【事業内容】
地域における健康づくり活動の推進役となる(まめんなかえ師範)を養成し、住民の健康意識向上や持続的な健康づくり活動の体制構築を図る。(健康づくりセミナー開催 ・ボランティアリーダーの養成)
2015年4月、周辺地域住民の強い要請を受けて倉吉市福庭に開校された鳥取看護大学では、住民と学生が参加する「まちの保健室」を中心に、健康づくり活動を行っています。近年では、健康づくりリーダー「まめんなかえ師範」養成を県内各地で取り組んでいます。今回は、これらの活動に携わっている看護学部看護学科教授の田中響さんにお話を伺いました。
学校の保健室のように、いつでもだれでも気軽に立ち寄って、自分の健康について、振り返ったり、相談したりできる場所です。具体的には、身体測定、血圧測定、骨密度測定、健康相談など行っています。
「大学は教育だけではなく、社会貢献や地域貢献をしなくてはいけない時代となっていますが、大学が行う社会貢献や地域貢献は『教育講演に来てください』とか『障害学習の講師をしてください』とか、そのような内容が多いんです。しかしうちの大学では『地域と共に歩む』という方針なので、大学が地域に出向むくことが大切だと考えています。その手段として実践しているのがまちの保険室です。」
毎月第3水曜日に鳥取看護大学で開催しているほか、学内のみならず、地域のイベントや公民館などへ出向き、教員と学生が一丸となって取り組んでいます。
まちの保健室の取り組みは倉吉以外の地域からも反響があったので、活動を広げるために健康づくりリーダーを育成する「まめんなかえ師範塾」を開始しました。塾は3日間に渡って開催され、講義や実習、グループワークなどを通じて、地域が元気になるにはどうしたら良いのか、まちの保健室を通じて何ができるのかをディスカッションします。そして、地域における健康づくり活動の推進役となる「まめんなかえ師範」を養成し、住民の健康意識向上や持続的な健康づくり活動の体制構築を図っています。
「まちの保健室に取り組んだところ、色々な地域から『うちの地域でもまちの保健室をしてほしい!』と反響がありまして、教員や学生だけでは対応しきれなくなりました。そこで、公民館単位で元気な人を探して育てようという話になりました。そこで地域のコミュニティーリーダー養成講座みたいなものをしようと考え、うちの大学では、まめんなかえ師範塾をつくりました。」
ちなみに「まめんなかえ」とは、鳥取の一部の地域で使われている方言で、「元気にしてますか?」「体の調子はどうですか?」など、体調を気遣う声かけです。今回は各公民館のリーダーが地域住民健康を通じてサポートするため、このような呼び方となっています。
「日本財団さんからの支援金は講師の先生方の謝礼金、会場費などに利用されていただいています。また、まめんなかえ師範塾を卒業された方が、地域で活動するときの運営費にも使わせて頂いています。あとは、受講生の卒業後のフォローがとても大事だと考えているので、今後はその辺りにも使いたいと思っています。例えば、まちの保健室に何回以上出席すると〇〇をプレゼントなどです。」
まめんなかえ師範塾に来られる方は、健康に興味のある方はもちろん、職場を退職され「もう一度何かをしたい!」「人との出会いが楽しい!」と考えている65歳前後の方が多いです。取り組みの当初は20人だった生徒ですが、地元新聞に活動が掲載されたことをきっかけに、現在は70人以上に増えています。
「受講生の方々は『自分でなにか地域の役に立ちたい!』『自分自身が健康づくりの勉強をしたい!』など考えている人が多く、特に『人と出会えることが楽しい!』という声が多いです。いままでの友達関係ではなくて、新たな出会いがあるので、そこでのコミュニケーションとか交流が自分の新たな面をみせてくれてるとか、それが楽しいと言ってくださっています。今では地域同士で『うちはこれくらい集まったけど、そっちはどう?』などとまめんなかえ同士で競いあってたりなど、自主的なネットワークができつつあります。」
上述したように今回の取り組みは、地域の人にメリットがあるだけではありません。活動に関わる学生にも教育の分野でメリットがあります。このようにお互いが良い関係を築きながら取り組んでいます。
「地域の人が元気になるだけではなくて、学生の学びの場ともなるようにWinWinの関係を心がけています。介護は人の気持ちを理解することが大事なので、このような実践の場をつくることが大切だと思います。そもそも大学として地域貢献は必要です。始めたら応援してくれる人がたくさんいましたし、ずっと続けていきたいと考えています。」
特に鳥取という田舎だからこそ、顔の見える関係が築きやすく、活動が急速に広がっています。今回は大学と地域住民が連携した取り組みでしたが、このような地域密着の取り組みが、これからの持続可能な地域活動に必要ではないでしょうか。