○山陰中央新報 太田満明 記者
選挙戦を通じて知事は相当、軸足というよりも、軸足どころか自民党にのめり込まれたのかっていう気持ちがするんですけれども、今後、川上さん、今回の選挙結果ですね、以降、どうでしょう、顔色はすぐ変われますか。
●知事
私はかねてから申し上げているとおり、県政は県政として公正中立に県民の立場、鳥取県という地域の立場で運営していこうという考えでございまして、そのことはいささかも変わりません。政治活動として個人的に今回、いろいろと参画をさせていただきましたけれども、結果はきちんと出たわけでありますから、県民のご意思として、私はそれはそのとおり、額面どおりに受け止めさせていただきたいというように思っております。
かねて議場でも申し上げておりましたけれども、これは民主主義の大きなダイナミックスだと思うんです。一つ、選挙戦という場がありまして、そこでお互いに論戦を張って、政策論争を戦わす。そこにさまざまな、政治家なり、あるいはいろいろな市民の方々も参画をして、ヒートアップしてくると。最終的には主権者である県民、国民がご判断をされる。それに従いましょう。
今はもうノーサイドの状態に入ったと思いますので、私としては、これからですね、また県政を公正中立の立場から運営をしていきたいと思いますし、その中で県選出の国会議員と連携していくことは、いささかも変わらないところだと思います。
○山陰中央新報 太田満明 記者
言葉では分かりますけれども、やっぱり人間、生きた感情の動物だと思いますので、知事のこの選挙戦での対応を見て、県民が本当にそれで納得できるのかどうかという側面があると思うんですよ。
●知事
それは、政治活動は個人的なものですので。私は常田候補を確かに応援をさせていただきました。これは、今回もしご当選されれば大臣としてご活躍されるかもしれないという非常に重要な時期にありましたし、それが私自身、県政を運営する上でプラスになるかなというように思ったこと、それから従来私が、つい先だってまで知事選挙をやっていましたけれども、帰国以来ずっと一緒にいたスタッフの皆さんが、そのまま常田陣営のほうに入っておられますので、そうした感情的な問題もありまして、私は応援をさせていただきました。
そのこと自体は個人として、それについての当否についてはご意見をいただきたいと思いますけれども、ただ、知事という立場で今また平時に戻りまして、選挙戦を離れて県政運営を行っていくというからには、また基本に立ち返りまして、公正中立の立場できちんと県民のための県政運営を心掛けていきたいと。あまり過去のものを引きずってどうとかこうとかというのは、私は県政に得策ではないと思ってます。
○中国新聞 土井誠一 記者
知事選では与党に軸足を置いて戦うという、通った後は公正中立ということですけども、今回、選挙戦を参議院選から与党に軸足を置いて戦われたと。これから国政選挙があるたび、やはり与党に軸足を置いて応援演説とかにも行かれるというようなことはあるんでしょうか。
●知事
それについては今特に考えはありません。全く白紙です。今回は今申し上げました、私は特定の候補について、この人がもし当選すれば県政上、こういうつながりができて役に立つかなという思いが一つあったのと、あと、自分自身の選挙戦との絡み合いもありまして、そこは今回は応援をさせていただきました。今後のことについては特に決めているものは特にありません、率直に申し上げて。
○中国新聞 土井誠一 記者
まあ、いいんですけれども、県議会のほう、例えば会派「信」の皆さんとかは、かなり、そうはいかないと思うんですよ、これから。その辺、どのようにお考えですか。
●知事
それはこれからのことだと思います。行政というのはあくまでも公正中立に行うべきものだと思いますし、それは私の信念でありますので、そのことについてはご理解を得たいと思います。
○山陰中央新報 太田満明 記者
今回、これだけ常田さんの肩を持ってやられたわけですけれども、実際に川上さんが当選されて参議院議員になられるわけですよね。そうすると、知事として参議院議員である川上さんとの対応というのはどうなりますか。
●知事
それは、一人の大事な県選出の国会議員としてお付き合いをすることになると思います。今の状況を率直に表現すれば、参議院の第一党は明らかに民主党になってます。その中で参議院はかなり民主党の傾向、色が強い院になると思います。対しまして衆議院のほうは与党の院ということになると思うんです。
こういう政治状況の中で鳥取県としてベストの選択を国から引き出していくということにあたっては、いろいろとそうした県選出の国会議員と調整を図ったり、お願いをしたりっていうことは、これからも出てくると思いますし、そうすべきだと思います、私の立場としては。
○山陰中央新報 太田満明 記者
選挙戦での知事の言動の中で、与党自民党でなければ政治ができないような発言があったと思うんですけれども、そういう発言というものが現実にあった以上、民主党である川上さんに対する姿勢というのはどういうふうになっていくんでしょうか。
●知事
その後、こうして結果が出ているわけですから、選挙が行われて県民が、確かにそんなに圧倒的な差というか、一定の差という程度だと思うんですが、こうしたかたちで県民が国会議員として、代表として送り込むわけですから、その川上義博さんとはきちんとしたお付き合いをするというのが私の務めではないかと思います。
○NHK 雁田紘司 記者
今回の選挙戦の争点の一つとして、常田候補も川上さんも、一つ農業問題というのを、鳥取県の農業問題というのを挙げていて、個人演説会なんかでは知事が応援演説をされていたときに、東郷湖のシジミ問題などを引き合いに出されて、鳥取県の農業にはどうしても常田さんが必要だというようなことをおっしゃっていて、一方で川上さんも農業のことを重視するというふうにおっしゃっていましたけれども、常田さんが落選されて川上さんが通ったことによって、農業政策という面でどのような川上さんと、やりとりといいましょうか、論議をされていくおつもりですか。
●知事
それは、個人の政治家どうとかということでは多分ないんだと思うんです。農業政策ということでいえば。私は、今回の結果を受けてですね、今、これから政権の枠組みといいますか、政党の連携関係とか運営がどういうふうになっていくかというのは、まだまだ不透明だと思います。不透明だと思いますが、私はこうして国民の審判が下った以上は、与党、政府側のですね、与党のほうは大きく政策について見直すべきものがあれば見直して、野党第一党である民主党ときちんと協議をして進めていかなければいけないっていうことだと思うんです。それが、国民が示した意思だと思うんですね。
そういうことで言うと、農業政策も、今、例えば非常に大規模な担い手農業者の方に偏ったといいますか、かなりそこに重点を置いた、そうした農業政策というものがあるんですけれども、ただ、それだけでいいのかどうか。さらにほかの農業者とかの中山間地域などに対する別途の配慮というものは必要かどうか。
この辺は今回の争点の一つだったと思うんですね。私は民主党がマニフェストでおっしゃっていたような、各戸一律にお金を所得補償で配るというのに賛成するものではありません。多分それは大変なお金が要ると思いますし、農業の活力を失わせるものになるかもしれないと思いますから、それに賛成するものではないんですが、ただ与党側も農業者のいろんな意味の不信感とか憤りがこの選挙結果に結び付いたということを率直に受け止めて、改めるべきところは改めるべきだというように思うんですよね。そういう意味では政策転換がこれからのテーマとして浮かび上がってくると思うんです。
その中で、法律を通そうと思えば衆議院と参議院の両方が通らなければならないという仕組みでございますので、ですから今、民主党の考え方、自民党や公明党の考え方、それがそれぞれに出てきて調整が図られるということで施策が具体的になってくるという時代がやってくるんだと思うんですね。
ですから、その中で川上義博新参議院議員といろいろと話をさせていただいたり相談させていただくと。それは鳥取県のためになるというふうなことで私も当然協議をしますし、それについて先方がどういうふうに考えられるかということじゃないかと思うんですね。ですから、それは個別の政治家同士がどうとかこうとかということだけでなくて、もっと大きな政策づくりの話になってくるんじゃないかと思います。
○日本海新聞 荒木隆宏 記者
川上さんと知事とお話の機会を設けられるような場というのも、近々考えられるという。
●知事
昨日の今日ですから、ちょっとまだ特にお互い連絡を取ったということはありません。
○日本海新聞 荒木隆宏 記者
例えば、今、国会議員と県の間で政策説明会というか、東京でやられたりされていますけれど、ああいうところにも川上さんを呼ばれたりということもされますか。
●知事
そうですね。私は呼び掛けるつもりです。もちろん、これは相手があってのものですけれどもね。まだ昨日の今日のことなんで、これからどういうふうにそうした具体的な会合をやっていくかとか、国会議員との勉強会をやっていくかっていうとこは、まだお互いに調整ができているわけではありません。
○テレビ朝日 後藤龍彦 記者(幹事社)
ほかにありますでしょうか。
○日本海テレビ 前田俊博 記者
特に川上さんの場合、地方を重点的にやりたいということで、地域の声を傾けるということで、今、鳥取県にとっても大事な、さっきおっしゃったところではあると思うんですけれども、そういう面でやはりそういう声も、県民が、有権者が選ばれたという意味で、そこは県民の声だと思うんですけれども、それについてちょっと改めてお考えはいかがですか。
●知事
私は、最前より申してますけども、民主主義ですので、選挙という場でですね、有権者、主権者が審判を下すことの意味は本当に重いと思います。その前にいろんな議論が戦わされることは、これは結局、言論の自由主義の中で実際にいろいろな意見が出て、それの上で判断するという仕組みですから、ここにさまざまな人が参画して盛り上げていくっていうことはあっていいと思うし、ただ、その終わった後ですね、じゃあ有権者の選択が間違っているとかいうことは絶対にないんであって、その国民の審判に対しては厳粛に受け止めるというのが常道だと思います。
だから安倍総理が昨日、その結果が、当確がそろそろ出始めるぐらいから、自分は政権を引き続き運営をするんだというふうにご発言なさってましたけども、私はああいうのはちょっと違和感があるんですね。それは、だって、国民が安倍内閣の政治のやり方に対して批判的な思いを強くしたからこそ、今回のようなことになっているんだと思うんです。
ですから、与党とかの中で根回しのようなかたちで、政権については引き続き運営するんだということを決められたのかもしれませんけれども、ただ、それが結果として出てくるのならともかく、もう既に決まっていることだから、選挙に勝っても負けても政権は変わらないんだということが前提とされるのは、私はやや違和感があるんですね。それは、民主主義というのはそういうものでは本来はないんだろうと思いますし、それは与党も謙虚であっていただきたいなというように思います。
片方で、実はちょっと、これはもちろんご体調の関係があって大変厄介なんでしょうけども、小沢代表のコメントも国民のほうには、コメントというかたちでも流れてきていないわけでありまして、ややまだ、ちょっと私も手持ちぶさたといいますか、これからの方向性をですね、県政を運営する者としてどう考えていけばいいかなという材料に欠けるような気がいたしてます。安倍総理がとどまるということに、もし仮に結果としてなるんであっても、これは政権を作り替えるぐらいのことでないと、国民は納得しないのではないかと思います。
それとまったく同様な意味においてですね、今回、いろいろと川上候補が各地で訴えられたことの一つに農業の問題があって、農業者が非常に厳しい状態に立たされていると。実は、そこは私と共通に認識しているところだと思うんです。それをどうやって解消していくか、それが単なる所得補償のやり方で、お金で解決すればいいのか、それとも農業自体の活力を高めることで解決するのがいいのか。私は後者のほうだと思うんです。
そういうことを、ただ国も一体となって今回気付いていただいてですね、この国民の怒りというものを受け止めて、気付いていただいて、農政の方向も転換をさせると。片方でWTOとかEPAだとか、そうした大事があるわけでありますが、これは民主党さんは「オーライ、オーライ」と言っているわけでありますけれども、それもいかがかと思うんですね。もっと現場の声に立脚をして、この際与野党で歩み寄って、本当に実りある地域対策といいますか、農業対策を打っていただきたいというような気持ちです。
川上候補が昨日テレビの中でインタビューでおっしゃってましたことの一つに、例えば税金については法人税なんかを鳥取県のような地域ではまけて、企業誘致をこういうところでやってもいいんじゃないかというのは、かねて私どもも国のほうに申し上げて陳情しているところなんです。なかなか実現してませんけれども。いろいろと共通して、本気で地域とか県民のことを考えれば、それは意を通ずるところはあるんではないかと思います。
○山陰中央新報 太田満明 記者
今の知事の発言で、安倍続投には違和感があるということでしたけれども、今回の選挙、鳥取県に限らず、自民党大敗という選挙の原因、背景。何だというふうに考えられますか。
●知事
一番大きなのは、出口調査でも表れておりましたけれども、年金だとか政治と金の問題が一番大きかったんだろうと思うんです。この年金にしても、政治と金の問題にしても、私は、安倍さん個人の問題ではないと思うんです。本来、長いこと社会保険庁がやってきた悪弊というものが、今一挙に吹き出してきて問題化をしたと。政治と金の問題もおそらくいろいろな慣行があるんでしょう、そういうものが下敷きとなって、今こうして吹き出しているということが、多分あるんだと思うんです。
そういう意味で、安倍総理の責任ではないといえば総理の責任ではないとは思いますけれども、ただ現実として、それが政権に対する不信感として噴出をしたというのが、今回の現象面だったのではないかと思います。あと、これだけ火が燃え上がるのは、単にそうした政治と金の問題とか年金というマッチを1本投げ入れたからということではなくて、その下には底流として、小泉構造改革以来、広がってきた地域間格差などの社会的なゆがみというものがあって、それを国民の皆さんが等しく感じていたというのがあったと思うんです。
そうしたエネルギーがある、油があるところに火が投げ入れられたと、だからカッと、こう燃え上がって、初めて自民党が第一党から下がるという結果になったのではないかと、個人的には思っています。これは、私、県というより個人のコメントです。個人的にはそう思います。
○テレビ朝日 後藤龍彦 記者(幹事社)
他にありますか。なければ終わります。