じぇじぇ!
じぇじぇじぇ!
じぇじぇじぇじぇっ!
こんな光景を目の当たりにすると、日野郡のある地域では「ぞんぞがつく」と言ったりします。気味悪くて身震いする、というような意味です。
共通語で言うと「虫ずが走る」に近いでしょうか。
けれども、同じ光景を目の当たりにし、身震いして喜ぶ人もいます。中には感極まって「可愛いなあ」などとつぶやいたりする人もいます。
それが“ニホンミツバチ愛好家”と呼ばれる人種です。
そんな人種の集まり、「ニホンミツバチの会」は今年5月、日野町で発足しました。
設立趣旨は「ニホンミツバチの住む里山づくり」。
と言うと、なんだか堅苦しい団体のように思えますが、要はニホンミツバチを捕獲して(これが難しく、また面白いところでもあるのですが)飼育し、貯まった蜂蜜を美味しくいただいちゃおう、というグループです。
じゃあ、偉そうに「里山づくり」なんて言うなよ、と言い返されそうですが、野生のニホンミツバチを飼う(あるいは、飼わせていただく)ということは、否応なく、自然と人間との関わりや里山での人間の暮らしについて考えざるを得なくなるはず…というのが会の狙いです。
というわけで、活動は順調です。
まずは定例会の開催。会員同士の交流を深め、今後の活動計画を練り上げる会合です。
専門家を講師に迎え、現地研修も続けています。
町民を対象にした講演会も開催しました。題して「ニホンミツバチに学ぶ里山エコロジー」。
参加者は日野町長以下30数名で、この講演会をきっかけに会員数が一気に倍増、16名になりました。
巣箱作り教室も開きました。
そして、これがいちばん楽しい作業、ハチミツの収穫です。
これも実地研修です。
金塊のごとく輝ききらめくハチミツの塊。採集したばかりです。
ミツバチが作り出す蝋(ろう)製の貯蔵庫に、たっぷりとハチミツが詰まっているのです。
蝋ごと口に含むと、何とも言えぬ上品な甘さが口中いっぱいにじゅわーっと広がり、それを追いかけるようにして蜜の香りが広がっていきます。
蜜を舌に絡めるようにしてゆっくりと呑み込み、そしてまたゆっくりと呑み込みます。
口に残った蝋は、すぐに吐き出してはいけません。じんわりと噛みしめれば、至福の瞬間はまだまだ続きます。
ハチミツを賞味しながらの歓談が続いていますが、さて、こんな美味しい研修会が開かれた場所はというと…
伯耆町のとある地区に位置するニホンミツバチ農園。その名を「にほんみつばちANN」といいます。
農園主は「ニホンミツバチの会」の顧問格で、会の講師を務めている安田道夫さん。
蜂の群を30群以上も飼育しておられ、ニホンミツバチの飼育においては県下有数の飼育者であり研究家です。
さてさて、ニホンミツバチの会は、上記のような美味しい活動ばかりをしているわけではありません。
こんなこともやっています。
写真は日野高校の校舎前の田んぼです。というか、元田んぼだった場所です。
3年間放置され、こんな状態になっていました。
この土地を借りてきれいに草を刈り、そして耕し、レンゲの種をまこうというのです。
この日は会員9人の他に、島根大学の学生サークル「でんでん村」の2人と日南町の住人1人がボランティア参加してくれました。
草刈り機を使うのは初めてという女子学生、みんな寄ってたかって教えたがります。
草刈りが終われば、全員で種まき。
そうそう、会員たちはまた、自分が所有する休耕地でもレンゲの種をまく活動をしています。
作業終了後は、おにぎりと猪鍋とナメコ汁のお昼ごはん。
女子学生もお腹いっぱい食べました。また来てよね。
猪鍋を囲んで、今後の計画に話の花が咲きます。
種まきから20日後、田んぼには小さな目がたくさん顔を出していました。
来年の春には日野高校の通学路から、一面紫に咲き誇るレンゲ畑が望めることでしょう。
そして、そこでは花々の間をニホンミツバチが飛び交っているはずです。
ぜひ、そうなってほしいものです。
会員たちの勝負は来春、ミツバチが分蜂する季節です。分蜂群を上手に巣箱へと誘導しなければなりません。
まだ蜂群を持っていない会員が多いニホンミツバチの会は、これから冬に入っても猛勉強が続きます。楽しい猛勉強です。
日野振興局 2013/11/18