降雪の少ない今年の日野郡ですが、ここは県内で一、二を争う豪雪地帯。何の遠慮もなくこんな風景が広がっています。どこでしょう?
日南町の阿毘縁(あびれ)地区です。
一面真っ白の中、なにやら黒い人影が・・
近づいてみると、ビニールハウスの屋根に積もった雪を掻き下ろしている人でした。
この人、増井敏文さん。
日南町で2軒だけという専業花卉(かき)農家です。
増井さんは広島市の出身。花屋さんで働いていましたが、自分もこんなきれいで可愛い花を育ててみたいという気持ちが募り、インターネットで見つけた日南町の第1期農業研修生に応募したのです。
それが6年前のこと。地元のベテラン花卉農家Aさんの指導を受けながら2年間の研修を終えて独立しました。
しかし、まだまだ初心者、思い通りにはなかなかいきません。試行錯誤の日々が続いています。
増井さんが育てる花は、みんな小さくて可愛らしい鉢植えの花です。花屋さんで働いている時から気に入っていた花たち。
しかし、今は冬。しかも、ここは県内有数の寒冷地。ビニールハウス内とはいえ、花苗の成長はとても遅く、ビジネスとしては「冬は毎日の食事代が稼げる程度」なのだそうです。
だからやむなく、冬の間は週に3~4日ほど、県境を越えて広島県のスキー場にアルバイトに出かけているのですが、やっぱり花作りの方がはるかに楽しいわけで・・。
写真のハウスでは一面に金魚草が育っていました。こんなふうに、育ち具合を眺めているだけでもワクワクしてくるとか。
春はペチュニア、秋はパンジー、ビオラ、金魚草。この4品種が増井農園の主役ですが、冬の間もハウス4棟すべてが稼働し、たくさんの品種が育っています。
これは葉に特徴のあるネモフィラ。
こちらは白妙菊(しろたえぎく)。葉の色と形が面白く、寄せ植えに使われます。
春菊の仲間のノースポール。可憐です。その名の通り冬に強い品種で、3月が出荷のピークになります。
こちらのハウスでは、一粒ずつ根気よく蒔いた小さな種が、ようやく芽を出し始めていました。冬季は途中で成長が止まるので、花が咲いて出荷できるまで4か月もかかります。
花にやる水は近くの小川からポンプとホースで汲みます。冷たいです。
さて、増井さんはIターン7年目に入る今年、これまでの試行錯誤の経験をもとに、新機軸に着手しました。
それは、これまでやって来た作業手順をがらりと変えたことです。去年までは、ひとつの同じ作業を1日中、もしくは何日間もかけてやっていたのですが、今年からは例えば種まきを数時間、次に移植を数時間、それから雑草取り、というふうに1日の作業工程を細かく分けることにしたのです。
こうすることで作業の効率化が図られるだけでなく、作業する人間の気分転換にもなり、何よりも最も状態の良い時の花を毎日出荷できるのだと言います。
「想い通りにいけば、みなさんに本当に良い状態の花を届けられるし、収入も伸ばせると思います。やってみないとわからないけど(笑い)」
増井さんの花は主に大阪市や広島市に出荷されていますが、ハウスを訪ねて来られる方には直売もしているそうです。また、来年オープン予定の「道の駅にちなん(仮称)」に出品するそうなので、お楽しみに。
日南町でたった2軒の専業花卉農家。日野郡全体でもとても貴重な存在だと思います。頑張ってください。
日野振興局 2015/03/06