平成27年6月29日
第1 審議会の結論
開示請求拒否は適当でない。第7に記載の審議会の判断を踏まえ、改めて開示決定等をすべきである。
第2 本件審査請求に至る経緯
平成26年10月11日(14日受理) 公文書開示請求
11月27日 公文書開示請求拒否決定通知
12月7日 行政不服審査法第5条の規定による審査請求
第3 開示請求の内容等
1 開示請求の内容
ア 平成26年7月23日に●●が説明した「録音・録画の拒否は鳥取県警察本部の内部規律で決まっている」という明文化された根拠条文。(規則・取扱規程等、名称はなんであれ)
イ 「任意取調においては録音・録画は全国的に一切禁止されている」ということがわかる根拠条文(通達・規則・取扱規程等、名称はなんであれ)
2 実施機関の決定内容
開示請求拒否決定
3 実施機関の決定の理由
鳥取県情報公開条例第12条第5号に該当
当該公文書が存在しているか否かを答えるだけで、鳥取県情報公開条例第9条第2項第4号及び第6号の非開示情報を開示することとなるため。
第4 審査請求の理由
(1) 審査請求人は、取調べの内容の開示請求をしているわけではなく、【取調べ時に録音・録画の不可という根拠条文】の開示を請求しているのであり、これを公開することは、鳥取県情報公開条例第9条第2項第4号および6号には該当しない。
また、仮に上記に該当したとしても、『鳥取県情報公開条例の趣旨、解釈及び運用』第10条を読み解けば、請求人が知りたい条文のみ開示することは可能である。
部分開示できない理由が見当たらない。
『鳥取県情報公開条例の趣旨、解釈及び運用』
第9条(開示義務)関係
第2 解釈・運用
2 「当該公文書を開示しないものとする」とは、請求のあった公文書に本条第2項各号のいずれかに該当する情報が記録されている場合を除き、実施機関に公文書を開示しなければならない義務を課すものである。
3 本条第2項各号に該当する非開示情報が記録されている公文書については、当該公文書のすべてが開示できないとするものではなく、部分開示となる場合や、開示請求の時期によっては後日公文書の開示ができる場合もあり得ること、さらに第11条に規定する公益上の理由による裁量的開示により開示ができる場合もあり得ることに留意する必要がある。
第10条関係
第1 趣旨
1 本条第1項は、原則公開の趣旨から、可能な限り公文書を開示するため、請求に係る公文書に開示しないことができる情報が記録されている場合であっても、非開示部分とそれ以外の部分とを容易に分離でき、かつ、当該分離により請求の趣旨を損なわれることがないと認められるときは、当該公文書の全体を非開示とするのではなく、非開示部分を除いて公文書の開示をする趣旨である。
2 本条第2項は、開示請求に係る公文書に個人情報が記録されている場合に、個人が識別される情報とそれ以外の部分とを区分して取り扱うべき場合及びその場合における非開示とする範囲について定めたものである。
第2 解釈・運用
1 「容易に分離でき」とは、請求のあった公文書から開示しないことができる部分とそれ以外の部分とを多くの費用と時間をかけずに、かつ、当該公文書を汚損又は破損することなく分離できることをいう。
2 「請求の趣旨を損なわない」とは、請求の趣旨から判断し、開示請求者が知りたいと思う公文書の内容を相当程度充足すると判断できることをいう。
(2) 鳥取県警察本部が主張する鳥取県情報公開条例第9条第2項第6号においては、審査請求人の利益(今後、刑事訴訟のおそれがあることを考慮)との比較衡量がうたってあるが、公益性のみ主張し、請求人(後の刑事訴訟の被告)の権利との比較衡量の跡が見られない。
また、鳥取県警察本部の主張する『公益性』は法的保護に値する蓋然性が要求される程度のものではない。なぜなら公益の必要性ではなく、警察本部の業務上の支障という取締側の都合であるから。
第9条第2項第6号(事務又は事業の遂行に関する情報)関係
第2 解釈・運用
2 「適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」に該当するかどうかの判断に当たっては、「適正」という要件を判断するに際しては、開示のもたらす支障のみならず、開示のもたらす利益も比較衡量しなければならない。「支障」の程度は、単に名目的なものでは足りず、実質的なものであることが要求されること、また、「おそれ」の程度も単に可能性が存在するだけでは足りず、法的保護に値する蓋然性が要求されるものであるので、この規定の適用に当たっては留意する必要がある。
私の見解を補記致します。
鳥取県警察本部長による録音等の機材の持ち込み制限の主張は当然であり、よく理解しております。
しかしながら、日本は法治国家であり、国民の行動を強制的に制限するのであれば法律の明記が必要です。倉吉警察署が私を法定速度超過で取締されたのも、道路交通法という告示された法律があってのことです。
例を言えば、裁判の録音や撮影を裁判所は禁止していますが、それには刑事訴訟規則(公判廷の写真撮影等の制限)があるためです。
『第215条 公判廷における写真の撮影、録音又は放送は、裁判所の許可を得なければ、これをすることができない。ただし、特別の定めのある場合は、この限りではない』
これと同様に、従来から持込を断っておられるのであれば、法の根拠があるはずなので、それを教えてください。法に明記されていれば、速やかに従います。
同様の趣旨を、結審まで主張しますのでかならず回答がいただけるものと信じています。
また、どうしても理解できないことがあります。平成26年7月26日より
(1) 任意取調においては録音・録画は全国的に一切禁止されている
(2) またその根拠として鳥取県警察本部において内部規定がある
この質問を、都度繰り返させていただいており、鳥取県警察本部長は、(1)(2)について否定されず、当初の取締時の機材の持込を禁止する旨の回答を一貫しておられます。
納得して取調べに応じたいため、私の主張は「法的根拠を教えてください」という一点であるのに、なぜか根拠を明示じて頂けません。なぜ、根拠を開示されないのか?根拠条文を開示することで、鳥取県検察本部にとってどんなデメリットがあるのか?私にはまったく理解できません。
これらの文言をそのまま受け止めれば、上記開示請求拒否決定があった該当公文書については、すべてにおいて鳥取県警察における条例の拡大解釈および条例の濫用と思料される。
以上、鳥取県情報公開条例の趣旨に立ち返り、情報公開の全部非開示が正しいのか再度厳密に審査されることを望む。
また、拒否の理由として鳥取県警察本部が第12条第5号を提示しておられるのであれば、条文解釈にある「・・・必要にして十分な理由を提示することが義務づけられる。本条の適用はあくまで例外的なものであり、厳格に解釈し、濫用することがないよう留意しなければならない。」を文言どおり遵守し、最低限、申出人が納得のいく十分な説明および理由を附していただきたい。
第5 実施機関の説明とそれに対する審査請求人の意見
1 本件請求の対象公文書の性格
本件請求は、「平成26年7月23日に●●が説明した「録音・録画の拒否は鳥取県警察本部の内部規律で決まっている。」という明文化された根拠条文及び「任意取り調べにおいては録音・録画は全国的に一切禁止されている」ということがわかる根拠条文」の開示を求めているものである。
2 開示請求拒否決定とした理由
(1) 鳥取県情報公開条例第9条第2項第4号該当性について
鳥取県情報公開条例(以下「条例」という。)第9条第2項第4号は、公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報については非開示と規定している。
本件請求の対象とされた公文書について決定を行うことにより、特定の個人が、特定の日にちにおいて、●●から取調べについての説明を受けた事実及びその内容が肯定されることとなり、これが公にされた場合には同職員に対する誹謗、中傷等、あるいは捜査の遂行に対する妨害等がなされる可能性が否定できないところである。
このように公文書の存否を答えることにより特定の犯罪の捜査における行動に関する情報が公にされることは、捜査の迅速的確な遂行、事案の真相解明が困難になるなど公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認められるので、条例第9条第2項第4号に該当する。
(2) 鳥取県情報公開条例第9条第2項第6号該当性について
条例第9条第2項第6号は、県の機関の事務に関する情報であって、公にすることにより、取締り等の事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為等を容易にする等のおそれその他当該事務等の性質上、当該事務等の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものについて、これを非開示と規定している。
(1)と同様の理由により、公文書の存否を答えることにより特定の取締りにおける行動に関する情報が公にされることとなり、その結果、迅速的確な取締りの推進や事案の真相の解明が困難になるなどのおそれがあると認められるので、条例第9条第2項第6号に該当する。
(3) 公文書の存否応答拒否について
条例第12条第5号は、公文書の存否の事実により特定の情報が明らかになる開示請求があった場合で、当該公文書が存在しているか否かを答えるだけで、非開示情報を開示することとなるときは、公文書の存在を明らかにしないで、開示請求を拒否することが出来る旨を規定している。
本件請求の対象とされた公文書については、その存否を明らかにするだけで、条例第9条第2項第4号及び第6号に該当する非開示情報を開示することとなるため、公文書の存否を明らかにしないで本件請求を拒否した開示決定を行ったものである。
〔審査請求人の意見〕
鳥取県公安委員会は、鳥取県情報公開条例第9条第2項第4号及び第6号に該当する非開示情報を開示することになる、という理由で、公文書開示請求拒否決定をされました。
この理論の飛躍は、もはや「法律による行政の原理」への挑戦でしかなく、このような裁量権を逸脱した理論がまかりとおれば、●●私も明日から活用し、説明責任を放棄したいと考えます。
●●は、「全国一律で決まっている」と回答されました。鳥取県警察本部はそれについて一片も否定はされません。そうであれば、鳥取県の独自の条例ではなく、全国的な通達もしくは、法令・訓令が存在するはずです。それを教示し、任意取調べ時の自由の制限を納得させてください、と申し出ているのです。
第6 本件審査請求審議の経過
平成27年1月23日 諮問書を受理
2月27日 実施機関が理由説明書を提出
3月8日(9日受理) 審査請求人が意見書を提出
5月27日 審議
※ 審査請求人は、本審議会に対する口頭による意見の陳述を求めていない。
第7 審議会の判断
実施機関は、「●●が説明した」と公文書開示請求書に記載されていることをもって、開示等決定により鳥取県情報公開条例第9条第2項第2号に規定する個人情報(警部補以下の職員の氏名)が明らかになると主張するが、開示請求の内容から判断すると、不服申立人が求める公文書は「任意取調において録音・録画を禁止する根拠を示した文書(通達、規則等)」であることは容易に想像が付く。また、本件開示請求においては、警部補以下の職員の氏名を特定することなく根拠となる規則・通達等を開示することが可能であったものと考える。
にもかかわらず、公文書開示請求書に●●の記載があることをもって開示請求拒否の決定を行ったことは、過剰な反応と言わざるを得ない。
警部補以下の職員の氏名を非開示とすることもそうであるが、警察行政の特殊性による秘匿事項が多数存在することは理解するが、それ故に県民に対する一層の説明責任が求められることも理解する必要がある。
鳥取県公安委員会におかれては、鳥取県情報公開条例の目的・趣旨を理解し、開かれた公正な県政実現のため、情報公開に努められたい。