく伝えることができない自分に気がつきます。
そこで鳥取県のこと自体に興味を持ち、調べていくうちにガイドになってしまったといいます。
「しゃべる仕事をしていたら、地元なのに鳥取県のことを知らない自分がいました。せっかく県外の人とお話をする機会があるんだから、今住んでいる場所のことを学ぼうと思ったのがきっかけです。
そうしたら、次々と鳥取の良いところが出てくる『これは面白いぞ、この感動を伝えたい』って自然のガイドになったんです。だから私は自然博士じゃないんです。(歌手、司会などの)伝えたいが先にあって、自然は後なんです。」
活動の根本にあるのは、「伝えたい」という気持ちだといいます。鳥取県には素晴らしい自然と歴史がある。それを伝えることができれば、鳥取県を好きになってくれるはずだ。そんな思いから活動はスタートしました。
水のたねは現在、大山町、伯耆町、江府町、米子市など鳥取県西部を中心にして活動をしています。主な活動は、ガイドを育てること、そして自分たちでイベントを開催して、一般の人たちに、自然体験を楽しんでもらうことです。
「大山の周辺の水がおいしくて豊富なのは、ブナなどの落葉広葉樹がたくさんあって、土地が豊かだからです。そのおかげで雨が降ったら、土地が水を吸収します。
そして大きなこの大山は、水の浄化装置でもあり、大きな貯水地なんです。今後50年間もしこの世に雨が一滴も降らなくても、飲み水に困りません。
そしてこれは県外の人によく話すことなんですが、例えばミネラルウォーターがありますよね。鳥取県西部の人は、これとほぼ変わらない水で、毎日顔を洗っています。髪も洗ってます。お風呂に入っています。もちろん料理も。
そしてもったいないことにお手洗いも(笑)『うわー、うらやましい』って言われますよ。」
圓山さんが軽快なテンポで話をされると、惹きつけられ、聞き入ってしまいました。それはきっと圓山さんが歌い手であることも、関係あるのかもしれません。話は歌のようなリズムで進んでいきます。
水のたねは、日本財団の支援で、新しく挑戦していることがあります。ろうの方向けのツアーガイドです。耳の聞こえない方は、体の元気な方が多い。耳のサポートさえあえば、変わらないことができます。そんな方向けにガイドをやったら喜ばれるんじゃないか?と考えスタートしました。
「ろうあの人たちが団体で旅行されることがあります。その中で『鳥取県にプロの面白い手話のできるガイドがいる。』って評判になれば、全国から来てくれる人が増えると考えています。
ろうの方向けのガイドがいれば、様々な人に興味を持ってもらえる。そしてそういうことをしている鳥取県ってホスピタリティが高いんじゃないかと思ってくれる。ろうの方向けガイドで先進県になれば、この活動が一石三鳥になるんじゃないかと期待しています。」
こういう活動をしている県は、まだ前例がありません。前例がないからか、最初はろうの方に『お金を出してまで行かないよ!』と言われたそうです。家族が手話ができるから、わざわざお金を出す人はいないのではないか、ということ。
いったんはあきらめかけますが、なんとかろうの方を説得して、体験ツアーに来てもらいました。そこで来た人来た人から、様々な方に感謝されることになります。
「『ありがとう!ありがとう!』って、すごく感謝していただいたんです。プロの知識があるガイドが説明したほうが、面白くて伝わる。実際ろうの団体に来ていただいて、それが本当に分かりました。
(ろうの方たちは)書かれている情報はとれるけど、口伝えの情報は分かりません。博物館で行くと説明文が書いてありますよね。あれくらいの情報で終わってしまって、記憶にもなかなか残らない。でもそこに解説員さんがいるとより深く知ることができるじゃないですか。それと一緒だと思います。あとはガイドの熱意。」
ガイドは体験したことない人には良さは分かりにくい。しかし一度体験すれば、その良さに感動する人は多いと言います。
そしてそこから一歩進んで、ろうの人がガイドをすれば面白いじゃないかという話がでます。そこでろうの方に声をかけたところ、同じチームには、ろうの人でガイドにトライしている人が2人ほどできました。圓山さんは、この活動がろうの人たちの新しいライフワークの一つなるんじゃないかと期待を膨らましています。