トンボつりは、竿の先に結んだ糸にトンボをくくりつけて放すと、他のトンボが縄張り防衛のため体当たりをくらわす、糸に絡んだところを捕まえる、というトンボの習性を利用した子供の遊びです。
私の子供の頃のトンボつりはこれと全く違ったものでした。
近所の小母さんに長い髪を1,2本分けてもらって生きたハエを結びつけ、食いついたトンボを捕まえる、文字どおりトンボ釣りでした。ただし、釣果がどうだったのか記憶が定かではありません。
先日、倉吉市今在家の溜池で多くの種類のトンボを見かけ、子供の頃を思い出しました。
大きな羽で蝶のようにひらひら飛ぶチョウトンボ、金属光沢のある群青色の羽が特徴
背が白く粉をふいたようなシオカラトンボ、塩辛昆布から連想したとか
赤い顔の猩猩にあやかったショウジョウトンボ、似ていますがアカトンボの仲間ではありません
産卵中のギンヤンマ、池の上をパトロールする姿は見事で、オニヤンマと双璧をなす子供のあこがれ
南方から渡ってきて繁殖するウスバキトンボ、羽が薄く黄色の体から
腰の部分が白いのでコシアキトンボ。他の種類が近づくと飛び立って威嚇していました
溜池は生物の宝庫で、他にも貴重な動植物を見ることができました。
唯一の国産睡蓮ヒツジグサ、庭園で見るスイレンと異なり、小さくて可憐。未の刻に花を開くといいます
淡水産二枚貝の1種ドブガイ。タナゴの仲間はこれら二枚貝に卵を産みつけます
溜池の全景。この日、ご紹介したものの他、種不明のイトトンボやヤンマ類が観察されました
これでも昔に比べると生き物が少なくなった、水抜きの徹底など過剰な管理のあり方を改めてみたいとの地元の方の弁でした。 いつまでもトンボの舞う環境であってほしいものです。
ところで表題の加賀の千代女の句。ただ単に、遊びに出かけた子を思う母心と思い込んでいました。が、彼女は子供を幼いままに失っていると知ったときには言葉も出ませんでした。(自然保護監視員 浜辺正篤)