●知事
皆さん、おはようございます。今、国政の状況はまだ混沌としているようでありまして、日銀の総裁問題など不透明な要素もあります。
そういう中で、特に今憂慮をいたしておりますのは、国の道路に対する事業の展開がこれからどうなるんだろうかということでございます。私どもといたしましては、ぜひ地方の高速道路整備をはじめとした道路事業に的確に国でも対処してもらう必要があるだろうと。その声を順次上げていくことといたしております。
まず当面は、明日、国の方に出かけまして、私どもの方から要望させていただきたいと思っていますし、今、5県の知事会でも話し合いを始めていまして、5県の知事会としてもこの問題を取り上げようではないかということを申し上げているところであります。
それで、ただ、県内への影響を極力回避できる仕掛けはできないだろうかと、いろいろと私どもの事業部局の方で精査を行ってまいりました。現在集計しておりますところでは、県事業ベースで 177億[円]の執行保留と当面なる見込みであります。これは国の方の事業の認証が補助、交付金で得られないということによりまして、保留がかなり大きな額になっているということであります。それから、国の直轄事業の方も保留がなされておりまして、こちらの方でも 240億[円]ぐらい保留がなされているというふうに認識をいたしております。
こうした状況でありますので、私ども県としては、できるだけ地場の、足元のところの、できる限りのことは当座はやっていこうと考えております。そういう意味で県の単独事業をリリースをすると、そのことを先週申し上げたところであります。
それをやりまして、一つは改善点になりますし、あと河川と砂防の方でも、対前年でこの時期、4、5月まで含めて8割以上執行額を伸ばすと。ですから、河川、砂防で穴埋めをしたり、それから単独事業を積極的にリリースをしていくということを通じまして、そうした河川や道路やらを入れて、対前年度、この時期、4、5月までのベースで6%ほど対前年度よりも伸ばす形で確保しようと考えております。
ただ、これは当面の現在の道路の審議を眺めながらということになります。ですから、4月末まで恐らく国会の場での議論は闘わされると思いますが、その状況を見て、もし今後とも道路の財源が確保が難しいというような見込みになったら、5月、6月以降のことについては再考せざるを得ないという状況になるかもしれません。
また、片方で、私どもの足元でできる準備は、国の認証が得られる前からもやっていこうということにいたしております。その一つとして、これちょっと国と折衝しなきゃいけないと思っていますが、鳥の生息状況を調査をする事業との関係で、岩美道路の着工が下手すると1年遅れるかもしれないということがございますけども、これを回避するために、単独事業でその分は思い切ってやろうかという相談も始めたところでございます。
あらゆる手を尽くして、暫定税率がどうなるか、この議論について国に働きかけをするとともに、私どもも極力混乱を避ける、地域の経済に影響がないような形で当面は推移を見守る、そういう体制を整えたいと思っております。
●知事
それから、その東京に行った後、日韓の知事会議の方に出席をさせていただきたいと思っています。韓国では現在国政選挙が戦われておりまして、その国政選挙の翌日から日韓会議に入るということであります。イ・ミョンバク大統領やキム・ジンソン知事とお会いする機会もあるのではないかと考えておりますが、この辺はまだ流動的であります。選挙の情勢もございますので。
ただ、いずれにせよ、今回の機会に米子-ソウル便、あるいは日韓航路、環日本海の航路の実現に向けて関係者にお願い、要請をさせていただきまして、その実現に向けた働きかけをこの機会にはさせていただきたいと思っております。
●知事
それから、4月に入りまして順次新しい窓口を開いたりいたしております。人権相談も開始をいたしまして、既に3件ほどは相談が来ております。そういう状況も見ながら、これから[鳥取県]人権[侵害救済推進及び手続に関する]条例についての検討をしていくことになろうかと思いますけども、一つ憂慮をいたしておりますのは、先般、[県立]鳥取盲学校について[鳥取県]弁護士会の方に救済の申し立てがなされているという点であります。[県]教育委員会は教育委員会として現在調査をされたり、襟を正すべきことがあるかどうか、今、調査やその対策に追われているとは思います。
しかし、一般論として、こうした子どもたちの人権についての問題も提起をされているということもありまして、弁護士会からもかねて、子どもの人権問題について条例の検討をすべきではないかというお話もありましたので、弁護士会の方での検討に、私ども協力する形で、そうした対応を進めていきたいと思っております。本日、総務部長などを弁護士会の方と接触をさせようと考えております。
いずれにいたしましても、これ以外にもいろんな提起をされた人権についての問題点もありまして、私どもとしては粛々と、淡々と人権問題一般について、検討委員会で提起された論点を庁内的に検討していきたいと思っております。
●知事
それから、油の問題で気になりますのは、当然ガソリンの問題が今提起をされていますけども、それとあわせて、漁業者の被害が心配をされるということであります。重油の値段も、ガソリンと同様でありますが、相場が上がっておりまして、このほどさらに値上げも予想されるという事態になっておりまして、出漁を見合わせることが相次いでいます。
ですから、担当部局の方に指示をいたしましたが、漁業関係者の御意見を聞きまして、早急に緊急的に対策を考えようではないかというように申しているところであります。国の方からも 102億円の基金を立ち上げて、これからそうした燃油対策を水産業関係でやっていくということになっていますが、そのスキームに対応しながら、我々の方でも県独自の応援策を考えていくべきかなと思っております。
私の方からは以上です。
○朝日新聞 井石栄司 記者(幹事社)
各社、御質問がありましたらどうぞ。
○山陰放送 山本収 記者
9日からの訪韓の関係なんですけれども、キム・ジンソン知事であるとか、あるいはイ・ミョンバク大統領の会談が実現した場合、具体的にはどのようなお願い、環日本海航路に向けたどのようなお願いをされるおつもりですか。
●知事
これはまだ正直なところ、先般も御報告申し上げましたが、従来のコンソーシアムの構成が変わろうとしております。私どもとしては、韓国側での精力的な今作業が行われておりますので、それを見守ると、あるいは我々の方でお手伝いできることがあるかどうか、その相談をしているという状態でございますが、まだ不透明感があります。だからこそ、こうした新しい航路によって環日本海地域が共存共栄で発展できることを目指そうじゃないですかと。
これはイ・ミョンバク大統領が目指しておられる実用主義の日韓関係にも大いに役立つと思いますし、それからキム・ジンソン知事が目指している東アジアの経済圏の形成にも役立つことだと考えております。いろいろと韓国側は韓国側の事情もあるようでありますが、私どものこの航路の意義を訴えて御協力をお願いしようということであります。あと、キム・ジンソン知事とは、個別の市町村ベースの交流の促進とか、その辺も話し合ってみたいと思っています。
○朝日新聞 井石栄司 記者
東京での道路の陳情なんですけども、これまでも何度も行かれてやっていらっしゃるということで、今回は新しいこういう戦術でというのを、前回今若[山陰中央新報 記者]さんが聞かれたと思うんですけども、前回の会見のときから、さらにこういう訴えかけをしていこうとか、煮詰まった部分というのはあるんでしょうか。
●知事
今、仲間を募っているというのは一つ正直なところですね。あしたは、まず単独で私どもの実情を訴えようと思っています。仲間を募っていく算段の中で、一つは5県の知事会議で話し合いながらアピールを出していこうじゃないかと、これが方向性として出てきたところであります。このほかにも、これは仲間を募りながらやっていきたいと思います。
私は、恐らく4月の末までですべて決着することにならないと思いますので、ある程度息の長い展開になると思いますから、今後もそういう共同して提言していく体制を模索していきたいと思っています。
あと、我々の方で訴えなければならないのは、やはり高速道路がまだできていないという特殊な地域であるということだと思っています。ですから、こうしたところに対してどういうふうに与野党、また政府で手当てをしようと考えているのか。これは一つのポイントになろうかと思います。
それから、地方の道路特定財源はもとよりでありますが、交付税の総額の確保でありますとか、あるいは商工対策、そうした関係も含めて明日は働きかけに行ってまいりたいと考えております。
○朝日新聞 井石栄司 記者
具体的に宮崎県とか、個別のところにアプローチというのはかけていらっしゃるんでしょうか。
●知事
いろいろ今、幅広く呼びかけをさせていただいているというところです。その中で、今、5県の知事会議でとりあえず集まろうじゃないかということが出てきました。
○山陰中央新報 太田満明 記者
その呼びかけというのは、知事の名前、単独の名前で呼びかけておられるんですか。それとも何か、例えば「せんたく」とか。
●知事
そういう大がかりなものではなくて、今個別に、よく状況が似ているところがいいかなと思っていますので。
○山陰中央新報 太田満明 記者
先ほど、国の認証、補助が得られないので、県の事業 177億[円]が執行保留になる見込みだという話がありましたけれども、これは建設事業にかかわらない、ほかのものにも影響が出ているという意味なんでしょうか。
●知事
いや、道路に限った話です。
○日本海新聞 小谷和之 記者
道路の部分で単県事業をリリースしていくということだったんですけども、いろいろ年度末の幹部会通して、税収面では20億[円]の穴が空くということで、その分を凍結といいますか、そういうふうな方針を出されたと思いますけども、一応、現時点としては、この凍結というのは白紙に戻してというとらえ方になるんでしょうか。
●知事
ええ、そうですね、白紙というか、5月までの状況をにらみながらということで、若干確かに戦術転換しています。それは国の方の執行保留が余りにも大きいもんですから、この4、5月での事業の停滞が著しくなってしまったと。これは国の事情を考えればいたし方ないことだと思うんですが、それに対する私どものできる限りのことをやろうという知恵の中で、17億[円]ほどとりあえずリリースしようかと。
○日本海新聞 小谷和之 記者
幹部会で話し合われた20億円の税収穴埋め分の凍結というのは一たん白紙に戻してという形になるわけですね。
●知事
そうですね。ただ、この6月以降のところで、まだまだ20億円以上ありますんで、そこは非常に不透明な状況を抱えながらということですね。20億[円]は手をつけるわけではないんです。ただ、リリースをすることで、今の4、5月の段階、停滞を回避していこうということであります。
○山陰中央新報 太田満明 記者
先ほど人権条例の話が出まして、子どもに関する部分の条例を弁護士会と協力しながら進めていきたいという話でしたけれども、あれは検討委員会の方でたしか3つの条例に分けるような話が出たと思うんですけども、その中の子どもの部分を特化して、特化という言い方はおかしいのかな、最初にやろうというお考えなんでしょうか。
●知事
これは、経緯を申し上げますと、[鳥取県]弁護士会の方から、かねて子どもの部分について条例化を自分たちで検討したいと、県も協力してほしいというお話がございまして、それを私どもの方で答えを今出そうとしています。
私どもの正直な事情を申し上げれば、相談も始まりまして、現に何件か相談も来ております。中には既にいろんな部局で連携して対応しなきゃいけない相談事もあって、そういう態勢にも入っておりますが、こういう実情を見ながら、検討委員会で出された論点についての対応策を考えていきたいと。
条例がいいか、あるいは条例というよりも別の形が考えられるかとか、いろいろと含めながらやっていきたいと思うんですが、この子どもの部分に限って、弁護士会の方から、自分たちが検討したいと思っているんで協力してくれないかという御依頼が来ておりました。
そこに今回、[県立]鳥取盲学校の問題が生じまして、私は憂慮いたします。いろんなことが教育現場では起こっていると思うんですけれども、当事者である[県]教育委員会の中の駆け込み寺しかないという状況のままでいいのだろうかということは、我々もこの機会に考えなければならないだろうと思います。
折しも、人権救済条例の一連の検討の中で子どもについて考えようじゃないかというテーマがありますので、この点はかねて弁護士会の方から一緒に検討しようという依頼が来ておりますので、この部分は弁護士会と協力しながら検討してみようかということであります。
もちろん全般的な人権についてのさまざまな検討委員会での御報告が寄せられました。そのすべてのテーマですね、これひとしく我々の方の本庁の方で部局横断的に今検討している最中でございまして、これと並行しながらということになろうかと思いますが、民間のお知恵をといいますか、弁護士会の方が特に興味を持ってやろうとしておられること、これにこたえていくような形で、鳥取盲学校の問題もあり、協力してくれという弁護士会側の要請にこたえていく必要があると考えたところです。
○日本海新聞 村上俊夫 記者
人権条例の全体の流れの中では、知事は、現条例はいずれ廃止せざるを得ないのではないかという見解を出されている。その中で、今回、県の弁護士会の要請にこたえる形で、子どもの部分をいわばセパレートして、そこの部分の検討に着手すると。流れからすると、やはり個別条例主義に転換をするのかなというふうに思うわけですけれども、そういう認識でいいのかということと、それから、弁護士会とはいえ民間団体との協力の中で、成果物を、その弁護士会の方で、例えば条例にするための陳情をするだとか請願するだとか、あるいは請求するだとか、いろいろなことがあるんでしょうが、成果物を引き受けて県でその条例化するというようなことも考えられるんでしょうか。
●知事
まず前段の方については、私は一般的な包括救済条例について、いろんな世論もあり、現に検討委員会でも御提言いただきましたけれども、実現性として非常に困難が多いと思っています。ですから、それでもやはり人権についての問題状況は発生しているというのは検討委員会の認識で、その領域の一つが子どもの問題だったと思っています。
ですから、子どものことだけ取り上げるとか、障害者というような領域もありましたけれども、そうした分野分野ででき得る方策を検討するというのが、検討委員会の問題提起にかなう我々のスタンスだろうと思っていますんで、そういう意味では、包括的な一般的な救済条例からは方向転換をしようというのは間違いないと思います。
それから、あと2点目ですけども、弁護士会で出された案がそのまま県条例になるかというと、私はそういうことでもないんだろうと思ってるんです。今いただいているお話というのは、要は勉強会をやろうと。我々は我々で検討のための委員会も立ち上げまして、私どもなりに問題点の整理を今やっているところでありますけども、弁護士会は弁護士会で検討したいと。
その勉強会の場に県も加わるような形、あるいは市町村とかも加わるような形でできないだろうかという、そういうようなお話がありまして、それは民間レベルの検討だということだと思いますけども、我々も協力できることは協力していく必要があるだろうと。
ただ、ここで決まった意見が、どういう形で決まるかわかりませんが、決まった意見がそのまま条例の素案になるとかということでもないんだろうと思うんです。それは、いろんなところでいろんな人たちが勉強会をやられるということはあるわけでありますので、それに協力をしていく必要があるだろうと思っています。
ただ、今回の[県立鳥取]盲学校の問題もありますので、一定の人権状況が見え隠れしているというか、それが表面化しつつあるということかもしれないなと思いますので、この点は他とは若干ペースは違うかもしれませんが、弁護士会からの要請もあり、それにこたえるような形で勉強会に参画していくという形をとりたいと思っています。
○山陰中央新報 太田満明 記者
知事、確認ですけど、その弁護士会との勉強会というのは、将来的には子どもに関する条例を作っていこうということと考えてよろしいんでしょうか。
●知事
弁護士会さんはそういう御意思だと思いますね。ただ、勉強会でありますので、そこでいろいろと現実の状況なんかを見ていただきながら勉強していくということだと思います。結論をすべて決めた上でやられるという御提案ではないと思っています。
○山陰中央新報 太田満明 記者
それと、盲学校のことに関心があるとおっしゃっているんですけれども、障害者の問題と子どもの問題というのは微妙に違うんじゃないかと思うんですけれども、そのあたりのすみ分けはどういうふうになりますか。
●知事
私は、県としては全面的に、今、検討委員会から出された論点はすごく多岐にわたっていまして、これをオールラウンドに、今、個別領域ごとに順番に検討会をやっています。順次、日を設定してやっておりまして、このペースを変えるつもりはありません。
ただ、その片方で、盲学校の問題が浮上してきたり、弁護士会の方の御意見も出されてきましたので、それにこたえる形で勉強は、この領域については弁護士会が一つ中心となった形で研究しようという動きになっていますので、それに協力をしていくということだと思っています。
ですから、障害者の問題だとか、あるいは一般人権の問題だとか、ほかに提起されたことについて、その歩みをとめようとかいうことではないですけども。もちろん現実に検討していこうと思って、みんな一遍にということに最後になってこないかもしれませんから、どっかその条例化が進んでくれば、それがやはり労力を割かれることになるかもしれませんけども、今は勉強会をやろうと言ってますんで、それに参画をしていこうと思っています。
その中で、今回、[県立]鳥取盲学校で、我々の方で疑問点といいますか、問題意識を持っている面もありますので、そんなことも当然そういう場では議論していかなければならんだろうと思っています。
○山陰中央新報 太田満明 記者
それは、だから障害者の問題と子どもの問題というのも一緒に論議するということなんですか。
●知事
弁護士会がやろうとしているのは子どもの問題です。障害者の問題は、彼らは今、範疇の中に入れてないと思います。
○山陰中央新報 太田満明 記者
通底する部分というのはあると思うんですけれどもね、障害者の問題、子どもの問題というのは。ただ、知事が盲学校の問題に興味があるんで子どものことをとおっしゃるんで、そこのところのすみ分け、分け方がどうなっているのかなと思ったものですから。
●知事
要は検討委員会ですね、かつての救済条例の検討委員会で提起されていましたのは、子どもさんが問題を抱えたときに訴え出る先が教育委員会の中しかないのは問題ではないかと、こういうことですよね。今回、それと非常に関連性の深い事象が起こっているというように思います。
もちろん教育委員会で今調査をされたり、その内容について調べをされているところだと思いますので、それを我々は、教育委員会とはちょっと別の立場ですから見るしかないんですけれども、ただ、そうした問題状況があり得るということは、今、我々も把握しつつあると思います。そういう意味で、非常に私どもとしてはそれに対する答えを何か考えなきゃいけないだろうと。
ちょうど弁護士会の方でも勉強会をやろうという御意思が出されましたので、それではそれに協力する形で私どもも参画をしていこうかということであります。こういうように、教育委員会以外の訴え先を探したいというのが検討委員会のお考えでしたので、その問題領域の中での検討になるんじゃないかと思っています。
○読売新聞 北島夏記 記者
同じく人権条例のことで、今の知事のお考えを伺っていますと、いろいろ並行していろんな問題を今検討されている中で、子どもの人権に対することは、実際に実例があって、対処が急がれるということだと思うんですが、その子どもに対する人権を救済するための条例というのを、今のところは必要性が高まってきたという御認識なんでしょうか。
●知事
それを勉強してみたいということですが、教育委員会だけに訴える先が限られていいかどうか、これは広く県民の皆さんにも御議論いただく値打ちのある政策課題であろうと思います。そういう意味で、私たちも勉強会に参画をする形で、教育委員会以外に訴え先を作る新しい制度の仕組みについて一緒に勉強してみようと思っているわけです。
○読売新聞 北島夏記 記者
じゃちょっと一歩進んだという形ですか。
●知事
そうですね、一歩進んだというか、今の[県立]鳥取盲学校の問題をそのまま放置していくのが誠実かどうかということだと思います。片方で検討委員会がかねてこのことを指摘されていましたので、それに思いをいたせば一定の検討に入るべきではないかと思います。ただ、我々としては全庁的にオールラウンドに検討委員会が出された課題を整理していきたいと思ってまして、若干時間はかかるかもしれません。そういう中で、別途、弁護士会の方は勉強したいと言ってるんで、それは参考になるかもしれません。そういう意味で参画をしていきたいということです。
○毎日新聞 小島健志 記者
確認なんですが、結局その訴え、今回の盲学校の問題で訴えている人は、学校と教育委員会が隠ぺいを図っているという趣旨で訴えているんですね。それを受けて放置できないと、県でも検討していかなければいけないという趣旨でよろしいんでしょうか。
●知事
今回、実際に訴え出られた先が弁護士会ですよね。これは、やっぱり訴える先として信用できる相手方がどこにあるかという問題点が私は出ているように思います。本来は教育委員会の中にもそういうカウンセリングを行ったり、正常に機能して対応していく場面はあるんです。現にそれも役に立っていると思います。ただ、事象によっては、それ以外に訴え先を、ここにありますよと示しておく必要があるかもしれない。それが今回の盲学校の議論から提起されているのではないかと私は思っております。
だから、学校の教育の現場が余りにもおかしくて、だから子どもの人権について検討するということではないです。むしろ、それをどうやって、間違いがえてして起こるものだと思います、あってはならないことであっても。それに対して是正をしていく手段を子どもたちに与える必要があるのではないかというのが、今回の問題点の一つだと思っています。
○朝日新聞 井石栄司 記者
道路の話にちょっと戻すんですが、岩美道路の鳥の生息状況調査を県単独事業としてやるかどうかという、これ見きわめるタイミングとしたら、いつぐらいをめどにというのはあるんでしょうか。
●知事
きょう実は県土整備部長を国[土]交[通]省の方に派遣しています。そこで少し相談をさせていただいた上で決定しようと思っています。
これは本当に皮肉なことなんですけども、そうしたことが年に1遍しかできないわけでありまして、タイミングを逃すと丸1年延びてしまうというのは、私はせつない話だと思います。国が3月で始末していただければこんなことにはならなかったんですが、とにかくそういう意味では単独事業でも考える必要はあるかなと思います。これは、事業費的には多分 500万[円]かそこらだと思いますので、我々のお財布の中でやれない相談ではなかろうと思っています。
○日本海新聞 荒木隆宏 記者
話が大きく変わるんですけど、多忙な日々を過ごされとると思うんでお忘れになったかもしれませんけども、ちょうど1年前のあすですかね、選挙の開票日でして、13日、日曜日ですかね、ちょうど就任1年ということになるわけですけども、1年を振り返られて、その感想といいますか、お願いします。
●知事
この1年、県民の皆様、いろんな関係者の方々、あるいは山陰地域だとか国の関係者の方々、いろんな方々に支えられて何とかやってきたと思います。ただ、正直申し上げて結構多難な1年だったなと自分は思っています。アシアナ航空の米子-ソウル便が突然運休をするという通告があったり、それから今回の道路の問題もしかりでございますし、国の方の財政状況も悪い中で、私どもの税収も悪化をして思いどおりの税収が上がらなかったり、いろいろと想定外のことが起こったと思っています。
ただ、私自身は、県民の皆様に選挙運動期間中など訴えさせていただきました鳥取に新しい時代を切り開きたい、そのために従来の改革を一歩進めた一段上のものを目指していきたいということを申し上げてまいりましたので、その政策の実現に邁進をしてきたつもりであります。
中には、道筋がついたものもありました。例えば子供の子育てを応援するパスポートを山陰両県またがってやっていこうということにもなりましたし、それからアンテナショップを東京の方で開設をする予算もようやく成立し、その開店に向けて今準備作業真っ最中ということになりました。
産業界、農林水産業も含めまして産業の元気を出していこうという趣旨から、いろんな関係者との意見交換も進んできたと思います。それに基づいてきめの細かい政策を打ち出していくことはできてきているかなと思うんですが、これから企業誘致ですとか、あるいは新品種を世の中へブランド化して出していく、そうした結果を私どもは目指していかなければならないと思っていまして、ふんどしを締めて頑張らないかんなと、そんなところでございます。
そういう中につけても、今非常に1年を迎えるに当たって憂慮しておりますのは、1年前には想像だにしていなかった国政の混乱が生じていることであります。この打開に向けた新しい民主政治のシステムを作らなければならないと思います。これは国に対して、地方の関係者で一致して訴えかけていかなければならない課題に浮上してきていると思います。
あわせて、地方分権も進むようで進んでいない。確かに30数億円、交付税に相当する臨[時]財[政特例]債が増えるということになりましたけども、ただ、これは焼け石に水でありまして、本当の意味の完全自治体を地方分権から生み出していく、これにはまだまだ道のりは遠いだろうと思っています。
あわせて、環日本海時代が真に到来をする状況になってきました。それに向けて、米子-ソウル便はようやく安定軌道に乗り始めたと思いますが、それとあわせて航路を開設をする。これはかなりまだ波風は高く、課題も多いんですが、航路開設実現に向けて、関係者と一致してやっていかなければならない。
こういうように、まだまだ我々を取り巻くいろんな問題、克服すべきテーマは多いわけでございまして、これに対して果敢にこれから私も向かっていきたいと思っています。そういう中で、県民の皆さんと一緒になって連携したやり方をやっていこう、あるいは他県と連携をしたやり方をやっていこうという、この呼びかけもしてまいりましたが、だんだんと理解をされつつあると感じております。
他県との連携も、島根県とは一緒に観光県を作ろうという構想も進み始めましたし、それから近畿の中の鳥取県という視点も持とうという、近畿の知事会への加入も今精力的にその実現を働きかけているところでございます。岡山県とも知事同士の会談を近々セットしようとしておりまして、そういう意味で、いろいろと圏域の中で地域間の交流が盛んになってきつつあると体感をいたしております。
あわせて、昨日も吉島さんが伯耆三十三札所めぐりをやられました。ゴールに私も参加をさせていただき、子どもたちとテープを切らさせていただきましたが、ああいうふうに住民の皆さん、地域のいろんな団体が一緒になって盛り上げて、青少年の健全育成を図ろうという動きは頼もしいと思いますし、ああいうように地域の中での連帯感を深めることが鳥取県の持ち味であり、これから地域間競争を勝ち抜いていくツールになると思ってます。
ですから、そういう萌芽が今確実に生まれようとしてきている。これを育てることによって鳥取県を生まれ変わらせることができないだろうか、そんな思いを強くいたしておるところでございます。
いろいろと不十分な点もあろうかと思いますけれども、これからも県民の皆さん、そして地域のために全力を傾けてやってまいりたいと考えております。
○日本海新聞 小谷和之 記者
その1年にちなんで、先日ちょっと知事の肝いりで始まった若手職員サブチームの取り組みなんかで、アンケート結果を見ますと、やはりそれに参加された方というのは責任課の方からちょっと何かこう冷ややかな反応なり対応が多くて、非常にちょっとつらいというか、寂しい思いをしたと。ひいては新年度もサブチームに参加する意向があるかというアンケートに対しては、半数がないという、非常にちょっとしりすぼみになりはしないかというような懸念もあるんですけども、なかなかそういう既存課と、そういう課の枠を取っ払ったことを何とか知事の方でやりたいという思いと、従来のシステムとがうまくなかなか混ざり合わないというか、組み合わさらないというような現状がちょっと見てとれるのかなというふうに思うんですけども、どうでしょうか、その辺は。
●知事
私は、鳥取県が力を発揮するためには、職員の一人ひとりに至るまで、組織のどこに所属しているを問わず力を発揮できる県庁にしていかなければならないと思っています。そのためにサブチームを作りまして、1年間皆さんに頑張っていただいたわけです。発表会をお伺いしましたが、確かに困難もあった一方で、例えばラッキョウ畑を観光地化しようとか、非常に生き生きと作業といいますか、政策立案に取り組んでおられるところもありました。
ですから、今回サブチームの手法で問題になったこと、これは謙虚に反省をさせていただき、新しい年度ではもっと取り組みやすい、職員の人も自由に物が言いやすい体制にしていきたいと思います。その片方で、せっかくの若い人たちの提案も実るように、チューター制度といいますか、それをサポートする体制も庁内の中で構築していかなければならないなと思っております。
私どもは、やはりセクショナリズムの壁ですとか、やはり役所として予算万能主義みたいな、そういう観念が若干残っているかもしれません。もっと風通しのいい庁風にするように、DOプロジェクトの進展など、精力的に進めていきたいと思います。
○日本海新聞 小谷和之 記者
アンケートの中でも、斬新のアイデアを出そうとすると、保守的な意見に邪魔されることが多々あったと。先日、新職員の講話の中でも、知事の、世の中を変えていくのは変わり者だというような声があったんですけど、なかなか、やはりまだまだ県庁改革、そういうシステム的なことは別として、意識づけのところがまだでしょうかね。
●知事
そうですね、だからそういう芽をつぶしてしまって、せっかく成長していく県職員を阻害することがないようにしなければならないと思っています。おっしゃるように、恥ということを打ち捨ててこそ世のことはなるべし、こういうように坂本龍馬も言っていますし、それを地で行くような県庁にしていきたいと思います。
私は、今回取り組まれた職員の中に、手ごたえを持った方もおられますし、さらに新しい政策を実際に実行する立場に今度かわりたいと異動希望を出された人もいましたので、徐々に県庁の空気を変えていくことはできるんではないかと思っています。問題もよく認識しておりますので、改善に努めたいと思います。
○読売新聞 北島夏記 記者
ちょっとお話変わりますが、全国知事会ですとかが中心になって、国と地方の二重行政というのをなるべく省いていくという、知事会が提言なされたと思うんですが、その中で、特にハローワーク、労働局の関係ですね。昨年、ハローワークの廃止に関して労働局側と知事の方で意見が違って、かなり対立もありましたし、それから、この間、20年度の労働局側の指針を見ますと、知事のマニフェストでは4年間、任期の間に有効求人倍率1にすると。ただし、労働局の方では、それを知事の最初の4年間という認識はなくて、いつかはわからないけども、いつか1倍にという認識でしたので、かなりちょっと差があるんじゃないかなと。
それから、以前から県は求人開拓員ですかね、県の非常勤の方を労働局の方に派遣されて雇用の掘り起こしというのをされてますが、もう既に県の方として一定の労働局の仕事を代替するような形をしていると思うんです。こういった形で特に重なるところが多いと思いますので、労働局を初めとして、二重行政をなくすために、もうこれは地方に移譲した方がいいんじゃないか、一本化した方がいいんじゃないかというような分野がありましたら、ちょっとお考えをお聞かせいただきたいんですけど。
●知事
私は、かなり広い範囲で県と国とを融合させる、私ども流に言えば地方の方にお任せをいただくという事務はあろうかと思います。例えば環境行政の分野とか、今おっしゃるような労働行政の分野でありますだとか、また、農政関係とか、いろいろとあろうかと思います。そういう意味で、知事会の方でも提言をさせていただいているわけであります。
これは、今後、地方分権の改革の論議の中で、ここ1年は中心テーマになっていくんじゃないかなと我々も思ってまして、よくその動向を見ながら、私どもも妙なツケを回されないように注意をしていきたいと思っています。
若干両面性がありまして、国の財政当局などは、もう切り離しておっつけたいというふうに、妙に積極的なところもあるんですね。ただ、それは、結局財政負担だけ回されたり、人件費だけ担がされるということでは、何の意味もないわけでありまして、本当の意味で必要な行政だけをスリム化して、それを県でやることにするというスタイルがまず確立しないと、個々の行政分野であれは欲しいこれは欲しいということを声高に叫ぶと、ちょっとまだ危険かなと思っています。
ですから、議論の推移を見守って、まずは国と地方との財政秩序まで踏み込んだ、大枠のところも議論しながら、個別の領域だとこういう可能性もありますねという話をしていくんだと思っています。例えば、さっき申しましたが、環境関係とか労働関係だとか、私は、地方になじむ行政領域は実は国の出先機関でやっているところでも多いんではないかと見ています。
○日本海新聞 村上俊夫 記者
全体の絡みで言えば、この間、道州制ビジョン懇[談会]が中間報告出しましたけれども、そういう方向性でもあるんですが、出口だけ示されて、さっき言われたような財源の問題だとか、なかなかついてきてないのではないかというふうに思うんですけれども、そのビジョン懇の現在のあり方について、知事はどういうふうにお考えでしょうか。
●知事
道州制などはかなり時間をかけて議論しなきゃいけないと思います。それはビジョンづくりでも言われていますが、まずは地方分権が第1段階であろうと。この意味で、地方の支分部局、国の出先機関の整理をやっていくんだと思います。
私は、これは再三申し上げていますが、外交だとか防衛だとか、国本体の部分以外は連邦制的に分権するというのであれば道州制は論議する値打ちがあると思うんですが、なかなかまだそこまで行き切れないんじゃないかと思うんです。ですから、我々は冷静に議論を眺めるのが今はいいかなと思っています。例えば島根県と、あるいは近畿圏の関係県と一緒になって、観光関係だとか一定の事務を共同化していくということは、私は当面検討に値する議論だと思います。
ただ、意思決定過程ですね、デモクラシーのあり方まで変えてしまうと、この圏域でみんなで議論して決めていくという、その大きさが果たして適当かどうか。これは道州制の本格的議論をするときには我々も関心を持たなければならないと思います。そうでないと、あっという間に辺境地帯に位置づけられてしまって、鳥取県の地域の発展性にも影響してくると思いますので、そこは注意をして見守る必要があるだろうと思ってます。
○読売新聞 北島夏記 記者
道路のことに戻って恐縮なんですけれども、きょうも国の方に県のかたを派遣されているということですが、県民からは、こうして車を使う機会が非常に多い地域だと思いますので、ガソリン税が下がった方がいいというふうに考える県民も多いんではないかと思うんですが、その点、車を使う地域が多い、だけども高速道路がない、そういう両方の課題を抱える立場として、ガソリン税が安くなった方がいいんじゃないかという意見の方が多いと思うんで、そのかたへの今どういうお考えを示したいと。
●知事
私は、本質的な議論が今国で出されていないことが問題だと思うんです。これだけ道路についての財源が必要ですと。つまり山陰自動車道ですとか北条湯原道路ですとか、そうしたみんなが望んでいる道路を造るだけのお金がこれだけかかりますと、まずここから出発するんだと思うんですね。それが中期的な道路計画と言われるものではないかと思います。
この議論をした上で、その税率をどの水準に設定するかということをすべきなんですけども、今、ガソリン代が高いから税金を下げましょうということになっているのは、ややその問題の本質を見失っているんではないかなと思います。
ですから、片方で、道路財源というのは道路の整備に使われているお金だということ。ですから、この税率が下がるということは道路整備の進捗が遅れてくる、あるいはできないかもしれない、そういう意味を持っているんだということを御理解いただいた方がいいんではないかと思います。このことは今後も引き続き訴える必要があるだろうと思っています。
ただ、これから私はかなり議論は流動化してくる可能性もあるんではないかと思います。与党の方は再議決を望んでいるというふうに報道されていますし、私ども地方団体は、どこもそうだと思いますが、現在執行すべきと考えている事業がある中で、消費税の1%相当の2兆 6,000億[円]の財源がなくなること。これに対して不安感を感じるものであります。
ですから、私どもとしては、今の財源を確保するために税率を確保していただきたいという気持ちはありますけれども、与野党の協議の中で今後どう推移してくるか。仮に与野党協議でその税率水準をどうしようかということになってくるんであれば、その際には、地方の山陰自動車道などのミッシングリンクになっているところで、高速道路がつながっていないところの国直轄事業は優先的に取り組むべきだということを示しながら、財源確保の動きにいってもらいたいと思っています。
これは、非常にこれから私は一月間、微妙な状況なんだろうと思うんです。表面立っては、与党と野党が完全に高みに上がりまして、暫定税率は全部要らないというのと、それから完全に全部戻すんだという議論が衝突しているわけでありますけども、ただ、現実には、今おっしゃったように国民の意見もいろいろ分かれているところでありまして、議論はどう展開するかわからないところだと思います。
ですから、その中で鳥取県という地域に大切なのは、この地域で今望んでいる高速道路の整備が、今回のこの騒動の中で立ち消えにならないように、そこを主張していくことだと思ってます。
○朝日新聞 井石栄司 記者(幹事社)
ほかありますか。なければこれで終わります。ありがとうございました。