肝臓は、
○ 栄養分(糖質、たん白質、脂肪、ビタミン)の生成、貯蔵、代謝
○ 血液中のホルモン、薬物、毒物などの代謝、解毒
○ 出血を止めるための蛋白の合成
○ 胆汁の産生と胆汁酸の合成
○ 身体の中に侵入したウイルスや細菌の感染の防御
などの500を超える重要な機能を持っていて、我々が生きていくためには、肝臓が健康であることが大切です。
しかし、肝臓は「沈黙の臓器」と言われるように、病気になってもなかなか症状が出ません。
そのため、本人が「何となく体がだるい」と感じる頃には、肝臓の病気はかなり進んでしまっていることもあります。
ウイルス性肝炎とは、肝炎ウイルスに感染して、肝臓の細胞が壊れていく病気です。
本来肝臓は再生能力が高く、例えば手術でその半分以上を切り取っても元の大きさまで再生できるほど丈夫な臓器ですが、この病気になると徐々に肝臓の機能が失われていき、ついには肝硬変や肝がんといった、再生すらも不可能な病気に進行してしまいます。
主な肝炎ウイルスにはA型、B型、C型、D型、E型の5種類があります。
詳しい症状とそれを起こしやすい肝炎ウイルスの型は以下の通りです。
中でもB型及びC型肝炎ウイルスの患者・感染者は合わせて300万人を超えており、国内最大の感染症とも言われています。
(1)慢性肝炎:
B型、C型肝炎ウイルスによるものが多い。長期間にわたり軽度の肝障害が続く。
徐々に肝臓が繊維化し、肝硬変や肝がんに至ることがある。
(2)急性肝炎:
A型、B型、E型肝炎ウイルスによるものが多い。急速に肝細胞が破壊されるために、発熱、全
身倦怠感、黄疸などの症状があるが、自然経過で治癒することが多い。
(3)劇症肝炎:
急性肝炎のうち、発症から8週間以内に高度の肝機能障害を起こし、脳症などを来すもの。
集中的な医学管理を要する。
生存率は30%ほどと言われています。
肝炎ウイルスは、血液を介して人から人へと感染します。
(主な感染経路)
○ 肝炎ウイルスが含まれている血液の輸血等を行った場合
○ 注射針・注射器を肝炎ウイルスに感染している人と共用した場合
○ 肝炎ウイルス陽性の血液を傷のある手で触ったり、針刺し事故を起こしたりした場合
○ 肝炎ウイルスに感染している人が使用した器具を、適切な消毒などを行わずにそのまま用いて、入れ墨やピアスの穴あけなどをした場合、また、B型肝炎ウイルスでは、以下のような感染経路も考えられます。
○ B型肝炎ウイルスに感染している人と性交渉をもった場合
○ B型肝炎ウイルスに感染している母親から生まれた子に対して、適切な母子感染予防措置を講じなかった場合
したがって、肝炎ウイルスの感染予防にあたっては、他人の血液に安易に触れないようにすることが重要です。
ただし、肝炎ウイルスは空気感染しませんので、常識的な注意事項を守っていれば、日常生活でうつることはまずあり得ません。 (他人の血液に触れることの多い、医療従事者のような場合は除く)。
こうしたことを理解し、肝炎の患者・感染者を差別することのないようにしましょう。
(主な注意事項)
○ 歯ブラシ、カミソリなど血液が付いている可能性のあるものを共用しない
○ 他の人の血液に触るときは、ゴム手袋を着ける
○ 注射器や注射針を共用して、非合法の薬物(覚せい剤、麻薬等)の注射をしない
○ 入れ墨やピアスをするときは、適切に消毒された器具であることを必ず確かめる
○ よく知らない相手との性行為にはコンドームを使用する
(感染しない事例)
○ 肝炎ウイルスに感染している人と握手した場合
○ 肝炎ウイルスに感染している人と抱き合った場合
○ 肝炎ウイルスに感染している人の隣に座った場合
○ 肝炎ウイルスに感染している人と食器を共用した場合
○ 肝炎ウイルスに感染している人と一緒に入浴した場合 等
※上記、(感染しない事例)は、あくまで一般的なケースによるものです。
肝炎ウイルスの検査は、様々な機関が様々な制度で行っています。
検査を受診する機会があるかどうかは、ご本人が加入されている医療保険の保険者(例えば、全国健康保険協会管掌健康保険であれば全国健康保険協会都道府県支部、組合管掌健康保険であれば健康保険組合、また国民健康保険であれば市町村等)に問い合わせてみてください。
また、こうした他の制度で検査を受けられなかった場合や、そもそも他の制度の対象にならない場合にも、鳥取県が行っている保健所及び医療機関検診で検査(無料)を受けることができます。
保健所肝炎ウイルス検診
医療機関肝炎ウイルス検診
■お問合せ先
鳥取市保健所 0857-30-8532
鳥取県中部総合事務所倉吉保健所 0858-23-3145
鳥取県西部総合事務所米子保健所 0859-31-9317
※鳥取市保健所及び中部・西部総合事務所では、簡易血糖値検査器具(採血用穿刺器具)の複数人使用により 不安を感じておられる皆様に対し、肝炎ウイルス検診の相談も受け付けております。
肝炎ウイルスに感染していたとしても、肝臓の状態は人によってまちまちです。
場合によっては治療を受ける必要がないこともありますが、すぐに本格的な治療をしなければいけない場合もあるようです。
いずれにせよ、肝臓の状態は自覚症状の有無では判断できませんので、感染していることが分かった以上は、専門家にかかって診断してもらうことが重要です。
薬を使う肝炎の主な治療法には、(1)インターフェロン療法などを用いる抗ウイルス療法と、(2)肝庇護療法の2つの方法があります。
以下で簡単な説明をいたしますが、詳しくはかかりつけ医にお尋ねください。
(1) 抗ウイルス療法
「インターフェロン療法」とは、免疫系・炎症の調節等に作用する「インターフェロン」という薬を注射する療法で、B型肝炎であれば約3割、C型肝炎であれば約5割から9割(肝炎ウイルスの遺伝子型や量によって異なります)の人が根治可能と言われています。
ただし、強い副作用を伴うことが多いので、実施にあたってはかかりつけ医との相談が必要です。
<主な副作用>
インフルエンザ様症状(発熱、頭痛、筋肉痛など)、白血球・好中球減少、血小板減少、不眠や抑うつ、投与部位の痛み、脱毛、めまい
抗ウイルス療法には、このインターフェロン療法のほか、肝炎ウイルスの増殖を抑える役目を果たす抗ウイルス薬を投与する療法があります。
(2) 肝庇護療法
肝庇護療法とは、抗ウイルス療法により十分な効果が得られなかった場合に、肝細胞が壊れる速度を遅くすることで、慢性肝炎から肝硬変への進展を抑えることができる療法です。
肝硬変がある程度進んだ段階では、この肝庇護療法を行いながら、定期的に超音波(エコー)などで肝がんが発生していないか検査し、発生した場合は早期発見、早期治療を目指すことになります。
鳥取県では、平成20年4月からB型及びC型肝炎のインターフェロン治療に対する医療費助成を行うこととしました。
詳しくは、こちらをご覧ください。 >>>
「鳥取県肝炎治療特別促進事業」
B型肝炎・C型肝炎をはじめとする肝臓病について知りたい方や全国の肝炎診療ネットワークについては、こちらをご覧ください。
(独)国立国際医療研究センター 肝炎情報センター