平成27年2月6日
第1 審議会の結論
実施機関の決定は妥当である。
第2 本件審査請求に至る経緯
平成26年8月10日(11日受理) 公文書開示請求
8月22日 公文書不存在決定通知
8月24日 行政不服審査法第5条の規定による審査請求
第3 開示請求の内容等
1 開示請求の内容
ア 鳥取~米子間の山陰道および国道9号線におけるすべての法定速度表および算出根拠文書
以下は、【平成26年4月2日各警察庁交通部長・警察本部長宛(警察庁丁規発第32号、丁交企発第42号、丁交指発第50号)最高速度規制の点検・見直し等の更なる推進について(通達)】受けての内容になります。
イ 鳥取県警察本部管轄内の一般道路における規制速度の点検・見直しにつき、対象路線の選定文書
ウ 現行規制速度と実勢速度との乖離状況等計測表
エ 各都道府県警察が作成すべき年度毎に現行規制速度の見直しに係る実施計画策定書類
2 実施機関の決定内容
(1) 不存在(鳥交規発第268号)
〔公文書の件名〕
ウ 現行規制速度と実勢速度との乖離状況等計測表
エ 各都道府県警察が作成すべき年度毎に現行規制速度の見直しに係る実施計画策定書類
(2) 全部開示(鳥交規発第267号、当該決定に対して審査請求は行われていない。)
〔公文書の件名〕
ア 交通規制議決抄本
イ 交通規制基準抜粋
ウ 最高速度規制見直し対象路線報告様式
※ 1のアイの文書に該当
3 実施機関の不存在決定の理由
該当する公文書を作成等していないため。
第4 審査請求の理由
公文書開示請求(3)現行規制速度と実勢速度との乖離状況等計測表が不存在であれば警察庁交通局における通達内容と齟齬が生じるため、文書開示を請求します。
公文書とは鳥取県情報公開条例の趣旨、解釈及び運用 第2条(定義)関係 第2条第2項公文書 4に次のような指針があります。
『・・・公文書等を各担当課(室)等において組織として共用している実質を備えた状態、すなわち、各担当課(室)等において業務上の必要性から利用・保存している状態のものをいう。具体的には次のようなものがあげられる。
(例)台帳、業務日誌、事務引継書、予算要求書、記録簿、会議資料等』
警察庁丙規発第24号、丙交企発第144号、丙交指発第38号 平成21年10月29日 警察庁交通局長による通達に次の事項が示されています。
2 交通実態の調査・分析
(1) 交通実態の調査○ 交通実態(実勢速度・・・等を調査し、違反状況を含む当該道路の交通実態を把握すること。
6 集中的実施期間及び報告
(1) 集中的実施期間
重点交通規則に係る本通達に基づく取組みについては、平成23年度末までに計画的かつ集中的に実施することとする。
平成23年度末までに、上級行政庁である警察庁からの通達では、実勢速度を調査・把握する命令を発しています。下級行政庁がこれを反故にすることは懲戒対象となる行為だと思われますので、実勢速度の調査はなされているものと思われます。
現行規制速度は鳥取県警察本部にて把握できている内容であるため、平成23年度末までに作成された実勢速度表を用いれば、(3)の公文書として成り立ちます。
速やかな開示をお願いします。
第5 実施機関の説明とそれに対する審査請求人の意見
1 本件開示請求の対象公文書の性格について
本件開示請求は、平成26年4月2日付け警視庁交通部長、各道府県警察本部長宛(警察庁丁規発第32号、丁交企発第42号、丁交指発第50号)「最高速度規制の点検・見直し等の更なる推進について(通達)」に基づき、鳥取県警察本部において、現行規制速度と実勢速度の計測結果との乖離状況を一覧表として作成した資料、あるいはそれに類する資料の開示を求めているものと認められる。
したがって、本件開示請求の対象とされた「現行規制速度と実勢速度との乖離状況等計測表」については、鳥取県警察本部において該当する公文書を保有していないため不存在決定を行ったものである。
2 不存在決定とした理由
(1) 「最高速度規制の点検・見直し等の更なる推進について(通達)」について
本通達は、警察庁交通局交通規制課長、同交通企画課長及び同交通指導課長の連名で発出されたもので、警察庁が各都道府県警察に対して
○ 最高速度規制の点検・見直し等の推進
○ 最高速度規制に関する国民の理解を確保するための対策の推進
○ 運転者に適切な交通行動を促すための対策の推進について、その具体的推進要領等を示達する内容となっている。
その中で、最高速度規制の点検・見直しに関しては
○ 道路交通の安全と円滑を図り、道路交通に起因する障害を防止する目的で実施している最高速度規制について、交通規制を実施した当時と比較して、道路改良により安全性が確保されたり、交通量の減少等の変化が生じたため、実勢速度が現行規制速度と乖離しているものが見られるところ
○ このような交通実態に適合しなくなった現行速度規制を放置することは、最高速度規制のみならず交通規制全般に対する信頼や国民の遵法意識を損なうこととなりかねないため、交通実態に即した適切な見直しが図られるべきとの基本的な考え方が示されている。
さらに、一般道路における規制速度の点検・見直しの実施に際し、対象路線の選定に当たっては、現行規制速度が40キロメートル毎時又は50キロメートル毎時の区間について
○ 現行規制速度と交通規制基準(交通規制を実施する場合の標準としている基準)で示された基準速度との整合性を確認し、下方補正を行っている場合には、その合理性について判断した上で、見直し対象路線とすること
○ 現行規制速度と実勢速度を確認し、おおむね20キロメートル毎時を超えて乖離している場合、又は車道・歩道が分離された道路で、おおむね10キロメートル毎時を超えて乖離している場合には、見直し対象路線とすること等を検討するよう示されている。
(2) 鳥取県警察における取組状況
鳥取県警察では、本通達に基づく取組みとして、現行規制速度が40キロメートル毎時及び50キロメートル毎時の一般道路の区間をリストアップした上で、現在、各区間について
○ 現行規制速度と基準速度との整合性
○ 現行規制速度と実勢速度との乖離状況
等についての点検、調査を行い、現行規制速度の見直しの検討を行う対象路線(以下「見直し対象路線」という。)の選定に向けて作業中であり、警察本部では、本年7月に、本年6月末現在における見直し対象路線の選定状況について、各警察署から
○ 40キロメートル毎時の区間数、区間距離(内訳として、おおむね20キロメートル毎時を超えて乖離、歩車分離かつおおむね10キロメートル毎時を超えて乖離、その他に分類)
○ 50キロメートル毎時の区間数、区間距離(内訳として、おおむね20キロメートル毎時を超えて乖離、歩車分離かつおおむね10キロメートル毎時を超えて乖離、その他に分類)について報告を受けている。
なお、今後の予定として、警察本部では、本年10月下旬ころに、見直し対象路線の選定結果について、各警察署から同様の内容で報告を受けることとしている。
(3) 不存在決定とした理由
前記(2)イのとおり、警察本部が各警察署から見直し対象路線の選定に関して報告を受ける内容は、各警察署ごとの
○ 40キロメートル毎時の区間数、区間距離
○ 50キロメートル毎時の区間数、区間距離
とその内訳のみである。
よって、本件開示請求に係る現行規制速度と実勢速度との乖離状況等計測表については、警察本部において保有しておらず、不存在の決定をなしたものである。
〔審査請求人の意見〕
審査請求した内容は、(3)現行規制速度と実勢速度との乖離状況等計測表であるが、内容としては、最高速度規制の点検・見直し等の更なる推進について(通達)「交通事故抑止に資する交通指導取締り・最高速度規制等の更なる推進について」(平成26年3月31日付け警察庁丙交企発第49号、丙交指発第13号、丙規発第13号)を受けたものであり、その趣旨は一般道路における最高速度規制の点検・見直し等が通達されたところである。最高速度規制の点検・見直しである。
対象路線の選定結果の取りまとめが各警察署で出来ている以上、公文書というほかないものである。
鳥取県情報公開条例の趣旨、解釈及び運用 第2条(定義)関係 第2条第2項公文書 4には次のような指針があります。
『・・・公文書等を各担当課(室)等において組織として共用している実質を備えた状態、すなわち、各担当課(室)等において業務上の必要性から利用・保存している状態のものをいう。具体的には次のようなものがあげられる。
(例)台帳、業務日誌、事務引継書、予算要求書、記録簿、会議資料等』
これによれば、警察署が既に保有している実勢速度表と現行規制速度表(各称は違えど)を単体で公開したとしても、乖離状況計測表として成り立つものである。
それを、正確な名称の乖離表がないからといって拒否する姿勢に対し、反論します。
3 「審査請求の理由」について
審査請求の申立人は、審査請求文書中「5審査請求の理由」欄において、「警察庁丙規発第24号、丙交企発第144号、丙交指発第38号 平成21年10月29日警察庁交通局長による通達」に言及した上で、同通達を根拠として、
○ 平成23年度末までに、上級行政庁である警察庁からの通達では、実勢速度を調査・把握する命令を発している
○ 現行規制速度は鳥取県警察本部にて把握できている内容であるため、平成23年度末までに作成された実勢速度表を用いれば、本件開示請求の対象公文書として成り立つ
旨を申し立てている。
本通達は、平成21年10月29日付け各地方機関の長、各都道府県警察の長宛(警察庁丙規発第24号、丙交企発第144号、丙交指発第38号)「より合理的な交通規制の推進について」であり、警察庁が各都道府県警察等に対して管轄区域内の道路について交通実態を調査・分析し、当該道路における交通規制の合理性を点検した上で、必要に応じ道路交通環境の改善を図ることにより、より合理的な交通規制の推進に努めるよう示達している。
本通達に基づく取組みでは、最高速度規制、駐車規制並びに信号機の設置及び信号制御の3つを重点として、交通規制の種類に応じ、当該交通規制を実施している道路における
○ 交通実態(実勢速度、路上駐車実態、交通量等)
○ 違反の実態
○ 交通指導取締りの状況
○ 交通事故発生状況
等を調査し、違反状況を含む当該道路の交通実態を把握した上で、その実態を分析することにより、交通規制の合理性を点検するよう示されている。
以上のとおり、最高速度規制に係る本通達に基づく取組みについては、実勢速度の調査・分析を前提とするものであるが、その取組みは平成23年度末までに計画的かつ集中的に実施することが示されており、現時点で、警察本部において実勢速度の調査結果に関する文書に該当する文書を保有しておらず、よって、審査請求の申立人が主張する平成23年度末までに作成された実勢速度表といった本件開示請求の対象公文書は存在しないものである。
〔審査請求人の意見〕
(平成21年10月29日付け警察庁丙規発第24号、丙交企発第144号、丙交指発第38号)により、平成23年度末までに計画的かつ集中的に実施してきたところであるはずであるのに、今回の鳥取県警察本部の意見では、現時点で、実勢速度の調査結果に関する文書を保有していない、との回答を得た。通達内容では、
○ 交通実態(実勢速度)の項目があるにも関わらず、調査結果の文章を保有していない理由がみえない。これを文言上読み取れば、上級行政庁の命令に背いて、調査を行っていないこととなるが、なぜ調査結果の文章を保有していないかの理由が全く述べられていない。
『鳥取県情報公開条例の趣旨、解釈及び運用』では次のように明記されている。
第12条 第2 解釈・運用 2
本条により開示請求を拒否するときは、第7条第1項の規定に基づき決定を行うこととなるが、これは行政処分であって争訟の対象となるものであり、必要にして十分な理由を提示することが義務付けられる。本条の適用は、あくまで例外的なものであり、厳格に解釈し、濫用することがないよう留意しなければならない。
実勢速度の項目を調査すべく通達が発されているのに、鳥取県警察本部が調査結果文書を保有していない理由を、一般人に分かりうる言葉での説明を求める。
第6 本件審査請求審議の経過
平成26年9月26日 諮問書を受理
10月24日 実施機関が理由説明書を提出
11月 4日(5日受理) 審査請求人が意見書を提出
11月18日 審議
※ 審査請求人は、本審議会に対する口頭による意見の陳述を求めていない。
第7 審議会の判断
実施機関から理由説明書の提出の外、口頭による事実の陳述を求め、審査請求人の指摘する平成21年10月29日付け警察庁文書による取組は平成23年度末までに終了したこと、平成26年4月2日付け警察庁通達による取組は10月30日に現行速度の見直しの検討を行う対象路線の区間数・区間距離を警察庁に報告したことを確認したが、実勢速度を記録した公文書の存在を裏付ける発言等、当該公文書が存在しないとする実施機関の決定を覆すに足る事実は確認されなかった。
〔参考意見〕
今回の一連の諮問(26-1号~26-5号)に関しては、対象公文書の特定等において、実施機関が審査請求人に対する確認、説明を行うことができなかったことにより発生したと考えらる不服が多数認められた。
通常、公文書開示の事務においては、開示請求者が公文書の件名まで特定することは困難なこと等により、実施機関が開示請求者へ確認を要する場合も多いが、一連の事案では、審査請求人は実施機関の確認のための架電等に応答していないとのことであった。仮に審査請求人が実施機関の確認に応じていれば、より本人の内心の希望に近い開示を行うことが可能であったと思料され、審査請求人と実施機関の意思疎通が十分でなかったことにより、結果として同人が望むものと異なる決定が行われたのであれば遺憾に思う。
なお、審査請求人は、一連の審査請求の中で、公文書開示請求に伴う開示決定等の行政処分に対する意見ではなく、交通反則制度等に対して見解を求める意見も付していたところであるが、当該事項については、本審議会が所管するものではないため、意見は控える。