大分県の教員採用汚職事件が波紋を広げる中、鳥取県における教員採用等に関しても、「県民の声」等を通じて透明性や公正さを求める要望が増えている。
このため、教員採用、昇進に係る不正防止策の現状及び一定の公職にある者からの要望等(働きかけ等)への対応状況について確認し、公正性、透明性の観点から教員採用等に係る必要な改善策を検討する。
「県内で選出された一定の公職にある者からの提言、要望、意見等に関する取扱要領」が施行された平成14年度以降に、教員採用及び管理職昇任の選考に関係した者を対象とした。(教育長以下関係者 42名)
なお、関係者には、既に退職された方、また市町村教育委員会や県知事部局に異動されている方もいるが、監察の趣旨を理解いただき、調査に協力いただいた。
関係者全員に直接面接し聞取調査を行うとともに、選考関連文書の内容、保存状況の確認等の点検を行った。
教員採用等に係る選考業務において不正行為がないことを確認した。
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(1)教員採用、昇任に係る不正防止に関する事項
教員選考に係る業務の各段階ごとに複数チェック体制が確立されており、内部で重層的に点検を実施していること、また選考後における個人情報開示請求を視野に入れた厳正処理を基本としていることを確認した。
(2)選考等関連文書の保存に関する事項
選考試験実施要項、試験成績資料、選考関係資料等の内容及び保存状況を確認した。
これら採用選考に関する文書について、保存年限の見直し及び県教育委員会の文書規程上の明文化について検討が進められていることを確認した。
(3)公職にある者からの要望等取扱要領の運用に関する事項
教員選考等に係る不正な要求、働きかけはなかったことを確認した。(取扱要領施行後、不正な要求、働きかけに関する報告書は作成されていない。)
また、取扱要領の対象案件は、不当な要求、働きかけに限らず、施策推進上の提言など全ての提言、要望を対象としているが、特に不当な要求や働きかけとも受け取られかねない場面や状況においても、取扱要領を根拠に毅然とした対応を取っていくことが共通認識として徹底されていることも確認した。
一方で、その他の施策推進的な提言等については、取扱要領に基づく報告対象であることが十分浸透できていなかったことも確認された。
(4)選考結果の事前連絡に関する事項
教員選考の結果については、受験者への通知(郵送)とともに、県庁本庁舎、各総合事務所への掲示(平成16年度以降は鳥取県教育委員会のホームページにも掲載)をしているが、事前に合否情報を個別に連絡していないことを確認した。
また、平成15年2月定例県議会において、片山知事(当時)が職員採用試験の合否情報の事前連絡については、地方公務員法や鳥取県個人情報保護条例に違反するとし、今後このような行為が行われた場合には職員の処分を行うことを明言されたことを契機に、一層厳正な対応を徹底したことが関係者からの聴き取りで確認された。
なお、ホームページ掲載後において、合否の問い合わせに対して、ホームページ掲載の内容を確認し、回答したこともあったことも確認した。(特定の者への特別待遇として対応したものではない。)
(5)その他
全ての調査年度において、教育長から関係者に対し、教員選考業務における高い倫理観の醸成と服務規律の保持について徹底するよう繰り返し指導がなされており、関係者間に不正防止に関する共通認識が浸透していたことを確認した。
以上の調査結果を踏まえ、教員採用等に係る選考業務について公平性・透明性の確保を図るため、次の点について更なる改善、見直し等に取り組む必要がある。
(1)教員の採用選考等に係る更なる改善検討
- 現行の教員選考においては、相当程度、不正を防止するシステムが確立され、有効に機能しているとともに、厳正処理に対する関係者の高い意識がみられるところである。今後も厳正な処理に努めるとともに、文部科学省が取りまとめた「教員採用の在り方に関する点検状況」における各県の改善に向けた取組状況も考慮し、引き続き採用選考の公正性・透明性の観点から更なる改善検討を進めること。
また、昇任選考についても、同様に改善検討を進めること。
- 今年度から教育委員による教員採用選考プロセスの点検、見直しに取り組んだところであり、今後とも教育委員による継続的なフォローアップに努めること。
- 選考等関連文書の保存年限の明確化及び文書規程上の明文化を図ること。
(2)公職にある者からの要望等取扱要領の見直し等
- 現行の取扱要領の対象者は一定の公職にある者(秘書、代理人含む。)であるが、大分県での教員採用等に係る不正行為の発生を踏まえ、教員の採用、昇任について人事の公正を害する行為(不正な働きかけ等)については、県職員であった者、教育関係団体等の役員等も対象とするなど、取扱要領の見直しを検討すること。(施策推進等の提言等は除く。)
- 現行の取扱要領は、不当な働きかけ等のみならず、広く施策推進上の提言等も報告対象としているが、施策推進的な提言等についても報告対象であるとの理解が十分浸透していなかったことから、取扱要領の趣旨、内容を改めて周知徹底すること。
(3)教育業務改善ヘルプライン制度の見直し
- 現行のヘルプライン制度は、職務上の法令違反や不正・不当な行為などを通報の対象行為としているが、外部から不当な働きかけ等を受けたことのみでは通報の対象行為とはなりにくい。不当な働きかけ等に対する抑止効果を図るため、上記(2)の対応による記録の作成と併せて、現行ヘルプライン制度における通報の対象行為の追加等について検討すること。
(4)コンプライアンス研修等の徹底
- 教員採用等における不正な行為の防止を徹底するため、選考システムの更なる改善検討と併せて、厳正処理に対する関係者の高い倫理観が求められている。関係者への聴き取りの結果、厳正な選考業務に対する高い意識が伺えたところであるが、引き続きコンプライアンス研修等を通じて、選考業務に対する高い倫理の高揚を図ること。
引き続き、不当な働きかけ等の事実について教育業務改善ヘルプライン等を通じて指摘があれば、必要な調査、確認を行い、公平性・透明性を確保する観点から更なる提言を行っていく。