平成27年2月6日
第1 審議会の結論
実施機関の決定は妥当である。
第2 本件審査請求に至る経緯
平成26年8月3日(5日受理) 公文書開示請求
8月18日 公文書不存在決定通知
8月21日 行政不服審査法第5条の規定による審査請求
第3 開示請求の内容等
1 開示請求の内容
鳥取県警察本部に資料が現存する限りのア~キを毎年ごとに区切った資料データ。
このうち警察職員(以下、事務官も含む)への反則告知件数および交通反則行為の自主申告件数のみ。
ア 該当警察職員数
イ 取締り件数(罰則を伴う違反A)
ウ 反則告知件数(Aのうち青キップ)
エ 反則金納付額
オ 任意取調件数
カ 検察への書類送致数
キ 交通反則制度に係る警察職員の分限および懲戒処分
2 実施機関の決定内容
(1) 不存在(鳥監察発第307号)
〔公文書の件名〕
鳥取県警察本部に資料が現存する限りのア~キを毎年ごろに区切った資料データ。
イ 取締り件数(罰則を伴う違反A)
ウ 反則告知件数(Aのうち青キップ)
エ 反則金納付額
オ 任意取調件数
カ 検察への書類送致数
キ 交通反則制度に係る警察職員の分限および懲戒処分
(2) 全部開示(鳥監察第306号、当該決定に対して審査請求は行われていない。)
〔公文書の件名〕
監察だより(平成26年8月5日付第33号)
※ 1のアの文書に該当
3 実施機関の不存在決定の理由
請求のあった前記イ、ウ、エ、オ、カの文書については、取りまとめていないため、またキについては、いずれも処分を行っておらず、公文書を保有していません。
第4 審査請求の理由
不存在は通常想定できることではないため、文書開示を願います。
また、公文書とは鳥取県情報公開条例の趣旨、解釈及び運用 第2条(定義)関係 第2条第2項公文書4に次のような指針があります。
『・・・公文書等を各担当課(室)等において組織として共用している実質を備えた状態、すなわち、各担当課(室)等において業務上の必要性から利用・保存している状態のものをいう。具体的には次のようなものがあげられる。
(例)台帳、業務日誌、事務引継書、予算要求書、記録簿、会議資料等』
警察庁は毎年、『警察白書』を発行されておられます。
そのなかで警察庁交通局が取りまとめた、統計資料 5-18~5-21の資料では以下のイ~カが取りまとまれていることは明らかです。
イ 取締り件数(罰則を伴う違反A)
ウ 反則告知件数(Aのうち青キップ)
エ 反則金納付額
オ 任意取調件数
カ 検察への書類送致数
イ~カの資料作成時に、警察職員が含まれていれば、統計をとるのが当然と思われますので、文書の開示をお願いします。
一般人より高い倫理観の求められる警察職員であってもわいせつ犯罪・横領等、決してなくならない事実があります。 交通取締も同じであり、聖人君主であっても、現在の現状に反した「取締のための交通取締」を免れることは不可能だと推測されます。
ですが、警察職員の方は、限りなく、交通犯罪を0に近くすることができます。それは日々の自己注意に加えて、交通取締が行われる場所を暗に自覚しておられるからです。
しかしながら、交通取締件数の中で警察職員が対象となることも0件ではないはずです。
公文書開示請求により「警察職員の自主申告のみ」と唱ったのは、警察職員は、検挙される状況(法定速度を毎時1km以上の速度超過)をされた以上、自主申告しか交通反則制度の適用にできない現状を憂いを表したものです。
キ交通反則制度に係る警察職員の分限及び懲戒処分に関して
警察職員の「法定速度を毎時1km以上の速度超過」は限りなく0件に近いケースであっても0件でない以上、分限及び懲戒処分を考えるのはしごく当然と思われます。処分を行っていない、との回答をいただきましたが、交通違反の現状を黙認しているとしか考えられません。再度、なぜ処分が行われていないのか、現状を確認し、公開できうるべき公文書を再考されることを期待します。
第5 実施機関の説明とそれに対する審査請求人の意見
1 本件請求の対象公文書の性格
本件請求は、「警察職員(事務官を含む。)への反則告知件数及び交通反則行為の自主申告件数に係るア該当警察職員数、イ取締り件数(罰則を伴う違反A)、ウ反則告知件数(Aのうち青キップ)、エ反則金納付額、オ任意取調べ件数、カ検察への書類送致数、キ交通反則制度に係る警察職員の分限及び懲戒処分について、鳥取県警察本部に現存する限りの資料データ」の開示を求めていると認められる。
本件請求の対象とされた公文書について、「警察職員(事務官を含む。)への反則告知件数及び自主申告件数に係るイ取締り件数(罰則を伴う違反A)、ウ反則告知件数(Aのうち青キップ)、エ反則金納付額、オ任意取調べ件数、カ検察への書類送致数」は、取りまとめておらず、該当する公文書を作成していないため、不存在決定を行ったものであり、「キ交通反則制度に係る警察職員の分限及び懲戒処分」については、処分を行っておらず、公文書を保有していないため不存在決定を行ったものである。
2 不存在決定とした理由
ア 取締件数、反則告知件数、反則金納付額、任意取調件数、検察への書類送致数
○ 取締り件数(罰則を伴う違反A)
警察職員に特化した取締り件数をとりまとめる必要がないため、不存在である。
○ 反則告知件数(Aのうち青キップ)
警察職員に特化した反則告知件数を取りまとめる必要がないため、不存在である。
○ 反則金納付額
違反者から納付された反則金は、日本銀行各支店が収納日ごとにとりまとめ、領収済通知書として警務部会計課に送付される。
警務部会計課における反則金収納事務手続きは、この領収済通知書に基づき、
・告知番号、納付金額、納付日、告知日、生年月日及び納付種別を反則金端末にデータ入力
・収納日ごとの収納金額を取りまとめて歳入調査決定決議書の作成である。
審査請求人は、資料作成時に、警察職員が含まれていれば、統計をとるのが当然であるとして「警察職員の自己申告のみ」分を開示請求しているが、反則金納付事務は、納付された反則金の取りまとめが業務であり、違反者の住所、氏名及び職業別についての取りまとめは行う必要がないため、審査請求人が求める資料データは保有していない。
なお、日本銀行各支店から送付されてきた領収済通知書は、「納付者通知番号、告知日、告知所属名、住所、氏名、生年月日、金額、納付期限及び領収日」が記載されているもので、領収済通知書で職業が判明するものではない。
○ 任意取調べ件数及び検察への書類送致数
任意取調べ件数及び検察への書類送致数について、任意取調べとは、警察官は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとされており、捜査については、その目的を達するため必要な取調べをすることができるが、この際、被疑者、被害者、目撃者等の参考人を強制の処分を伴わないで取り調べることである。
検察への書類送致とは、警察官が捜査を遂げた結果を書類及び証拠物とともに検察官に送致することである。
本県警察では、任意取調べ件数及び検察への書類送致数について、特段の必要性が無いことからデータを蓄積していないため審査請求人が求める資料データは保有していない。また、警察職員に特化して任意取調べ件数及び検察への書類送致数について取りまとめる必要がないため、審査請求人が求める資料データは保有していない。
イ 交通反則制度に係る警察職員の分限及び懲戒処分
交通反則制度に基づく交通違反を処分事由とした懲戒処分及び分限処分はないことから、文書が存在せず、不存在決定をしたものである。
〔審査請求人の意見〕
交通反則制度における罰則対象者は年間800万人を超え(警察庁調べ)、自動運転免許保持者8,000万人の約1割に達する。その中に警察職員が含まれていないということは、物理的に有り得ないことである。仮に警察職員における交通違反の件数が0件であるならば、常識的な感覚からすれば、県民は警察組織に不信感を抱く結果となり得ない。0件という物理的に有り得ない不存在決定は無効であるが、次の説明も求める。
○ 取締件数(罰則を伴う違反A)
○ 犯則告知件数(Aのうち青キップ)
○ 任意取り調べ件数及び検察への書類送致数
上記、3事項に関して、鳥取県公安委員会は「警察職員に特化した・・・をとりまとめる必要がないため、不存在である」との理由を説明している。
鳥取県警察職員懲戒等取扱規程
平成19年12月20日 本部訓令第26号 改正 平成22年本部訓令12号、
平成25年本部訓令第18号には次のとおり指針がある。
(職員の責務)
第2条の2 次の各号に掲げる職員に規律違反があると認める職員(監督者を除く。)は、速やかにその旨をそれぞれ当該各号に掲げる者に報告するよう努めなければならない。
(1) 自らが所属する所属の職員 所属長又は警務部監察監室長(以下「監察監室長」という。)
(2) その他の職員 監察監室長
(監督者の責務)
第3条の3 監督する職員に規律違反があると認める監督者(所属長を除く。)は、直ちにその旨を所属長に報告しなければならない。ただし、監督者自らが指導することで足りる程度に軽微な規律違反があると認める場合は、この限りではない。
(所属長の責務)
第3条 所属の職員に規律違反がある認める所属長は、口頭及び書面により、直ちにその旨を監察監室長に報告しなければならない。ただし、所属長自らが指導することで足りる程度に軽微な規律違反があると認める場合は、この限りではない。
この趣旨を読み取ると、警察職員の違反行為は所属長および監督者への報告が義務であり、警察職員に特化したとりまとめをする必要がないということは、当てはまらない。また、極めて軽微な規律違反がある場合の例外も説いているが、これも次のように当てはまらない。
鳥取県警察本部は再三に渡って「交通反則制度における軽微な違反と現場の警察官の解釈する重大な違反とは異なる」との説明をしている。その旨で言えば、青キップは交通反則制度における「軽微な違反」ではあるが、鳥取県警察本部は現場の警察官の判断によって重大な違反になりうるものであり、青キップの軽微な交通反則であっても報告義務が生じる。
この一連の、趣旨は県民の常識に照らして得られる結果である。
鳥取県公安委員会がこの意見書を受け、「存在しないものは存在しない」とあくまで建前を貫き通されるならば、なぜ警察官の交通違反が0件である不思議な現象が生じているのであれば、県民誰もが納得のいく説明を求める。
参考・・・『鳥取県情報公開条例の趣旨、解釈及び運用』では次のように明記されている。
第12条 第2 解釈・運用 2
本条により開示請求を拒否するときは、第7条第1項の規定に基づき決定を行うこととなるが、これは行政処分であって、争訟の対象となるものであり、必要にして十分な理由を提示することが義務づけられる。本条の適用は、あくまで例外的なものであり、厳格に解釈し、濫用することがないよう留意しなけらばならない。
第6 本件審査請求審議の経過
平成26年9月16日 諮問書を受理
10月9日 実施機関が理由説明書を提出
11月12日(13日受理) 審査請求人が意見書を提出
11月18日 審議
※ 審査請求人は、本審議会に対する口頭による意見の陳述を求めていない。
第7 審議会の判断
1 第3の2のイ、ウ、エの公文書
実施機関から理由説明書の提出の外、口頭による事実の陳述を求めたが、説明に不審な点はなく、また、これら公文書の存在を裏付ける発言も認められず、当該公文書が存在しないとする実施機関の決定を覆すに足りる事実は確認されなかった。
なお、審査請求人が主張するとおり、平成26年警察白書の「5-18 交通違反取締り件数の推移」「5-19 違反種別交通違反取締り状況」「5-20 道路交通法以外の交通関係法令違反の検挙状況」「5-21 主な道路交通法違反の取締り状況」からは交通反則取締り件数が確認され、また、実施機関の説明からは、警察本部において白書に記載された数値及び反則金納付額の鳥取県全体の数値を把握していることが確認されたが、全体の数値が存在するからといって、警察職員に限った数値を把握しなければならない理由はなく、審査請求人が求める公文書が存在する証拠とはなり得ない。
2 第3の2のオ、カの公文書
実施機関から理由説明書の提出の外、口頭による事実の陳述を求めたが、説明に不審な点はなく、また、これら公文書の存在を裏付ける発言も認められず、当該公文書が存在しないとする実施機関の決定を覆すに足りる事実は確認されなかった。
なお、審査請求人は、1と同様に警察白書を根拠に当該公文書の存在を主張するが、これら統計に任意取調件数又は検察への書類送致数に当たるものは確認されなかった。
3 第3の2のキの公文書
実施機関からは理由説明書の提出の外、口頭による事実の陳述を求めたが、説明に不審な点はなく、当該公文書が存在しないとする実施機関の決定を覆すに足る事実は確認されなかった。
なお、審査請求人の指摘するとおり、鳥取県警察職員懲戒等取扱規程第2条の2には、職員の規律違反に関する報告の規定が置かれている。また、同規程第2条第4号によれば、規律違反とは「職員が地方公務員法第29条第1項各号のいずれかに該当する場合をいう」とあり、地方公務員法第29条第1項各号は職員を懲戒処分できる場合を定めた規定であることを考えれば、第2条の2は懲戒処分に該当する行為があった場合に報告を要することを定めたものと解する。
他方、職員の懲戒処分の基準は「懲戒処分の指針の改正について(通達)」に定められており、それによれば、懲戒処分の対象となる道路交通に関する規律違反行為は下記のとおりであり、重大な違反行為が処分の対象となることが見て取れる。
規律違反行為の態様 |
懲戒処分の種類 |
酒酔い運転をすること |
免職又は停職 |
政令酒気帯び運転で人身事故を起こすこと |
免職又は停職 |
政令酒気帯び運転をすること |
免職、停職又は減給 |
ひき逃げをすること |
免職又は停職 |
当て逃げをすること |
停職又は減給 |
無免許運転をすること |
免職、停職又は減給 |
最高速度違反(非反則行為)であって悪質な違反をすること |
減給又は戒告 |
審査請求人は、一切の道路交通法違反について警察職員の違反行為がないことは有り得ないとして当該公文書の存在を主張しているが、そもそも審査請求人が開示請求を行った公文書は「交通反則制度に係る警察職員の分限及び懲戒処分の資料データ」であり、すべての違反行為に関するものではない。
警察本部が設置されて以降、そのような事実が一切なかったかどうかを確認することはできないが、道路交通法を率先して遵守すべき立場にある警察職員について、少なくとも公文書が存在する限りにおいて懲戒に該当する悪質な交通反則制度での違反の事実がないとしても、それが否定されるものではない。
なお、審査請求人と実施機関の主張を見ると、審査請求人が内心において開示を希望していた公文書と決定した公文書に相違があったとも考えられる。しかし、審査請求人が別に行った平成26年6月29日付けの請求及び平成26年7月26日付けの請求において、実施機関は公文書の特定のため審査請求人に対して架電と説明文書の送付を行い、それに対し審査請求人からは何らの応答がなかったことを考えれば、今回の請求において公文書開示請求書に記載された「公文書の件名又は内容」を文面のまま解釈して開示対象公文書の特定を行ったことは理解できる。